« 2012年1月 | トップページ | 2012年3月 »

2012年2月26日 (日)

給与削減と公務員制度改革

国家公務員の給与削減に向けた法案の3党合意がはかられ、木曜日には給与削減特例法案が衆議院を通過しました。内容は次の報道のとおりですが、月内に成立する見通しです。3党合意した際のニュース紹介が冒頭に置かれているとおり今回の記事内容に関しては、先週末に投稿することも考えていました。ただ旬な話題としては大阪市の職員アンケートの問題だろうと判断し、「再び、橋下市長VS大阪市の組合」という記事を先に投稿していました。

民主、自民、公明3党の政調会長が17日、国会内で会談し、国家公務員の給与削減について、人事院勧告(人勧)に基づく0・23%の引き下げを昨年4月に遡って実施し、2012、13年度の2年間はこの人勧分を含めて平均7・8%引き下げることで合意した。削減で生じる約5880億円は復興財源に充てられる。自公両党が国会に提出している議員立法の一部を修正し、今月中の成立と4月からの引き下げ実施を目指す。民主党が給与削減とセットで審議入りを求めていた、国家公務員に労働基本権を付与する国家公務員制度改革関連法案については、3党の合意文で「審議入りと合意形成に向けて環境整備を図る」とするにとどめ、民主党が大幅に譲歩した形だ。 【読売新聞2012年2月17日

自律的労使関係制度(人事院勧告制度の廃止と協約締結権の回復)を先取る意味合いからの労使合意だったのにもかかわらず、今回、その点に曖昧さが残る遺憾な経過をたどっていました。さらに連合会長も「寝耳に水」だった見られ方もあり、連合と民主党との信頼関係を大きく損ねる事態に至っていました。そのような中、民主党の輿石幹事長が連合本部を訪問し、古賀会長らに対し、この間の対応について謝罪していました。さらに関連4法案の成立に向けて全力を尽くす決意を明らかにしたことで、連合として三党合意を受けとめざるを得ないものと判断したようでした。

ここで本論から外れますが、少し注釈を加えさせていただきます。このブログの記事の中で、解説が必要と思われる用語には、なるべく別なサイトへのリンクをはっています。下線のある言葉をクリックいただければ、その用語の意味が分かるページを閲覧できるように努めていました。一方で、自治労や連合など頻繁に出てくる言葉に対しては、右サイドバーに「用語解説リンク」を設け、当該記事の中でのリンク先の紹介は省いていました。

公務労協(公務公共サービス労働組合協議会)という言葉も耳慣れないものの一つだろうと思っていますが、普段は「用語解説リンク」に委ね、その都度リンクをはっていませんでした。ちなみに連合に所属している私どもの組合の縦系列を簡単に表現した場合、連合>公務労協>公務員連絡会>自治労>自治労都本部>私どもの市職員労働組合、もう一つは連合>連合東京>連合三多摩>連合地区協議会>私どもの組合というような関係性があります。

自治労の位置に日教組や国公連合などが当てはまる訳ですが、今回の国家公務員給与削減交渉の当事者は国公連合でした。日頃から公務員関係の諸課題では、公務労協や公務員連絡会が中心となって政府との交渉に当たっていました。そのような関係性があるため、3党合意の動きがあった直後の2月19日、公務労協として下記のとおり「給与の臨時特例に関する法律案」及び「国家公務員制度改革関連4法案」等に係る3党(民主、自民、公明)協議の経過と決着等に対する声明を出していました。

2月16日夕刻に開催された政府・民主党三役会議は、これまで民主、自民、公明の三党の政調会長会談、同実務者会議において協議されてきた「国家公務員の給与の臨時特例に関する法律案」(以下、「臨時特例法案」という。)及び「国家公務員制度改革関連4法案」(以下、「関連4法案」という。)の取扱いについて、自民党及び公明党との協議を継続することとされた。そして、これに際し民主党は、翌2月17日、輿石幹事長が連合を訪問、古賀会長等と会談し、「関連4法案」の成立に向けて民主党が全力を尽くす決意が明らかにされた。

