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2013年11月 3日 (日)

労働組合の役割

日本シリーズ第6戦、2点リードした時点で楽天が初めての日本一に輝くことを疑いませんでした。それが昨年8月19日の西武戦以来、無敗だった田中将大投手が巨人打線につかまり、4対2、予想外の逆転負けを喫しました。それでも最終回、高橋由伸選手から空振り三振を奪った160球目が152キロの速球、味方の逆転を信じながら9回を投げ抜いた田中投手の凄さはやはり際立っていました。

物心がついた頃は、巨人が日本一になることを当たり前だと考えていた時代でした。『巨人の星』や『侍ジャイアンツ』という人気漫画にも囲まれ、東京に暮らしながらアンチ巨人になる子どもは極めて少数派だったようです。私自身もご多分にもれず、巨人の9連覇に胸を躍らせた多数派の子どもの一人でした。いつの頃からか熱烈な巨人ファンではなくなり、ライオンズが所沢に来てからは西武ファンとなり、どちらかと言えば今ではアンチ巨人であり、日本シリーズでは迷わず楽天を応援していました。

さて、週1回の更新のため、取り上げたい題材探しには苦労しません。今、注視している問題で考えれば特定秘密保護法案ですが、 私どもの組合の定期大会を間近に控えているため、今回の記事では労働組合の役割について取り上げてみます。実は前回記事「引き続き執行委員長に立候補」のコメント欄で、でもどりさんから下記のようなご意見が寄せられていました。短い文章の中に大事な論点や問題提起が含まれ、私自身が当ブログの記事本文を通して綴ろうと考えていた内容に繋がっていく論点だと言えました。

実際問題として、組合が弱体化したことによって市民の利便性が向上した場合があるのは事実です(もちろん不便になった場合もあるでしょうが)。やはり組合は、組合員のための組織で、市民との利害の対立があるのはむしろ当然と考えた方が自然です。一市民としてはそのような組織の存在を容認(支持とは別)する度量が必要なのかなとも思います。

このコメントを受け、ちょうど1年前の記事「衆議院解散、今、思うこと」の中で、お答えした内容を思い出しました。その時は「組合員のため」と述べた途端、市民のことを蔑ろにしているような言われ方をされたため、下記のような考え方を私から訴えさせていただきました。同じ趣旨での提起だと言えますが、でもどりさんからのコメントには労働組合の役割を容認する姿勢が感じられるため、前述したとおり大事な論点として率直に受けとめながら思いを巡らす機会に繋げられています。

組合活動が「組合員のため」を目的にしていることは当たり前な話ですが、「市民のためではなく」という論理展開への違和感について補足しなければなりません。財源というパイの分配で考えた際、組合員の賃金水準を下げれば直接的な市民サービスに繋がる予算に回せることも確かです。だからと言って、「組合員のため」を目的とした賃金交渉に臨む際、市民サービスの低下を「是」とするような考え方を抱いている訳がありません。限られた財源の中で間接的に影響し合っていることも頭から否定しませんが、組合は組合としての役割や責任を全うすることが第一に求められています。

このような意義については「泥臭い民主主義」という記事の中で、「多元主義」的な民主主義の一つである労使交渉の重要性を訴えていました。いずれにしても組合役員が「組合員のため」と述べた途端、市民のことを蔑ろにしているような言われ方には強い違和感があります。高齢者に対する施策を重視すれば、現役世代にしわ寄せが行くような構図に関しても、いたずらに高齢者対現役世代という対立構造をあおるような風潮は好ましくありません。労働組合の要求が非常識なものであれば実現できないだけの話であり、社会的富の公平分配のあり方も適切な水準やバランスを常に模索していくべき課題だろうと考えています。

