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2011年8月28日 (日)

民主党の代表選後が重要

火曜の夜、タレントの島田紳助さんが突然、芸能界からの引退を発表しました。暴力団関係者との付き合いが明らかになったため、その社会的責任を取るという理由からでした。確かに知名度の高いタレントの電撃的な引退表明は驚きであり、各メディアがトップニュースとして大きく取り上げたことも理解できます。同じに日に表明された前原前外相の民主党代表選出馬の報道が結果的に地味な扱いとなっていたようでした。

水曜朝のスポーツ新聞各紙の一面には島田さんの顔が大きく並び、一般紙の朝刊一面にも島田さんの写真が掲げられ、引退のニュースを大きな扱いで報道していました。さすがに木曜以降、一般紙は民主党代表選の話題が中心となっていましたが、枝野官房長官にまで島田さんの引退について質問したニュースなどに対しては「官房長官に聞くことではない」 という批判の声も上がっていました。

暴力団との関係性に踏み込む視点が重視されていれば、それはそれで社会的な問題提起に繋がり、マスメディアとしての責務も果たせていくのかも知れません。それに対し、単に大勢の方が注目しているからという理由だけだった場合、もっと報道すべき問題が多いはずであるという意見にうなづくことになります。今回の民主党代表選に当たっても、候補者が小沢元代表と会ったかどうかなどいう「ワイドショー」的な報道も目立っていました。

1年前、このブログの記事「民主党代表選への思い」の中で、「もう少し横並びな報道ではなく、プラス面とマイナス面を織り交ぜながら報道していく姿勢があっても良いのではないでしょうか」と書き込んでいました。今回も「たった3日間で決めるのか」という批判が強いようですが、逆に選挙期間を長く設ければ政治空白の問題を非難する声が高まっていたように感じています。そもそも任期途中の代表選は国会議員だけで決められる規約であり、党員やサポーターによる投票がない中、街頭演説するような選挙戦にはなり得ないはずです。

日曜の各局の政治報道番組に5人の候補者が揃って出演し、司会やコメンテーターらが政策面の違いなどを浮き彫りにさせようと試みていました。新しい総理大臣に直結する代表選であり、各候補者の政策や考え方を尋ねることの大事さを否定できません。さらに政策論争が重要であるという指摘も、まったくその通りだと思っています。しかし、あくまでもその内容云々の評価を投票行動の参考にできるのは、民主党の国会議員398人だけであり、とりわけ態度を明確にしていない120人ほどに限られた話でした。

テレビ討論を通し、それぞれの候補者の主張や政策を視聴した方が、投票権を持つ国会議員に働きかける場合があるのかも知れません。緊急な世論調査が行なわれ、その結果が候補者を絞り込む判断材料に繋がる可能性もあり得ます。とは言え、結局のところ限定された398人の選択が日本の命運を左右する新首相を決める局面だと言えます。ただ398人の背中には数多くの有権者の一票が託されていることも間違いなく、現行の民主主義の制度内のルールであり、民主党国会議員の皆さんの賢明な判断を信じるのみです。

菅直人首相の後継を決める民主党代表選は27日午前に立候補を受け付け、29日投開票に向けた短期決戦がスタートした。前原誠司前外相(49)、馬淵澄夫前国土交通相(51)、海江田万里経済産業相(62)、野田佳彦財務相(54)、鹿野道彦農相(69)の5人が届け出た。党内最大勢力を擁する小沢一郎元代表に支持された海江田氏と、脱小沢路線の党内主流派を基盤とする前原氏の対決を軸に多数派工作が本格化。【共同通信2011年8月27日

前置き的な話が随分長くなりましたが、上記のとおり民主党代表選の結果は明日月曜日に判明します。ちなみに当ブログは週に1回の更新ペースを守っています。したがって、どなたが新しい代表、つまり新首相にふさわしいのか、個人的な論評や願望を綴ったとしても、明日の午後になれば陳腐な話題となっているはずです。加えて、記事タイトルに掲げたとおり私自身は特に今回、民主党の代表選後が非常に重要であるものと思っています。

幸いにも各候補者から、誰が代表になっても全力で支えていくという発言を耳にできています。また、代表に選ばれた後、しっかりと党内での議論を進めていく姿勢を候補者それぞれが強調されていました。この2点が有言実行されていくのであれば、どなたが新しい代表になっても安心して見守っていけるものと考えています。マニフェスト、増税、野党との関係など候補者間に違いや温度差が見受けられました。ぜひ、代表に選ばれた方は、掲げた個別課題の方向性も含めて党内での信任を受けたという早計な判断は避けて欲しいものと願っています。

