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2013年10月13日 (日)

子ども・子育て新制度

先週の火曜日、午後から休暇を取り、調布市の文化会館「たづくり」で開かれた連合三多摩ブロック地域協議会の政策・制度討論集会に向かいました。プロジェクト委員の一人であり、早めの集合時間でしたが、乗り継ぎもうまくいき、遅れずに顔を出すことができました。2時15分から全体会が始まり、4時過ぎから二つの会場に分かれ、分科会を開く2部構成となっていました。

プロジェクト委員の役割分担として、私は第2分科会「地域実情に応じた子ども・子育て支援」の内容を後日報告するという任務が割り当てられていました。分科会の内容を文章にまとめて提出する期限は、まだまだ先で余裕がありますが、この機会にブログの新規記事でも子ども・子育て新制度について取り上げてみることにしました。今回、投稿した内容をもとに連合三多摩への報告書をまとめる予定であり、作業面で言えば一石二鳥の機会となります。

前回の記事「社会保障・税番号制度」の冒頭で「ブログに綴る内容は可能な限り資料等を確認し、うろ覚えな知識のままで投稿しないように努めています。その意味で、ブログに向かい合うことは自己啓発の一つの機会になり得ています」と記しましたが、子ども・子育て新制度に関しても同様な類いのテーマでした。知っているようで、突き詰めて考えていくと把握していなかったことが多い、そのような題材の一つだったようです。

「子ども・子育て新システム」を「子育て新システム」と略しても問題ないかどうか、保育士である書記長に尋ねたところ最近は「新システム」と呼ばないことが分かりました。指摘されて改めて分科会の資料を確認してみると、確かに「新システム」という言葉は見当たりません。また、支援する対象として、子ども自身と子育てする保護者らは別なものであり、「子ども・子育て」と並べて表記しなければならない点についても再認識しました。

このような一例があり、今回の記事タイトルは「子ども・子育て新制度」に落ち着いていました。さて、子ども・子育て支援に関する分科会は座長を連合三多摩政策・制度プロジェクトの主査が務め、連合本部の総合政策局生活福祉局の部長が連合としての取り組みの報告、NPO法人子どもすこやかサポートネットの代表からChildren firstを支える「子ども観」と政策への反映、三鷹市子ども政策部調整担当部長から三鷹市の子ども・子育て支援施策の展開について報告や提起を受けました。

まず分科会の内容に入る前に子ども・子育て新制度について簡単に説明させていただきます。3年前の1月、少子化社会対策会議の決定に基づき、子ども・子育て新システム検討会議が設けられました。昨年3月、その検討結果が「子ども・子育て新システムの基本制度について」としてまとめられ、ただちに消費税関連法案とともに開会中の国会に子ども・子育て関連3法案が提出されていました。関連3法案は8月10日に可決・成立し、8月22日に公布されています。

子ども・子育て支援法、認定こども園法の一部改正、関係法律整備のための法案が関連3法案と呼ばれていました。支援法では今年4月から市町村に子ども・子育て会議を設置することが努力義務として求められていますが、具体的な施策の本格実施は2015年4月以降とされています。消費税の5%引き上げによる社会保障充実のための財源が2.7兆円で、そのうち0.7兆円が子ども・子育て支援の新制度に充てられる予定です。

つまり消費税の引き上げが見送られた場合、この新制度の本格実施も先送りとなる関係性だったようです。分科会で講師が触れた内容とも重複していきそうですが、もう少し新制度の目的や中味について書き進めていきます。新制度の趣旨は、保護者が子育てについて第一義的責任を有するという基本的認識のもとに、すべての子どもの良質な成育環境を保障し、子ども・子育てを社会全体で支援する一連の制度や財源を一元化し、総合的に推進するというものです。

認定こども園、幼稚園、保育所を通じた施設型給付に加え、地域型保育給付(小規模保育等への給付)を創設します。認可外だった保育施設も市町村の認可制とし、給付対象にする制度改正です。幼保連携型認定こども園の設置主体は、国、地方公共団体、学校法人又は社会福祉法人とし、既存の幼稚園及び保育所からの移行は義務付けられません。市町村が地域のニーズに基づく計画を策定し、給付や事業を実施する主体となります。念のため、こども園の場合、子どもではなく、正式名称で「子」が平仮名となるようです。

いつものことですが、文字ばかりで長々とした記事内容になっています。たいへん恐縮ながら、これからが予定した本題です。分科会の開会に際し、座長から連合三多摩の子ども・子育て支援に対する考え方が示されました。次世代を担う子どもたちが心身ともに健やかに成長していくためには社会全体や地域から支えていく仕組み作りが必要で、これまで毎年取り組んでいる自治体に向けた政策・制度要請書の柱に子どもに関する施策を掲げてきたことなどが説明されました。

連合本部の部長からは、結婚や出産は当事者の選択であり、国や行政が介入すべきではないことを基本とし、安心して産み育てられる条件や子どもが健やかに育つ環境の整備の重要性を連合として訴えていること、また、障がい児など特別な支援が必要な子どもも含め支援の対象にすべきことなどを様々な場面で主張してきた話を伺いました。特に印象深かった話の一つとして、次のような事例の紹介がありました。

