« 2013年10月 | トップページ | 2013年12月 »

2013年11月30日 (土)

猪瀬都知事の5千万円

出勤途中、歩行者用の信号が赤にもかかわらず、横断歩道を悠然と渡る方の姿を目にする時があります。四車線の道路ですが、時々、横断歩道や信号のない所を横切る方の姿も目にしています。車の交通量が少ないため、そのようなルール無視が目立っているようです。ふと頭の中で思い比べてみましたが、前者と後者、どちらがより重い罰則を受けるのでしょうか。どちらもNGであることには間違いありませんが…? 

さて、猪瀬直樹東京都知事が昨年末、徳洲会グループから5千万円を「借用」したという問題が取り沙汰されています。借用証を示した釈明会見も開かれましたが、その説明に納得された方は皆無に近いのではないでしょうか。当初、借用証があるかどうか明確に答えられなかったのにもかかわらず、一転して原本の公開に至った唐突さに疑念が生じ、そもそも借用証自体が下記の報道の通り突っ込み所満載なレベルでした。

人口1300万人を抱える自治体のトップが、小学生レベルの借用書を書いていた!! 猪瀬直樹東京都知事(67)が26日に緊急記者会見を開き、問題の 「借用証」を公開した。昨年12月の都知事選前に徳洲会グループから受け取った現金5000万円の借用証で、猪瀬知事は「個人の借入金」と改めて主張した。だが、問題の借用証は、あまりにシンプルで「いつ作ったんだよ?」なんてツッコミが入りそう。専門家は「これでは貸す側がバカにされそう」と話した。

猪瀬氏は借入金問題の責任について「身を粉にしても仕事をきちっとやることが償いかと思っている」と述べ、辞職の意思がないことを明らかにした。借り入れは無利息、無担保だったが、金利相当分の支払いを検討すると述べた。本人の説明によると、昨年11月6日、医療法人徳洲会前理事長で元衆院議員の徳田虎雄氏(75)に都知事選出馬の可能性を伝え、息子の徳田毅衆院議員 (42)を通じて同20日に議員会館で5000万円を受領。毅氏宛ての借用証が用意されており、署名し金額を書き入れた。今年9月26日、猪瀬氏の秘書が都内ホテルで全額を毅氏の母親に返済。

その後に借用証が事務所に郵送され、スタッフが知事名義の貸金庫に入れた。自身は11月25日朝、借用証の存在を確認した。猪瀬氏が公開した借用証をめぐって、疑念が持たれているのは作成された時期だ。猪瀬氏は当初、借用書の存在を否定し、22日の会見で一転、存在を認め 「“借用書”を書いた」と前言を翻した。だが、この日の会見で公開した「借用証」のタイトル文字は、ワープロで先に印字されたものだった。押印もなく、金額と名前、住所だけが書かれており、会見で「最近作られたものでは?」との疑念が持たれたのも当然だ。

日本筆跡鑑定人協会会長で、公文書の真贋問題に精通する根本寛氏はこう語る。「契約書や遺言書など毎日、多くを見ているが、名前と住所しか書いていない、こんなあっさりとした借用証は見たことがない。これで5000万円もの大金が動いたとは驚きです」借用証が書かれた時期を特定することは可能なのか?根本氏は「書かれた文字のインクや紙などを調べても、科学的な裏づけはほとんどとれない。この1年間で時期を特定するのは非常に難しく、警察の科学鑑定でも対応できない。その意味で時期をめぐる真贋論争はできない」と指摘する。

印鑑なし、返済期限なし、利息に関する文言もなし、貸した人間の署名もなし。こんな借用証が通用するのか。詐欺事情に詳しい本人訴訟コンサルタントの野島茂朗氏は「通用しなくはないです。返金を請求して一定期間以内に返せば問題はありません。ただ、一般的にはこの借用証では、貸す側がバカだというものです。これでは、返さなくてもいいということに近い消費貸借契約になりますから、実質、贈与となります」と解説する。借りた金額は円マークもなく洋数字。これなら数字を加えたり、金額を偽造できてしまう。「一般常識的にはそうですが、漢字表記が定められているわけではありません」(同)

印鑑がないことについても、自筆であれば印鑑は必要ない。印紙がないが、高額取引でも印紙を貼らないことはあり、税務署にバレたら追徴課税される可能性があるというだけだ。民法は利息について、別段の意思表示がない場合は利率を年5%と定めている。無利息・無担保で5000万円を9か月借りたということは、利息分の利益供与になりかねないが「貸した側が主張しなければ利息は問題ありません」と野島氏。

この借用証は有効ではあるが、報道されたことで、世間に悪影響も及ぼしかねない。「債権を偽装する借用証を三文判で作ったり、筆跡を偽装したりする架空請求が横行している。こんな小学生でも作れそうな借用証なんて、ヤミ金の偽装架空請求よりも低レベル」と野島氏。こんな借用書が通用するなら、世の中は脱税贈与や詐欺だらけになりかねない。【Yahoo!ニュース2013年11月28日

記者会見の翌日、連合三多摩ブロック地協主催の「推薦議員懇談会」が開かれ、地区協の役員を務めている私も出席していました。前衆議院議員6名、都議会議員12名(前職含む)、市町議会議員21名が出席し、連合三多摩と各地区協役員との懇談の場でした。三多摩地域から選出されている民主党の都議会議員ほぼ全員が顔を出されていたようです。政策制度全般にかかわる懇談の場でしたが、時節柄、猪瀬都知事の問題も都議会議員側から話題の一つに上げられていました。

問題が発覚後、共産党都議団からは百条委員会の設置が求められています。百条委員会とは地方自治法第100条に基づき議会が設置する特別委員会で、証人喚問で偽証すれば禁固刑が科せられるなど強力な調査権限を持っています。都議会民主党としては、法的な問題の有無が曖昧な段階であるため、設置するかどうかはもう少し見極めたいという考えでした。自民党をはじめ、他の会派も現時点では「時期尚早」と判断しているようです。また、阿部知子衆議院議員も徳洲会グループから300万円借り入れていたことが下記の報道の通り明らかになっています。