一昔前、組合加入率がほぼ100%、組合役員に欠員が生じることは考えられず、何か事があるたびに多くの組合員を動員でき、組合員の不利益になる当局提案を拒み続けられる組合が多かったはずです。そのような時代と比べれば、私どもの組合をはじめ、自治労に所属する組合の大半は「弱体化」しています。かつて昼窓すら拒んでいた強い組合の時代では、確かに市民の利便性を後回しにしていたと言われても強く反論できません。

しかし、組合が「弱体化」したから、住民サービスが拡充できた、このような見方も短絡的すぎるものと思っています。そのような関係性が稀にあることも否定しませんが、社会全体の変化のもとに公務職場も変化してきたものと考えています。コンビニエンスストアなどが存在していなかった時代であれば、一斉休憩の原則を訴えやすかったはずです。逆に組合が強かろうと弱かろうと、社会情勢の変化には的確に対応していく必要があります。

そのことを見誤ると痛烈な批判にさらされることになります。農水省の「ヤミ専従」問題では、 農水省当局が「霞が関最強組合」に配慮し、見直せないままだったという話を耳にしていました。社会保険庁における労使関係も同じような構図があり、組合側が圧倒的に強く、当局側としては改めたいと考えている問題でも提案できず、結果的に様々な「既得権」が温存されてきたという話も耳にしていました。

最近ではJR北海道の事故が多発している問題で、労使関係の実態などが『AERA10月14日号の中で取り上げられていました。もともと収益の上がらない地域の鉄道事業という背景があり、必要以上に労使関係を批判することは問題視しなければなりません。それでもアルコール検知器の使用を拒む組合側の姿勢にも疑問が残り、労使の力関係にバランスが取れていない事例の一つに数えられてしまうのではないでしょうか。ちなみに『AERA』の記事には次のような記述も掲げられていました。

あえて単純化すれば、2005年に起きたJR西日本の福知山線脱線事故では、運転士への「日勤教育」など行き過ぎた会社管理が問題になり、今回のJR北海道の問題では、強すぎる労働組合の存在が指摘されている。ここに大きな性格の違いがあるといっていいだろう。

話を広げながら、言葉が不足する記事内容にとどまるのかも知れません。いずれにしても労働組合の役割は労使交渉を通し、組合員の労働条件の維持向上に努めることです。さらに使用者側の行き過ぎた行為をチェックし、是正を求める役割を労働組合は担っています。経営者に対し、労働者一人の発言力は弱くても、労働組合に結集することで対等な力を持ち得ます。この力は法的にも裏付けされているものであり、労働条件は経営者側の思惑だけで決められないようになっています。

この大事な労使関係において一方が強すぎても、前述したような問題が生じがちとなり、お互いの力が均衡していなければなりません。最後に、連合総研の調査結果を報じた東京新聞の記事を紹介しますが、経営者側の力が突出している場合、「ブラック企業」を生み出す土壌に繋がりがちです。中にはしっかりした労働組合がある会社で、そのように組合員から意識されている可能性も否めません。私どもの労使関係においては、どちらかに偏ることもなく、対等な力関係を維持できているものと思っていますが、組合役員だけが「そのように思っている」という構図にならないよう今後も頑張っていくつもりです。

連合のシンクタンク、連合総研が民間企業で働く二千人を対象に実施したアンケートで、二十代の23・5%、三十代の20・8%が、自分の勤務先が長時間労働や残業代不払いなど違法な働かせ方で若者を使い捨てにする「ブラック企業」に当たると考えているとの結果が出た。ブラック企業が社会問題となる中、四~五人に一人の若者が勤務先への不信感や職場環境に不安を抱いている実態が数字で裏付けられた。厚生労働省は労働基準法違反などがないか、全国の約四千社を調査している。アンケートは調査会社に委託。十月一~六日、インターネットを通じて首都圏と関西圏に住む二十~六十代前半の勤労者に聞いた。勤務先をブラック企業と考える四十代は15・4%、五十代は11・2%、六十代前半は9・0%だった。

