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2013年6月22日 (土)

暴言や失言と本音の発言

前回記事「インターネット選挙解禁」の中で、復興庁の被災者支援を担当していた水野参事官のツイッターでの暴言問題に触れました。信用失墜行為や勤務時間中の書き込みによる職務専念義務違反が認定され、水野参事官には停職30日の懲戒処分が下されました。「田舎の議会」などと揶揄された川俣町議会議員からは「処分が軽すぎる」という不満の声も出ているようですが、懲戒免職処分までに至っていた場合、それはそれで「重すぎる」という印象を受けていたものと思っています。

過去に人件費総額を記した張り紙をはがした職員を懲戒免職にした事例は裁判で敗れ、タバコ1本で懲戒免職の方針を打ち出した事例も実際に下された処分は停職3か月となっていました。 過ちとその処分のあり方は慎重に判断されるべきものであり、その時の為政者の裁量などで大きく変動するような事態は避けなければなりません。そもそも今回の問題は個人的な思いを私的な場でつぶやいていた話であり、最初から匿名を貫いていた場合、処分の対象にさえできなかったケースです。

念のため、水野参事官のつぶやきが多くの皆さんを侮辱し、復興庁への信頼を大きく失墜させたため、処分そのものは免れない行為だと考えています。さらに匿名であれば、まったく問題がなかったというものでもありません。インターネット上は不特定多数の方々が閲覧できる公衆の場であり、おのずから言葉を選ぶべき空間だと認識しています。内心の自由や表現の自由は守られるべき権利ですが、公衆の面前で他者を誹謗中傷すれば、侮辱罪が問われるような社会的な関係性も意識しなければなりません。

いずれにしても水野参事官のつぶやきは暴言だと周囲から強く批判され、このような騒動を招いたことで本人は失言だったと深く反省されているのではないでしょうか。しかし、「左翼のクソども」や「某大臣の虚言壁」などと表現した言葉は、その時に感じた水野参事官の本音の発言だったはずです。電子辞書で調べてみると、失言とは「不都合なこと、間違ったことなどをうっかり言ってしまうこと」と記されています。

要するに水野参事官にとって本音を「うっかり」インターネット上でつぶやいてしまったことが手痛い失敗に繋がっていました。水野参事官の発言内容に対し、「まったく問題ない」「その通りではないか」と擁護する声も耳にしています。このブログを長く続ける中で、同じモノを見ていても、人によって評価や印象が大きく分かれることを体感してきました。同時に飾らない率直な物言い、つまり他者がどのように感じるかどうかを配慮しない本音の発言の数々に触れてきました。

そのため、水野参事官のような発想や反応を示される方々が決して少数派ではないことを感じ取っています。それでも匿名とは言えないツイッターで、他者を侮蔑する発言を繰り返してきた非常識さ、与える影響に対する想像力の欠如が水野参事官の致命的な過ちでした。完全な匿名とは言えない当ブログで、個人的な思いを発信している私自身にとって他人事ではなく、ブログでの発言の重さを改めて振り返る機会としています。続いて、今回の記事タイトルに絡んだ最近の事例をもう少し紹介していきます。

自民党の高市早苗政調会長が原発再稼働をめぐり「原発事故で死亡者が出ている状況ではない」などと発言した問題は18日、与野党に波紋を広げた。野党各党は高市氏の辞任要求を含め激しく反発。与党内からも東京都議選や参院選への影響を懸念し、批判の声が上がった。民主党の細野豪志幹事長は衆院議員会館で記者団に対し、政府が認定した福島県内の「震災関連死」が1400人近くに上ると指摘した上で、「この数字を踏まえることができない人は政権を担う資格がない。与党の政調会長失格だ」と述べ、辞任を促した。