無所属の阿部知子衆院議員(比例南関東)が昨年の衆院選直前、徳洲会グループの徳田虎雄前理事長から300万円を借り入れていたことが、神奈川県選挙管理委員会が27日公表した政治資金収支報告書で分かった。阿部氏の事務所によると、阿部氏は衆院解散当日の昨年11月16日、徳洲会の湘南鎌倉総合病院(同県鎌倉市)で入院中の徳田氏に会い、その場で現金で借りたという。阿部氏の秘書は「前日に社民党を離党していて金が必要との認識もあり、1年以内に返すつもりで選挙資金として借りた。

徳田氏とは長年の信頼関係があり、借用書は作っていない。実際には選挙運動には使っていない」と話した。300万円は今年10月8日付で2%の金利を付けて徳田氏に返却したという。阿部氏は小児科医で現在、湘南鎌倉総合病院の非常勤医師を務める。昨年の衆院選直前に社民党を離党し、日本未来の党から神奈川12区で立候補して比例で復活当選した。【毎日新聞2013年11月27日

上記のような事例の報道が続くことも見込まれるため、連合三多摩の懇談会の場では、猪瀬都知事の5千万円の問題が今後、どのような広がりを見せるのか見定めた上で都議会民主党としての対応をしっかり固めたいという説明も加えられていました。私自身の早とちりだったのかも知れませんが、猪瀬都知事の問題に対する都議会民主党の追及する姿勢が少し消極的であるような印象を受けていました。そのため、意見交換の際、たいへん僭越ながら私から次のような趣旨の訴えをさせていただきました。

相手方を追及した際、攻める側も同じような問題を抱えていた場合、「ブーメラン」という言葉で非難される時があります。そのような事態を避けるため、確かに慎重になることも必要です。しかし、だからと言って今回の猪瀬都知事に対する追及をためらう理由にはなりません。仮に民主党の議員に対しても徳洲会グループから資金提供があり、収支報告等がされていなかった場合、すみやかに個々の議員それぞれが修正すべき話に過ぎません。

現時点で猪瀬都知事の行為が法的に問題があるかどうか分かりません。百条委員会の設置も都議会の各会派が判断すべきことだろうと思っています。しかし、徳洲会グループから借りた5千万円の真相が不明瞭なまま終わるようでは大きな問題だと考えています。万が一、都議会民主党がその追及に積極的ではなかったと見られるようであれば、二度と民主党は立ち上がれなくなってしまうのではないでしょうか。

私自身も地方公務員ですが、違法かどうか以前の問題としてコンプライアンスの面から猪瀬都知事の行為は許されないはずです。近年のコンプライアンスは、単に法令等の規定に違反しないという消極的な意味にとどめず、より積極的に法令等の背景にある精神や時代の価値観まで遵守し、実践していくことが求められています。極端な例として、私どもの市では利害関係者からコーヒー一杯、カレンダー一つ、受け取らないように心がけています。

選挙資金だったかどうか関係ありません。借りた時点で、猪瀬都知事は都職員のナンバー2である副知事だった訳です。猪瀬都知事は「知らなかった」と話していますが、都内の徳洲会グループの施設に対し、都の補助金が7億円以上支出されていました。いずれにしても5千万円もの多額な資金が無利息・無担保で渡され、全額返したとは言え、実際には200万円以上の利息分が便宜供与されたことになります。そもそも都の指針に照らし、利害関係者から5千万円を借りたという事実だけで、すでにNGであることには間違いありません。

ブログの記事を書き込むにあたり、後ほど調べた数字等を加えていますが、推薦議員懇談会の場で以上のような発言を行なっていました。その上で、都議会民主党の皆さんに対し、ぜひ、この問題の徹底解明に努めて欲しいと訴えさせていただきました。組織のモラルハザードを起こさないためにも、ひいては猪瀬都知事のためにも、引き際を見誤らせないよう進言すべき必要性について付け加えさせていただきました。

金曜から都議会が始まり、猪瀬都知事は所信表明で改めて個人の借り入れだったことを強調し、辞任の考えがないことを明らかにしています。それに対し、読売新聞の社説では「都の一般職員が、職務上の利害関係がある業者から借金をすれば、懲戒処分の対象になる。都政全般に職務権限が及ぶ知事や副知事が、一般職員以上に襟を正さねばならないのは当然である」と記されていました。また、都幹部が「知事は謝罪するだけで充分と思っているのか」と首をひねっていたという記事も載っていました。

最後に、日を追うごとに徳洲会グループから政治家に対する資金提供の広がりが分かってきました。下記のよう新聞記事の他に「徳洲会に“世話”になった知事たち」という報道もあり、千葉県の森田健作知事らも徳洲会グループから支援を受けていたことが明らかになっています。それらの事例すべてが問題あるとは思っていませんが、戦々恐々している政治家の皆さんも多いのかも知れません。

公職選挙法違反容疑で幹部6人が逮捕された医療法人「徳洲会」グループと、創設者の徳田虎雄前理事長(75)の次男・毅(たけし)衆院議員(42)=自民党を離党、鹿児島2区=の政治団体が2012年、少なくとも国会議員97人の政治団体に献金やパーティー券購入、貸付金の形で計1282万円を提供していた。政治資金収支報告書の分析でわかった。 97人中、自民議員が93人だった。虎雄前理事長は昨年の衆院選で「徳田派をつくって自民党を乗っ取る」と周囲に伝えたとされており、政界への影響力を強めたい徳洲会側が、医療事業による収益を政界に幅広く投入していた構図がうかがえる。

毅氏の資金管理団体「徳田毅政経研究会」は、計94議員の政治団体に寄付やパーティー券購入で計432万円分を提供した。自民党が多く、石破茂・党幹事長の資金管理団体から12万円分、田村憲久厚生労働相の政治団体から2万円分のパーティー券を購入。毅氏が代表だった「自民党鹿児島県第2選挙区支部」は、2人の自民党衆院議員の団体に各100万円を寄付した。提供先は、グループの病院が多い九州や関東を地盤とする議員が目立つ。【朝日新聞2013年11月30日

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2013年11月23日 (土)

