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2013年11月30日 (土)

猪瀬都知事の5千万円

出勤途中、歩行者用の信号が赤にもかかわらず、横断歩道を悠然と渡る方の姿を目にする時があります。四車線の道路ですが、時々、横断歩道や信号のない所を横切る方の姿も目にしています。車の交通量が少ないため、そのようなルール無視が目立っているようです。ふと頭の中で思い比べてみましたが、前者と後者、どちらがより重い罰則を受けるのでしょうか。どちらもNGであることには間違いありませんが…? 

さて、猪瀬直樹東京都知事が昨年末、徳洲会グループから5千万円を「借用」したという問題が取り沙汰されています。借用証を示した釈明会見も開かれましたが、その説明に納得された方は皆無に近いのではないでしょうか。当初、借用証があるかどうか明確に答えられなかったのにもかかわらず、一転して原本の公開に至った唐突さに疑念が生じ、そもそも借用証自体が下記の報道の通り突っ込み所満載なレベルでした。

人口1300万人を抱える自治体のトップが、小学生レベルの借用書を書いていた!! 猪瀬直樹東京都知事(67)が26日に緊急記者会見を開き、問題の 「借用証」を公開した。昨年12月の都知事選前に徳洲会グループから受け取った現金5000万円の借用証で、猪瀬知事は「個人の借入金」と改めて主張した。だが、問題の借用証は、あまりにシンプルで「いつ作ったんだよ?」なんてツッコミが入りそう。専門家は「これでは貸す側がバカにされそう」と話した。

猪瀬氏は借入金問題の責任について「身を粉にしても仕事をきちっとやることが償いかと思っている」と述べ、辞職の意思がないことを明らかにした。借り入れは無利息、無担保だったが、金利相当分の支払いを検討すると述べた。本人の説明によると、昨年11月6日、医療法人徳洲会前理事長で元衆院議員の徳田虎雄氏(75)に都知事選出馬の可能性を伝え、息子の徳田毅衆院議員 (42)を通じて同20日に議員会館で5000万円を受領。毅氏宛ての借用証が用意されており、署名し金額を書き入れた。今年9月26日、猪瀬氏の秘書が都内ホテルで全額を毅氏の母親に返済。

その後に借用証が事務所に郵送され、スタッフが知事名義の貸金庫に入れた。自身は11月25日朝、借用証の存在を確認した。猪瀬氏が公開した借用証をめぐって、疑念が持たれているのは作成された時期だ。猪瀬氏は当初、借用書の存在を否定し、22日の会見で一転、存在を認め 「“借用書”を書いた」と前言を翻した。だが、この日の会見で公開した「借用証」のタイトル文字は、ワープロで先に印字されたものだった。押印もなく、金額と名前、住所だけが書かれており、会見で「最近作られたものでは?」との疑念が持たれたのも当然だ。

日本筆跡鑑定人協会会長で、公文書の真贋問題に精通する根本寛氏はこう語る。「契約書や遺言書など毎日、多くを見ているが、名前と住所しか書いていない、こんなあっさりとした借用証は見たことがない。これで5000万円もの大金が動いたとは驚きです」借用証が書かれた時期を特定することは可能なのか?根本氏は「書かれた文字のインクや紙などを調べても、科学的な裏づけはほとんどとれない。この1年間で時期を特定するのは非常に難しく、警察の科学鑑定でも対応できない。その意味で時期をめぐる真贋論争はできない」と指摘する。

印鑑なし、返済期限なし、利息に関する文言もなし、貸した人間の署名もなし。こんな借用証が通用するのか。詐欺事情に詳しい本人訴訟コンサルタントの野島茂朗氏は「通用しなくはないです。返金を請求して一定期間以内に返せば問題はありません。ただ、一般的にはこの借用証では、貸す側がバカだというものです。これでは、返さなくてもいいということに近い消費貸借契約になりますから、実質、贈与となります」と解説する。借りた金額は円マークもなく洋数字。これなら数字を加えたり、金額を偽造できてしまう。「一般常識的にはそうですが、漢字表記が定められているわけではありません」(同)

印鑑がないことについても、自筆であれば印鑑は必要ない。印紙がないが、高額取引でも印紙を貼らないことはあり、税務署にバレたら追徴課税される可能性があるというだけだ。民法は利息について、別段の意思表示がない場合は利率を年5%と定めている。無利息・無担保で5000万円を9か月借りたということは、利息分の利益供与になりかねないが「貸した側が主張しなければ利息は問題ありません」と野島氏。

