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2014年3月 1日 (土)

春闘の話、インデックスⅡ

季節は春闘の真っ只中ですので、今回は労働組合の役員が運営しているブログらしい題材を選びました。加えて、毎年『春闘期、情勢や諸課題について』という原稿を私どもの組合機関誌に寄稿しています。その原稿の入稿間際の週末とも重なり、少し省力化をはかった記事内容を考えています。これまで時々、「自治労の話、2012年夏」のように記事本文の中にインデックス(索引)代わりに関連した内容のバックナンバーを並べていました。

その発展形として「○○の話、インデックス」を始め、「平和の話、インデックス」「職務の話、インデックス」「原発の話、インデックス」「定期大会の話、インデックス」「年末の話、インデックス」「旗びらきの話、インデックス」「春闘の話、インデックス」「コメント欄の話、インデックス」「非正規雇用の話、インデックス」「定期大会の話、インデックスⅡ」「年末の話、インデックスⅡ」という記事が続いていました。同じカテゴリーの「インデックス」記事も2巡目となり、昨年のタイトルに「Ⅱ」を付け、今年の春闘に絡んだ話も付け加えさせていただきます。

公務員賃金は春闘期に決まるものではありませんが、私どもの組合も2月19日に市当局へ自治労都本部春闘統一要求書と臨時・非常勤等職員に関わる要求書を提出しています。重点指標は「賃金・労働条件の決定については、事前に協議をし、労使合意をはかる」などです。この時期、春闘要求の前進とともに来年度の職員配置数等に関わる労使協議を精力的に重ねていきます。

春闘全体の情勢として、5年ぶりに連合がベアを要求したことが話題になっていました。久しぶりのベア要求であり、笑い話ではなく「ベア、熊のこと?」と思い浮かべる方も増えているようです。賃金引き上げのことで、ベースアップの略ですが、「世代交代も進み、ベアの獲得はおろか要求したことすらない組合が多い」という労働組合の話も耳にしています。今春闘では1%以上の賃上げ要求を掲げ、各産別が交渉に臨んでいます。

ちなみに安倍首相が財界に賃上げ要請していたことも注目を集めていました。その一方で、経営者側の声を反映させた解雇ルールの見直しなどが進められているため、安倍首相が労働者本位の発想ではないことも明らかです。あくまでもデフレ脱却、消費マインドを高めるための方策だろうと思いますが、それはそれで各産別組合でベア要求が実現していければ歓迎すべき動きだったものと見ています。

このブログを長く続けている中で、「誰が」よりも「どのような内容を」という中味の重要性を強く意識するようになっています。要するに二項対立の発想で物事の是非を判断しないように心がけています。その上で、この時期に様々な労働法制の見直しが進められていますが、とても歓迎できる動きではありません。結果的に雇用の不安定化を増長させ、内需に支えられた安定した経済成長からは程遠くなってしまうような懸念を抱いています。連合の2013春季生活闘争方針の「はじめに」の冒頭にも次のとおり記されています。

日本社会は雇用労働者とその家族が国民の大勢を占める「雇用社会」と呼ばれ、働く者が安定的な雇用のもとで、安心して働くことが、日本経済・社会の健全な成長の基盤となってきた。しかしながら現状を見れば、雇用労働者の38.2%、2,043万人が非正規労働者であり、給与所得者の実に23.9%、1,100万人近くが年収200万円以下のいわゆるワーキング・プアと呼ばれる状態に置かれている。また、生活保護受給者は約216万人と依然として高止まりしている。これら傷んだ雇用と賃金、労働条件を是正せず、格差の拡大や貧困の問題を放置すれば、社会の不安定化と劣化は一層進むこととなる。すべての働くものの労働条件の改善に向けて、総力を挙げ取り組みを進めていく。

2月初めに開かれた自治労都本部の春闘討論集会では、日本労働弁護団全国常任幹事を務める弁護士の指宿昭一さんの講演を伺う機会がありました。指宿さんは「今までの労働法改悪よりもレベルの違う戦後最悪の改悪」と説明されていました。解雇規制緩和、労働時間規制緩和、派遣規制緩和が同時進行で検討され、「企業が世界で一番活動しやすい国」を作ることが目的化されています。すべてアベノミクスの3本目の矢「成長戦略」のために企図されている動きでした。

