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2014年10月11日 (土)

子ども・子育て支援新制度について

前回記事「年功賃金の問題」の冒頭、火曜日に連合三多摩ブロック地域協議会主催の政策・制度討論集会が予定され、分科会「子ども・子育て支援新制度について」の座長を務めることをお伝えしていました。討論集会の当日、全体の参加者260名ほどで、私が座長を務めた第2分科会は100名を超える皆さんに参加いただき、おかげ様で充実した内容のもと割り当てられた時間の中で滞りなく終わらせることができました。

全体会の基調講演はワーク・ライフバランス、第1分科会は防災ネットワークのあり方をテーマとして催しました。第2分科会は来年4月から本格実施される子ども・子育て支援新制度について、3人の講師の方からそれぞれの立場からの報告や問題提起を受けました。皆さん、パワーポイントを使い、20分程度という短い時間の中で中味の濃い話をお聞かせいただきました。今回の記事では、講師の皆さんのお話に沿いながら子ども・子育て支援新制度について書き進めてみます。

初めに連合の生活福祉局長から子ども・子育て新制度の概要や連合の取り組みなどの報告がありました。社会保障・税一体改革による消費税の5%引き上げのうち0.7兆円が子ども・子育て支援の新制度に充てられる試算です。現行の社会保障給費を維持するための財源の大半に年金、医療、介護が充てられる中、子ども・子育て支援新制度は数少ない社会保障制度の充実に繋がります。

連合は子ども・子育てを社会全体で支える理念の実現に向け、0.7兆円でも不充分であり、1兆円程度の財源確保を訴えています。一方で、消費税10%への引き上げの是非が取り沙汰され、景気条項に照らし、8%に据え置きという可能性もあり得る現況です。景気が大きく後退するような事態を避けることは非常に重要ですが、社会保障制度の維持・充実のための消費税引き上げという出発点の考え方が薄れがちな点を個人的には憂慮しています。

制度の利用対象を「保育に欠ける」から「保育を必要とする」に改め、親の働き方に関わらず、すべての子どもに良好な養育環境を保障することを新制度の基本としています。市町村が支援法に基づき1号から3号までの認定を行ない、その結果によって幼稚園や保育所を選べるようになります。地域型保育給付の対象となる小規模保育や事業所内保育、施設型保育の対象となる認定こども園の拡充などを通し、待機児ゼロをめざしています。

すべて公費補助の対象となるため、市町村が運営情報や事故発生時の対応などを把握できるようになり、全体的な質の向上や安全性の確保が期待されています。このような新制度の特徴を連合の局長から説明を受け、国の会議の中で「質の確保」という視点が欠けがちな点を補ってきたことなども伺いました。特に連合の立場から「より良い幼児教育・保育のため、幼稚園教諭・保育士等の労働条件と職場環境の改善をはかる」という基本的な考え方を強調していることが報告されました。

続いて、八王子市子ども家庭部子どものしあわせ課長から新制度に向けた基礎自治体の取り組みや課題について報告を受けました。パワーポイントの最初の画面に『「今後の子ども子育て支援について」~ビジョン すくすく☆はちおうじ』の文字が映し出されました。この「☆」は「キラッと」と読むそうです。ちなみに「子どものしあわせ」というユニークな組織名称の由来も説明いただきました。子ども議会を開いた際、この名称の要望があり、当時の市長が即決して「子どものしあわせ課」の誕生に至ったそうです。他の部課の名称はオーソドックスなものが多いそうですので、キラッと光った印象深い課の名前だと言えます。

中核市に移行するため、都道府県レベルにおける必要な条例改正も求められている特殊事情をはじめ、保育士の配置基準などすべて法定基準を上回る内容で条例化していくことの説明を受けました。さらに会場からの質疑応答を通し、保育料の引き上げなど現行制度より利用者の負担が増えないような移行に努めていることも語っていただきました。すでに教育と子育ての連携を進め、中学校の授業の中で赤ちゃんや妊婦とのふれあいを実施していることなどの報告も受けました。

最後に「保育園を考える親の会」の曽山恵理子さんが「保護者の視点から考える新制度の問題点」を提起されました。ところで、このブログはプロフィール欄に記しているとおり匿名での発信を基本とし、一定の線引きのもとに実名で紹介させていただいています。もともと曽山さんはご自身のツイッターを実名で発信されています。さらに日経デュアル『「保育園一揆の仕掛け人」の素顔はフツーのママ』というサイトで紹介されているとおりたいへん有名な方です。

待機児童の保護者が保育園増設を求めて自治体に異議申し立てをする、いわゆる「保育園一揆」を全国に先駆けて杉並区で行った曽山恵理子さん(37歳)。曽山さんは、いわば働く親のフロントランナーと言えます。「ジャンヌ・ダルク」のように崇められたり、「すご過ぎる」と敬遠されることも多いそうですが、実際に会って話をしてみると曽山さんはフツーの「働くお母さん」。彼女が大事にしていたのは、社会を変えるとか、日本を変えるといった「大きな物語」ではなく、可愛い子どもと共に暮らしながら仕事をしたいという、ごくごく当たり前の希望をかなえるための「地道な行動」でした。

上記は日経デュアルのリードの文章ですが、保育園増設に向けた曽山さんの奮闘を耳にされた方は多いのではないでしょうか。と言う訳で、ご本人からの了解を得た上、曽山さんだけ実名での紹介となっています。実は分科会の前に講師の方とお会いした際、曽山さんから「ブログ、やってらっしゃいませんか」と声をかけられました。事前に渡された資料で私の名前を知り、ネット検索されたところ前回記事「年功賃金の問題」を見つけ、討論集会の座長のことが書かれていたため、間違いないと思ったそうです。