2010年参議院議員選挙以降、ネジレ国会における政治の混迷を踏まえた、3党間のこの問題に関する協議は、政調会長会談が2011年12月1日・15日、2012年1月5日に行われ、その委任を受けた実務者会議が2011年12月2日、2012年1月25日・30日・2月1日と、第179臨時国会の終盤以降、断続的に実施されてきた。これらの協議を踏まえ、2月9日の実務者会議において「成案が得られなかった事項」をはじめとする国家公務員の給与削減と「関連4法案」の取扱いについて、2月17日の3党政調会長会談において合意した。

具体的には、①人事院勧告を実施、さらに7.8%まで国家公務員の給与削減を深堀りするため、自民党・公明党共同提出の「一般職の国家公務員の給与の改定及び臨時特例等に関する法律案」を基本とする、②地方公務員の給与については、地方公務員法及び「臨時特例法案」の趣旨を踏まえ、各地方公共団体での対応のあり方について、国会審議を通じて合意を得る、③「関連4法案」については、審議入りと合意形成に向けての環境整備を図る、等となっている。

なお、一部マスコミ報道が「自公案丸のみ」としていることは、明らかな事実関係の誤認であることを指摘する。一方、第180通常国会開会直後の1月25日の3党実務者会議において、民主党が提起した「2011年度人事院勧告の実施」は、連合をはじめ労使合意当事者である我々に一切の相談も事前告知もないまま行われたことは厳然たる事実であり、政党間協議という性格上、極めて機密性の高い問題ということは否定しないが、それが我々との信頼関係に優先するということはあり得ないことを厳しく喚起し、今後、このようなことが断じてないことを強く求めるものである。

また、政府と関係組合との労使交渉及びその合意は、最も尊重されなければならないことは当然のことである。なお、昨年5月、当時の菅政権との間において、政府自らが自律的労使関係制度(人事院勧告制度の廃止と協約締結権の回復)を先取ることを表明した交渉において、民主党及び政府との信頼関係のもと、東日本大震災の復旧・復興の財源に充当するため苦渋の判断と決断を持って対応した国家公務員の給与削減に係る労使合意を踏まえれば、今般の3党政調会長合意は、極めて残念である。

しかし、第180通常国会が、政権争いという政局に埋没した野党側の対応により、政府・与党の政権運営が過去に例のない難渋を極めているもとでの判断である。民主党を中心とする政権が、国民が安心して暮らすことのできる社会を実現し国民から信頼される政権として機能するため、そして何より遅れている東日本大震災の復旧・復興の財源として一刻も早く措置することを最優先として、三党政調会長合意を受けとめるものである。

公務労協は、連合とともに組織の総力を傾注し、「関連4法案」の今国会における成立と、「地方公務員の労働関係に関する法律案」等の早期国会提出と成立に向け、とくに公務員の労働基本権の回復は、60年余の公務労働運動の悲願であるとともに、政権交代という千載一遇の機会において、そして、すでに人事院勧告による給与決定システムが機能し得ない現状のもと、向後の公務員給与決定システムに係る展望を確保するという観点から、何としても達成しなければならない至上命題として持てる力のすべてを注ぐものである。

少し迷いましたが、声明の全文を転載しました。もともとホームページ上に掲げられている内容であり、公務労協としての見方や考え方を正確に伝えるためには、そのほうが適当だろうと判断しました。また、このような文章を普段見慣れていない方々にとって、どのように映るのかという興味もあったからでした。当該の国家公務員の皆さんからは「弱腰」と批判されるのかも知れませんが、現在の政治状況の中で私自身も、連合や公務労協の受けとめ方はやむを得ないものと見ています。

しかしながら最終的な結果としても、公務員制度改革関連法案が流れるような場合は非常に大きな問題だろうと考えています。60余年の悲願の歴史をたどってみると、終戦直後は公務員も労働組合法などの適用対象でした。それが1948年のマッカーサー書簡(公務員のストライキを禁止)を契機に公務員の労働基本権の制約が進み始めました。それ以降、現在に至るまで公務員には争議権や協約締結権が認められず、警察と消防職員には団結権も否定されています。そのため、公務員法では「労働組合」ではなく、「職員団体」と呼ばれていました。

