春闘期、非正規雇用の課題 Part2
かなり前に「季節は春闘、多忙な日々」という記事を投稿していましたが、先週も本当に多忙な一週間でした。水曜日は人員の課題の決着期限が迫っていたため、深夜まで労使交渉を重ねました。毎年、多くの職場から増員要求が出されている中、自分の職場の要求にばかり傾注する訳にはいきません。しかし、今回だけは最後まで譲れない強い姿勢を示し続けました。その結果、何とか1名の増員回答を引き出すことができました。翌朝、職場の皆さんに報告した際、拍手をいただき、苦労が報われる瞬間でした。
木曜日と金曜日、同じ場所、同じ時間帯で取り組まれた駅頭宣伝活動に連日参加しました。それぞれ駅前を通行されている方々にティッシュペーパーも配っていました。木曜は「労働組合を作りましょう 連合は応援します」、金曜は「平和な未来を!! 戦争をさせない全国署名」と記されたチラシが入れられていました。金曜の宣伝活動の際には私自身もマイクを持つ機会があり、このブログに掲げているような問題意識を自分なりの言葉で訴えさせていただきました。
火曜日には連合地区協議会と東京都労働相談情報センターとの労働情勢懇談会が開かれました。議題の初めに労働相談情報センターの役割や事業の報告がありました。労働相談・あっせん、労働情報の収集・提供、労働セミナーの開催、非正規雇用環境整備などを目的にした企業支援事業、労使団体や働く人々のために会議室の貸出が役割として紹介されました。カラーのチラシ「若者必見!知らないと損する労働法 バイト先のトラブル!その時どうする?」が配られましたが、最近取り沙汰されているブラックバイト対策に力を注ぐため、動画の配信を始めたそうです。分かりやすい動画ですので、ぜひ、リンク先をご覧ください。
管内における前年度の相談件数は52,684件で、8年連続で5万件を超え、依然として高水準であるとのことです。相談内容は4年連続で「退職」が最多となっていますが、「職場の嫌がらせ」が増え続けているという報告を受けました。上司からの嫌がらせの相談を受けていた最中、その上司もストレスで休職してしまったというケースがあったそうです。それぞれの会社に余力がなくなり、一人ひとりの業績が追い求められていくため、メンタルやパワハラの問題に繋がりやすくなっているという説明も添えられていました。
非正規労働者に関わる相談も前年度比で6.3%増加していました。今回の懇談会では「非正規労働者の労働条件改善・組織化の取り組みについて」が議題の柱の一つでした。出席した連合地区協の役員一人ひとり、自分の所属している産別や組合の取り組みについて報告しました。その際、私自身は前回記事「春闘期、非正規雇用の課題」に記した内容の要旨を報告させていただきました。懇談会の前、情報センターの皆さんと名刺交換していました。名刺にはブログのURLも記しています。
そのため、公務員やその組合の言い分を広く発信するため、個人の責任でブログを始め、週1回更新していること、今回報告した非正規雇用の課題について最新の記事で取り上げていることを参考までに紹介させていただきました。さらに厚かましくも「言葉不足な点はブログをご覧になっていただくことで補えるようであれば幸いです」という一言も添えていました。開設した当初、このブログのことを積極的に宣伝していました。しばらくしてからは機会を見ながら触れる程度にとどめていますが、一人でも多くの方に閲覧いただきたいという思いは一貫しているところです。
さて、前回記事「春闘期、非正規雇用の課題」に対し、れなぞさんから「自治労とその構成員は非正規公務員を利用して自らの厚遇を謳歌する犯罪的組織であると認識しています」というコメントが寄せられていました。私からは「たいへん残念な不本意な見られ方だと言わざるを得ません。なぜ、そのような認識に至っているのか、理由が付されていませんので推測するしかありませんが、引き続き記事本文を通して非正規雇用の課題を取り上げていければと考えています」とお答えしていました。
でりしゃすぱんださんからは土曜日に正規と非正規の仕事の内容・量・質や関係性などについて詳しく分析されたコメントをお寄せいただきました。れなぞさんの思考パターンを推測するにあたり、ほぼ同一の仕事内容にも関わらず、正規と非正規の待遇に大きな開きがあることを思い浮かべています。そのことは自治労としても強い問題意識を持ち、活動方針の中で大きな柱とし、さらに非正規労働者の組織化も進めてきています。ただ残念ながら劇的な成果を出し切れていない現状であることも確かです。
