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2014年4月 5日 (土)

新入職員の皆さんへ 2014

日頃、A4判両面の組合ニュースの紙面だけでは、とりまく情勢や詳しい解説などまで触れることができていません。定期大会や職場委員会での私からの挨拶も、なるべく簡潔に行なうように心がけています。そのような現状を補う意味合いから年に数回発行している機関紙『市職労報』を通し、課題や情勢を掘り下げた特集記事を私自身の記名原稿として掲載しています。今年3月に発行した特集「春闘期、情勢や諸課題について」は図表や写真も含め14頁、本文は1万字を超える分量でした。

このブログも組合員の皆さんに対し、そのような補完性を目的に続けています。そのため、時々「公務員のためいき」について組合員の皆さんに宣伝していました。それでも必ずしも皆さんがインターネットから閲覧されるとは限りませんので、紙媒体の『市職労報』にブログで取り上げた内容をそのまま掲げる時も珍しくありません。そのようなストックが豊富にあるため、400字詰め原稿用紙300枚に及ぶ『市職労報』の原稿も、締切まで1週間を切ってから数日で仕上げることができています。

私自身の省力化という面もありますが、やはりブログを通して訴えている内容は組合員の皆さんにも伝えたい、そのような思いからストックを積極的に活用していました。その逆もあり、組合の紙媒体に掲載した内容を後日、このブログに投稿するケースも少なくありません。組合員の皆さんに伝えた内容をネット上にも掲げ、不特定多数の方々にも広く訴えながら理解を求めていきたいという問題意識からでした。例えば「再び、地公法第36条と政治活動」「65歳までの雇用確立の第一歩」などがありました。

選挙にかかわる組合活動に対し、問題視される方がいます。しかし、法律違反やコンプライアンスに触れるようなことは一切行なっていません。指摘を受け、明らかに襟を正すべき点があれば襟を正していかなければなりません。一方で、問題のない事例であれば、法的な位置付けや実情などを説明し、内外に理解を求めていくことの大切さを感じています。さらに組合内に発信している内容とブログでの記事内容を使い分けるようなダブルスタンダードはあり得ず、コンプライアンスを意識した組合活動の実践とその活動に理解を求める試みに努めているつもりです。

さて、この4月に入職された新人の皆さんは11名です。フルタイム再任用制度の本格化、一つの保育園の民営化などの事情が重なり、例年に比べると3分の1程度の採用人数でした。金曜の夜、新人歓迎オリエンテーションと呼んでいる組合説明会を催しましたが、その時点で11名全員の組合加入が確認できました。説明会の冒頭、私から新人の皆さんに挨拶する機会がありました。前述したとおり委員長挨拶は長くても5分以内をいつも心がけているところですが、その会での持ち時間は10分程度割り当てられていました。

このブログで様々な内容の記事を投稿していますので、挨拶する時の題材に困ることがありません。ただ話を広げてしまい、時間オーバーとならないように定期大会などでの挨拶は事前に原稿を用意しています。今回、多少ゆとりがあるため、特に原稿は用意しませんでした。「そろそろ10分近くかな」と腕時計を目にした時点で、すでに2分超過、最後は急いで話をまとめていました。その後、説明に立った書記長も割り当てられた時間を大幅にオーバーしましたが、何とか全体を通して予定した1時間で終わることができました。

挨拶のための原稿は用意しませんでしたが、先ほど紹介した『市職労報』の特集記事の内容を中心に話を進めました。新入職員の皆さんに伝えたいこと、イコール不特定多数の皆さんにも伝えたいこと、これも前述したとおりの思いがあるため、このような記事の投稿に至りました。ブログを開設した翌年の4月に「新入職員の皆さんへ」という記事がありましたので、今回、「2014」を付けた記事タイトルとしました。原稿がなく、録音した訳でもありませんので、そのままの内容となりませんが、説明会で新入職員の皆さんに伝えた要旨を次のとおり青字で紹介させていただきます。