とは言え、間違いなく公務員も勤労者であり、憲法第28条(勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。)によって、労働基本権は保障されていると解釈されていました。あくまでも一部制約があるという見方でした。合わせて、ILO(国際労働機構)は151号条約で、公務員の団結権、団体交渉権、争議権、市民的権利を定めました。2002年11月のILO理事会では、日本政府に対して「公務労働者に労働基本権を付与すべき」という勧告も採択していました。それに対し、日本政府は条約の批准を見送り、このような国際的な要請にも応えない姿勢に終始してきました。

ようやく数年前から公務員組合側と政府との協議の場で、労働基本権回復が具体的な課題として取り上げられるようになっていました。つまり自公連立政権当時の行革相も「労働基本権の見直しは不可欠」との考え方を表明していました。それにもかかわらず、現在の自民党の茂木敏充政調会長からは「(公務員は)労働協約権が手に入り、好き放題できる」という決め付けた批判を繰り返し、改革法案の審議入りに応じない構えを見せ続けていました。

ここで、公務員制度改革関連法案が成立すると、どのような変化があるのか簡単に紹介していきます。法改正後、人事院(人事委員会)による勧告制度は廃止されます。「職員団体」から「労働組合」に位置付けられ、労使交渉によって賃金・労働条件を決定する協約締結権が付与されます。これまでも書面協定を結ぶことは可能でしたが、法的拘束力はなく、労使双方に道義的な義務を課しているに過ぎませんでした。そのため、労使交渉や労使合意なく、首長が条例案を議会に提出し、あるいは締結した文書協定の内容を反故にしても法令上は責任を問われることがありませんでした。

改正後は、正当な理由なく交渉を拒否した場合は不当労働行為として救済申し立ての対象となり、交渉不調や一方的に交渉が打ち切られれば、斡旋、調停、仲裁手続きを労働委員会に委ねることが可能となります。残念ながら争議権の付与は今後の検討課題となっていますが、民間法制に大きく近付く法改正であることは間違いありません。なお、現時点で地方公務員の労働関係に関する法案の提出の見通しは立っていませんが、国家公務員の改正内容に沿った中味が予定され、早ければ2013年度から地方公務員にも導入される計画だと聞いていました。

このような経緯がある中、公務員組合にとって公務員制度改革関連法案の行方は重大な関心事でした。決して「好き放題」できるからというような理由で望んでいる訳ではなく、憲法からも国際的にも当たり前な姿に近付けて欲しいという願いに過ぎませんでした。仮に争議権まで回復できたとしても、このような社会情勢の中で、無鉄砲に行使するような発想は公務員組合の役員、誰も持っていないはずです。

そもそも給与削減の問題と公務員制度改革が絡められている点も不合理な話でした。それでも連合系の組合である国公連合と民主党政権との協力関係があったからこそ、大義名分を重視しながら、たいへん厳しい提案内容の合意に至っていたものと思っています。僭越な言い方となって恐縮ですが、復興財源という意味合いなどを踏まえれば、連合系の組合も含めて交渉決裂だった場合、それはそれで難しい事態に陥っていたようにも感じていました。このような苦汁の選択を組合側が強いられながら、このまま約束が不履行であれば、それこそ連合や公務労協は重大な決断を下すのだろうと思っています。

最後に、下記の報道を耳にした時、「何だかなぁ」という失望感が広がっていました。「言うだけ番長」と揶揄されたことに腹を立て、産経新聞の記者を会見から締め出した民主党の前原政調会長ですが、本当に自分の立場や発言の重さを理解できていない方だと改めて痛感しています。その時の情勢を踏まえ、労使交渉の結果として指摘されているような可能性があり得ることを完全に否定できませんが、「今、あなたが、そこで話すことですか」という質問を投げかけさせていただきます。

民主党の前原誠司政調会長は22日、大阪市内で講演し、国家公務員給与を12年度から2年間、平均7.8%削減することについて「これだけひどい財政状況を考えれば、2年間でまた元に戻すことができるはずがない。国民が許さない」と述べ、14年度以降も給与削減を続けるべきだとの認識を示した。【毎日新聞2012年2月22日

| | コメント (113) | トラックバック (0)

2012年2月19日 (日)

再び、橋下市長VS大阪市の組合

少し前に「橋下市長VS大阪市の組合」という記事を投稿していました。「VS」と記しているとおり対立の構図をとらえた内容でしたが、決して対決姿勢を煽るような意図があったものではありません。最後のほうの「個々の活動の正当性を真摯に議論していくべきであり、聞く耳を持っているはずの使用者である橋下市長が話し合いそのものを拒まないことを信じています」という言葉が、その記事の中で最も強調したかった私なりの思いでした。