外交・安全保障のリアリズム

3か月ほど前の記事「大阪市で自治労大会」の終わりのほうで、民主党内に他党との連携を探る様々な動きがあることを記していました。特に維新の会、みんなの党との連携を模索している民主党議員の一人として、私どもの組合も推薦している長島昭久さんの名前をよく新聞紙面で見かけていたため、お会いした際に率直な話を伺うつもりであることをお伝えしていました。実はその記事を投稿した数日後に直接ご本人とお会いする機会があり、私自身の疑問や問題意識を率直に投げかけていました。機会を見て、このブログで報告するつもりでしたが、あっという間に3か月過ぎた気がしています。

9月初めに連合地区協議会の役員と推薦議員の皆さんとの懇談の場がありました。その際、私から長島さんに次のような質問を行なっていました。維新の会の改憲綱領をはじめ、みんなの党の立ち位置など、民主党のめざす基本的な方向性とは大きな違いがあるように感じています。それにもかかわらず、維新の会、みんなの党との連携を強めていく動きには違和感があり、民主党を応援した人たちの気持ちに背反する話ではないでしょうか、このような問いかけを長島さんに示させていただきました。

この問いかけに対し、長島さんから今にも野党再編に進むような見られ方は誤解であり、ことさらマスコミは注目を集めるような報道をしがちであるため、都合よく切り取られないよう言動には注意していかなければならない旨を述べられていました。その上で、あくまでも同じような考え方を持つ者同士の個別政策の勉強会であり、その点での連携があっても一気に新党を立ち上げる動きには繋がらないという見方を示されていました。完璧なメモを残していた訳ではありませんので、直接話法を避けましたが、やり取りの要旨は以上の通りでした。

ちなみに懇談会の後、何人かの方から「同じような疑問があったので質問してくれて良かった」という声をかけていただきました。今回、この話を報告する機会に至ったのは長島さんの著書『「活米」という流儀 外交・安全保障のリアリズム』が最近出版されたため、その読み終えた感想をブログに綴ろうと考えたからでした。すると土曜の朝刊には次のような新聞記事が掲載されていました。この研究会のことはまったく知りませんでしたが、いろいろな意味でタイミング良く、ブログの題材として取り上げる巡り合わせになり得たのかも知れません。

民主、日本維新の会、みんな3党の有志議員を中心とする「外交・安全保障政策研究会」が22日、衆院議員会館で初会合を開いた。民主党の長島昭久元防衛副大臣が会長に就き、同党の細野豪志前幹事長、みんなの江田憲司前幹事長のほか、無所属議員も含め33人が出席した。冒頭、長島氏は「野党としてきちっと国益を見据えた政策の王道を国民に提示したい」と述べた。今後、議員立法で外国人の土地取得規制などを検討する。【時事通信2013年11月22日

一般的な見られ方として、安全保障面などで自治労の方針と長島さんの考え方は一致していません。そのため、長島さんを支持していることで批判を受ける時がありました。このブログへのコメントやトラックバックを通して数多く受けとめてきましたが、実生活の場面でも長島さんと私との関係に疑問を持たれる方も多いのかも知れません。その点に関しては次の通り昨年6月に投稿した記事「ある苦言とトラックバック」の中で私自身の考え方を示し、組合員の皆さんに対しても組合ニュースを通して明らかにしています。

長島さんとの関係も少し補足します。そもそも自治労は一つ一つの組合の連合体であり、中央本部や都本部の決定が必ずしも徹底できないケースもあります。長島さんを私どもの組合として推薦できないと判断すれば、そのような選択肢もあり得るのが自治労という組織の特性でした。いずれにしても組合方針の大半が一致できる候補者は極めて限られ、大きな方向性が合致した上で、基本的な信頼関係を築けるかどうかが大事な時代になっているものと思っています。

したがって、長島さんの考え方と私どもの組合方針との差異があることを否定しません。しかしながら以上のような問題意識のもと、私どもの組合は長島さんを推薦してきていました。そして、推薦関係があるからこそ、自治労に所属する一組合の立場や要望を長島さんに直接訴える場を持ち得ることができていました。以前の記事「大胆な改革、オランダのダッチ・モデル」をはじめ、このブログの中で何回か長島さんは登場しています。機会があれば、このような関係性の話を改めて取り上げてみるつもりです。

その機会の一つとして、今回、長島さんの新著の中で共感を覚えたこと、少し違和感があることなどを紹介しながら、個人的な思いを書き進めてみます。まず率直な見方として民主党議員の中には、できれば自治労とは距離を置きたいと考えている方も少なくないはずです。それでも票に繋がるため、自治労関係者とも表面上は親しく付き合っている場合があるのではないでしょうか。長島さんの内心がどうか分かりませんが、いつも誰に対しても誠実に対応されています。実は今回の著書を読み、そのように振る舞える背景を垣間見れた気がしていました。

尖閣諸島の国有化の問題の際、長島さんは首相補佐官として石原前都知事らとの折衝を担っていました。結果的に国有化は中国側から強い反発を招いた訳ですが、粘り強く丁寧に中国政府と話し合いを進めていたことが著書の中で明かされています。中国から「暗黙の容認」を引き出せる手応えを直前まで得られながら、空気を一変させたのは中国側の権力闘争が絡み日本叩きに繋がったという見方を示されていました。

著書の中には様々な事例が取り上げられ、数多くの人物が登場します。物事の事実関係を中心に淡々と記述される中から長島さん自身の評価や見方が読み取れていきます。しかし、特定の人物を直接批判や揶揄するような記述は皆無でした。また、長島さんが親米派であることは衆目の一致するところですが、だからと言って過剰にアメリカを持ち上げるような書きぶりもなく、中国に対しても特に敵視するような姿勢を感じさせていません。

対中戦略という視点で誌面の多くが割かれていましたが、中国を蔑むような表現は一切なく、冷静に中国の歴史的な経緯や現状について分析されています。そのような文脈の中で、次のような考え方が披露されています。「力で押しても無駄ですよ」と中国の行動を「抑止」したり「諌止」することを目的とし、中国のパワーとの間に均衡を図り、中国との外交関係を安定させる、力を均衡させてまず事態を安定させることが「リアリスト」としての優先課題であると長島さんは著書の中の随所で語られています。

課題解決のためには、一時的な感情や思考停止の空想論に陥ることなく、彼我の国力の変化と国際環境の変動を現実的視点でとらえるリアリズムの思考が重要であるとし、そのリアリズムを長島さんは外交・安全保障政策を練り上げる際の羅針盤にしているとのことです。世界政府を持たない国際社会が基本的に無秩序であるため、国家と国家の力の均衡こそが秩序を形成するという考え方を立脚点にしています。

