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2015年4月 5日 (日)

生活困窮者自立支援法が施行

4月1日の昼休み、新人の皆さんの研修会場に組合として挨拶に伺いました。その日は限られた時間の中ですので、組合を代表した私からの挨拶は手短にしています。3日金曜の夜には歓迎会を兼ねた組合説明会を催し、その時は10分ほどの時間が割り当てられているため、「役に立たない組合はいらない」という話をさせていただきました。

毎年、機関誌の特集記事『春闘期、情勢や諸課題について』を記名原稿で綴っています。その記事のサブタイトルを「役に立たない組合はいらない?」としていました。一歩間違うと組合をつぶそうと考えているような言葉ですが、「何だろう」と関心を持っていただくための見出しの付け方でした。組合員の皆さんに対し、まったく役に立たない組合であれば、私自身も「いらない」と思っています。

しかし、いろいろ力不足な点はあろうかと思いますが、一定の役割を果たしていることを確信しているため、組合は必要という認識を持ち続けていることを新人の皆さんにも説明させていただきました。記事タイトルとは離れた近況報告から入り、すでに3段落を費やしています。このような話も広く訴えたい内容であり、今後、機会を見て改めて取り上げさせていただくつもりです。

さて、この4月から下記の報道のとおり生活困窮者自立支援法が施行されました。私自身の職務は徴税吏員です。これまで当ブログの中で仕事を通した自分なりの問題意識をいくつか綴ってきています。まとめた記事として「職務の話、インデックス」があります。今回の新法は私自身の仕事にも関わっていくものであり、いずれかのタイミングでブログでも取り上げようと考えていました。

生活に困った人を支援する「生活困窮者自立支援法」が1日に施行され、生活保護を受ける前の段階で就労支援を行う窓口などが全国の自治体に設置されます。生活困窮者自立支援法は、生活に困った人を支援して生活保護を受ける前の段階で自立につなげるのが目的で、福祉事務所がある全国901の自治体は支援のための態勢整備が義務づけられます。具体的には、自治体は相談窓口を設置して専門の支援員などが一人一人の状況に応じた支援計画を作成し就労などにつなげるほか、住居を確保するための家賃を一定期間、支給します。

このほか、自治体は、「貧困の連鎖」を断ち切るために経済的に苦しい世帯の子どもの学習を支援したり、引きこもりの人などのために就労や社会参加への足がかりとなる訓練を行ったりすることもできます。厚生労働省によりますと、生活保護の受給世帯は過去最多を更新し、昨年度・平成26年度の総額は3兆7000億円余りに上る見通しです。厚生労働省は「生活保護を受ける前の段階の支援を充実させていきたい。困りごとがあったら遠慮しないで窓口に相談してほしい」としています。【NHKニュースWEB2015年4月1日

私どもの自治体では社会福祉協議会と民間の人材派遣事業者に委託し、「くらし・しごとサポートセンター」を開設しました。生活での悩み、仕事のことなどで困っている方に寄り添い、一緒に考える無料の相談窓口です。状況に応じて適切な窓口を案内し、一人ひとりに合わせた自立や就労支援を行ないます。また、住居確保給付金の支給や生活福祉資金の貸付などの事業に繋げ、経済面での一定の援助もできるようになっています。

続いて、生活保護制度の現状や生活困窮者自立支援法が成立した経緯などについて説明させていただきます。ただ私自身に専門的な知識がある訳ではなく、知ったかぶりして受け売りの文章を掲げるよりも詳しく説明しているサイトの内容をそのまま紹介させていただきます。昨年12月21日のTHE PAGE「生活困窮者自立支援と生活保護、それぞれの課題は?」がたいへん分かりやすく、現状や課題についてまとめられていました。