昨年の秋、若手組合員の方と懇談の場を持ちました。その中で最も多く示された言葉は「組合のことがよく分からない」というものでした。組合のことを少しでも分かってもらうため、年に数回、機関紙『市職労報』を発行しているのですが、残念ながら目を通してもらえていない現状でした。紙媒体の限界に留意し、今回発行した『市職労報』の特集記事のトップ見出しに「役に立たない組合はいらない」と掲げてみました。一歩間違うと大きな誤解を招き、組合をつぶそうと考えているような言葉です。

決してそうではなく、組合員の皆さんに「何だろう」と関心を持っていただくための見出しの付け方でした。私自身も組合員の皆さんに対し、まったく役に立てない組合であれば「いらない」と思います。しかし、いろいろ力不足な点もあろうかと思いますが、一定の役割を果たしていることを確信しているため、組合は必要という認識を持ち続けています。そもそも組合は、一人ひとりが働き続ける上で困った時に支え合い、皆で助け合うための役割を負っています。いざという時の安心のため、つまり「保険」のような側面があります。

中には組合加入を断る理由として「困ることはない」「困った時は自力で解決する」と話される方もいます。実際、大きな支障がなく、過ごせる場合も多いのかも知れません。それでも昔から「一人は皆のために、皆は一人のために」という組合を語る言葉があるように一人の力には限りがあることも確かです。特に労働条件を決める際は労使対等の原則が働きます。市役所の仕事において、一職員からすれば市長をはじめとした理事者の方々は「雲の上の存在」となります。

それが労使交渉の場では対等に物申すことができ、労使合意がなければ労働条件の問題は当局側の思惑で一方的に変更できないようになっています。このような原則のもとに労使交渉を積み重ね、現在の労働条件が築かれていることを機会あるごとに強調させていただいています。仮に経営者の思惑だけで労働条件が決められていった場合、昨今、問題視されている「ブラック企業」を生み出す土壌に繋がりかねません。直接的なメリットが感じられないからと言って、組合への加入者が激減するようであれば、組合の存続自体が危うくなります。

ぜひ、このような総論的な意味合いでの「組合は必要」という見方について、ご理解いただければ本当に幸いなことです。公務員をとりまく情勢がたいへん厳しい中、直接的なメリット、いわゆるプラスの成果にかかわる話は多くありません。しかし、個別課題においても組合員の皆さんの生活を守るため、いつも全力で労使協議を尽くしています。例えば国に準じた平均7.8%の地方公務員の給与削減問題において、組合の反発や自治体当局の自律的な判断のもとに3割以上の自治体が国からの要請を拒んでいました。

最近の労使交渉の事例として、当初、市当局は定数管理上の問題を考慮し、フルタイム勤務の再任用を希望した場合でも、職の数や業務経験によって短時間再任用となる場合があるという考え方を示していました。それに対し、組合は「年金と雇用の接続」という趣旨を踏まえた際、到底受け入れられない旨を訴え、本人の事情によって選択できる制度に改めさせました。休暇制度の見直し協議においては、リフレッシュ休暇が大幅に後退する提案内容でしたが、最終的に見送らせることができています。

一人の力が小さくても皆で力を合わせるという考え方は、組合間の関係でも当てはまります。職場内の交渉だけでは解決できない社会的・政治的な問題に対し、多くの組合が自治労や連合に結集することで大きな力を発揮しています。そのような目的のもとに連合は民主党との支持協力関係を築くなど、一定の政治活動にも力を注いでいます。そのため、様々な選挙において組合として推薦する候補者を決めることが多々あります。6月には市議会議員選挙があり、昨年11月の定期大会で組合の元委員長の推薦を決めています。

本来、労働組合に限らず組織とその構成員の関係で言えば、組織内の手続きを経て決めた方針には基本的に皆で認め合っていくことが必要です。ただ選挙にかかわる方針は組合員一人ひとりが自主的に判断すべき類いのものと考え、組合方針を押し付けていくような取り組みは極力控えなければなりません。そのため、組合員の皆さんに対し、組合が選挙にかかわる重要性などを丁寧に訴え続けることによって、ご理解やご協力を求めていくべきものと考えています。