その点を勘違いして、党内で意見が分かれている問題を強引に結論付けて進めていくと、これまで以上に対立が激化するように思えてなりません。スピード感を重視し、党内での議論が生煮えなまま野党に諮っても、賛否の割れがちな難しい問題が簡単に解決するとは考えられません。結果的に足踏みや遠回りすることとなり、国民にとってもマイナスとなり、ますます政権与党への信頼感が薄らいでいくように思っています。

このような問題意識は「リーダーシップのあり方は?」の中で綴っていた個人的な願望でした。残念ながら菅首相には届かなかった思いでしたが、新しい首相には自分一人で決めることが強いリーダーシップの発揮だと考えないよう謙虚に幅広い意見に耳を傾けながら、丁寧な党運営に努めていただければと願っています。いずれにしても民主党の原点に返るというフレーズも聞こえてきますが、この2年間の教訓を白紙にするような「振り出しに戻る」ことだけは控えて欲しいものです。

少し前の記事「ブックマークしているブログ」で、幅広い立場や視点のブログを日常的に閲覧していることを記しました。そのうちの一つに自民党の河野太郎代議士の「ごまめの歯ぎしり」があり、共感する内容が多いほうのブログでした。最近の記事「さあ、新しい日本へ」などは本当にその通りだと感じていました。最後に、新たな首相の誕生が党派を超えた熟議の国会に生まれ変われる機会に繋がるよう期待を込め、河野代議士のブログ記事の一部をそのまま紹介させていただきます。

この国が直面している問題は、深刻だ。議論はおおいに必要だ。でも、政策の議論もせず、スキャンダルの追及で、無駄な時間を費やすことは避けなければならない。もちろん、前原さんにも説明責任がある。正式に立候補する前に、やましいことはきちんと説明するべきだ。それに納得できないのなら刑事告発でもして、当局に捜査してもらえばいい。国会議員の仕事は捜査ではなくて、立法であり、予算である。やるべきことをきちんとやろう。

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2011年8月20日 (土)

過ぎ去る夏に市長選

地元代表の日大三高が優勝を飾り、夏の風物詩となっている甲子園大会も幕を閉じました。今年は節電対策のため、光星学院との決勝戦の開始時間は午前9時30分に早められていました。このように今年の夏は節電の徹底が求められ、例年に増して蒸し暑さがこたえた夏だったのではないでしょうか。特に室温28℃設定の事務室は、湿度にもよりますが、不快指数は高い数値で推移していたはずです。

ちなみに労働安全衛生法に基づく事務所衛生基準規則の中で、空調による室温は「17℃以上28℃以下になるように努めなければならない」と記されています。もしも、このような目安がなければ「外気温より低ければ良いのではないか」という話となって、ますます大汗を流しながら執務する日が増えていたのかも知れません。8月も半ばとなり、ようやく厳しい暑さが和らぎ始め、熱い夏も過ぎ去ろうとしています。

一方で、次の総理大臣を決める民主党代表選は、日々、その熱さが高まっているようです。本命視されていた野田財務大臣に勢いがなくなり、候補者が乱立し、たいへんな激戦模様となっています。このような政治の話題には関心が高いほうであり、これまで「民主党代表選への思い」など関連した記事を数多く投稿してきました。場合によっては次回以降、詳しく掘り下げるかも知れませんが、今回の記事は私どもの自治体にとって非常に重要な市長選について触れていきます。

4年前には「市長選に向けた組合の対応」という記事を投稿していました。その記事の直前のコメント欄では、私どもの組合員から「最も身近な市長選挙まで1ヶ月を切ってしまっている現在、この話題について全く取り上げられないのが解せない。組合の委員長としては、あくまでも国政が重点項目なのであって、地元の市長選挙などは関係ないということなのか」という少し辛口なご指摘を受けていました。それに対し、私から取り急ぎコメント欄で情勢認識や見解をお答えした上、前掲した記事本文の投稿に繋がっていました。

今回は7月の職場委員会で、すでに組合の考え方を示していたため、4年前のような疑念は避けられているものと理解しています。ただ当ブログを閲覧くださっている圧倒多数の皆さんは、一自治体の市長選には無関係であり、まったく関心のない内容だろうと思います。それでも阿久根市長選に敗れた竹原信一前市長の「市職員組合に負けた」という発言に違和感(「市長選後の阿久根市」参照)がありましたので、そのような誤解や過剰な評価(?)を拭うためにも一つのサンプルとして私どもの組合の対応を綴らせていただきます。