結果によると、「勤務先で過去一年間に残業代の未払いがある」と答えたのは全体の19・3%。「有給休暇を申請しても取得できない」との回答も14・4%あり、職場に労働法違反の状態があると感じている人が多い。職場に「仕事で心身の健康を害した人がいる」と答えた人は35・6%、「日常的に長時間労働」が30・6%、「短期間で辞める人が多い」が26・9%だった。連合総研の担当者は「多くの職場で違法な働かせ方がはびこり、特に若い世代の正社員で不満を持つ人が多い」と話している。【東京新聞2013年11月1日

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コメント

上記の論調が、公務員から出る時に
一般市民としては、なんか違和感感じる。

公務員も油断をすれば、たちまちブラック企業になって
しまうとでも言いたげだ。

ブラック企業の響きで一般市民の不安をあおり、
同調をあおり、
自分らの存在を正当化させたい印象操作。

OTSU氏は、どうだか知らないが
私の友人や知り合い公務員のなかには
「今日はなあにしていいかわからん時がよくある。」って正直に
言う人もいることは事実だ。地方の公務員なんてそんなもんだ。

個人的には生ぬるいって思ってる公務員もいるだろう。
それでも、黙ってた方がまあうまくいくからだろう。

公務員の日々にげんなりしている人のため息ってのは
聞いてみたい気がする。ここじゃ、無理ですかね

投稿: rururu | 2013年11月 3日 (日) 21時16分

rururuさん、コメントありがとうございました。

民間や公務職場にかかわらず「ブラック」は論外であり、そのためにも労働組合としての必要な力は維持すべきものと考えています。ことさら「印象操作」している意識はありませんが、大事な論点ですので機会があれば改めて記事本文を通して掘り下げていくつもりです。

投稿: OTSU | 2013年11月 3日 (日) 22時16分

久しぶりにOTSU氏に質問したいと思います。

本文はなかなか興味深い内容ですね。

>いずれにしても労働組合の役割は労使交渉を通し、組合員の労働条件の維持向上に努めることです。さらに使用者側の行き過ぎた行為をチェックし、是正を求める役割を労働組合は担っています。

私もその通りだと思うのですが、仮に労働組合の行き過ぎた行為をチェックし、
是正を求める役割はだれが担ってるのでしょうか?
使用者側はそれをすることができないと思うのです。
では、だれが労働組合が暴走した場合、あるいは行き過ぎた行為の
チェックを行うのでしょうか。それを教えて下さい。

投稿: nagi | 2013年11月 7日 (木) 18時01分

最近、ようやく表ざたになりつつある再雇用職員の評判の悪さ?について。

まわりの職員の迷惑かつモチベーションを下げまくりだそうですが。
(もちろんそうでない立派な方もいらっしゃるのでしょうが)
公務員は再任用っていうんですね。

制度は仕方ないとしても、現場の内実は、そのねえ…。

そこあたりの現実を労働組合としては、どう考えていらっしゃるのでしょうか。


投稿: ダリ | 2013年11月 7日 (木) 20時47分

nagiさん、ダリさん、コメントありがとうございました。

nagiさん、お久しぶりです。労働組合に行き過ぎた行為があれぱ、まず使用者側が是正を求めるのではないでしょうか。さらに労使交渉で収拾できない場合、第三者機関である労働委員会に委ね、問題によっては司法の場に持ち込まれることもあり得ます。加えて、労働組合の暴走が顕著であれば、所属している組合員が声を上げ、軌道修正をはかるような自浄能力も期待したいものです。

「再雇用職員の評判の悪さ」に関してですが、現役を退いたと考え、中には力を抜きがちとなる職員がいるのだろうと思います。ただ最近は定年制延長に代わる再任用制度の活用という背景があり、現役と同じ役割と責任が求められています。そのような中、定年後に新しい仕事を懸命に取り組んでいる再任用の方々が多いという印象を私自身は持っています。

投稿: OTSU | 2013年11月 9日 (土) 20時54分

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