それに対する考え方としてリベラリズムがあり、国際社会には協調、協力を促す基本的な流れがあり、経済的な相互依存や民主主義の普及などとともに国際法や制度を幾重にも構築することで社会全体の安定が図られるというものです。国家や軍事力以外の主体(例えばNGO)や民生支援などの手段を重視し、各国の協調を促して平和を達成しようとする立場がリベラリズムだと説明されていました。

ただし、実際の国際社会は軍事力や経済力などの「ハード・パワー」で動かされる要素と、国際条約や制度などの「ソフト・パワー」に従って動く要素の両面から成り立っているとも言われています。したがって、どちらが正しいかという二者択一の問題ではなく、どちらに軸足を置いて国際関係を見つめるかという「観点」の違いであると長島さんは語られていました。さらに力の均衡という軍事的な手段を選択肢として残し、非軍事的な人間の安全保障の取り組みを強化することは充分両立し、効果的に組み合わせることでシナジー効果を生むという見方も示されています。

全体を通して、興味深い内容が豊富だったため、著書の記述を紹介していくと際限なく続きそうです。そろそろ私自身の感想を添えながら、このブログ記事もまとめていきます。誰もが同じだと思いますが、戦争は避けたいものと願っているはずです。長島さんの今回の著書も安全保障のことが多く語られていますが、過去の戦争などを例示しながら「なぜ、回避できなかったか」というリアリズムの視点で、つぶさに検証しています。尖閣諸島国有化の問題でも、いかに中国と不毛な対立を避け、解決できるかどうかという姿勢が伝わっていました。

リアリズムとリベラリズム、二者択一の問題ではなく、まして二項対立にすべきものではありません。そのような考え方をはじめ、長島さんの語る内容の大半が基本的に共感できました。そして、立場や視点の異なる相手に対しても、先入観を持たず、敬意を忘れずに接している姿勢が感じ取れました。普段から誰に対しても誠実に対応されている長島さんの姿が前述した通り著書を通して重なり合いました。私自身も常に心がけている点であり、たいへん共感する姿勢でした。

少し違和感があったのは湾岸戦争後、戦後の「一国平和主義」が国際社会から「利己的」との烙印を押されたというくだりです。そのように評価が定まっているのかも知れませんが、私自身としては日本独特な憲法を維持しながらも「一国平和主義」と批判されない道筋も大事にしたいものと思っています。このような私の軸足はリベラリズムに位置付けられるのでしょうが、リアリズムを否定や批判する考えはありません。最も重視すべきことは、争いを避けるためにどのように考え、行動するかどうかであり、安全保障を整えることがその手段の一つになっている現実も認識しているつもりです。

長島さんの著書の記述に戻りますが、感情や信念をむき出しにして対外行動を起こすことはきわめて危険なこと、その通りだと思います。セオドア・ルーズベルトの「穏やかに対話せよ、ただし、棍棒を忘れるな」の精神を長島さんは大切にしているそうです。最近のネット社会にはこびる「反中」「嫌韓」「悔米」の過激な言論は、その正反対という危うさを感じます、このような長島さんの見方にも強く共感しています。

なお、書籍のタイトルに掲げられた「活米」という流儀とは、「親米」でも「反米」でもなく、まして対米依存の「従米」でもなく、日本の国益のためにアメリカを大いに活用、利用しようという立場について記されていました。一方で、アメリカ側の立場も長島さんが師事された教授の言葉を通し、「自分が日米同盟を誰よりも強く支持するのは、単に日本人が好きだからではない。それは紛れもなく米国の利益に資するからである」と説かれていました。

書籍からの引用も多かったため、いつも以上に長い記事となっています。それでも言葉が不足し、個人的な思いや問題意識が充分伝え切れず、いろいろな批判を受けてしまうのかも知れません。いずれにしても戦争を避けることを第一に考えていけば、二項対立の問題から脱皮する知恵を出し合っていけることを信じています。最後に、次の報道のような対立は残念な話ですが、乗り越えた先に多くの国民が支持できる民主党としての方針を打ち出せることを心から願っています。

民主党は15日、安全保障総合調査会(会長・北沢俊美元防衛相)の会合を国会内で開き、改憲派の前原誠司前国家戦略担当相と護憲派の横路孝弘前衆院議長が集団的自衛権の行使容認について、賛成と反対の立場から火花を散らした。会合で前原氏は「自衛隊発足の過程で憲法解釈の変更が行われている。安全保障の実効性を担保する観点からは憲法改正の方がよいが、現実的な視点が必要だ」と憲法解釈の見直しによる行使容認に賛同した。これに対し、横路氏は「海外で武力行使するのが集団的自衛権。専守防衛の原則が崩れ、先制的攻撃論や攻撃的な兵器を持つ形に(日本が)変わっていく」と反対を表明した。執行部は年内に党見解をまとめる予定だが、憲法論争の度に党内が対立してきたのが民主党の歴史。「寄り合い所帯」の体質を克服することはできるのか。【産経ニュース2013年11月15日

| | コメント (9) | トラックバック (0)

2013年11月17日 (日)

特定秘密保護法案

木曜の深夜、賃金改定交渉が決着しました。月例給の改定率が△0.2%となる東京都人事委員会勧告に準拠した内容で労使合意しています。2年前、正規職員の賃金表を都表に移行していたため、自主的な交渉の幅は限られています。一方で、市当局から今期の交渉を通し、再任用職員の賃金水準も東京都に合わせたいという提案が示されていました。自治労都本部統一の重点指標から外れ、私どもの組合の独自課題でもあるため、その課題は週を超えた継続協議としています。

前回記事「定期大会の話、インデックスⅡ」のコメント欄では再任用職員のことが取り上げられていましたので、継続している協議課題の詳細を綴ることも良い機会だったかも知れません。それでも記事タイトルに掲げた特定秘密保護法案に関しても、いずれかのタイミングで取り上げようと考えていた題材の一つでした。与党側は野党との修正協議に入り、法案の成否に向けて大詰めの段階を迎えています。このところマスコミでも連日取り上げられ、11月21日夜には全国6か所で反対集会が開かれます。