選挙の取り組みをはじめ、組合の活動は「すべて組合員のため」を目的に位置付けられています。後ほど説明がありますが、全労済労働金庫の活動も「組合員のため」に進めています。それぞれ労働組合が出資して設立した歴史があり、営利を目的にせず、組合間の相互扶助のための組織となっています。組合の説明会にそれぞれの担当者をお呼びしているのも、このような経緯があることをご理解いただければ幸いです。いずれにしても組合活動は特定の誰かや団体のために行なっているものではなく、組合員全体で方針を決め、その目的は「すべて組合員のため」に繋がっていることをご理解くださるようよろしくお願いします。

1時間の説明会の後、会場を移動し、懇親会を催しました。途中、組合役員から新人の皆さんまで一人ひとり自己紹介を行なう時間があります。改めてマイクを持った際、このブログ「公務員のためいき」についてPRさせていただきました。もし新人の方が当ブログを訪れてくださった時、上記の文章が「あれっ、挨拶の時と少し違う」と思われるかも知れません。もちろん要旨は変わりませんが、やはりネット上であることを考慮し、プロフィール欄に記したような一定の基準のもとに具体的な固有名詞は伏せるようにしています。さらに『市職労報』の原稿などをベースにしているため、言い回しや例示の仕方などが若干異なることもご容赦()ください。

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コメント

せっかくのOTSUさんの、新人さんへのよびかけに「水を差す」かもしれません。

公務員は「公僕」であるがゆえに、仕事はけっこう苛烈です。
苛烈なゆえに、「公僕」であったとしても、労働者であることに変わりはありません。
公務員労働組合は、労働条件の改善や向上を目指すという基本的な目的があります。
したがって、労組に入らないということは、労働条件の改善や賃上げなどの運動を、労組に入っている人たちだけに任せて、タダ乗りしているのと同じことです。

労働組合が、ポリティカルな運動をしている歴史もあって、最近では、オープンな労組の場合、加入率が低くなっているのが現状です。
しかしながら、労組を組織していない職場(民間)では、「懇親会」と称し、実質、労働組合と同じようなことをやっている職場も多くあります。
そういった意味では、働いている職場の人たちの意見を採りいれなくては、「職場」というものは機能しないものだと感じています。

ポリティカルな部分に、忌避感を感じるかどうかはともかく、労働組合とは熾烈な「闘い」や、一方的な労働者側の我を通す場ではありません。
労使ともに切磋琢磨して、よい職場にしていきたいという意識は当たり前です。
もちろん、労使協調の組合もあれば、そうではない組合もあり、ひとえにくくることはできません。

このOTSUさんのブログでは、いろいろな意見が飛び交う中で、いろいろな矛盾点が浮き彫りになることもあります。
人間同士のことなので、矛盾点が出ないわけもなく、だからといって、ああだこうだ言えない部分もあります。
違うと思ったら違うと言う。そうだと思ったらそうだと言う。それは大切なことですが、裏付けとなる広い知識も必要となってきます。

法令遵守は当たり前、コンプライアンスが求められる昨今、公務員へ向けられる目は厳しいものがありますが、自分の意見が言えないようでは困ります。
新人の公務員のみなさんは広い知見をもってことに当たられますように、市民(当該地域の市民ではありませんが)としては願うばかりです。

老婆心ながら。ひとこと。

投稿: でりしゃすぱんだ | 2014年4月 6日 (日) 09時07分

でりしゃすぱんださん、コメントありがとうございました。

水を差すようなご意見だとは思っていません。そもそも多様な見方や識見に接することができる機会として、閲覧されている方の多くも貴重なことだと考えているはずです。なお、より良い職場、より良い行政をめざす気持ちは職員共通のものです。組合は組合としての立場や役割がありますが、どちらも大事であることを念頭に置きながら活動していることも一言補足させていただきます。