日本のセーフティネットの基礎となっているのは生活保護なのですが、生活保護の制度には、捕捉率が低いという課題があります。生活保護の受給者数は約220万人、受給世帯数は160万世帯ですが、一方で厚生労働省がまとめた日本の相対的貧困率は約16%です。日本の世帯数は約5200万世帯ですから、貧困率が16%だとすると約832万世帯が貧困状態にあると考えられます。そうなってくると、貧困世帯のうち生活保護を受給できているのは、約20%に過ぎないという計算になるわけです。生活保護については財政的な問題もあり、基本的に給付を抑制する方向で改革が進められています。今年の7月に施行された改正生活保護法では、窓口での申請書提出の原則義務付けや、親族や雇い主に対する調査権限の強化などが盛り込まれており、保護を受けるハードルが従来に比べて格段に高くなっています。

このままでは支援の対象とならない生活困窮者が増加することから、それに対応するために作られたのが、生活困窮者自立支援法となります。この法律は、生活困窮者の自立を支援するためのものです。福祉事務所を設置している自治体は、自立相談支援事業を行うことになっており、生活困窮者がワンストップで相談できる窓口が設置されます。また、生活困窮者が就労できるよう各種支援を実施します。失業などにより一時的に住む家を確保できない人のために、家賃を補助する制度も盛り込まれました。働く意思はあるものの、その機会を見つけることができず、貧困状態から抜け出せなかった人には、効果のある施策といえるかもしれません。一方で、内容が就労支援に偏っていることについて危惧する声も上がっているようです。

日本では、仕事がない一人親世帯の貧困率は50%を超えているのですが、仕事がある一人親世帯の貧困率もやはり50.9%とほぼ同じ水準です。労働基準法が守られていれば、こうした結果にはならない可能性が高く、労働環境が劣悪な職場が多数存在することを伺わせます。仮に就労機会が得られたとしても、そういった仕事に従事してしまうと、貧困から脱出できない危険性があります。この法律を効果的に運用するためには、労働環境の整備とセットで行うことが重要です。また何らかの事情で就業が難しい人や世帯については、今回の法律でも十分にカバーされません。セーフティネット全般について、金額を抑制しつつも、カバーする範囲を広げると行った包括的な工夫が必要でしょう。

私自身、徴税吏員であるとともに市職員という立場や役割を忘れないように常に意識しています。このあたりは以前投稿した記事「再び、職務に対する心構え Part2」を中で詳しく綴っていました。何らかの事情があって滞納している方々に対して「過去の納税者、未来の納税者」という敬意を払いながら、いつも「丁寧な対応」に努めていくことを職務に対する心構えの一つとしています。中には約束を守らない、担税力が充分認められながら納めない、恫喝や罵詈雑言を発する方も少なくなく、滞納者に対して敵愾心を抱きがちな職務だと言えます。

しかし、滞納されている大多数の皆さんは何らかの事情があって期限までに納められず、はからずも滞納額が累積されてしまった方だと思っています。したがって、具体的な相談や財産調査などを進めながら一人ひとりの事情に照らした「丁寧な対応」が欠かせないものと考えています。以前の記事「再び、職務に対する心構え」の中で、滞納整理の研修では「自らの滞納処分によって会社が倒産してしまうのではないかと心配する必要はありません。差押を受けて倒産するような会社は、遅かれ早かれつぶれてしまうものです。顧客として評価できる会社であれば、銀行が簡単につぶしません」という説明が加えられていることを紹介していました。

その通りなのかも知れませんが、正直なところ違和感がある話でした。得てして滞納整理の研修の中では、個人の滞納者に対しても同様な趣旨の割り切り方で接していくことが推奨されているように感じがちでした。そのような違和感や問題意識を持ち続けている中、今回の生活困窮者自立支援法施行の動きを知ったため、このブログで改めて個人的な思いを綴ってみるつもりでした。生活困窮者自立支援法は前述の説明の通り生活保護受給者数を減らすという財政面の目的を補う一方、生活保護を受ける前の段階での相談機能や支援の充実をめざしています。

厚生労働省の検討資料の中では、自治体ごとの庁内体制の構築が検討課題とされています。福祉関係課に限らず、税務、保険年金、住宅、商工、教育関係の部署と日常的に連携できる部局横断的な組織体制の整備が求められています。対象者の早期発見に向け、税や保険料の滞納者の中に気になる生活困窮者を把握した場合、すみやかに自立相談支援事業に繋げる紹介ルールを設定していかなければなりません。参考として人口4万人の滋賀県野洲市の事例が紹介されています。