市長選は8月28日に告示され、9月4日が投票日となっています。この日程から絞り込めば、私の所属している自治体がどこなのか少し調べればお分かりになるはずです。それでも一般的なインターネット上のルールにそって、今回も実名は出さないように努めていきますのでご理解ください。事前の新聞報道のとおり現職のS市長に対し、前回次点だった弁護士のM先生、共産党地区委員会のY委員長が挑む選挙戦となる見通しです。S市長は自民党と公明党から推薦を受け、民主党も支持していく運びとなっています。

連合三多摩はS市長と政策協定を結び、日常的な協力関係を築いていました。そのため、今回の市長選に向けては、民主党の最終的な方針が定まる前にS市長の推薦を決めていました。このような構図の中、現職のS市長が圧倒的に優位であるという前評判でした。5名が立候補し、新人同士の激突となった前回の選挙戦に比べれば、街中に貼り出されたポスターの数は極端に少なくなり、盛り上がりが欠けたまま、低投票率を懸念する声もささやかれています。

7月の職場委員会で組合員の皆さんに示した対応方針は次のとおりでした。まず私どもの組合も連合三多摩の一員であり、そのままS市長を推薦する選択肢も充分あり得ました。とは言え、労使交渉の当事者間となる関係性を踏まえ、独自に推薦することは見送る対応を諮らせていただきました。必ずしも個別の労使課題に対する方向性が一致している訳ではありませんので、そのような距離感が適切だろうと判断した結果でした。

その一方で、市長選が私たち職員にとって重要であることに変わりなく、今回も予定候補者全員に質問書をお渡しするという取り組みを提起していました。回答書は原文のまま組合員の皆さんへ公開し、市長選に向けた判断材料として活用いただく対応を確認しました。この方針に基づき、お忙しい中、おかげ様で予定候補者それぞれの方からご回答いただけ、週明けに職場回覧できる準備を進めています。

もともと自治労に所属する組合の力量や政治活動に対する方針などは千差万別だろうと思っています。したがって、あくまでも私どもの組合は、このように考えながら対応してきたという一つのサンプルに過ぎません。さらに阿久根市のような事態に至った場合は、また違った対応を余儀なくされていくのかも知れません。幸いにも私どもの市においては、平行線をたどりがちな課題に際しても、真摯な交渉を重ねながら解決の糸口を探る労使関係を維持できています。

様々な場面で公務員の待遇が矢面に立たされる中、最低限、労働条件にかかわる問題は労使交渉を通して決めるというルールが非常に重要な点だろうと考えています。その意味で、現職のS市長の姿勢には日頃から敬意を表していました。率直な話として、このような点に齟齬があった場合は、連合三多摩の推薦判断に異論を唱える立場となっていたはずです。加えて、私どもの組合が推薦している市議は民主党系会派の代表を担われていますが、日常的に情報や意見を交わせる緊密な関係を築けています。

言うまでもなく、その市議の方にも上記のようなポイントはお伝えしていました。民主党が現職の支持を決めた話に直結する訳ではありませんが、会派代表の立場として結論を見出す中での参考材料の一つには数えていただけたものと思っています。さらに今回、質問書を予定候補者全員、ご本人に直接お渡しすることができました。とくに弁護士のM先生とは別に時間を取って、じっくりお話する貴重な機会も得られました。その時も、私からは今回の記事で綴っているような労使関係の重要性について訴えさせていただきました。

以上のような内容についても、一職員の動き方としては違和感を持たれる方もいらっしゃるのかも知れません。確かに一職員の立場では、このような話を市長や予定候補者の方と直接交わせる機会はあり得ないはずです。あくまでも組合役員の立場だからこそ、可能となっている動き方であり、決してコソコソ隠す必要がない話だとも思っています。したがって、このブログでも取り上げながら、私どもの組合の等身大の現状を綴らせていただきました。さらに4年前と同様、予定候補者に回答を依頼した質問内容も参考までにご紹介します。