ところで、このようなテーマが当ブログで扱われることに対し、違和感を持たれる方も多いはずです。政治的な運動を公務員の組合が取り組むこと自体に疑問を抱かれる方の多さも、このブログを長く続けている中で感じ取ってきました。しかしながら「平和の話、インデックス」の中で記したとおり政治的な運動も労働組合の本務と主客逆転させない範囲で取り組むという私自身の「答え」があり、取り組むのであれば組合員の皆さんをはじめ、不特定多数の方々に向けた主張の発信が欠かせないものと考えていました。

賛否が分かれる政治的な問題をネット上に掲げるリスクも承知していますが、そもそも狭い範囲でしか理解を得られないような内向きな運動方針に過ぎないのであれば、即刻見直しが必要だろうと思っています。特定秘密保護法案に対しても自治労や平和フォーラムの呼びかけに応じ、21日夜の反対集会には組合役員を中心に参加する予定です。大事な考え方として組合員の皆さんに対し、反対運動の押し付けは論外であり、「なぜ、組合は反対しているのか」という情報発信を重視しています。

また、これまで様々なテーマの題材をブログで扱うことで自分自身の頭の中を整理する機会にも繋がっていました。そのため、ここ数週間、特定秘密保護法案の問題に取りかかるタイミングを見計らっていました。今回、その題材を書き進めるため、パソコンに向かった訳ですが、いつものことながら前置きの文章が長くなりました。特定秘密保護法案のことに関心を持たれ、読み始めていた方にはたいへん申し訳ありません。「一期一会」という思いも大切にしているため、このブログの位置付けについて改めて説明を加えさせていただいていました。

ようやく本題です。まず特定秘密保護法が必要とされている背景や経緯について調べてみました。11月7日に国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案が衆議院で可決されていますが、この法案との絡みで特定秘密保護法案が第185回国会に提出されていました。すでに安全保障会議という組織がありましたが、縦割りの弊害を排し、より首相官邸を中心に外交や安全保障政策を推進するため、国家安全保障会議(日本版NSC)の設置が企図されてきました。

ちなみにアメリカは世界大戦で肥大化した米軍を政治のコントロール下に置くためにも、1947年にNSCを創設したという経緯があるそうです。そのアメリカからは2006年、第1次安倍内閣の時に米国NSCとの継続的協議を行なえる組織を設けるように要請されていました。それ以降、民主党政権時も含め、日本版NSCの必要性は必ずしも否定されてきませんでした。一方で、同盟国や友好国との外交や防衛に関わる秘密情報の共有を促進するためには、特定の情報について当面秘匿しておくことが求められていました。

そのため、日本版NSC設置にあたり、外交や安全保障上の重大な秘密情報の漏えいを厳格に防ぐため、特定秘密保護法が必要とされてきた背景を見て取れます。特定秘密保護法案の第9条には外国の政府又は国際機関に対しては「当該特定秘密を提供することができる」という文面があります。要するに日本版NSCと米国NSCとの連携を大前提に特定秘密保護法案が組み立てられていることは間違いないようです。

続いて、特定秘密保護法案の問題点ですが、最初に申し添えたい点があります。安倍首相をはじめ、法案の成立をめざしている方々が極端な情報統制国家を目論んでいるものとは考えていません。優先順位や思想性の違いがあっても「国益のため」「国民のため」と信じ、日本版NSCや特定秘密保護法の必要性を考えているはずです。しかし、特に例示するまでもなく、正しいと信じていた「答え」が結果的に誤りだったという現実や歴史は数え切れません。

特定秘密保護法案の問題に繋がる話ですが、だからこそ、国民にとって都合の悪い情報でも可能な限り明らかにし、国の行く末を国民全体で見定められる仕組みが望まれています。それが民主主義の基本であり、一部の政治家に委ねる間接民主主義であっても、情報が隠されたり、為政者に都合良く改ざんされてしまっては大きな問題です。その政治家を評価し、引き続き委ねられるかどうか判断するための情報に瑕疵があることになります。

そのため、「国民の知る権利」や「報道の自由」が重視されている訳であり、単に興味本位のため、すべて情報はオープンにすべきという話ではありません。場合によって当面秘密にしなければならない情報があり得ることも否定しません。しかし、未来永劫「特定秘密」では政策決定の緊張感も欠け、恣意的な秘密指定の可能性が排除できなくなります。いずれにしても今回の法案では特定秘密の定義が曖昧であり、それこそ為政者にとって都合の悪い情報は「特定秘密」とされてしまう恐れが拭えません。

日本のマスコミにとどまらず、ニューヨーク・タイムズ(電子版)の社説でも「日本の反自由主義的秘密法」というタイトルを掲げ、①日本政府が準備している秘密法は国民の知る権利を土台から壊す②何が秘密なのかのガイドラインがなく、政府は不都合な情報を何でも秘密にできる③公務員が秘密を漏らすと禁錮10年の刑になる可能性があるため、公開より秘密にするインセンティブが働く④不当な取材をした記者も最高5年の懲役⑤日本の新聞は、記者と公務員の間のコミュニケーションが著しく低下すると危惧している⑥世論はこの法律に懐疑的というような問題点を列挙していました。

そもそもパブリックコメントを求めた段階で8割が反対し、マスコミ、弁護士、研究者らの大半が法案に疑義を投げかけています。さらに重要法案にもかかわらず、臨時国会の特別委員会での審議が80時間程度にとどまり、拙速に決められようとしています。それに対し、政府与党側は強行採決のイメージをやわらげるため、日本維新の会、みんなの党との修正協議に入っています。その協議を通し、秘密の範囲や指定の妥当性を監視する第三者機関を設置することなどが調整されています。

民主党は部分修正では問題点が解消できないとして、対案を提示する方針を決めています。民主党内の議論で「ただ反対するだけでは責任ある対応ではない」というような意見が示されていたことを耳にしています。しかし、問題のある法案は問題であり、圧倒的に時間が不足している中、対案提示という手法は今一つ中途半端な印象を抱いています。今回の法案の場合、率直に廃案を訴え、仕切り直しを求めたほうがスッキリしているように思えます。この法案を巡り、まだまだ書きしるしたいことがありますが、たいへん長い記事になっていますので、また機会があれば補足させていただくつもりです。

| | コメント (6) | トラックバック (0)