海江田万里代表も党の会合で「自民党幹部の発言には、命を軽んじる発言が多く見られる」と批判した。日本維新の会の橋下徹共同代表(大阪市長)は市役所での会見で、「死亡者が出ていなくても、精神的被害など計り知れない被害がある。今の日本では原発推進は目指すべき道ではない」と指摘した。みんなの党の江田憲司幹事長は国会内での会見で「高市氏は即刻、政調会長、政治家を辞めるべきだ」と強調した。共産党の市田忠義書記局長は東京都内の街頭演説で「高市氏は福島県民の前で(同じことを)言えるのか。こんな人物に政党幹部を務める資格はない」と切り捨てた。

一方、自民党の小泉進次郎青年局長は国会内で記者団に、「被災者の立場、苦しい環境に思いをはせ、国の責任を踏まえた上で発言しなければならない」と苦言を呈し、同党の溝手顕正参院幹事長も会見で、「人が死ぬとか死なないということと(再稼働問題を)一緒にすることはない」と述べた。公明党幹部も「被災者の実態が分かっていない」と批判した。高市氏は同日、国会内で菅義偉官房長官と会い、自らの発言について釈明した。【時事通信2013年6月18日

その後、高市政調会長は謝罪とともに「エネルギーに関する全ての発言を撤回する」と記者団に語っていました。高市政調会長が最初に示した言葉は暴言であり、失言ですが、本音の発言だったことは間違いないはずです。取り返しのつかない福島原発事故に対し、水野参事官の暴言と同様、インターネット上では「死者が出ていない」という認識を示しながら「やはり原発は必要」という論理立てされる発言をよく耳にしていました。

岩手県議会の小泉県議は、番号で呼ばれた病院を「ここは刑務所か」などと自分のブログに書き込み、強い批判の嵐にさらされました。記者会見で「不適切な表現がありましたので削除の上お詫びします」と謝罪し、ブログの閉鎖に追い込まれるほどの「炎上」ぶりでした。それにもかかわらず、問題となったブログの記事の中で「このブログをご覧の皆さん私が間違っていますか」という問いかけを加えるほど、初めは自分自身が憤ったことの正当性を訴えていました。

このように日頃からインターネットを中心に様々な情報や幅広い主張に接していると、水野参事官や高市政調会長のようなモノの見方があることを把握でき、世の中には本当にいろいろな方がいることを実感できています。ただ前述したとおりモノの見方や評価は個々人によって大きく枝分かれしていくため、このブログのような記事内容に対して反発や嫌悪されている方がきっと少数ではないことも自覚しているつもりです。

そもそも暴言や失言の大半は本音の発言が表面化したに過ぎないものと考えています。口を滑らせたという不用意な「うっかり」もあれば、小泉県議のように暴言という認識がないまま発言し、強い批判にさらされているケースもあろうかと思います。批判を受けた後、発言内容を撤回する場合が多いようですが、その本心を180度変える機会に繋げられるほうが稀であるように感じています。そのような本音を二度と口外しないことを心に刻む方のほうが多数派になるのかも知れません。

暴言や失言と本音の発言、政治家の場合、それらをトータルに見られた上で人物評価が積み重ねられていくはずです。そのような意味合いで考えた際、安倍首相はフェイスブックを通して本音の発言を連発しているため、生々しい人物像に触れることができます。最近の発言の中には暴言や失言の類いに見なされるようなものも少なくありません。とは言え、田中元外務審議官に対する個人攻撃の件に関しても真っ向から擁護する声が上がるなど、やはり安倍首相の発言の数々も人によって大きく評価が分かれていくようです。

このブログでは新聞記事の内容をそのまま掲げる時が頻繁にあります。他のサイトからの情報やブログ記事を紹介する時も多く、その内容や書き方にクレームが寄せられたこともありました。そこまで私自身が責任を持つ範疇なのかも知れませんが、「このような見方もある」という多面的な情報を提供するための手法としてご理解ご容赦いただければ幸いです。最後に、安倍首相に期待し、支持されている方々にとって非常に不愉快な内容だろうと思いますが、前述したとおり多面的な情報の一つとして『日刊ゲンダイ』の記事を紹介させていただきます。