  1. 地方分権の進め方や財源問題について考え方をお聞かせください。
  2. 厳しい財政状況の中、私たちも行政改革そのものを否定する立場ではなく、できる限り協力する姿勢で対応しています。一方で、公的責任や市民サービスの低下につながるようなアウトソーシングや職員数削減には懸念を示しています。今後、推進すべき行政改革の手法や考え方についてお聞かせください。
  3. 3月11日に発生した東日本大震災は従来の「想定」をはるかに超えた大規模な災害でした。この震災を大きな教訓とし、さらに立川断層というリスクを踏まえ、よりいっそう災害に強いまちづくり向けた考え方をお聞かせください。
  4. 福島第一原発から漏れた放射性物質の影響を心配する声が上がっています。市民の安全安心のため、どのような対策を講じる必要があるのかお考えをお聞かせください。
  5. 行政や職場など様々な分野で男女平等参画の推進が欠かせません。今後、いっそう男女平等参画を進めるための手法や考え方をお聞かせください。
  6. 格差社会が問題視される中、労働条件の均等待遇原則の確立が求められています。率先垂範の立場を示すためにも、自治体に働く非常勤職員の待遇改善に向けたお考えをお聞かせください。
  7. 市民サービスの維持向上のためにも、安定した労働条件の確保が欠かせないものと考えています。その上で、労働条件の変更に際しては労使対等な立場で、お互い誠意を尽くした交渉が求められています。ぜひ、労使交渉に臨む基本姿勢についてお聞かせください。

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2011年8月14日 (日)

再び、職務に対する心構え Part2

かなり前に投稿した内容の続きに位置付ける場合、新規記事のタイトルに「再び」と付ける時がありました。前回の記事「再び、職務に対する心構え」がそのパターンでした。また、直前の記事内容の続きに当たる場合、タイトルに「Part2」を付けて繋がりを明らかにしていました。今回、その両方をタイトルに付けている訳ですが、前回記事の補足的な意味合いの内容を書き進めていくつもりです。

前回は自分の仕事にかかわる話題だったため、書き始めると予想以上に長い記事となってしまいました。それにもかかわらず、改めて読み返した時、訴えたかった内容が充分伝え切れていなかったように感じていました。大田区側に肩入れした印象が先立った内容だったかも知れませんが、犬伏区議の「丁寧な対応」という問題提起を頭から否定するために綴った訳ではありませんでした。

合わせて、詳しい交渉経緯や全容が分からない中で、推測で論理を展開している側面があったことも反省していました。つまり前回示した大田区の事例は、あくまでも一つの素材に過ぎず、そのケースにおける判断の適否を評価するものではありませんでした。あくまでも滞納整理を進めていく上で、どのような心構えが必要なのか、個人的な思いを掘り下げていくための切り口として例示させていただきました。

さらに記事タイトルに「再び、職務に対する心構え」と付けたとおり自分自身の仕事の進め方や心がけている点などについて、もう少し触れていくつもりでした。それにもかかわらず、前回記事ではそのような主観的な内容が乏しく、具体事例に対する解説的な記述が中心となっていました。今回の記事も長々と綴りそうな予感(?)があるため、最初に結論的な思いを箇条書きさせていただきます。

  1. 徴税吏員の任務は、本来徴収すべき市の債権を少しでも多く回収し、財政に寄与することです。しかし、それ以上に重要な使命は、圧倒多数である納税者の皆さんとの公平性を保つため、例え千円の滞納だったとしても未納は認めない姿勢を貫くことだと考えています。
  2. 徴税吏員は質問調査権や差押処分に関する自力執行権など強い職務権限を有しています。だからこそ、その職務の執行に当たっては恣意的な運用を絶対避け、差押処分などに対する公平さを重視した原則を常に意識しています。
  3. 徴税吏員の職務を執行していく中でも、市職員の立場を必ず念頭に置いています。何らかの事情があり、滞納している方々に対して「過去の納税者、未来の納税者」という敬意を払いながら「丁寧な対応」に努めています。
  4. 調査や差押が仕事の目的ではなく、収納を推進するための手段に過ぎません。そのような点を踏まえ、より効率的、より効果的な職務が遂行できるよう常に心がけてています。

上記の1と2は徴税吏員の一般的な心構えだと言えます。3と4も当たり前なような話ですが、担当者やその組織の風土によって枝分かれする内容でした。まず1についてですが、実際に千円の預金差押を執行した場合、直接的な費用対効果や採算面を考えれば、見送ったほうが得策です。しかしながら千円程度であれば、「納めなくても済む」という見られ方は絶対好ましくありません。したがって、納税秩序の維持のために状況によっては千円の差押も執行することになります。