第1次安倍政権の時、ホワイトカラーエグゼンプションが世論の反発で導入を断念していました。「残業代ゼロ法案」とワンフレーズで批判されたことなどが敗因だったと当時推進した人たちは分析されていたそうです。その時の苦い経験を反省し、今回の一連の法改正は世間から騒がれないように注意しながら事を運んでいることを指宿さんは話されていました。そのため、指宿さんは講演の最後にアベノミクスの「成長戦略」イコール労働保護ルールの全面的緩和という問題点を広く国民に伝えられるかどうかが重要であると訴えていました。

残念なことに「国際的な競争力を高めるため」と言われ、労働者をコスト面からとらえる悪しき風潮が強まっています。このブログを始めた頃の記事「なぜ、労使対等なのか?」の中で、「国家としても国民の多数を占める労働者が豊かにならなければ、社会や経済の健全な発展ができないことに気付きました」と記しました。要するに数多くある労働法制は決して権力側の「お情け」で与えられているものではありません。それにもかかわらず、労働ダンピングが進み、大手の会社の一部も「ブラック企業」と見なされるような時代となっています。

連合は春闘期、このような労働者の保護ルールの改悪にも断固反対し、様々な取り組みを強めています。連合のホームページの中で動画も駆使し、問題点が分かりやすく説明されています。ますます省力化したブログ記事で恐縮ですが、最後に、そのサイトに掲げられた内容の一部をそのまま紹介し、今回の記事を終わらせていただきます。

いま、政府は、成長戦略の名のもとに、働く者の雇用をおびやかすような労働者保護ルールの改悪(=解雇ルールや労働時間ルールなどの緩和)を行おうとしています。職業を持つ人の9割が雇用労働者である「雇用社会日本」において、働く者の犠牲の上に成長戦略を描くことなど決して許されるものではありません。連合は、労働者保護を後退させ、格差社会を拡大させるこうした動きに、断固反対します!!

  • カネさえ払えばクビ切り自由化【解雇の金銭解決制度の導入】 いま、政府は、不当にクビにされた労働者が、裁判所に訴えて「解雇は無効!」との判決を勝ち取っても、その後会社がお金さえ払えば、結局労働者をクビにできる制度を導入しようとしています。
  • クビにしやすい正社員制度の普及【限定正社員】 いま、政府は、仕事内容や勤務地、労働時間などが限定された正社員、いわゆる「限定正社員」を増やすとともに、それに応じて、解雇ルールを見直そうとしています。
  • カロウシを増大させる懸念のある制度の導入【ホワイトカラー・イグゼンプション】 現在、「1日8時間、1週間40時間」といった労働時間に関するルールが設けられていますが、いま、政府は、一定年収以上の労働者を、その労働時間ルールの対象外にする制度を導入しようとしています。
  • ねらいは正社員ゼロ、“生涯”ハケンで“低賃金”のルール改正【派遣法の改悪】 いま、政府は、労働者派遣法のルールを全面的に見直し、派遣労働者は「“生涯”ハケンで“低賃金”」のままで働き続ける仕組みを導入しようとしています。

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コメント

世界情勢が色々と緊迫してきましたね。
日本の安全保障も岐路に立っているのかもしれません。

そろそろ最高裁で自衛隊が違憲かどうかはっきりしてほしいですね
自衛隊が違憲と判断されて解散されれば、OTSU氏を含む平和運動の方々は
さぞかし喜ばしいと思います。

それが不満に思う勢力は憲法を改正させて改めて国軍を保持するように
働きかけるのが王道でしょう。

解釈を変える変えないよりはよほど健全ではないでしょうか。
もし自衛隊が存在しない時に侵略されたら、その時は平和運動の方々が
まっさきに犠牲になって平和に命を捧げて下さい。本望でしょうから。

投稿: nagi | 2014年3月 4日 (火) 19時53分

平和フォーラムの全国活動者会議で共同代表の発言が興味深いですね。

>右翼の軍国主義者の安倍の靖国参拝、歴史認識の修正などについて、中国・韓国だけでなく、米国をはじめ国際的批判が拡大していること。

さすがにOTSU氏もフォローできないほどのレッテル貼りの中傷と言うしか
ありませんねえ。

しかし米軍基地の撤去運動をしてたり、米軍の活動を非難するわりには
安倍政権を批判するときは米国を持ち出すのはちょっと厚顔無恥では
ないでしょうか。

さらにおもしろいのは次の文言です。

>私たちの平和フォーラムは、総評・社会党の時代から、平和・民主主義・脱原発・憲法理念実現の全国組織として、中央・地方で大きな役割を果たしてきました。そして3.11以降その役割がますます重要となっています。私たちは、野党、民主党、社民党、立憲フォーラムと連携しています。労働団体も連合、全労協、その他とも連携する基盤があります。非共産党系平和人権団体の中でも多くの信頼を勝ち取り、期待もされています。