私自身も3人の講師の方を詳しく知るため、事前にネット検索で予備知識を得ていたことを伝え、曽山さんの活躍ぶりなどを話題にしていました。このような話題の延長線上から今週の新規記事は分科会のタイトルでもあった「子ども・子育て支援新制度について」と決めていました。本論から少し離れた話が長くなりましたが、「雑談放談」をサブタイトルにしたブログでもあるためご容赦ください。

それでは曽山さんの分科会での話に入りますが、まず「なるほど」と感じた報告がありました。人口減少や少子化が進んでいるため、曽山さんが住む杉並区は就学前人口も長期的には減少していくことを予想していたそうです。しかし、地方には仕事がないため、子どもを持つ夫婦が都会に出ていくことになり、就学前人口は増加傾向をたどっていました。そのような見通しの甘さもあり、待機児童の問題が深刻化していたと曽山さんは説かれていました。

また、曽山さんらの行動はマスコミにも大きく注目されたため、杉並区の待機児童問題が一気に進む契機になったことを報告されていました。このような経験から保護者の声が直接自治体に届けられる仕組みの必要性を曽山さんは訴えられています。さらに片働きモデルの崩壊と子育ての孤立化について提起されながら新制度に向けた期待や要望をお話いただきました。

子どもが他の多くの子ども同士で遊べる場として保育所の大事さ、保護者の立場からは「准保育士」ではなく保育士による保育を望み、保育士が働き続けられる環境の大切さも添えられています。会場からの質疑で「認可神話」や「保育士至上主義」という考え方の是非が問われた際、曽山さんは確かに資格の有無の問題ではないが、質の確保や信頼性のためにも保育士による保育を望み、「保活」に励む保護者の思いについて答えられていました。

質疑応答の時間には3人の参加者から質問が寄せられました。分科会のまとめとして、最後に座長の私から一言述べさせていただきました。昨年、同じテーマの分科会に参加したことにより、支援する対象として子ども自身と子育てする保護者らは別なものであり、「子ども・子育て」と並べて表記することの意味合いを知った話を紹介しました。来年4月の本格実施を間近にしながら新制度に対する認知度の低さがあり、このような催しを連合が取り組む意義などを申し添えました。

講師の皆さんのお話、質疑応答の詳細などを書き進めれば、まだまだ長い記事になります。そもそも精密なメモや録音をもとに書き起こしている内容ではないため、私なりの言葉や解釈で綴らさせていただいています。明らかな誤認はないものと思っていますが、重要な提起や内容を書き漏らしている点などがありましたらご容赦くださるようよろしくお願いします。討論集会当日は本当に貴重なお話を伺えました。改めて講師の皆さん、関係者の皆さん、ありがとうございました。

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コメント

基礎自治体や都道府県レベルで検討が進められていることに、こういうことにも、法定委任事務化しないと動けないような自治体の苦悩があるのではないかと、そもそものところで、考えがストップしてしまっているのですが。
それはさておき。
反対もあるのでしょうけれども、まずはやってみるということはいいと思います。
ただ、私の住む県の事情では、認定こども園への移行が進んでいないということがあるようで、各幼稚園では、経営上の問題からあきらめてしまっているようなところも見受けられるそうです。カネがからむとどうしてもそうなってしまう。
そもそも、女性に対し「働け!」はまだいいけれども、「管理職になれ!」といってみたりするのは、いかがなものかと。
なんでも数値目標にすればいいってもんじゃないとは思いますが、制度を変えたって、民衆の心が変わらなければ、画に描いた餅ではないかと。
今、働いていないみなさんが、環境が変わって、働き手になって経済が回るようになるのなら、大賛成です。
それで、所得が増えて、子どもさんが増えてと、いっちょあがりのようなこともいわれています。ついでに地方創生ですか。やってみなけりゃわからないのはわかります。
いやー、掛け声はすごいんですけどね。
女性が家庭を離れるということは、今まで、ダンナさんの分もやっていた「サービスの客体」の存在が、時間が拘束されて、市場に数的に少なくなるということだと思うんです。
平日昼間のスーパーマーケットに奥さんの姿は少なくなる。ライフスタイルの変更が起きます。
サービス提供主体がなんでも24時間化、機械化の動きになる。ワンストップサービスのありかたが議論されるようになる。誰が深夜まで働くのか?女性もでしょうね。
残業なしになって、みんなで就業しても、最終的なお金の受け渡しである小売などの業態は、レジ・カウンターに売り子も客もいなくなるようなことがおきるんじゃないかと。極端な話ですが。
そういう、消費の世界まで極論の話を広げないと、社会が変わるようなことがらなのに、あいかわらず、地方枠予算だなんだっていって、予算獲得競争やって、自治体に法定委任事務にして投げて、自治体はへきえき、市民は定員切れだの相変わらず行政に文句を言う。市民参加だの、予算使途のオンブズマンだのやってる。
相変わらずです。同じことが繰り返されるだけだと思います。根本を議論しないと。
これから、彼氏の配偶者になろうという人は、子どもを産んでも安心して預けられるので、どんどん社会に進出してください。都会でなくても地方にも職場や育児の場所を作ります・・・?
なんか、そんな夢物語のようなことが実現するのか、私は非常に疑問です。

投稿: でりしゃすぱんだ | 2014年10月11日 (土) 23時13分

でりしゃすぱんださん、さっそくコメントありがとうございました。

2時間の分科会でしたが、最後に記したとおり書き漏らした中に大事なキーワードや問題意識も多く含まれているのかも知れません。私自身の付け加えたい言葉として、子ども・子育て支援も成長戦略の中で語られがちな点があります。でりしゃすぱんださんのコメントを読ませていただき、そのような点についても一言補足させていただきました。

投稿: OTSU | 2014年10月12日 (日) 07時13分

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