野洲市では「多重債務相談受付の流れ」とういうマニュアルを整え、税金、国民健康保険、給食費の滞納などの情報を市民相談室が一元管理し、その他にも借金があるかどうか本人に確認していました。その上で、関係各部局が一堂に会し、滞納解消と借金返済について協議し、弁護士、司法書士に取り次ぐ対応をはかっていました。その結果、平成21年度から22年度までの2年間で、取り戻した過払い利息は1億1900万円、払わなくて済んだ借金は1億5000万円、税金滞納への充当が1100万円という実績を上げていました。

組織的な体制面では野洲市の足元にも及びませんが、私どもの市でもそれに近い対応をはかるように努めていました。納税相談を行なう中で、法律相談や生活保護申請への案内などを職員一人ひとりが適宜判断していました。このような視点を重視していくことが徴税吏員であるとともに市職員という立場や役割を意識していくことだと考えています。この4月以降は、よりいっそう意識的に生活保護申請の前段階となる「くらし・しごとサポートセンター」に紹介する手順となります。

これまで生活保護自体は最後のセーフティネットであるため、あまり安易に紹介できませんでした。これからは少しでも気になった場合、相談窓口を積極的に案内できるようになったことを歓迎しています。そのことによって、早期に生活を再建できる方が増えていくことを願っています。もちろん圧倒多数の納税者の皆さんとの公平性を保つため、個々の事情を的確に判断するためのスキルや調査能力を高めながら、より多く、より効果的な滞納処分にも引き続き全力を尽くしていきます。

最後に、生活保護を題材にした書籍も紹介しようと考えていました。『実録! 熱血ケースワーカー物語』『公務員もつらいよ わたし、公僕でがんばってました。健康で文化的な最低限度の生活』という文庫やコミックスを読んでいました。たいへん長い記事となっていますので、タイトルのみの紹介にとどめさせていただきますが、最近読んだ『健康で文化的な最低限度の生活』はたいへん面白く、いろいろな意味で興味深い内容のコミックスでした。区役所に新規採用された女性職員が福祉事務所に配属され、生活困窮者の支援の難しさに葛藤する日々が描かれています。現在の職務に関わらず、自治体職員の皆さん全員にお勧めできる面白さですので、ぜひ、機会がありましたらご覧になってください。

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コメント

補足率を相対的貧困率から割り出すのは間違いかと・・。
ミスリードと思いますけどね。
参考(http://blogs.bizmakoto.jp/kaimai_mizuhiro/entry/17194.html)

他に比較すべき項目を検討するべきとも思います。
例えばこれとか。
参考(http://www.garbagenews.net/archives/1078234.html)

もしここで話題として取り上げるならば、
全国的に基準以上の世帯と担当することが当たり前になってしまった
ケースワーカーの充足率とかの方が良いのではないですか?

何人かの知り合いから見聞きした話ではありますが、
大抵の福祉事務所の場合、そこの業務の過酷さは今話題のブラック企業さながらと聞きます。

また、地方自治体には、それ以上に過酷な職場もあるとも聞いていますが、
共通しているのは、組合は見てみぬ振りを押し通すし、組合の執行部の人間は、
そういう職場に配属されない暗黙のルールが有るという話が出ることですね。

国家公務員もそうですが、地方公務員もサービスで長時間労働が当たり前となっているそうです。
そういうところを、何故か組合は見てみぬ振りを続けているということが非常に気になります。

先の暗黙のルールが本当にあるのかは、少し疑ってかかるべき話とは思っておりますが、
いつまでも改善されず、大きく問題として取り上げられない事実を見れば、
果たして、どっちが本当なのと思ってしまうものです。

管理人の所属する団体では、例えばケースワーカーは基準数を満たしているのでしょうか?
他の部分についても基本的に伝聞ですので、事実と相違あればご指摘ください。

投稿: s | 2015年4月 5日 (日) 22時48分

sさん、コメントありがとうございました。

私どもの市でもケースワーカーの基準80対1を満たすことができていませんが、労使交渉を通して平均100ケース以上としない、つまり99対1という一つの歯止めを確認しています。その結果、ほぼ毎年ケースワーカーの増員は獲得できるようになっています。また、前副委員長や現書記長がケースワーカーです。この2点について取り急ぎお答えさせていただきました。