この借用証は有効ではあるが、報道されたことで、世間に悪影響も及ぼしかねない。「債権を偽装する借用証を三文判で作ったり、筆跡を偽装したりする架空請求が横行している。こんな小学生でも作れそうな借用証なんて、ヤミ金の偽装架空請求よりも低レベル」と野島氏。こんな借用書が通用するなら、世の中は脱税贈与や詐欺だらけになりかねない。【Yahoo!ニュース2013年11月28日

記者会見の翌日、連合三多摩ブロック地協主催の「推薦議員懇談会」が開かれ、地区協の役員を務めている私も出席していました。前衆議院議員6名、都議会議員12名(前職含む)、市町議会議員21名が出席し、連合三多摩と各地区協役員との懇談の場でした。三多摩地域から選出されている民主党の都議会議員ほぼ全員が顔を出されていたようです。政策制度全般にかかわる懇談の場でしたが、時節柄、猪瀬都知事の問題も都議会議員側から話題の一つに上げられていました。

問題が発覚後、共産党都議団からは百条委員会の設置が求められています。百条委員会とは地方自治法第100条に基づき議会が設置する特別委員会で、証人喚問で偽証すれば禁固刑が科せられるなど強力な調査権限を持っています。都議会民主党としては、法的な問題の有無が曖昧な段階であるため、設置するかどうかはもう少し見極めたいという考えでした。自民党をはじめ、他の会派も現時点では「時期尚早」と判断しているようです。また、阿部知子衆議院議員も徳洲会グループから300万円借り入れていたことが下記の報道の通り明らかになっています。

無所属の阿部知子衆院議員(比例南関東)が昨年の衆院選直前、徳洲会グループの徳田虎雄前理事長から300万円を借り入れていたことが、神奈川県選挙管理委員会が27日公表した政治資金収支報告書で分かった。阿部氏の事務所によると、阿部氏は衆院解散当日の昨年11月16日、徳洲会の湘南鎌倉総合病院(同県鎌倉市)で入院中の徳田氏に会い、その場で現金で借りたという。阿部氏の秘書は「前日に社民党を離党していて金が必要との認識もあり、1年以内に返すつもりで選挙資金として借りた。

徳田氏とは長年の信頼関係があり、借用書は作っていない。実際には選挙運動には使っていない」と話した。300万円は今年10月8日付で2%の金利を付けて徳田氏に返却したという。阿部氏は小児科医で現在、湘南鎌倉総合病院の非常勤医師を務める。昨年の衆院選直前に社民党を離党し、日本未来の党から神奈川12区で立候補して比例で復活当選した。【毎日新聞2013年11月27日

上記のような事例の報道が続くことも見込まれるため、連合三多摩の懇談会の場では、猪瀬都知事の5千万円の問題が今後、どのような広がりを見せるのか見定めた上で都議会民主党としての対応をしっかり固めたいという説明も加えられていました。私自身の早とちりだったのかも知れませんが、猪瀬都知事の問題に対する都議会民主党の追及する姿勢が少し消極的であるような印象を受けていました。そのため、意見交換の際、たいへん僭越ながら私から次のような趣旨の訴えをさせていただきました。

相手方を追及した際、攻める側も同じような問題を抱えていた場合、「ブーメラン」という言葉で非難される時があります。そのような事態を避けるため、確かに慎重になることも必要です。しかし、だからと言って今回の猪瀬都知事に対する追及をためらう理由にはなりません。仮に民主党の議員に対しても徳洲会グループから資金提供があり、収支報告等がされていなかった場合、すみやかに個々の議員それぞれが修正すべき話に過ぎません。

現時点で猪瀬都知事の行為が法的に問題があるかどうか分かりません。百条委員会の設置も都議会の各会派が判断すべきことだろうと思っています。しかし、徳洲会グループから借りた5千万円の真相が不明瞭なまま終わるようでは大きな問題だと考えています。万が一、都議会民主党がその追及に積極的ではなかったと見られるようであれば、二度と民主党は立ち上がれなくなってしまうのではないでしょうか。

私自身も地方公務員ですが、違法かどうか以前の問題としてコンプライアンスの面から猪瀬都知事の行為は許されないはずです。近年のコンプライアンスは、単に法令等の規定に違反しないという消極的な意味にとどめず、より積極的に法令等の背景にある精神や時代の価値観まで遵守し、実践していくことが求められています。極端な例として、私どもの市では利害関係者からコーヒー一杯、カレンダー一つ、受け取らないように心がけています。