強引な手法を批判的に指摘せざるを得ない立場から記していましたが、阿久根市の竹原前市長に比べれば、橋下前知事の進め方などは段違いに「常識」的である点も付け加えていました。するとコメント欄では「論外なものと低レベルなものとを比較して、低レベルなものをまともと評価しているのでは?」という意見も寄せられていました。それでも橋下前知事は、庁内の政策決定の過程では部下とも議論を尽くしている話も耳にしていたため、やはり竹原前市長と比較すること自体、次元が違うのだろうと思っています。

さらに上記の文章は「大阪秋の陣」の前に当ブログの記事の中で綴っていた私自身の見方でした。組合事務所の問題も使用許可の期限切れまでに退去を求めていたため、やはり弁護士である橋下市長は竹原前市長とは違い、あまり「隙」を見せないという印象を抱いていました。しかしながら最近、大阪市の職員に対して行なったアンケートの内容や手法を知り、たいへん驚きました。

最近の記事「あえて政治的な話題を」のコメント欄で、地方の公務員さんから紹介いただき、ネットで調べたところ次のサイト「2/9橋下の職員アンケート。まずはお読み下さい。」から全文に目を通すことができました。市長の業務命令による調査、記名の回答を求め、正確な回答がされない場合は処分の対象、特定の政治家を応援する活動への参加の有無、組合に加入するメリットを尋ねる項目など、思想信条の自由に関わる設問や労働組合の活動を阻害するような内容が並べられていました。

日本弁護士連合会は会長声明を出し、「このようなアンケートは、労働基本権を侵害するのみならず、表現の自由や思想良心の自由といった憲法上の重要な権利を侵すものである。まず、本アンケートが職員に組合活動の参加歴等の回答を求めていることは、労働組合活動を妨害する不当労働行為(支配介入)に該当し、労働者の団結権を侵害するものであり、職員に労働基本権の行使を躊躇させる効果をもたらすことは明らかである」とし、アンケート調査の中止を求めていました。

また、ある弁護士の方のブログでは「橋下市長は弁護士出身ですが、労働法の知識はあまりお持ちでないことがわかります」とも書かれていました。私自身、橋下市長は法的な論争となるような「隙」を見せないものと過大に評価していたようでした。それでも今回のようなアンケート内容でも、まったく問題ないという意見をネット上から数多く知ることができます。有名なブログ「依存症の独り言」の中では「読めば解るが、今回の調査は不当労働行為には当たらない」とまで言い切っていました。

その理由として「なぜなら市職員の勤務時間中の、あるいは職場内における選挙活動は、労働組合の正当な行為ではないからだ」と説明されていました。確かにそのような行為は問題であり、大阪市職員の組合側が強く反省しなければならなかった点です。したがって、この点については市労連の委員長が橋下市長に深々と頭を下げていました。今回の調査が同様な問題の有無について、徹底的に洗い出す目的であることも分かります。

しかし、目的が正しければ手段を選ぶ必要はない、多少乱暴でも構わない、そのような発想だった場合、阿久根市の竹原前市長と同じ次元の話だろうと思っています。極端な例えかも知れませんが、疑惑があるからと言って無関係な方々も含め、全員の身体検査を行なう、もしくは特定の地域全体の家宅捜索を行なうような不当さや恐ろしさも今回のアンケートから感じ取っていました。

このような言い分について、きっと様々なご意見が示されるのだろうと思います。私が自治労に所属する組合の役員であり、身内を擁護するための理屈だと批判される方も少なくないはずです。もしかしたら橋下市長の「今の大阪市役所の組合問題を解明するには、これくらいの調査が必要」という言葉に賛意を示される方々が多数派となる現状なのかも知れません。とは言え、ぜひとも、お考えいただきたいことは、橋下市長を支持する、支持しないにかかわらず、今回のようなアンケートの内容や進め方が本当に適切な行為なのかどうかという点です。

