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2014年12月 7日 (日)

改正労働契約法の活用

今年の新語・流行語大賞は、お笑いコンビ「日本エレキテル連合」の『ダメよ~ダメダメ』と『集団的自衛権』が年間大賞を受賞しました。この二つの言葉がセットで選ばれたことを知った時、審査員の意図を深読みしていました。すると「まるで『集団的自衛権』を『ダメよ~ダメダメ』と言わせているような意図が透けて見えました。審査員の挨拶にもそんなニュアンスを感じましたよ」という報道も目にし、話のネタの一つに繋げられるような自分自身の想像がそれほど的外れではなかったことを知りました。

このブログでも今年7月に集団的自衛権を閣議決定した前後、関連した記事を数多く投稿し、集団的自衛権の行使に対して疑義を示してきました。一方で、それらの記事に様々なコメントが寄せられ、安倍政権の進めている政策や政治的な判断を強く支持されている方々が多いことも実感する機会となっていました。それでも来週の衆議院選挙、新聞各社の事前調査では自民党の獲得議席が軒並300を超える予想となっていますが、実際の民意とのギャップを感じがちな数字だと思っています。

そこまで安倍政権が国民多数から積極的な支持を得ているのかどうか疑問ですが、事前調査の予想通りに自民党が大勝するようであれば、安倍政権の2年間は信任されたことになります。同時に安倍首相が進める政策や目指している方向性も国民から信任されたことになり、今後、ますます安倍首相のカラーが前面に打ち出されていくのではないでしょうか。最近の傾向としてアンダードッグ効果よりもバンドワゴン効果のほうが顕著であり、あと1週間で情勢を大きく変えることは難しいのかも知れません。

いずれにしても現行の選挙制度から示された結果は厳粛に受けとめていかなければなりませんが、5年前の政権交代後、国民からの信頼を失墜させた民主党の責任が重いことを痛感しています。それでも的確なチェック機能を果たせる議会制民主主義を高めるためには、やはり民主党の役割に期待し、前回前々回記事の投稿に繋げていました。今回、記事タイトルから離れた前置きが長くなりました。時節柄、ご容赦願いながら、これから綴る内容の中にも少し関連した記載もあろうかと思いますが、重ねてご理解ご容赦ください。

さて、衆議院選挙が先週火曜に公示されましたが、その前夜、解散風が吹く前に予定した連合地区協議会主催の労働法講座「改正労働契約法の活用」が開かれました。講師は日本労働弁護団の幹事長を務められていた弁護士の水口洋介先生にお願いしていました。まず水口先生から有期労働契約と無期労働契約の違いが説明されました。1年契約や6か月契約など契約期間の定めのある労働契約を有期労働契約とし、パートやアルバイトにかかわらず、フルタイムの嘱託、派遣、契約社員なども有期契約労働者となります。

それに対し、無期契約労働者が正社員に位置付けられます。正社員の定年は期間ではなく、期限であるという説明も加えられています。有期契約労働者が非正規と呼ばれ、1984年は全雇用者4195万人のうち正社員3333万人(84.7%)、非正規604万人(15.3%)でしたが、2013年には全雇用者5210万人のうち正社員3302万人(63.4%)、非正規1906万人(36.6%)となっています。ちなみにアベノミクスの2年間で雇用が100万人増えたと言われていますが、非正規が123万人増え、正社員は22万人減っていました。

有期契約労働者の問題点は、雇用の不安定、更新拒否の不安、将来の生活への不安、低い労働条件(低処遇)があり、根本的に是正するためには「人間らしく働くルール」(ディーセント・ワークの確立)や有期労働契約締結に客観的・合理的な理由を要件とする「入口規制」の導入、雇用形態を理由とする不合理な労働条件の禁止が必要であると水口先生は説かれています。そのような問題意識を日本労働弁護団幹事長の立場から訴え続け、2012年の改正労働契約法に繋がっていました。

厚生労働省のホームページの説明文にも「有期労働契約の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消し、働く方が安心して働き続けることができるようにするため、労働契約法が改正され、有期労働契約の適正な利用のためのルールが整備されました」と記されています。改正労働契約法のポイントは次の3点で、それぞれ水口先生から詳しい説明を受けましたが、このブログでは概要を報告させていただきます。

