衆議院解散、民主党に願うこと
今期の賃金・一時金闘争は木曜夜に決着しました。東京都人事委員会勧告を基本とし、月例給を公民較差0.13%、年間一時金を0.25月分引き上げる回答を得て、労使合意しました。月例給は15年ぶり、一時金は7年ぶりの引き上げとなります。最大の争点だった給与制度の総合的見直しは、これまでの労使交渉で積み上げてきた合意内容を踏まえて引き続き協議していくことを確認しました。
給与制度の総合的見直しは地域給の取扱いが非常に難しい問題ですが、年明けの3月議会での条例改定が間に合うように解決をめざしていかなければなりません。機会を見て、このブログでも地域給の問題を掘り下げていきたいものと考えています。時節柄、やはり今回の記事は衆議院の解散について焦点を当てることにしました。前回の記事は「解散風と定期大会」でしたが、金曜日の午後に衆議院が解散され、12月2日公示、14日投開票の日程が正式に決まりました。
伊吹議長が解散詔書を読み上げた本会議で、万歳三唱をやり直す珍事がありました。民主党の海江田代表は「自民党は浮足立っている」と気の緩みを指摘していましたが、 このフライングには次のような事情もあったようです。過去の解散では「衆議院を解散する」と読み上げた時点で万歳するケースが多く、「御名御璽…」と続け、最後まで読み上げたのは1953年の第4次吉田内閣での「バカヤロー解散」以来だという話です。
このような事情を知ると一概に自民党議員の勇み足だけを責められないような気がしています。それよりも小泉進次郎復興政務官の言動が注目に値しました。「私は万歳できなかった。万歳することで、余計、国民との心の距離を生むのではないか。国民には、なぜ解散なのか分からない」と述べ、解散に踏み切った安倍首相の判断に真っ向から疑問を投げかけていました。この一例に限りませんが、海江田代表にも小泉政務官のような「言葉の瞬発力」を高めて欲しいものと常々願っています。
一方で、海江田代表の基本的な立場や判断の大半は強く支持しているところです。つい最近、前原元外相や細野元幹事長らが国会内で海江田代表と会い、維新との新党結成を求めていました。それに対し、海江田代表は「民主党で戦う」とし、受け入れなかったという結論を耳にしています。確かに目前に控えた総選挙で議席数を一つでも伸ばすためには民主党の看板を下ろし、維新の党と合流したほうが得策なのかも知れません。
しかし、あまりにも民主党と維新の党では立ち位置や基本政策の面で隔たりが大きく、それこそ選挙目当ての野合という批判が免れないものと思っています。したがって、性急に新党を結成したとしても総選挙後の党運営の中で矛盾や対立が際立っていくはずであり、海江田代表が迷わずに拒否した判断は真っ当だったものと見ています。維新の党との合流を危惧する理由は、共同代表の橋下市長が労組排除を掲げているからという短絡的な理由だけではありません。
労働組合の役割や責任を軽視する姿勢そのものも基本的な立ち位置の問題に繋がっていきますが、主に次のような点で民主党と維新の党は相容れないものと考えています。最も大きな隔たりは経済政策に対するスタンスです。競争の善し悪しの評価は個々に判断しなければなりませんが、総論的な立ち位置として維新の党は競争を「是」とした新自由主義を重視した政党であることに間違いないはずです。
昨日発表された維新の党の公約も、アベノミクスの方向性を認めつつ第三の矢である成長戦略の不充分さを訴えています。「稼げる国」になるためには競争政策が必要だとし、農協改革や混合診療の解禁などを掲げています。ちなみに新自由主義は「強い者を優遇し、もっともっと強くして、勝ち上がった一握りの大企業や大金持ちが日本経済を活性化させる」という考え方で、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透する」「金持ちを儲けさせれば、貧乏人もおこぼれにあずかれる」というトリクルダウンと呼ばれる政治思想です。
このような思想を「是」とした中で経済政策を競い合うようでは、とても安倍政権との明確な対抗軸を打ち出した政党にはなり得ないものと思っています。それに対し、「バラマキ」という批判にも留意しなければなりませんが、民主党が進めた子ども手当や高校授業料の無償化などは国民生活を第一に考えた政策だと言えます。社会保障の充実や雇用の安定化をはかることで国民一人ひとりに安心感を与え、内需を活性化させるという実体経済を重視した政策の方向性を民主党は柱としているはずです。
その他、維新の党と民主党の掲げる個々の課題では共通項や違いなどが混在していますが、もう一つ大きな懸念があります。維新の党の公約には国民受けし、選挙に有利に働くことを企図したような内容が並んでいます。国会議員歳費と定数の3割削減、国と地方の公務員総人件費の2割削減などの公約には強い違和感があります。民主党が政権を奪取した後に経験した反省材料に繋がる話だと言えますが、具体的な数値目標を示した公約には慎重になるべきだと感じています。
そもそも現行の選挙制度で国会議員の歳費を削り過ぎれば、自己資金を豊富に捻出できる資産家しか政治家になれなくなってしまいます。公務員人件費の問題も現状や将来的な事務事業のあり方を無視し、枠をはめていく発想は改めて欲しいものです。特に地方の自立を公約の中で唱えながら、地方公務員の人件費の問題に言及する発想そのものが論外だと思っています。維新の党の公約について、あれこれ書き進めてしまいましたが、前回記事の後段に記したとおり野党同士のつぶし合いを避ける選挙協力は必要だろうと考えています。
基本的な理念が隔たる政党同士の新党結成よりも、問題視すべき点が多々ある安倍政権に一矢報いるという共通目標のため、できる範囲内で協力し合うことは充分大義のある判断や行動だろうと理解しています。いずれにしても衆議院の解散を受け、民主党には自民党との対抗軸を明確化して欲しいという願いを強めています。2年前の記事「衆議院解散、今、思うこと」や今年6月の記事「民主党に期待したいこと」に託した思いの焼き直しになるものと思いますが、できれば次回以降の記事でも、この続きのような話を書き進めさせていただくつもりです。
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