このような現状に対して「アリバイ的な運動に過ぎない」という厳しい見方をされる方も多く、れなぞさんの「非正規公務員を利用して自らの厚遇を謳歌する犯罪的組織である」という思考パターンもこのあたりから組み立てられているのかも知れません。過去の記事に「自治労委員長の問題提起」があり、徳永前委員長が「正規職員と非正規職員が賃金をシェアし、全体として処遇改善と安定雇用をはかるという方策を大胆に採用すべきだ」と提起したことを綴っていました。この提起には反発も多く、明確な方向性を打ち出せるまでに至っていません。このような問題意識を踏まえ、「非正規公務員の課題 Part2」という記事を投稿していました。
限られた財源や原資の中で、一定の配分見直しも欠かせないのかも知れません。しかしながら非正規の待遇改善が、正規の労働条件引き下げを前提としていくことには強い違和感があります。基本的な方向性は非正規の待遇の底上げを重視すべきものであり、そのような立ち位置を明確にしていかなければ結果的に働くことの社会的な価値が低いほうへ、低いほうへと流されていくのではないでしょうか。特に「正規イコール悪」という喧伝も耳にしがちですが、そのような言葉の裏側には人件費を極力低く抑えたいという思惑が先行しているように感じています。最後に、最近話題になった対談を紹介します。
竹中平蔵・慶大教授と山口二郎・法大教授が2日、BS日テレの「深層NEWS」に出演し、安倍首相の経済政策「アベノミクス」を巡る格差の問題について議論した。竹中氏は、「雇用者報酬が実質で増えていることは重要。日本でも(格差が)拡大しつつあるが、世界の中で見れば客観的に低い」と強調。そのうえで、「正規が非正規を搾取する構造になっている。正規と非正規の壁をなくさなければいけない」と述べた。一方、山口氏は、「個人消費が伸びず、実質賃金も低下し続けている。マクロ経済の数字の改善が(国民経済の)成功指標であるという関係は21世紀に入って崩れた」と指摘。「普通の働く人に力点を置かなければ、経済回復の道筋は描けない」と訴えた。【読売新聞2015年3月2日】
ちなみに竹中教授は元旦に出演した番組で「正社員をなくせばいい」とも発言していました。竹中教授はいくつかの大臣を歴任し、今でも政府産業競争力会議(民間)議員や国家戦略特別区域諮問会議(有識者)議員という要職を務め、国の政策に強い影響力を与えられる立場です。大手人材派遣会社のトップという顔も持っているため、意図的に派遣労働者を増やそうとしているようにも見られがちです。政治家や官僚らの発言、「政治とカネ」の問題は仔細に注目を浴び続けていますが、私人(?)である竹中教授の言動や立ち位置が問題視されることはあまりないようです。
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コメント
正規職員と非正規職員については、長期契約であるか、短期契約であるか、あるいは、処遇面で高度なスキルを使うのか使わないかということだけに絞られていくと考えています。
そうすると、できる人間は富む。できない人間は貧しいということになります。
なにをもって「デキる」人間なのかは社会の要請によって異なります。
また、業務外であってもデキることが求められる時代が到来するのではないか・・・とくに、信用情報は現在3社に統合され、寡占状態にあり、個人のスキル(過去の職歴・収入などによる信用付与)は売り買いされるようになっています。
マイナンバーの話をいきなり出すのですが、なぜ、20年前、国民総背番号制についてあれほど嫌がった国民が、素直に法案をとおされてしまったのか、非常に疑問です。
個人情報が紐づけされていく。一生に1回しか発行されない番号で管理されていく。
労働やその人の過去も、消えることはありません。信用情報に限って言えば、平均寿命程度である80年間程度の信用情報が保有されている。こげつきがあると、下手すると携帯電話も割賦では買えません。
労働市場の場合、業務外利用にはなりますが、厚生年金の過去の加入状況は事業所名まで「会社の端末」で分かるようになっています。民間での採用では常識です。