  1. 無期労働契約への転換 … 有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた時は、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールです。労働契約法第18条に定め、2013年4月1日に施行されています。5年のカウントは2013年4月1日以降となり、申込みの方式に制限はなく、口頭でも問題ありません。
  2. 「雇止め法理」の法定化 … 最高裁判例(パナソニックプラズマディスプレイ事件)で確立した「雇止め法理」がそのままの内容で法律に規定されました。客観的、合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない時は使用者による雇止めが認められないことになるルールです。労働契約法第19条に定め、2012年8月10日、法律の公布と同時に施行されています。新たに有期契約を締結する際に不更新条項を設定したり、就業規則に更新の上限を定める場合、直ちに無効とならないため、入口規制を導入しなかったことが最大の弱点とされています。 
  3. 不合理な労働条件の禁止 … 有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルールです。労働契約法第20条に定め、2013年4月1日に施行されています。基本給、各種手当、休憩、休暇、労働時間、安全規定、労災補償、教育・訓練、食堂利用など、すべての労働条件が対象となります。 

水口先生は特に労働契約法第20条が画期的な法改正であることを強調し、民主党政権だったからこそ実現したという感想も添えられていました。労働者側に優位な法改正だったため、経営者側の立場を代弁する弁護士の方から「ここまで大きな改正だとは認識していなかった。厚労省にだまされた」という言葉を投げかけられたそうです。2年前に自民党政権に戻り、一転して「企業が世界で一番活動しやすい国」を作ることが目的化され、労働者保護ルールの見直しが進んでいます。

水口先生から現在の労働法改悪の動きも説明を受けましたが、衆議院選挙で自民党が勝利すれば一気に加速していくことは必至です。この労働法講座の閉会の挨拶は私が担当しました。その中で「水口先生から改正労働契約法を分かりやすく説明いただき、連合と連携をはかっていた民主党政権時代の成果の一つを改めて知る機会に恵まれました。ただ残念なのは、このような成果を民主党が効果的に広くアピールしてこれなかった点です」という一言を添えていました。

解散前の臨時国会で民主党は野党4党で「同一労働同一賃金推進法案」を衆議院に共同提出していました。(1)雇用形態にかかわらず職務に応じた待遇を受けられるようにする(2)正規労働者への転換を含め、希望する雇用形態での就労の機会が与えられるようにする(3)労働者がキャリアプランを作り、職業を自己選択できる―という3点を理念としています。理念はまったくその通りですが、すでに改正労働契約法で一定の前進をはかってきた内容と重複しているようにも見えます。

さらに維新の党が掲げる問題意識と必ずしも一致していないように見受けられた点を懸念していました。維新の党は公務員人件費3割削減を公約にしていますが、正社員の賃金水準を引き下げて非正規との格差を縮めながら「同一労働同一賃金」をめざしていることが明白です。この発想は非常に危うく、労働者全体の賃金水準や待遇が低位に押し下げられる結果を招きかねません。たいへん長い記事になっていますが、最後にもう一つ関連した話に繋げさせていただきます。

金曜の夕方、以前執行委員を担われていた女性組合員の方から全国一般東京東部労組に加盟しているメトロコマース支部の闘争について話を伺いました。東京メトロの100%子会社であるメトロコマースの地下鉄駅売店「メトロス」で働く非正規(契約社員B)の女性たちが結成した組合で、その役員の一人と女性組合員は知り合いだということです。今年5月、メトロコマース支部は労働契約法第20条を根拠に正社員との賃金差額(ボーナスや退職金を含む)などを会社に請求する裁判を起こしています。

メトロコマースには正社員、契約社員A、契約社員Bという雇用形態があるそうです。同じ駅売店で同じ仕事をしているにもかかわらず、正社員や契約社員Aとの間で労働条件の著しい格差があり、有期雇用を何年も反復更新しながら賃金はほとんど上がらず、月の手取りは12~13万円、退職金は1円も出ない一方で、正社員と同じ65歳の定年退職を迫られ、ストライキに立ち上がっていました。このような経緯や平均年齢60歳を超えながら元気いっぱいの組合員の皆さんの姿を映し出したDVD『メトロレディーブルース』は評判だとのことです。

ちょうどブログの新規記事で改正労働契約法を取り上げる予定でしたので、メトロコマース支部の話にも少し触れてみることを私のほうからお伝えしていました。今回、水口先生の講演やメトロコマース支部の話を受け、私どもの市役所の中にも正規と非正規の間に大きな隔たりがあることに思いを巡らしています。労働契約法第20条の理念に照らし合わせれば、大胆な是正を求めていかなければなりません。タイミング的にも嘱託職員の独自要求をまとめているところであり、多くの非正規の方々が直接組合加入している強みを活かしながら交渉を進め、賃金水準や手当支給などの待遇改善をめざしていきます。

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