安倍首相に対して不安の声が広がっている。よほど余裕を失っているのか、ちょっと批判されただけで、相手構わず、片っ端から反論攻撃しはじめているからだ。精神を病んでいるのではないか――。そんな声まで上がりはじめている。「聴衆の中に左翼の人達が入って来ていて、マイクと太鼓で憎しみ込めて(笑)がなって一生懸命演説妨害してました」――。今月9日、安倍晋三首相が自身のフェイスブックにこう書き込んだ一件が注目されている。渋谷駅前で街頭演説を行ったところ、現場にいたTPP反対のグループに批判されたため、ネットで反撃したのだ。

首相が批判への反撃に躍起になったのはこれだけではない。先週、元外務審議官の田中均氏に外交政策を批判された際は、11年前の田中氏の言動を持ち出して「外交官として決定的判断ミス」「彼に外交を語る資格はありません」とこき下ろした。NHKにイチャモンをつけたこともあった。「メキシコの様な親日的な国との首脳会談は、NHKも報道しないので、フェイスブックでお知らせします」と投稿。ところがすでに報じていたことが分かり、「失礼しました」と訂正して赤っ恥をかいたのだ。

「首相がどうかしているのは、事実関係も確認せずに相手を攻撃していることです。たとえば首相は自分の演説を妨害するために左翼集団が渋谷まで来たと思ったようですが、市民団体の集会はもともと予定されていたもので、首相の方が後から乗り込んできたのが実情です。それに彼らは左翼集団でもない。メキシコの件だってNHKはきちんと報じている。被害者意識が強すぎます」(政界関係者)

<気に入らない相手、ちょっとした批判にムキになって反論攻撃>この人の頭の中はどうなっているのか。「北朝鮮のトップと同じ精神構造。一種の攻撃型パーソナリティー障害です」と分析するのは明大講師の関修氏(心理学)だ。「安倍さんの中には善と悪の2つしかないのです。自分は正義を行う善、逆らう人は『左翼』という名の悪という考え。中間はいません。北朝鮮が周辺諸国を威圧するように、安倍さんも反対勢力をすべて『左翼』とみなして攻撃し続けないと不安でしょうがない。なぜなら今の人気が脆弱(ぜいじゃく)であることを知っているからです。だから独裁政権にしたい。そのためには今後も左翼呼ばわりはやめませんよ」

北朝鮮を目の敵にしてきた印象の強い安倍首相が、実は金正恩と同じメンタリティーとは皮肉な話ではないか。「安倍さんはもともと自分に自信を持てず、気持ちに余裕がないのです。だからほかの政治家みたいに批判的な意見に静かに耳を傾けることができない。打たれ弱い性格なので、政策がつまずき支持率が落ちたら、また政権を放り投げるでしょう。粘り腰で努力して責任を取ることはできないタイプ。国民より、自分がかわいいからです」(関修氏)こんな人物に60%もの支持率。日本人は破滅の道を突っ走っているのか。 【日刊ゲンダイ2013年6月17日

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コメント

 水野氏はおそらく知識としてないと思うが
川俣に人たちは日本に並大抵ではない貢献をしてきたということを誇りに思っている。
 日本の主要輸出品であった絹の大生産地というより絹産業を牽引してた地域だった。
 日本に貢献したのにあのように言われ怒るのは当然

投稿: | 2013年6月22日 (土) 23時22分

‘日本語も十分話せないのに、英語を学んでなんとする。’と言う人がいる。だが、現実には、日本語脳による話の失敗は避けられない。

>政治家が、その言葉で失敗したり、問題をおこすことは古今、数多い。
>特に最近は、それが目立つ。例えば、アベノミクス効果で好調な経済を演出し、今や圧倒的な支持率を誇る安倍首相は、歴史認識問題で米国や韓国の不興を買い、その言葉をトーンダウンさせた。
>また猪瀬東京都知事は、アメリカのメディアのインタビューで、オリンピック招致のライバル都市を貶めることを言ったということで謝罪に追い込まれた。
>さらに橋下大阪市長、日本維新の会共同代表は、従軍慰安婦について誤解を与えるようなことを言い、また沖縄駐留米軍に風俗業の活用を進言したということで問題になっている。