選挙資金だったかどうか関係ありません。借りた時点で、猪瀬都知事は都職員のナンバー2である副知事だった訳です。猪瀬都知事は「知らなかった」と話していますが、都内の徳洲会グループの施設に対し、都の補助金が7億円以上支出されていました。いずれにしても5千万円もの多額な資金が無利息・無担保で渡され、全額返したとは言え、実際には200万円以上の利息分が便宜供与されたことになります。そもそも都の指針に照らし、利害関係者から5千万円を借りたという事実だけで、すでにNGであることには間違いありません。

ブログの記事を書き込むにあたり、後ほど調べた数字等を加えていますが、推薦議員懇談会の場で以上のような発言を行なっていました。その上で、都議会民主党の皆さんに対し、ぜひ、この問題の徹底解明に努めて欲しいと訴えさせていただきました。組織のモラルハザードを起こさないためにも、ひいては猪瀬都知事のためにも、引き際を見誤らせないよう進言すべき必要性について付け加えさせていただきました。

金曜から都議会が始まり、猪瀬都知事は所信表明で改めて個人の借り入れだったことを強調し、辞任の考えがないことを明らかにしています。それに対し、読売新聞の社説では「都の一般職員が、職務上の利害関係がある業者から借金をすれば、懲戒処分の対象になる。都政全般に職務権限が及ぶ知事や副知事が、一般職員以上に襟を正さねばならないのは当然である」と記されていました。また、都幹部が「知事は謝罪するだけで充分と思っているのか」と首をひねっていたという記事も載っていました。

最後に、日を追うごとに徳洲会グループから政治家に対する資金提供の広がりが分かってきました。下記のよう新聞記事の他に「徳洲会に“世話”になった知事たち」という報道もあり、千葉県の森田健作知事らも徳洲会グループから支援を受けていたことが明らかになっています。それらの事例すべてが問題あるとは思っていませんが、戦々恐々している政治家の皆さんも多いのかも知れません。

公職選挙法違反容疑で幹部6人が逮捕された医療法人「徳洲会」グループと、創設者の徳田虎雄前理事長(75)の次男・毅(たけし)衆院議員(42)=自民党を離党、鹿児島2区=の政治団体が2012年、少なくとも国会議員97人の政治団体に献金やパーティー券購入、貸付金の形で計1282万円を提供していた。政治資金収支報告書の分析でわかった。 97人中、自民議員が93人だった。虎雄前理事長は昨年の衆院選で「徳田派をつくって自民党を乗っ取る」と周囲に伝えたとされており、政界への影響力を強めたい徳洲会側が、医療事業による収益を政界に幅広く投入していた構図がうかがえる。

毅氏の資金管理団体「徳田毅政経研究会」は、計94議員の政治団体に寄付やパーティー券購入で計432万円分を提供した。自民党が多く、石破茂・党幹事長の資金管理団体から12万円分、田村憲久厚生労働相の政治団体から2万円分のパーティー券を購入。毅氏が代表だった「自民党鹿児島県第2選挙区支部」は、2人の自民党衆院議員の団体に各100万円を寄付した。提供先は、グループの病院が多い九州や関東を地盤とする議員が目立つ。【朝日新聞2013年11月30日

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コメント

猪瀬前知事は5000万円について、なにに使うつもりなのか、お話しにはなりませんでした。
ただ、「借りた」という事実を示しただけでは、首長としていかがなものかと思われてしまったのは必然です。
利害関係者との癒着と思われてしまっても、しかたのなかったことですし、一般職員であっても、そういうつきあいはしないのが普通です。
まあ、刑事・民事になった際、どういう司法判断になるのかは、あまり憶測報道されていませんが、気になるところではあります。
国家公務員の地方赴任の際、引越し費用を利害関係のある企業に依頼し、通常料金よりも割り引いて料金を支払ったとして、刑事裁判になった例がありましたが、職員側勝訴の判例があります。裁判次第では猪瀬氏が倫理的にはともかく、法的には「限りなく黒に近いグレーだから、シロ」ということもありえるでしょうね。
普通地方公共団体の首長の権限は広く強烈なんです。議会は独立機関でなく、首長制をとっている日本の地方自治制度では、首長が暴走すると止まらない傾向もあります。
今度の知事選後では、ぜひ、議会がヒステリックに追求するだけではなく、もっと理論的にやってほしいものだと思いますし、職員さんからすれば、のびのびと仕事が楽しく施策実行できるような人を歓迎するのかなあという気がしてなりません。

投稿: でりしゃすぱんだ | 2014年1月14日 (火) 23時09分

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