大阪市の組合は、このアンケートが不当労働行為に当たるとして、大阪府労働委員会に救済を申し立てました。そして、下記の報道のとおり組合側は「徹底的に戦いたい」とし、橋下市長との対決姿勢を強めています。この記事の冒頭に紹介したような「個々の活動の正当性を真摯に議論していくべき」という労使関係には、たいへん残念ながら到底至りそうにないようです。ただ今回の事態は、組合側が拳を上げざるを得ない不当労働行為であることは間違いなく、大阪市の組合の底力が発揮されることを心から願っています。

大阪市が全職員を対象に実施している政治・組合活動に関するアンケートで、組合活動への参加経験や、特定の政治家を応援する活動への参加の有無などを尋ねていることが分かった。こうした質問は不当労働行為に当たるとして、市労働組合連合会(市労連、約2万8000人)は13日、大阪府労働委員会に救済を申し立てる。アンケートは橋下徹市長の職務命令で、16日までに記名式での回答を義務付けている。

アンケートは、橋下市長が問題視する労組や職員の政治活動の是正に向け、今後提案する労組適正化などの条例案に反映させるのが狙い。今月10日に約3万8000人の全職員のうち、法律上組合に加入できない消防局を除く職員に配布した。回答しなかったり、虚偽の回答をしたりした場合は処分を検討している。

質問は全22項目。組合活動への参加経験の有無を確認する質問に、市労連側は「職員が労働組合に入りづらくなり、団結権を侵害する」と主張。特定の政治家を応援する活動への参加の有無を尋ねていることを、「憲法が保障する思想信条の自由を侵害する」と批判する。市労連は、アンケートが労組への不当な支配介入で、労働組合法が禁止する不当労働行為に当たると主張。アンケート中止に加え、回収したアンケートの使用中止とデータ廃棄も求める考えだ。

市労連の田中浩二書記長は「通常ではありえないアンケートを職務命令で義務付けている。職員基本条例案などの問題もあるので徹底的に戦いたい」と話している。橋下市長は「不適切な行為の実態解明で、思想には踏み込んでいない。細かく調査するのはトップとして当然だ」と述べ、アンケートが法的に問題ないとの考えを示している。また、市庁舎から労組の事務所退去を求められている問題で、市労連は11日、来年度の使用が認められなければ、不許可処分の取り消しを求める行政訴訟を起こすことも決めた。【毎日新聞2012年2月12日

| | コメント (107) | トラックバック (0)

2012年2月11日 (土)

脱原発署名の呼びかけ

この冬、多くの方々が大雪に苦しめられています。11か月前は未曾有の巨大地震に襲われ、たいへん辛い災禍を被っていました。さらに昨年、豪雨による大きな被害にも見舞われていました。どれほど科学が進歩しても、自然災害に対して人間の無力さを痛感させられる場面が少なくありません。一方で、原子力による災害に対しては、どのように人間が向き合っていくのかどうかで未然に防げることも確かだろうと考えています。

前回記事「あえて政治的な話題を」の最後のほうで、久しぶりに原発の問題を取り上げる予定だったと記していました。組合員の皆さんに「脱原発を実現し、自然エネルギー中心の社会を求める全国署名」への協力を呼びかけていたため、少しでも問題意識が共有化できる機会に繋がることを願っていたからでした。合わせて、土曜日に代々木公園で開かれた「さようなら原発集会」への参加も募っていました。さすがに今回は昨年9月の集会の参加者数には及びませんでしたが、会場は満杯となっていました。

これまで当ブログの記事を通し、原発に対する問題意識を何回か綴っていました。福島第一原発の事故以降では「原発議論と電力問題」という記事がありました。今回、原発の問題点を改めて書き進めていきますが、「運動のあり方、雑談放談」の中で触れたような自分なりの課題認識まで話を広げてみるつもりです。まず原発に対する問題意識を記していく際、参考までに私どもの組合ニュースの裏面に掲げた文章をそのまま紹介させていただきます。

福島第一原発の事故後、脱原発の機運は盛り上がっています。一方で、ただちに国内の原発すべての停止は困難であるものと言われていました。しかしながら原発は必ず13か月に1回、3か月ほどかかる定期検査が義務付けられています。現在、通常の点検が終わった後も、地元から安全面を危惧する声が上がり、1基も再稼動できていません。そのため、54基ある原発のうち稼動しているのは5基(現在は3基)だけです。したがって、この4月末には事実上、原発に依存しない局面を迎えることになります。

