参院選公示前、今、思うこと
驚きました。前回の記事「暴言や失言と本音の発言」の中で触れた岩手県の小泉県議会議員が自殺されたというニュースに接しました。ご自身のブログでの発言内容が強い批判を受け、そのことを気に病まれた可能性が高いものと見られています。断定的に論じられない段階ですが、「ブログが炎上したぐらいで」という周囲からの声が示されがちです。ただ正しいと信じていた自分自身の価値観が思いがけず全否定され、激しい批判にさらされた事態は周りが想像する以上にご本人を追い込んでいたのかも知れません。
たいへんお気の毒な話であり、県議としての本務で信頼回復に努められるのか、いっそのこと県議を辞職して心機一転はかられるような選択肢で悩まれていただきたかったものと思っています。一方で、至らなかった点や過ちは批判されてしかるべきですが、インターネット上でも、マスメディアのあり方としても、行き過ぎた個人攻撃は慎むべきものと考えています。もちろん言うまでもなく、批判意見と誹謗中傷の違いは必ず意識しなければなりません。
さて、先週日曜に行なわれた東京都議会選挙で、民主党は都議会第1党から第4党までに落ち込むほど議席数を減らしました。一方で、自民党は候補者59人全員が当選するという完勝ぶりでした。「アベノミクス」効果や期待感から自民党政権に対する支持率は高く、その勢いが都議選にも反映されたものと見られています。引き続き7月21日には参議院議員選挙が行なわれます。都議選での勢いが衰えず、自民党が参院選でも圧勝するという下馬評です。
実は私どもの組合が5月に職場委員会を開いた時、資料の中で参院選の日程を「7月4日公示 7月21日投票」と決まっているように記していました。すると職場委員の一人である選挙管理委員会事務局の職員から「国会が延長されれば選挙の日程も延びますので、まだ21日の投票日はあくまでも予定ですのでご注意ください」という指摘を受けていました。結局、会期は延長されず、6月26日、第183回通常国会が閉幕しました。
それでも翌朝の新聞記事では「7月21日投開票が想定される」という記述にとどまっていました。選挙の投票日を最終的に確定する閣議決定がされていないからでした。今回、改選される参議院議員の任期満了日は7月28日です。任期満了まで1か月ほどの段階に至っても「まだ投票日は予定」という話には強い違和感がありました。3年前は6月16日に閣議決定され、投票日が7月11日でした。いつも遅いようですが、準備を進める選挙管理委員会の苦労は並大抵ではありません。
今回、ようやく6月28日の閣議で7月4日公示、7月21日投開票という日程が正式に決まりました。振り返れば6年前、やはり安倍政権の時、参院選の投票日が予定日の1か月前の段階で1週間延びました。当時の安部首相は「国民のため、重要な法案を成立させるために会期を延長する」という説明を加えていましたが、参院選に向けた党利党略の思惑が絡んだ判断でもあったようです。いずれにしても突然の変更は、全国各地の自治体の選挙管理委員会を中心に大きな混乱を生じさせました。
印刷物を無駄にするなどの自治体側の負担にとどまらず、体育館が借りられなくなったり、夏祭りが延期されたり、突然の選挙日程の変更は住民の皆さんにも様々な影響を与えていました。確かに重要な法案を成立させるためには状況に応じた会期延長も必要だろうと思います。しかし、3年に1回の参院選を直前にした通常国会に限り、会期延長は想定せず、あらかじめ決めた日程の範囲内で与野党ともに協力し合うという申し合わせもあり得るのではないでしょうか。
そのような慣行を定めれば、早期に参院選の日程を確定でき、自治体側は安心して選挙準備に取りかかれることになります。それこそ「国民のため」であり、地域主権という考え方に合致するような気がしています。そもそも6月26日に閉幕した国会の終盤でのゴタゴタは「国民のために重要法案を成立させなければ」という気概が与野党ともに不足していたように見えます。採決に付せれば必ず成立していたはずの電気事業法改正案や生活保護法改正案などが結果的に廃案となりました。
会期延長が選択肢としてあろうとなかろうと、党利党略が優先されるような国会運営では話になりません。そのような優先順位が改められるのであれば、最初から定められた国会の会期内で成立すべき法案は成立し、否決すべき法案は否決できる場になり得るものと思っています。今回、いくつかの重要法案が廃案になった理由について、与野党の幹部が釈明していますが、お互い責任のなすり合いとなっています。そのような中で、どうもマスコミのトーンは安倍首相に対する問責決議を出した野党の責任、とりわけ野党第1党である民主党への批判を強めているように感じています。