投稿: OTSU | 2014年4月 6日 (日) 22時14分

労働運動そのものが、カール・マルクスの思想から出てきたことであるために、ポリティカル(政治的)な要素を含まざるを得ないのは、ある意味、必然的です。

最近、資本論が見直されているようですね。どうも、あの本の日本語訳の単行本を読んでも、同じフレーズが何回も何回も執拗に出てきて、読み手として非常に混乱します。あの本を読みこなせる人を私は尊敬します。

若いころに資本論の解説書を読んで、思想を勉強したのですが、非常に難しい。でも、カール・マルクスがいなければ、休暇制度や労働者の意見を聞くということはなかったのかもしれません。日本は社会主義の国ではないですが、マルクス先生の残した思想っていうものは、あちこちに生きているものがあります。いまさらマル経の時代だとは思ってもいないですけどね。

若いころの、「原典に当たれ!」という意識は今でも残っていて、私のバックボーンになっています。極端に対立するものにも耳を傾けなければ、自分の意識を高めることは難しいので、あえてそうしているわけですが。

投稿: でりしゃすぱんだ | 2014年4月 6日 (日) 23時25分

でりしゃすぱんださん、コメントありがとうございました。

このコメントが1万件目となります。自分自身でその大きな節目を刻んでしまった訳ですが、新規記事は「コメント投稿数が1万件突破」という内容を予定しています。ぜひ、またご訪問いただければ幸いですのでよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2014年4月12日 (土) 21時07分

あくまでも私の職場における私個人の感覚的なものですが、若手職員が組合に求めるものもここ数年で以前とは変わってきたのではないでしょうか。

「労使交渉の結果、マイナス10の提案を組合の努力でマイナス5にしました」、「情勢を考えるとやむを得ないが、引き続き他の部分で福利厚生の充実を求めます」みたいな結果の積み重ねに対し、もっと待遇面での取り組みに集中してほしいという声を聞きます。

一方で、組合は政治的な部分や反戦平和には関わらないほうがよいという声もあります。今で言うと集団的自衛権ですが、そういうものに反対する組合の姿勢に不信感があるようです。また、公務員の待遇改善に理解のある政党・政治家を支援するような場合でも、そういうもの関係の主張が理由で支持したくないというようなこともあります。

今までと同じやり方、同じ主張でよいかどうかは、常に考えていかなければならないと思います。

投稿: SK | 2014年4月14日 (月) 05時55分

SKさん。
労使双方を経験している私からすると、使用者側から提案する場合、あらかじめ譲歩してもかまわないというような「キリシロ」を用意する場合があります。

組合には「キリシロ」を切ってもらって、納得させるようなことが、かなりの頻度で行われている。たぶん、公務員労組を含めてどこの労組も行われているのではないかと、推測します。

あくまでも、私の経験則に基づいたものなので、本当にそうなのかというとそうではないかもしれません。

使用者側からキリシロのない提案をすると、せめぎあいになってしまう。譲歩するという意味でのキリシロは残していて、使用者側から「ここ切っとくから」と土壇場で言わせ、組合側に譲歩したように見せかける。こういったテクニックも、現代の使用者側は持っています。

狐と狸の化かし合いといわれればそれまでなんですけどね。

投稿: でりしゃすぱんだ | 2014年4月15日 (火) 05時25分

SKさん、でりしゃすぱんださん、コメントありがとうございました。

SKさんのような問題意識を持つ組合員が多いことを充分理解しながら、その上で当ブログを続けているつもりです。でりしゃすぱんださんからの当局側のキリシロの話は、その通りの場合もあるのだろうと思います。一方で、ガチンコの交渉の結果、当局側が想定した幅を大きく改めさせた場合もあります。なお、新規記事は、たまさんのコメントに対応した内容を考えています。ぜひ、またご訪問いただければ幸いですので、よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2014年4月19日 (土) 21時39分

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