なお、次回以降レスが必要な場合、来週の土曜か日曜になることを改めてご容赦くださるようお願いします。

投稿: OTSU | 2015年4月 5日 (日) 23時23分

生活困窮者は、マドまで来てもらわなきゃ対応しないヤクショというのは、もうやめにしたほうがいいかもしれません。
ヤクショが、住民の家まで行くとなると、いろいろオオゴトではあります。
しかし、ひきこもってしまった人が、生活をあきらめてしまった人が、誰もいないところで障がい者になってしまった人が、窓口に来るとは思えません。あきらめた人たちだから。
金融でも、職安でも、商品でもなんでもそうですが、自宅にいながら・・・では本当のところはよくわからないものです。
しかし、今どき、居宅でサービスを必要としている人たちにマドで基本対応なんですかね。
ソトマワリはコストもかかるし、ソトワマリ主体の職場だと交通安全教育からなにからしなくちゃいけないのは理解します。

ワーカーさんの数は増やせるのですね。職員増員の声は、どの部署からも聞こえてきます。
しかし、大多数の市民の声は「税金減らせ!公務員賃金をカットしろ!ムダムラは許さない!」です。
定時に帰れば市民に仕事していないと叩かれ、夜、庁舎の電気がついていれば公務員は早く帰れと言われる。

もう、究極の楽園しか住民(国民)はヤクショに求めていないのかもしれない。某市の委員をやってみて思います。
地上の楽園を、タダ同然で作れば、みんな満足。そんな都合のよいことをおっしゃる方がいる。
何かを作るとコストがかかることを理解できない住民は多い。
民間は安く作っているのに・・・っておっしゃる。役所がいくら事業所だからといっても民間のように賃金が桁違いに安い海外へ移転できない。

ムダはカットしよう。余計な支出をカットしよう。税金のとりっぱぐれも解消しよう。簡単に生活保護受けられないようにしよう。人件費もカットしよう。
・・・いいかもしれません。ついでに戦争はいらないよね。汚い核みたいのはダメだ。そうだ。

そのうち、行政が行政でなくなる時も近い。行政の窓口は、鉄道業者のように自動機で基本対応の時代がきてしまうかもしれませんね。
うちの近くのJRの駅は、1日乗降客1万人。いちおう関東地方の幹線です。
自動販売機が3台。自動改札が3レーン。
働く人は見かけません。働く場はその駅にはなくなっています。業務委託。

役所自体が人を切りすぎると、ワンストップを地でいくようなスーパーマン並みの人しかいらなくなる。しかも給料は世間より低く抑える。
生活困窮者の方が対応能力高かったら、公務員はどうされるのですかね。いろいろな理由で経済的に困窮状態となった方はいらっしゃいます。でも、見た目、公務員はスーパーパーソンだから。
そろそろ、公務員の身分保障も危うくなってくるのではないですか。非常勤を抱え過ぎるようになると。みんな基本非常勤でいいじゃないですか。
公務員が目の敵にされて、国民がうなずくだけで、そうなる可能性がないとはいえない時代になってしまった。

どんどん独法化して、どんどん切ってしまえ。ついでに憲法も変えて身分保障なんかなくなっちまえって、このままいつまでも行政がパラダイスを作らないと、大変なことが起きそうな予感がします。予感だけですけどね。

投稿: でりしゃすぱんだ | 2015年4月13日 (月) 21時31分

でりしゃすぱんださん、コメントありがとうございました。

いつも幅広い視点からのご意見、いろいろ考えを深める機会となっています。なお、今週予定している題材も「公務員のためいき」というブログのタイトルから照らし合わせた際、違和感を与えてしまうのかも知れませんが、その時々に書きたいことを気ままに投稿させていただいています。ぜひ、またご訪問いただければ幸いですのでよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2015年4月18日 (土) 20時35分

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