なるほどなるほど。55年体制を引きずってると言うよりは、
いまだにそれにしがみ付いている感じがしますね。
OTSU氏のように現実の状況を見据え、変革される方々も居れば
過去の遺物を大事にする方々もいるようです。

しかし、こうなると平和や脱原発を阻害してるのは、実は保守派ではなく
現実から乖離した主張を続ける方々の存在ではないでしょうか。

私はこの平和フォーラムの内容や運動をかなり長く観察しましたが
まったく平和にも脱原発にも寄与してるようには思えません。
OTSU氏の言葉を借りると、ひたすら二項対決を煽り、レッテル貼りの
誹謗中傷を行っているように見えます。

そして、シグ忘れ氏、でりしゃすぱんだ氏が指摘したように
ホームページでは悪意に溢れてるように見えます。
まあその指摘をOTSU氏はスルーされてましたが。

無意味な批判をしたいわけではありませんが、
平和活動にはまったく見えない不思議な団体ですね。

投稿: nagi | 2014年3月 5日 (水) 18時12分

いつも本文には関係ない話題ばかりですみません。

しかしウクライナ情勢はどうなるのか本当に注目してます。

困ったことにロシアの言い分のほうが筋が通ってるように
私は見えます。問題があったとしても民主主義社会において
政権交代は暴力で行うことは許されない。あくまでも選挙で行う。
つまり現在のウクライナ暫定政権は成立が認められない。少なくとも
当事者の大統領が存在するならば。まあ亡命してるので微妙ですが。
そして暫定政権が暴力で樹立した以上、クリミア共和国が暴力で
離脱しようとしても文句は言えないなあと。

欧州も人権、人道と言いつつ経済的利益を優先してるのが
見え見えなのでロシアと喧嘩はできませんねえ。
結局、ウクライナ国民が悲惨になるだけでしょう。

国際世論も国連も何も機能しない。大国の前には無意味ですね。

今のウクライナが未来の日本かもしれない。

まあ、平和主義者の方々が主張する「話し合い」の力を
見たいと思いますね。

投稿: nagi | 2014年3月 7日 (金) 16時05分

OTSUさん、こんばんは

今週はものすごく仕事が忙しかったのです。明日も仕事ですが、少し時間が出来たので書き込みしたいと思います。
今回の記事は「春闘」ですね。
以前だと、春闘の話題は、ベースアップの額とボーナスの率だったのですが、このところは雇用の確保というのが一番になっている感じがします。
これは、以前は「従業員の確保」が企業の大きな目的だったのでしょうけど、今ではそうではないんでしょうか。
労働組合としては、雇用の確保と賃金の向上は当然の目的なので、OTSUさんもご苦労だろうと思います。

さて、nagiさんの書き込みを見て、私も平和フォーラムの福山代表の挨拶を読んでみました。
私の平和フォーラムそのものについての評価はきっと、OTSUさんともnagiさんとも違うと思いますので、その点についてはまた機会があれば。
今回は、福山代表の挨拶を読んで気になったことを書いてみたいと思います。

1点目 安倍首相のことを「安倍」と呼び捨てにしていること。
例え、闘う相手であっても、仮にも一国の総理大臣を呼び捨てにするのは賛成できません。
闘う時でも礼儀を忘れないのが日本人ではなかったかなぁと思いました。

2点目 挨拶の中に
>しかし安倍にも弱点はあります。原発再稼働、沖縄への新基地建設の押しつけ、集団的自衛権行使の合憲化、靖国参拝など個別の政策が支持をされていないこと

とありました。
列挙されている事項については、それぞれ賛否が分かれているという気がしています。
それを、単に「支持されていない」と分析しているところに引っかかりました。
支持されていないなら、政権を担えないのでは?
きちんと分析して、どこをどう攻めていけばいいのか、自分たちの力不足を認識することも重要なのでは?
と思いました。