そのような事態を一気に招くことの賛否が分かれていることも確かです。全体的な共通認識としては今後、原発の新増設はあり得ないというものではないでしょうか。このような中、原発の運転期間を原則40年という新たな政府方針が示された直後、最長20年(運転期間60年)の延長を認める例外規定も明らかにされました。さらに電気料金の値上げや真夏に向けた電力不足の問題などが取り沙汰され、停止中の原発を再稼動させないと日本の社会は大きな混乱を招くような危機感が伝えられがちです。しかしながら福島第一原発事故を大きな教訓とするのであれば、「再稼動ありき」の見切り発車だけは絶対避けるべきものと考えています。

そもそも原発は火力や水力に比べ、発電コストが安いと宣伝されてきました。しかし、立地費用や廃棄物の処理費用などを含めれば、圧倒的に割高となります。また、地球温暖化対策のために二酸化炭素を発電時に放出しない原発はクリーンなエネルギーと言われてきました。しかし、その点もウランを採掘する段階から製錬や濃縮などの過程で見れば、膨大な二酸化炭素を放出していました。さらに原発は事故を起こさなかったとしても、10万年とも言われる厳重な管理が求められる放射性廃棄物の問題がありました。

脱原発社会を実現するためには、省エネルギーや自然エネルギーを中心にしたエネルギー政策の転換が欠かせません。その一方で、現時点でも火力発電所をフル稼働させれば、原発分の電力は充分まかなえるという専門家の見方があることも確かでした。いずれにしても脱原発の方向性のもとで選択肢を判断していくのか、なし崩しに「やはり原発は必要」という方向性に傾いていくのか、大事な岐路に立たされています。

残念ながら1千万筆を目標に取り組んでいる「脱原発を実現し、自然エネルギー中心の社会を求める全国署名」は年明けの段階で350万筆にとどまっています。そのため、改めて組合員の皆さんに呼びかけた職場署名活動に取り組みます。組合員の待遇の維持向上をめざすことが組合の本務ですが、より良い社会の実現に向け、今回のような取り組みも組合活動の大切な領域の一つとしています。ぜひ、このような趣旨についてもご理解くださり、できる限りのご協力をいただけるようよろしくお願いします。

組合員全員に配られたA4ニュースの表面には職場課題、その裏側に上記の文章を掲載していました。無記名の原稿となっていますが、私自身が書いたものでした。少し前の記事で「このブログに書き込む内容は実際の活動や日常の場面でも発言しているものでした。ネット上での言葉は確かに慎重に選んでいますが、基本的な内容や趣旨などについて実生活での発言と使い分けるようなことはしていません」と記していました。

今回、先に組合ニュースで掲げた文章をブログに転載するという珍しいパターンとなっています。自治労に所属している組合が、このような政治的な話を機関紙などに取り上げていることは日常的なことです。インターネット上の様々なサイトを訪問していると、そのことが物凄く問題であるように非難している方々の多さを把握できます。このブログを訪れている皆さんの中にも、同様な発想をお持ちの方が少なくないことも承知しています。

しかし、コソコソ隠れて活動している話ではなく、そもそも組合ニュースが組合員以外の方の手に渡っても、まったく問題ないものと考えています。組合ごとに内容や表現方法に幅があり、読み手によって様々な印象を持たれるのでしょうが、鬼の首を取ったような言われ方には違和感を抱いていました。そのような思いがあったため、あえて今回、私どもの組合員の皆さんに呼びかけた内容をそのままブログに転載してみました。

続いて、私自身のこだわり、つまり現在の私どもの組合のこだわりを強調させていただきます。紹介したニュースの内容は「なぜ、脱原発なのか」という論調にこだわっています。「脱原発の実現は欠かせない、だから署名に協力を」というような結論の押し付けは避けるように心がけています。とりわけ組合員の皆さんの中で、考え方が分かれるような政治的な課題については、よりいっそう、そのような論調に努めていました。

「ですます体」と「である体」の違い程度に感じられる方がいらっしゃるのだろうと思いますが、自分自身が組合ニュースの発行に責任を持つようになった以降、こだわり続けている心得の一つでした。したがって、当たり前な話ですが、署名への協力も、集会への参加も、あくまでも個々人の自由意思によるものとなっていました。時には直接呼びかける場合もありますが、決して無理強いすることはありません。このような発想は組合役員に対しても同様でした。

