地方公務員の退職手当削減
このブログは週1回更新しています。実生活にあまり負担をかけないペースとして、週1回の更新を定着させてきました。結果として、必ず土曜か日曜の更新を習慣化したため、長い間、1週も欠かさずに定期的な投稿を続けられています。ちなみに週1回の更新ペースであるため、これまで記事内容の題材探しに苦労したことはほとんどありません。
加えて、「コメント欄雑感、2012年春」に記したとおり昨年春頃から基本的に平日は私自身のコメント欄への参加を控え始めました。個別の問いかけなどに対して即応できず恐縮していますが、じっくり記事本文を通してお答えするというパターンに改めていました。したがって、ますます新規記事の題材探しに事欠きません。逆に「機会があれば記事本文でお答えします」と述べながら充分対応し切れず、たいへん申し訳なく思っています。
当たり前な話ですが、記事本文自体が週1回の更新ですので、コメント欄での動きがない場合、週末に向かうにつれアクセス数は減る傾向をたどっています。それが先週は毎日、普段より一回りアクセス数の多い日が続いていました。「公務員 早期退職」という検索ワードなどから以前の記事「退職手当削減と人事院勧告」を訪れる方が急増していたからでした。
埼玉県の教員らの駆け込み退職が報道された以降、地方公務員の退職手当削減の話題が連日マスコミで取り上げられています。そのため、検索サイトのトップに掲げられている以前の記事への訪問が増えていました。今回の記事投稿に際しても、取り上げたい題材は幅広くありました。その中で、いろいろな意味で旬な話題となる退職手当削減の問題の投稿が欠かせないものと考え、組合役員の立場から一言二言添えていくつもりです。
埼玉県職員の退職手当が2月から引き下げられるのを前に、3月末の定年退職を待たず今月末で「自己都合」により退職する公立学校教員が、県採用分で89人に上ることが21日、わかった。県費で退職手当が支払われるさいたま市採用の教員も、21人が同様の予定という。県教育局の担当者は「例年、定年退職者が年度途中で辞めることはほとんどない。異例の事態だ」としている。該当教員がいる学校では後任の確保の対応に追われている。県によると、今年度の県の定年退職者は約1300人(県警を除く)。このうち1月末での退職希望者は教員が89人、一般職員が約30人の計約120人となっている。
改正国家公務員退職手当法が昨年11月に成立し、総務省が自治体職員の退職手当引き下げを自治体に要請。埼玉県では県議会が昨年末に改正条例を可決し、2014年8月までに平均約400万円が段階的に引き下げられる。改正条例は2月1日から施行され、今年度の定年退職者は3月末まで勤務すると、平均約150万円の減額となるという。2月1日の施行について、県人事課は「速やかな実施が必要」と説明している。【読売新聞2013年1月22日】
埼玉県職員の駆け込み退職が注目を浴びた後、このような動きが全国的に見られていることも伝わっています。国家公務員の退職手当が今年1月から段階的に引き下げられるため、地方公務員にも準じた削減が求められていたからでした。今回、幸いなことに駆け込み退職を選んだ教職員のみが一方的に批判される報道ではなく、擁護する声も数多く示されていました。
さいたま市立中学校の男性教諭が新聞社からの取材を受け、削減が伝えられた時の状況などを語られていました。ご自身は3月末まで勤務して定年退職すると決めていますが、「(前倒しで2月より前に)辞める決断をした先生は今、針のむしろだ」と心配し、「今後の現場の混乱の責任まで、辞めた先生のせいにされたら、納得がいかない。結果的に現場の士気を大きく下げたのは確かだ」と、制度自体に疑問を示されています。
退職手当の削減は組合を通し、昨年11月末には知っていたそうです。正式に校長から説明があったのは昨年12月21日で、「1月11日までに決断してください。(前倒しで)辞めるか辞めないかは自由です。代わりの人間は必ず出します」と告げられていました。その時の思いは「達成感を感じていた定年退職の間際に減額というのは、正直、残念な思い。県が財政事情を詳しく説明して、協力を求める姿勢を見せるならまだしも、資料は制度の説明を書いたA3の紙1枚だけ。『教師は、生徒がいるから辞めないだろう』と、足元を見られているように感じた」と語られていました。