上に掲げた4点については、私なりの考えもあります。きっと、OTSUさんとも安倍首相とも異なります。
長くなるので、機会があればまた書き込みたいと思います。

では、おやすみなさい
花粉症などにお気をつけてくださいね

投稿: 地球人 | 2014年3月 8日 (土) 01時20分

nagiさん、地球人さん、コメントありがとうございました。

平和フォーラムのホームページに対し、nagiさんからは「悪意に溢れてるように見えます」と指摘を受けました。意図的にスルーしている訳ではありませんが、たいへん恐縮ながら逐次対応してきていないことも確かです。このブログを通し、「平和」に関する内容を数多く綴っていますが、平和フォーラムの運動や情報発信に関する個々のあり方については、私自身の問題意識と必ずしも一致していないことはご理解いただけているものと思っています。特に地球人さんからも指摘いただきましたが、私自身の責任で綴るブログ記事本文で首相を呼び捨てにするようなことは考えられません。機会を見つけて、このような点に関しては地域の平和フォーラム関係者の方々には指摘していこうと考えています。

一方で、平和の築き方、平和への希求の仕方、本当に悩ましく、難しいことを痛感しています。新規記事ではウクライナの情勢等にも少し触れながら、いろいろ思うことを書き進めてみるつもりです。土曜の夜のうちに更新する予定ですが、ぜひ、またご訪問いただければ幸いですので、よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2014年3月 8日 (土) 09時24分

管理人さん

まさに、管理人さんが日々求めている事なのではないでしょうか。
非難や批判の意見はいいが、その中にも一線を越えない配慮は必要である・・・と。

平和フォーラムがどうこう、正直私には興味ありません。
思想や主義は保証されている国なのですから、どんな意見を主張されてもいいのです。

その点については、管理人さんも感じることがあったようで、安心しました。
そういう地道な行動や姿勢の積み重ねが、信頼や信用を得ていくのだと思います。

国は賃金引き下げ要求に応じなかった自治体へ、補助金を減額させるという暴挙に出ようとしているようです。
信義の無い要求には、私も応じようとは思えません。

もちろん、労働条件の向上を目指すべき、それは組合の大前提であるのは変わりません。
その上で、この先、この国が健全であるためにどうしても行わなければならないことがあるなら、正当な労働に対する評価を行った上で、しっかり根拠を示しながら説明責任を果たして、組合と真摯に交渉をする。

少なくとも、春闘の場ではそういう折衝が行われて欲しいと願います。

投稿: 下っ端 | 2014年3月 8日 (土) 11時57分

下っ端さん、コメントありがとうございました。

自治労や平和フォーラムの基本的な方針に賛成している立場ですが、個々の点については100%イコールという関係性ではありません。個人的な問題意識等は当ブログを通して綴っているとおりです。これから「ウクライナの問題から思うこと」という新規記事を投稿する予定です。やはり個人的な思いをいろいろ書き込んでいます。その思いが正しいのかどうか、その評価は個々人の見方によって分かれていくのでしょうが、それぞれの主張や意見を自由に発言できる貴重さや意義を感じ合っていければ幸いなことだと考えています。

投稿: OTSU | 2014年3月 8日 (土) 22時25分

下っ端さん。
ラスパイレス指数ですか。日本は横並びが好きですからね。
人事院の言うことが正当で、地方公共団体の人事委員会・公平委員会が間違っているなんていうことは、私は決して思わないです。
資産価値以上の赤字を垂れ流している地公体なら、まぁ、少し人件費を抑えなさいよと総務省(旧自治省)が言い出すのも分かりますけれども、給与がよければいい人材が集まってくるのは、競争原理から見ればアタリマエなので、地公体が無理して給与水準を上げているのでなければ、別にラスパイレス指数が高くったってかまうこっちゃないと思います。
下っ端さんの言うとおり、労働(≒拘束時間)に対する正当な対価としての支払いが給与であるわけなので、この辺りは、ラスパイレス指数がいつも正しいんだということは言えないと思います。
あたかも、地方公務員が給与が多くて、国家公務員が冷や飯食っているような印象を与えてしまっているので、実際のところ、単純作業ではない、苛烈な仕事の割には、薄給だという思いがあります。
いや、給与なんかどうでもいいから、拘束時間が長くて早くウチに返してほしい・・・緊急時には無理やり職場に呼び出されたり、居残されたり、下手に旅行もできないほどなので、その辺の事情は、普通の労働とはちょっと違うと思うのですが。
このへんは労組さんのがんばりどころではあると思います。

投稿: でりしゃすぱんだ | 2014年3月 9日 (日) 09時36分

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