もちろん民主党に一切責任がないというものではありません。しかし、『ニュース23』で取り上げた自然エネルギー財団のディレクターである大林ミカさんの言葉を耳にすると、自民党があえて廃案の道を選択したように見受けられます。大林さんは今国会において発送電分離に向けた電気事業法改正案が成立することを期待していました。問責決議の影響でその法案が廃案になった直後のインタビューで「非常に許せないですね。政争の道具にされている。問責決議案の前に法案の採決をしようという動きがあったが、与党がそうしなかった」と非常に残念がっていました。
重要法案の成立を最優先させようとしていた民主党の議員からも「自民にまんまとしてやられた」という声が出るなど、自民党さえ「その気になれば廃案にはならなかった」という見方が正しいのだろうと思っています。自民党にとって、問責決議で重要法案が廃案になったほうが野党を追及しやすく、さらに「ネジレ」国会の問題を強調でき、いっそう参院選を優位に運べるものと目論んだように見て取れます。このような見方が伝わらないまま、各政党の姿勢が評価されてしまうのはフェアな話ではないため、マイナーなブログの場ですが知り得た顛末を取り上げさせていただきました。
インターネット選挙解禁となりますが、このブログでは今までどおり公示日以降、候補者の固有名詞は控えるなど一定の制約を課していきます。そのため、選挙期間中ではない日常的な政治談議として、7月21日の参院選を話題にできるのは今週が最後となります。 このような事情があるため、たいへん長い記事となっていますが、もう少し私自身が今、思うことを気ままに書き進めていきます。あくまでも私自身が正しいと信じている一つの見方であり、閲覧されている皆さん一人ひとりからは様々な評価や批判を受けるのだろうと思います。ぜひ、いつものとおりいろいろな「答え」を認め合った場としてご理解いただけるようよろしくお願いします。
私自身、このまま国民一人ひとりの暮らしが本当に良くなるのであれば、自民党政権を心から支持したいものと考えています。しかし、自民党の基本的な立ち位置や具体的な方向性について、どうしても強い懸念が拭え切れません。金銭解雇ルールや地域限定正社員の導入が取り沙汰されるなど、最近、雇用のあり方そのものが「規制緩和」の対象とされがちです。連合と緊密な連携をはかれた前政権と比べ、経営者の目線での政治に軸足を置いていることが明らかな政権だと言えます。
取り返しの付かない原発事故の教訓を忘れ、海外へのトップセールスなど自民党政権は原発推進に舵を切っています。それに対し、民主党は原発ゼロ社会をめざす公約を掲げています。自民党の改憲草案は「権力者を縛る」という憲法の理念から「国民を縛る」方向性を強く打ち出しています。さらに改正発議要件の緩和を企図するなど立憲主義を軽視した姿勢が随所に見られています。外交面でも中国や韓国との対決姿勢を強めるあまり、アメリカからも疑義が投げかけられるような危うさをはらんでいます。そもそも「アベノミクス」自体、その実効性に対して疑問視する声が強まり始めています。
このような懸念点が多い中、このまま自民党が突出した勝利を収めることに強い危惧を抱いています。政権を担った民主党に対する失望感も容易に拭えないのかも知れません。それでも自民党政権との対比の中で、やはり民主党には頑張って欲しいものと願っています。特に労働組合、連合と緊密な連携をはかれる意義は非常に大きいものがありました。その裏返しの結果が、自民党政権による地方交付税とリンクさせた地方公務員給与の不当な削減問題だと言えます。
以上のような問題意識を踏まえ、7月21日の参院選に向けて私どもの組合は自治労の代表である相原久美子さん(民主党・比例代表区予定候補)の推薦を決めています。6年前、相原さんは「非正規」職員から参議院へ送り出された方であり、このブログでは「自治労の思い、あいはらくみこさんへ」という記事を投稿していました。言うまでもありませんが、選挙で投じる一票は一人ひとりの主体的な判断の表れでなければなりません。その判断のための参考材料の一つとして、このブログのような場も利用いただければ本当に幸いなことだと願っています。
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