2013年11月10日 (日)

定期大会の話、インデックスⅡ

このブログ、ココログでも過去の記事をカテゴリー別に分類整理できる機能があります。ただ機能を充分理解しないまま始めてしまい、相当数のバックナンバーを積み上げていました。投稿済みの記事のカテゴリーを一つ一つ変更するのも非常に手間がかかり、途中から新規記事のみを分類していくのも中途半端に感じ、機能を把握した後もカテゴリー欄は「日記・コラム・つぶやき」に統一していました。

そのため、時々、「自治労の話、2012年夏」のように記事本文の中にインデックス(索引)代わりに関連した内容のバックナンバーを並べていました。その発展形として「○○の話、インデックス」を始め、これまで「平和の話、インデックス」「職務の話、インデックス」「原発の話、インデックス」「定期大会の話、インデックス」「年末の話、インデックス」「旗びらきの話、インデックス」「コメント欄の話、インデックス」「非正規雇用の話、インデックス」という記事が続いていました。

先週金曜夜に私どもの組合の定期大会が無事終了し、今回もローカルで地味な話題となりますが、やはり大会に絡んだ内容を綴ろうと考えました。その際、昨年投稿した「定期大会の話、インデックス」の第二弾とし、安直な発想ながらタイトルに「Ⅱ」を付けることを思い付きました。閲覧されている皆さんにとって、どうでも良い話が長くなり、たいへん恐縮です。いずれにしても過去の記事に関しても、できれば多くの方に目を通していただけることを願っているため、時々、このような「インデックス」記事を投稿していました。

定期大会とは一年間の組合活動を振り返り、新たな一年の運動方針案を議論する場です。68回目の定期大会は組合員1295名のうち300名以上の出席を得て、すべての議案が承認されました。代議員制ではなく、組合員全員に出席を呼びかけた大会の方式は珍しくなっています。そのため、毎年、出席者の数は大きな関心事でした。3年前には500名を超え、用意した資料や出席記念品の数が足りなくなるという「うれしい悲鳴」を上げていました。

今回、ここ数年の出席者数に比べれば少なくなっています。ただ毎年利用してきた市民会館が改修中で、今回は出席者用の椅子が350という規模の会場だったため、適度な盛況感があった大会となりました。執行部席と出席者との距離が近く、演壇も低く、会場内の照明も明るかったため、「会場の雰囲気が良かったから、来年以降もここを使いませんか」という声が組合役員の一部から上がっていました。初めての会場でいろいろ心配していましたが、予想した以上に使い勝手が良く、円滑な進行の大会となりました。

それでも組合員全員に出席を呼びかけていく大会の性格上、出席者数の「うれしい悲鳴」によって会場の椅子が不足するような事態は避けなければなりません。そのため、やはり来年以降は1階席だけで千人規模のホールのある市民会館に会場を戻すことが望ましいものと考えています。確かに千人の観客席で300名ではガランとした雰囲気となってしまいますが、一人でも多くの方の出席を呼びかける限り、必要な対応や姿勢だろうと思っています。

組合員の誰もが出席でき、自由に発言できる定期大会の場はたいへん重要です。そして、一人でも多くの組合員の皆さんに会場まで足を運んでいただき、幅広い組合の活動方針を確立できることが何よりなことです。出席者数を増やすための様々な工夫や心がけていることを過去の記事の中で綴ってきました。迅速な議事運営に努めていることもその一つでした。出席された組合員の方々の目線で考えれば、定期大会が早い時間に終わることを望まれているはずです。

主要な議案は事前に配布していますが、当日、改めて丁寧に説明することも大事な議事のあり方なのかも知れません。それでも隅々まで丁寧に説明しようとすれば、一晩かけても終わらないほどの分量であることも確かです。したがって、事前に目を通していただいていることを前提とし、より簡潔な説明や提案に心がけるほうが適切だろうと考えていました。執行部側からの報告や提案はなるべく短くし、出席者からの質問や意見を受ける時間を充分保障するように努めていました。

他の組合に比べて来賓の方の数は少ないようですが、さらに恐縮ながら3分以内での挨拶をお願いしていました。そのため、率先垂範の意味合いからも冒頭の委員長挨拶は簡潔に終わらせるように心がけています。割り当てられた時間は5分ですが、話したい内容は数多くあります。人前で挨拶する機会が多いため、檀上で緊張するようなことはありません。原稿がなくても大丈夫ですが、いろいろ話を広げてしまい、割り当てられた時間をオーバーしてしまう心配がありました。

そのため、毎年、定期大会だけは必ず挨拶する内容の原稿を用意するようにしていました。今回、時間が1分ほどオーバーし、途中で言葉をスムースに繋げられない時もありました。自分自身も「今一つだった」と感じていましたが、大会終了後、新執行委員の方から「今年はキレがありませんでしたね」と声をかけられました。いつもは「キレがある」という好意的な感想でもあり、私からは次のような説明を加えていました。

ずっと原稿を追っていると下を向いたままになるため、時々、顔を上げて会場の皆さんを見渡しながら言葉を繋いでいます。今回、置いた原稿に視線を戻した際、続いて読み上げるべき箇所が見つけづらかった事情を説明しました。昨年までの会場の演台に比べ、高さや角度が違うため、そのような点が影響していたのかも知れません。すぐ見つけられず、アドリブで話す時があり、持ち時間の超過にも繋がっていました。

ちなみに当たり前なことですが、定期大会での挨拶は私どもの組合員の皆さんに向けて発信しています。大会に欠席された方々にも取り急ぎ伝えられる機会と考え、今年も用意した原稿のほぼ全文を下記のとおり掲げさせていただきます。不特定多数の方々が閲覧できるインターネット上であることを意識していますが、コソコソ隠すような内容は皆無だと考えています。そもそもブログの中で取り上げてきた話を多用しているため、常連の方々にとって目新しい内容が見当たらない挨拶かも知れません。