司馬遼太郎は、<十六の話>に納められた「なによりも国語」の中で、片言隻句でない文章の重要性を強調している。
「国語力を養う基本は、いかなる場合でも、『文章にして語れ』ということである。水、といえば水をもってきてもらえるような言語環境 (つまり単語のやりとりだけで意思が通じ合う環境) では、国語力は育たない。、、、、、、ながいセンテンスをきっちり言えるようにならなければ、大人になって、ひとの話もきけず、なにをいっているのかもわからず、そのために生涯のつまずきをすることも多い。」

日本人は文章を熱心に作らない。文章を作ることは、考えを練る事に通じている。
英語には時制がある。文章を作らなくては、時制が表せない。だから、文章にして語ることは重要なのである。
日本語には時制がない。文章は常に現在時制 (現実に関すること) に定まっているようなものである。だから、単語だけのやり取りで、ことが足りるものと自他ともに思っている。
そのため、政治家となって、外国人と理想 (非現実) の話もできず、何を言っているかも理解されず、そのために国を過ちに導くことも多い。

http://www11.ocn.ne.jp/~noga1213/
http://3379tera.blog.ocn.ne.jp/blog/

投稿: noga | 2013年6月23日 (日) 03時33分

2013年6月22日(土)23時22分に投稿された方、nogaさん、さっそくコメントありがとうございました。

いろいろ貴重なご意見や情報を提供いただけるのがコメント欄の醍醐味だと考えています。これからもお時間等が許される時、気軽にご投稿いただければ幸いですのでよろしくお願いします。

2013年6月22日(土)23時22分に投稿された方、次回投稿される機会がある時は、できれば名前欄の記入についてご協力くださるようよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2013年6月23日 (日) 06時57分

仕事中にツイッターを何度も投稿してるので
処分としては厳しいものでもなく妥当でしょう。

投稿: 貧乏国家公務員 | 2013年6月23日 (日) 16時10分

貧乏国家公務員さん、コメントありがとうございました。

記事本文のとおり懲戒免職処分だった場合は「重すぎる」と考えていましたが、停職30日であれば厳しすぎるという印象は持っていません。ご指摘のとおり妥当な判断だったように思います。

ちなみに都議選の選挙速報をNHKとMXテレビを切り替えながら見守っています。事前の予想通り自民党が圧勝し、民主党が大幅に議席を減らす見通しです。その中で、組合が推薦した地元選挙区の候補者は早々に当確を得て、まずは一つホッとしているところです。まだまだ今夜、一喜一憂が続く長い夜になりそうです。

投稿: OTSU | 2013年6月23日 (日) 22時01分

さんはもともと自分に自信を持てず、気持ちに余裕がないのです。だからほかの政治家みたいに批判的な意見に静かに耳を傾けることができない。打たれ弱い性格なので、政策がつまずき支持率が落ちたら、また政権を放り投げるでしょう。粘り腰で努力して責任を取ることはできないタイプ。国民より、自分がかわいいからです。

さて問題です。これは誰のことを指しているでしょうか。
1.ポッポ鳩山
2.イラ菅
3.極右安倍

(敬称代わりに有名な愛称を付けさせていただきました)

投稿: とーる2号 | 2013年6月24日 (月) 19時58分

とーる2号さん、コメントありがとうございました。

新規記事のタイトルは「参院選公示前、今、思うこと」とするつもりです。読み手によって印象が大きく分かれるような内容となるのかも知れませんが、気ままに書き進めてみようと考えています。ぜひ、またご覧いただければ幸いですので、よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2013年6月29日 (土) 08時13分

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