ただ以上のような話は自治労都本部の方々に対し、たいへん申し訳ないものと思っています。要請された動員者数や署名の数を集められない「弱さ」に見られることも覚悟しています。しかし、前回の記事で「職場課題と政治活動が主客逆転しないことを大前提とし、それぞれの組合が背伸びしない範囲内で関わっていくべき運動領域の一つ」と記したとおり脱原発も確かに大事ですが、今、それ以上に集中すべき職場課題が山積している中、要請に充分応えられないこともやむを得ない現状だろうと省みています。

今回も長々とした記事となっていますが、最後に、少し前の記事「旗びらきの季節」のコメント欄で申し上げたことも付け加えさせていただきます。脱原発の署名などに取り組むことも重要だろうと思っていますが、それよりも連合内での議論を一歩踏み出す必要性を認識していました。電力総連の皆さんとも忌憚のない議論を交わし、連合内が脱原発でまとまることの意義は非常に大きいものと考えています。逆に連合内での意思統一もできないようであれば、脱原発への道筋もたへいん厳しいものとなるように感じています。

そのため、まず自分自身が直接関われる範囲の中で、そのような議論に踏み込めるよう何人かの方と話を始めていました。いずれにしても原発に対する見方や立場が違うからこそ、お互い率直な意見交換が必要だろうと考えています。同じ連合という組織の一員として、東電労組の皆さんと懇親を深めている最中、ぶしつけな話題を切り出したこともありました。その際、お互いの立場を尊重しながら率直に話し合うという趣旨について、たいへん有難いことに快く受けとめていただき、正直ホッとしていました。今後、とにかく信頼関係を重視した対話への一歩を踏み出せるよう自分なりの努力を重ねていこうと考えています。

| | コメント (24) | トラックバック (0)

2012年2月 5日 (日)

あえて政治的な話題を

沖縄防衛局長が部下である職員に対し、宜野湾市長選への投票を呼びかける「講話」を行なっていました。この「講話」が公務員の地位利用による選挙運動を禁止した公職選挙法、政治的行為そのものを制限した自衛隊法に抵触し、処罰すべき問題だったのかどうか取り沙汰されていました。結局のところ民主党政権発足以前の事実関係も含め、調査を継続するという理由から局長の処分の扱いは先送りされています。

この問題を各メディアが連日大きく取り上げている中、産経新聞は一面に「宜野湾市長選、市職労側も選挙運動 特定候補への協力呼びかけ」という見出しを掲げた記事を伝えていました。産経新聞の記事内容を「チャンネル桜」が取り上げ、その動画サイトを前回記事のコメント欄で匿名の方から紹介いただきました。私からは以前の記事「地公法第36条と政治活動」の中で綴っていた内容を紹介しながら、自治労宜野湾市職員労働組合が推薦候補者への支持を組合員に呼びかける行為は、まったく問題なく、批判を受けるような話ではないことをお答えしていました。

個々人の見方は様々だろうと受けとめていますが、現状は次のとおりとなっています。地方公務員法第36条で、地方公務員は特定の政治的立場に偏らず、中立であることが求められています。ただし、この法律をもって地方公務員の政治活動が一切禁止されている訳ではありません。公職選挙法の規定により、地位利用による選挙運動の禁止や公務員のままで立候補できない点、さらに当該職員が属する区域での選挙運動などが制限されている程度です。

さらに地公法第36条は職員の政治的行為の制限を定めていますが、この規定は労働組合の政治的行為を制限するものではありません。組合が特定の選挙へ向けて、特定の候補者の支持や推薦を決め、組合員へ周知することは組合活動の範囲とされています。ただ残念ながら、そのあたりの区分けが充分理解されないと産経新聞のような批判に繋がりかねません。いろいろな意味で大事な問題が含まれていたため、個人的な思いが頭の中を駆け巡っていました。

そのため、今回の記事を通し、私なりの問題意識を改めて掘り下げていきます。まず申し上げなければならない点があります。法的に問題があるかどうかではなく、公務員が政治活動に関わることに対し、違和感を持たれている方々が少なくないことを重く受けとめている立場だという点です。このような問題意識は当ブログを長く続けている中で、肌身に感じてきた貴重な経験であり、日常的な活動を見つめ直すことを習慣化している背景となっていました。