数十年前、組合加入率がほぼ100%、組合役員に欠員が生じることはなく、何か事があるたびに多くの組合員を動員できた時代がありました。そのような時代と比べれば、確かに組合は「弱くなった」と言われても仕方ありません。ただ労働組合の役割は労使交渉を通し、組合員の労働条件の維持向上に努めることです。さらに使用者側の行き過ぎた行為をチェックし、是正を求める役割を労働組合は担っています。経営者に対し、労働者一人の発言力は弱くても、労働組合に結集することで対等な力を持ち得ます。

当市をロケ地とし、労働基準監督署を舞台にした『ダンダリン』というテレビドラマをご存知でしょうか。その番組からも、労働に対して様々な法的な裏付けがあり、労働条件は経営者側の思惑だけで決められないことなどがよく分かります。仮に労使関係において、経営者側の力が突出していた場合、最近、取り沙汰されている「ブラック企業」を生み出す土壌に繋がりがちです。私どもの労使関係においては、幸いにも対等な力関係を維持できているものと思っています。

社会経済情勢が大きく変化する中、この間、労使課題で後退する局面が多いことも確かです。しかし、労使合意なく一方的に実施できない関係性のもと、組合員の痛みを可能な限り和らげるための決着も数多くはかってきています。このような組合の役割や、具体的な交渉の経緯や成果について『市職労報』などを通して詳しく伝えてきているつもりです。それでも紙媒体そのものの効果に限界があり、「組合のことがよく分からない」、もしくは「組合はまったく役に立たない」というような声にも繋がっています。

今後、よりいっそう組合員の皆さんの期待に応えられる結果を出していくことともに、紙媒体だけではない職場懇談会など相互交流の場を多く持っていければと考えています。昨年の大会でも触れた話ですが、組合員の皆さんに対して、まったく役に立てない組合であれば、私自身も「組合はいらない」と思います。しかしながら労働組合の最も大事な役割である交渉能力は決して衰えていません。今年度で打ち切る方針が定まったようですが、国家公務員に準じた平均7.8%の理不尽な給与削減の問題も、組合があり、自治労があるからこそ、何とか拒み続けることができています。

一方で、なくしてはいけないと思っている組合だったとしても、幅広い職場や世代から組合役員の担い手を繋いでいかなければ、未来はありません。特に今回、本当に長い間、組合役員を担っていただいた副委員長も退任されます。このように毎年、組合役員の担い手の問題で悩んでいますが、幸いにも来年以降、まだまだ働きかけによっては幅広い職場から多様な人材の担い手を見つけられる可能性があるという手応えも得ています。

続いて、やはりよく説明している話ですが、自分たちの職場だけ働きやすくても、社会全体が平和で豊かでなければ、暮らしやすい生活とは言えません。そのため、企業内の交渉だけでは到底解決できない社会的・政治的な問題に対し、多くの組合が集まって政府などに声を上げていくことも昔から重要な組合運動の領域となっています。このような背景のもとに連合や平和運動センターに結集し、組合は一定の政治的な活動にも取り組んでいます。その一つに選挙にかかわる取り組みもあります。

来年6月には最も身近で重要な市議会議員選挙が予定されています。事前に第5回職場委員会で組合推薦候補を提案し、今回の大会での確認をお諮りしています。ぜひとも、選挙の取り組みに対し、ご理解いただけますようよろしくお願いします。まだまだお話したいこと、取り上げるべき大事な課題が数多くあります。それでも皆さんからの発言の時間を充分保障するためにも、挨拶は短めにさせていただきます。最後に、これからも常に「組合員にとって、どうなのか」という判断基準を大事にし、組合運動の先頭に立ち、全力を尽くす決意です。これからも、どうぞよろしくお願いします。

最後に、大会に出席された皆さん、運営に協力くださった皆さん、ありがとうございました。また、この大会をもって退任された組合役員の皆さん、本当にお疲れ様でした。いろいろお世話になりました。特に挨拶の中でも触れましたが、前副委員長はたいへん長い間、組合運動を担われてきました。大会終了後の打ち上げで、五つの赤い風船の『遠い世界に』を聞かせていただきました。2番の歌詞「力を合わせて生きること」、この言葉に重みを感じながら今後も私なりに頑張っていきます。本当に長い間、ありがとうございました。

| | コメント (8) | トラックバック (0)

2013年11月 3日 (日)

労働組合の役割

日本シリーズ第6戦、2点リードした時点で楽天が初めての日本一に輝くことを疑いませんでした。それが昨年8月19日の西武戦以来、無敗だった田中将大投手が巨人打線につかまり、4対2、予想外の逆転負けを喫しました。それでも最終回、高橋由伸選手から空振り三振を奪った160球目が152キロの速球、味方の逆転を信じながら9回を投げ抜いた田中投手の凄さはやはり際立っていました。

物心がついた頃は、巨人が日本一になることを当たり前だと考えていた時代でした。『巨人の星』や『侍ジャイアンツ』という人気漫画にも囲まれ、東京に暮らしながらアンチ巨人になる子どもは極めて少数派だったようです。私自身もご多分にもれず、巨人の9連覇に胸を躍らせた多数派の子どもの一人でした。いつの頃からか熱烈な巨人ファンではなくなり、ライオンズが所沢に来てからは西武ファンとなり、どちらかと言えば今ではアンチ巨人であり、日本シリーズでは迷わず楽天を応援していました。

さて、週1回の更新のため、取り上げたい題材探しには苦労しません。今、注視している問題で考えれば特定秘密保護法案ですが、 私どもの組合の定期大会を間近に控えているため、今回の記事では労働組合の役割について取り上げてみます。実は前回記事「引き続き執行委員長に立候補」のコメント欄で、でもどりさんから下記のようなご意見が寄せられていました。短い文章の中に大事な論点や問題提起が含まれ、私自身が当ブログの記事本文を通して綴ろうと考えていた内容に繋がっていく論点だと言えました。

実際問題として、組合が弱体化したことによって市民の利便性が向上した場合があるのは事実です(もちろん不便になった場合もあるでしょうが)。やはり組合は、組合員のための組織で、市民との利害の対立があるのはむしろ当然と考えた方が自然です。一市民としてはそのような組織の存在を容認(支持とは別)する度量が必要なのかなとも思います。