子ども・子育て支援法に基づく基本指針の作成に向け、当初、国から示されたタタキ台には子どもの安心や健やかな成長のために「質の確保」という視点が欠けていたそうです。そのことを連合選出の委員が指摘した結果、「子ども・子育て支援事業の質の確保及び向上を図ることが必要」という言葉が加わりました。その具体的な定義としては幼稚園教諭や保育士等の労働条件と職場環境の改善を想定しています。

ちなみに当ブログでは保育園に関する記事をいくつか取り上げてきました。「保育園民営化の問題点」「保育園民営化に賠償命令」「保育園が倒産」などですが、子どもを単に「預ける」ではなく、「育てる」ためには保育者の力が重要であることを訴えてきました。質の確保とベテラン保育士の確保は表裏一体であり、連合選出の委員が指摘したような問題意識は非常に貴重な点だったものと思っています。

さらに連合という組織は、多くの組合員が子育ての支援を受ける立場である一方、様々なサービスを提供する働く側の声を直接把握できる強みがあることを強調されていました。そのため、今後、それぞれの市町村に設置される予定の子ども・子育て支援会議に各地域の連合役員らが、できる限り手を挙げていくことの意義を連合本部の部長は訴えられていました。

連合本部の部長の話も特徴的な内容に絞って紹介した訳ですが、このペースであと二人の講師の話と質疑応答まで触れていくと、いつもの長さに輪をかけた相当な長さとなってしまいそうです。したがって、たいへん勝手ながら、二人の講師の話は私自身が最も印象に残った内容のみに絞らせていただきます。まったく個人的な話となりますが、必然的に連合三多摩への報告書とは切り離し、その作業は別に改めて時間を取ることにしました。

子どもすこやかサポートネットの代表の話の中で、子ども・子育て支援の充実は貴重な社会資源の最小化に繋がるというものがありました。配布されたリーフレットに「子ども時代、体罰など一度も受けたことのない人たちが、社会で成功しています」という言葉が掲げられています。子どもに対する暴力の撲滅をはじめ、障がいのある子どもや多様な保護者の下で暮らす子どもたちへの支援は、その子どもたちのためであることはもちろんですが、成人してからの一人ひとりの社会生活を左右していくという見方が印象に残りました。

三鷹市の部長からは、三鷹市が進めている具体的な子ども・子育て施策の数々を紹介いただきました。その中で、民生委員を兼ねる児童委員110人ほどの方々が乳児家庭全戸訪問事業を担っている話を伺いました。地域による見守りネットワークの一画に児童委員の方々が位置付けられ、何か子育てで困ったことがあった場合、すぐ近所の方に声をかけられるという仕組みの貴重さを三鷹市の部長は強調されていました。

質疑応答の時間では三鷹市の部長の出番が多く、参加者の皆さんの関心は具体的な施策の現状や今後の動きに集まっていたようです。全体を通し、自分自身にとって、たいへん有意義な分科会となっていました。少子高齢社会が進む中、子ども・子育て支援の重要性は誰もが認めている課題だと思います。新たな枠組みが決まり、今後、具体的にどのように施策を進めるのか、各論での議論や判断が求められていきます。その意味で、三者三様の立場から非常に参考になる話を伺えました。講師の皆さん、関係者の皆さん、ありがとうございました。

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コメント

ホンマに子育て大事にしたいんならカネかけんとな。本文にカネの話は書いてへんけど、質の確保にも待機児童の解消にも、必要なもんやろ。未来の大人やさかい、そこをケチったら、将来余計にカネかかんねん。

阪神見てたら、どこの世界でもそうなんやなて思た。

投稿: K | 2013年10月14日 (月) 12時27分

こんばんは。
今日は「体育の日」ですが、私は10月10日のイメージが強いです。1964年東京オリンピックの開会式の日・・月曜日にする必要があったのかなと思ってしまいます。

さて、子ども・子育て支援が必要なことは当然だし、お金を掛ける必要があることや地域資源の活用も当然だとおもっています。
今回の記事の中では

>新制度の趣旨は、保護者が子育てについて第一義的責任を有するという基本的認識のもとに

この部分ですね。「第一義的責任」というのがどこまでを言うのか大変興味があります。
私自身は、子どもは社会で育てることが必要と思いますので、「子育ては、保護者と社会が行う」としたほうがよいのかなと思います。

では

投稿: 地球人 | 2013年10月14日 (月) 17時58分

Kさん、地球人さん、コメントありがとうございました。

今回の記事本文の中で財源の問題は消費税に絡んで簡単に触れただけですが、Kさんの問題意識の通りだと思っています。ちなみに以前の保育園に関する記事の中ではそのような点についても取り上げています。お時間がある際、ご覧いただければ幸いです。

地球人さんの問題意識も大切な提起だと思っています。それでも保護者と社会を並列にしてしまうよりも、やはり今回紹介した新制度の趣旨のような順序も欠かせない気がしています。

投稿: OTSU | 2013年10月14日 (月) 21時14分

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