履歴書をいくらごまかしたところで、厚生年金記録に載っている職歴はごまかせない。
アヤシイ職歴は、調べることができます。公務員感覚ではこのところが理解できていない。
これが、あらゆるものにマイナンバーが入り込むようになる。金銭貸借の情報にも紐づけされる。預貯金口座にも。任意ですがあらゆるものに紐づけされていく。
現在でさえ、クレジットの申し込みや借入、携帯の割賦に免許証番号が「任意で」必要。でも、今度は運転免許証ではない、誰でも持っているマイナンバーに「任意で」集約されていきます。
分散コンピューティングは当たり前なので、ネットさえあれば、一意のマイナンバーでたとえ数万台のコンピュータの情報に紐づけ情報があろうとも、やろうと思えばすべて分かる状態になる。
大きなセンターは必要がない。
労働市場からみると、高度な機械化は、一部のホワイトカラーしか必要としなくなる。ワザが必要なものは、1人の匠を分析すれば模倣できてしまうところまできている。
結局、その人の価値は信用情報とどれだけ稼げるかということに、情報的には集約されていく。マネーとはその程度のものにしかならない。
こういう時代に、正規、非正規は、その職業にしがみついている「必要最小要員」なのかそうでないのかの違いでしかなくなってしまう。
結果、同じ内容の仕事内容・量・質ならば、同程度の賃金はしかるべきだという発想になる。
こと公務員にあっては、マンパワーで回すのは非常に限られてきている。企画屋しかいらない。和文タイピスト職がもはや化石になったように。
あと、消防や警察、災害担当に人を割くけれども、それ以上の人員は機械化の進展で、ふだん遊ばせていることになりかねない。
災害は、専門の非営利団体で消防団よりも緩やかな規律をもつようなものさえ作れば、役所のリストラも十分に考えられる。
改憲の動きが出ています。公務員の身分保障も為政者によっては永遠ではないです。
公務員の仕事内容に対し、国民・市民がNo!といえば、三公社・郵政のように、たとえブームであったとしても、統治機構から簡単に切り落とされる世の中であることには変わりはありません。
投稿: でりしゃすぱんだ | 2015年3月 8日 (日) 00時47分
でりしゃすぱんださん、コメントありがとうございました。
いろいろ考えを深めなければならない提起が含まれたご意見だと受けとめています。具体的な論評や感想を加えることができませんが、これからもお時間等が許される際、貴重な提起や情報提供となるコメントをお寄せいただければ幸いですので、よろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2015年3月 8日 (日) 20時56分
デキる人で誤解を生んではいけないので補足します。
いろんな分野で、余人を持って代えがたしというひとはいます。
うちに、牛乳配達のママさんが週2回配達してくれます。朝、保冷剤を入れた箱に牛乳びんを3つか4つ置いていってくれます。
スーパーの牛乳も買うのですが、母専用にしておかないと、弟が飲んでしまうので、そういう意味で利用しています。
で、その配達員のママさん。頑張ってる!子どもが具合が悪い、園の行事のときは、暗いうちに配達してくれたり、たまにスケジュールが狂います。
でも、明るく、おはよーございまーす○○牛乳でーす!と声をかけてくださる。希薄てすが、そういった悪意でない自宅訪問販売は多少価格が高くても大歓迎ですし、なんだかほっとするものです。
ほっとすることに対価を見出し、支払っている。そういうのも能力だし、もし、牛乳配達のママさんが人間臭くもなく置いていくのなら、とっくの昔にやめていたと思います。
デキる人間は、結構いる。コストパフォーマンスとの兼ね合いをどうするかということはあるにせよ、属人的にそういう人しか残らない時代になっていくのだろうなと漠然と思っています。
投稿: でりしゃすぱんだ | 2015年3月14日 (土) 23時30分
でりしゃすぱんださん、おはようございます。コメントありがとうございました。
新規記事はガラッと流れが変わる内容で今思うことを綴らせていただく予定です。ぜひ、またご覧いただけますようよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2015年3月15日 (日) 07時00分