このコメントを受け、ちょうど1年前の記事「衆議院解散、今、思うこと」の中で、お答えした内容を思い出しました。その時は「組合員のため」と述べた途端、市民のことを蔑ろにしているような言われ方をされたため、下記のような考え方を私から訴えさせていただきました。同じ趣旨での提起だと言えますが、でもどりさんからのコメントには労働組合の役割を容認する姿勢が感じられるため、前述したとおり大事な論点として率直に受けとめながら思いを巡らす機会に繋げられています。

組合活動が「組合員のため」を目的にしていることは当たり前な話ですが、「市民のためではなく」という論理展開への違和感について補足しなければなりません。財源というパイの分配で考えた際、組合員の賃金水準を下げれば直接的な市民サービスに繋がる予算に回せることも確かです。だからと言って、「組合員のため」を目的とした賃金交渉に臨む際、市民サービスの低下を「是」とするような考え方を抱いている訳がありません。限られた財源の中で間接的に影響し合っていることも頭から否定しませんが、組合は組合としての役割や責任を全うすることが第一に求められています。

このような意義については「泥臭い民主主義」という記事の中で、「多元主義」的な民主主義の一つである労使交渉の重要性を訴えていました。いずれにしても組合役員が「組合員のため」と述べた途端、市民のことを蔑ろにしているような言われ方には強い違和感があります。高齢者に対する施策を重視すれば、現役世代にしわ寄せが行くような構図に関しても、いたずらに高齢者対現役世代という対立構造をあおるような風潮は好ましくありません。労働組合の要求が非常識なものであれば実現できないだけの話であり、社会的富の公平分配のあり方も適切な水準やバランスを常に模索していくべき課題だろうと考えています。

一昔前、組合加入率がほぼ100%、組合役員に欠員が生じることは考えられず、何か事があるたびに多くの組合員を動員でき、組合員の不利益になる当局提案を拒み続けられる組合が多かったはずです。そのような時代と比べれば、私どもの組合をはじめ、自治労に所属する組合の大半は「弱体化」しています。かつて昼窓すら拒んでいた強い組合の時代では、確かに市民の利便性を後回しにしていたと言われても強く反論できません。

しかし、組合が「弱体化」したから、住民サービスが拡充できた、このような見方も短絡的すぎるものと思っています。そのような関係性が稀にあることも否定しませんが、社会全体の変化のもとに公務職場も変化してきたものと考えています。コンビニエンスストアなどが存在していなかった時代であれば、一斉休憩の原則を訴えやすかったはずです。逆に組合が強かろうと弱かろうと、社会情勢の変化には的確に対応していく必要があります。

そのことを見誤ると痛烈な批判にさらされることになります。農水省の「ヤミ専従」問題では、 農水省当局が「霞が関最強組合」に配慮し、見直せないままだったという話を耳にしていました。社会保険庁における労使関係も同じような構図があり、組合側が圧倒的に強く、当局側としては改めたいと考えている問題でも提案できず、結果的に様々な「既得権」が温存されてきたという話も耳にしていました。

最近ではJR北海道の事故が多発している問題で、労使関係の実態などが『AERA10月14日号の中で取り上げられていました。もともと収益の上がらない地域の鉄道事業という背景があり、必要以上に労使関係を批判することは問題視しなければなりません。それでもアルコール検知器の使用を拒む組合側の姿勢にも疑問が残り、労使の力関係にバランスが取れていない事例の一つに数えられてしまうのではないでしょうか。ちなみに『AERA』の記事には次のような記述も掲げられていました。

あえて単純化すれば、2005年に起きたJR西日本の福知山線脱線事故では、運転士への「日勤教育」など行き過ぎた会社管理が問題になり、今回のJR北海道の問題では、強すぎる労働組合の存在が指摘されている。ここに大きな性格の違いがあるといっていいだろう。

話を広げながら、言葉が不足する記事内容にとどまるのかも知れません。いずれにしても労働組合の役割は労使交渉を通し、組合員の労働条件の維持向上に努めることです。さらに使用者側の行き過ぎた行為をチェックし、是正を求める役割を労働組合は担っています。経営者に対し、労働者一人の発言力は弱くても、労働組合に結集することで対等な力を持ち得ます。この力は法的にも裏付けされているものであり、労働条件は経営者側の思惑だけで決められないようになっています。

この大事な労使関係において一方が強すぎても、前述したような問題が生じがちとなり、お互いの力が均衡していなければなりません。最後に、連合総研の調査結果を報じた東京新聞の記事を紹介しますが、経営者側の力が突出している場合、「ブラック企業」を生み出す土壌に繋がりがちです。中にはしっかりした労働組合がある会社で、そのように組合員から意識されている可能性も否めません。私どもの労使関係においては、どちらかに偏ることもなく、対等な力関係を維持できているものと思っていますが、組合役員だけが「そのように思っている」という構図にならないよう今後も頑張っていくつもりです。

連合のシンクタンク、連合総研が民間企業で働く二千人を対象に実施したアンケートで、二十代の23・5%、三十代の20・8%が、自分の勤務先が長時間労働や残業代不払いなど違法な働かせ方で若者を使い捨てにする「ブラック企業」に当たると考えているとの結果が出た。ブラック企業が社会問題となる中、四~五人に一人の若者が勤務先への不信感や職場環境に不安を抱いている実態が数字で裏付けられた。厚生労働省は労働基準法違反などがないか、全国の約四千社を調査している。アンケートは調査会社に委託。十月一~六日、インターネットを通じて首都圏と関西圏に住む二十~六十代前半の勤労者に聞いた。勤務先をブラック企業と考える四十代は15・4%、五十代は11・2%、六十代前半は9・0%だった。

結果によると、「勤務先で過去一年間に残業代の未払いがある」と答えたのは全体の19・3%。「有給休暇を申請しても取得できない」との回答も14・4%あり、職場に労働法違反の状態があると感じている人が多い。職場に「仕事で心身の健康を害した人がいる」と答えた人は35・6%、「日常的に長時間労働」が30・6%、「短期間で辞める人が多い」が26・9%だった。連合総研の担当者は「多くの職場で違法な働かせ方がはびこり、特に若い世代の正社員で不満を持つ人が多い」と話している。【東京新聞2013年11月1日

| | コメント (5) | トラックバック (0)

« 2013年10月 | トップページ | 2013年12月 »