これまで当ブログのコメント欄では公務員の働きぶりや待遇の問題に関し、頻繁に活発な議論が交わされていました。そのような傾向を承知しながらも、時折り「さようなら原発5万人集会」や「普天間基地の移設問題」など政治的な話題も取り上げてきました。自治労に所属している一職員労働組合の日常の活動や考え方を伝えることも目的としているため、あえて幅広いテーマを題材にしたブログ運営を続けてきました。

そのような政治的な問題に触れるたび、訪れる方々の中から「公務員の組合の活動領域として不適切である」というような批判が示されがちでした。しかし、私からは職場内の活動にとどめず、より良い社会をめざし、労働組合が政治的な課題にも取り組む意義などを常に訴えさせていただいていました。その際、職場課題と政治活動が主客逆転しないことを大前提とし、それぞれの組合が背伸びしない範囲内で関わっていくべき運動領域の一つだと考え、「自治労と当ブログについて」「沖縄に揚がる自治労の旗」という記事などを投稿していました。

また、外側から示されている違和感は、私どもの組合の内側、つまり組合員の皆さんの中にもあり得るものと考えています。確かに組織的な手続きを経て、活動方針を定めていますが、本音のところで「組合は政治的な活動に手を出すべきではない」と思われている組合員の方も少なくないものと見ています。実際、そのような声を直接訴えられたことも何回かありました。その都度、丁寧にお答えしてきていますが、だからこそ、このブログでも政治的な話題を数多く取り上げ、少しでも問題意識が共有化できる機会に繋がることを願っていました。

そして、誰が見ても、組合の進めていることには大きな問題があり、不当なものだと認定されるような場合、速やかに改めていく潔さを持ち合わせているつもりです。そもそも冒頭に例示された問題なども、産経新聞のような主張が大勢を占めていくのであれば、必然的に法律も改正されていくのではないでしょうか。法改正に至らない場合でも、そのような声を無視できない情勢であれば、大きな方針転換に迫られるものと思っています。

議論の対象となる地方公務員の政治的な中立性の問題ですが、個々の職務の中で貫かれていることは言うまでもありません。住民の皆さんと接する中で、政治的な立場をかもし出す職員は皆無であるはずです。合わせて、この中立性は選挙によって就任する首長との関係性においても求められています。どのような経緯があった選挙結果だったとしても、民意を代表した首長のもと職員一人ひとり、全力で支えていくことが当たり前な話でした。

このような明確な峻別を踏まえ、一職員から一市民の立場に戻った際、どの程度までの政治活動の制約が妥当なのか、これ以上の制約が必要なのかどうか、冷静な議論が必要だろうと考えています。組合の政治活動の問題も同様であり、「公務員が政治活動をすることを変だ、おかしい、信用できない」という率直な声と対峙していくためにも、公務員組合側の言い分を丁寧に発信していかなければなりません。そのような趣旨で自治労本部には効果的なメディア対策などに力を注いでいただければと願っています。

実は久しぶりに今回の記事では原発の問題を取り上げる予定でした。次の土曜日、2月11日に「さようなら原発集会」が代々木公園で開かれます。また、2月20日を提出期限とし、「脱原発を実現し、自然エネルギー中心の社会を求める全国署名」にも再度取り組んでいました。それぞれ組合員の皆さんに呼びかけていたため、前述したとおり少しでも問題意識が共有化できる機会に繋がることを願いながら、いろいろな角度から綴ってみようと考えていました。

ただ沖縄防衛局長の「講話」から入り、ここまでで充分長い記事となっていましたので、途中から記事タイトルを差し替えていました。最近の記事「旗びらきの季節」のコメント欄でのやり取りを膨らませる意味合いの内容を頭に浮かべていましたが、できれば次回以降の記事で改めて取り上げさせていただきます。合わせて、「運動のあり方、雑談放談」の中でも触れた運動そのものが目的化しがちな点や、今回の記事に託した問題意識にも繋げる内容を思い描いているところです。

| | コメント (67) | トラックバック (0)

« 2012年1月 | トップページ | 2012年3月 »