県内の公立学校で100人以上の教員が退職手当減額前の1月末での退職を希望している問題で、連合系の職員労組でつくる「県地方公務員労働組合共闘会議」は23日、上田清司知事が「無責任のそしりを受けてもやむをえない」などと発言したことに抗議する申し入れ書を県に提出した。同会議によると、退職手当の減額を巡っては昨年11月に計4回の交渉があり、今年2月から引き下げれば1月末の退職希望者が生じる恐れがあることを指摘していたという。申し入れ書では「年度途中での大幅削減を強行した責任を棚に上げ、『無責任』発言で応えるとは本末転倒。責任を転嫁しないよう強く要請する」と主張している。【毎日新聞地方版2013年1月24日】
このような混乱を懸念し、実施時期の先送りを求めていた組合側としては忸怩たる思いを強めているのではないでしょうか。そもそも労使交渉には立場や視点の異なる者同士が率直な主張や意見を交わし、物事の適否を多面的にチェックできる側面があるものと考えています。賃金を単なるコストだととらえ、極端に抑制していけば労働者の士気が低下し、組織のパフォーマンスの悪化も招きかねません。
当然、労働組合は「組合員のため」に頑張る訳ですが、その頑張りがより望ましい結果に繋がるケースが多いことも信じています。退職手当削減の問題は、私どもの組合に対しても昨年11月21日に市当局から提案が示された以降、労使交渉を進めてきました。現行の最高支給率59.2月を45月までに引き下げる提案で、国よりも激変緩和がはかられた東京都の内容に準じたものでした。国や都が今年1月からの実施だったため、同様に1月から改めたいという提案でした。
組合員の生活設計に大きな影響を及ぼす重大な内容であり、「1月実施はあり得ない」ことを組合は訴え、1月に入って大詰めの交渉を重ねていました。その結果、1月22日の夜、経過措置の改善などを新たに確認し、4月からの実施を労使合意しました。実は組合ニュースを基本的に月2回定期発行していますが、22日付のニュースの見出しは「可能な限りの激変緩和措置を追求」でした。その夜、一気に合意に至った訳ですが、幸か不幸か本庁舎の組合員の皆さんにはそのニュースは配り切れていませんでした。
そのため、取り急ぎ24日に新たな組合ニュースを発行し、本庁舎の皆さんに対しては異例の2号同時配布となっていました。その見出しは「激変緩和措置の改善などを確認」でした。たいへん恐縮ながら出先職場の皆さんには次の火曜水曜で臨時の配布体制を取ってお届けする予定です。2月4日には職場委員会を開き、詳しい報告を行なう運びとしています。このような事情もあり、今回の新規記事では退職手当削減の問題を取り上げさせていただきました。
組合ニュースで触れてきたことですが、都労連は昨年の賃金闘争の際、退職手当の課題を最優先で取り組んでいました。その結果、経過措置のみで官民格差約400万円の大幅減額となる国に比べ、加算ポイントの率を引き上げることで激変緩和をはかっていました。私どもの市の提案も、その都の内容に準拠したものであり、最終到達の率等を独自に上乗せすることは非常に難しい情勢でした。
そのような中で、部長、課長、係長に比べ、経過措置期間の減額幅が大きかった主任と主事職のポイントを1ポイントずつ上乗せする回答を引き出せました。現行の長期勤続退職制度の運用変更が伴いましたが、この機会に定年前早期退職者にとって有利となる特例措置なども新設しました。限られた財源の中で、組合の「頑張り」は「市民の不利益に繋がる」という見方をお持ちの方がいることも知り得ています。しかし、そのような見方に対しては前述した労使交渉の側面をはじめ、「泥臭い民主主義」の一つとして労働組合の役割や意義をご理解いただければ幸いだと思っています。
一方で、組合員の皆さんからは今回の決着に対して「また組合は押し切られた」と批判を受ける可能性もあります。これまで「組合費を払っているのだから、それに見合う結果を出して欲しい」という厳しい声が寄せられる時もありました。まだまだ幸いなことに多くの組合員の皆さんからは組合の「頑張り」への感謝の言葉が寄せられていますが、公務員組合の役員にとって、たいへん厳しく、悩ましい時代を迎えています。
気持ちが萎えそうな場面もありますが、それでも「組合は必要」という思いのもと多忙な日々を過ごしています。前回記事「旗びらきの話、インデックス」の中で触れましたが、今後、国に準じた地方公務員の給与水準引き下げの問題が立ちはだかる見通しです。この難題に対しては国家公務員の皆さんをはじめ、幅広い方々から「共感」を得られるような論点整理や問題提起が欠かせなくなるはずです。できれば次回以降の記事で掘り下げていくことを考えています。
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