次に2についてですが、前回記事で紹介した大田区の事例から様々な点が考察できました。このようなケースは不動産を差し押さえるという原則があった場合、執行することが基本となるはずです。議員の批判があるからと言って、仮に特定の会社の差押を見送るようでは公平さが著しく欠けることになります。前回の記事で強調したかった職務に対する心構えは、上記2のような公平さの提起でした。

ちなみに前回記事のコメント欄で、国税徴収法第47条に「差し押さえなければならない」と規定されながら、差押の是非を議論すること自体「傲慢」という指摘を受けました。その場で私からお答えした内容を改めて掲げさせていただきます。確かに「ならない」とされていますので、厳格に文言を解釈すれば、差押ができるのに見送っていた場合、行政の不作為を問われる可能性を否定しません。

この条文に限れば、行政側に裁量権があるという釈明を行なうつもりもありません。一方で、国税徴収法には換価の猶予など徴収における緩和制度も設けられています。さらに法律を目的論的な解釈でとらえた際、一定期間後に滞納金を徴収できるのであれば、機械的に差押を執行していくことの不合理さや非効率さが考えられます。分かりやすい例を上げれば、制限速度1キロオーバーの運転手を全員摘発することが望ましいことなのかどうか、現状はそのような交通違反の取締りは行なわれていません。

公平性が損なわれるのは、5キロオーバーが見逃され、1キロオーバーで違反とされるケースが生じてしまう時です。つまり様々な業務に対する運用の幅が、より統一的に執行されることが公平性に繋がるものと見ているため、議論することが「傲慢」だとは考えていません。また、現状と乖離しているから法律を改正すべきという意見もありますが、仮に「できる」規定とした場合でも、運用の幅の議論が残されるはずです。

続いて3ですが、滞納されている方々と期限通りに納税している住民の皆さんと一線を画した対応を基本とするのかどうか、担当者によって位置取りが分かれる場合もあります。納められる資力がありながら納めない悪質なケース、事情があって納められないケース、それこそケースバイケースな対応が必要ですが、私自身は上記3のような心構えを常に意識しています。

徴税吏員は滞納者に対し、強く納付を促す立場や役割を担っていますが、基本的に高圧的な言葉は控えるように心がけています。もちろん伝えるべきことは伝えていく訳ですが、必要以上に相手側を刺激するような物言いは避けています。とは言え、金子みすゞさんの『こだまでしょうか』の詩の世界ではありませんが、相手側が喧嘩腰で理不尽な言葉をぶつけてくる場合、こちらも強めの口調になってしまう時もありました(苦笑)。

なお、各自治体における職員数抑制の行革方針は徴税吏員に対しても例外ではないはずです。一方で、経済情勢の厳しさが増す中、滞納者数は増加の一途をたどっています。必然的に徴税吏員一人当たりの担当件数は年々多くなり、きめ細かい対応が難しくなっている現状はどこも同じではないでしょうか。そのため、徴税吏員側からすると滞納者一人ひとりはワンオブゼムという構図となりがちですが、差押処分の行方は滞納者にとって死活問題に繋がる可能性も否定できません。

したがって、上記3のとおり「一期一会」の心得のもと精一杯「丁寧な対応」に努めています。言うまでもありませんが、前回記事で紹介した野洲市のような市全体での「丁寧な対応」をはかれることが理想だろうと思っています。それでも「丁寧な対応」が滞納者の言い分に耳を傾ける話に集約され、結果的に差押処分を見送るだけの心構えとならないように留意しなければなりません。

やはり滞納額が累積した方と相談を行なう際は、相手側の言い分の是非が判断できるような調査の裏付けや、場合によっては差押を執行するという交渉カードを持って臨むことが求められています。いわゆる「対話と圧力」という関係性となりますが、納付の意思や先々の見通しが確かめられる場合は、なるべく強制処分は留保するように心がけています。一方で、まったく連絡もないケースは、差押予告通知などを送った後、粛々と処分を執行しているのが徴税吏員の日常でした。

最後に4ですが、前述したとおり担当件数が増えている中、効率的かつ効果的な仕事の進め方が欠かせません。そもそも徴税吏員の業務内容は奥が深く、調査関係で考えれば際限なく広がり、半端ではない事務量となります。そのような中、滞納金の徴収という結果を出すための最短ルートを常に探っています。特に組合役員という任務も負っているため、いっそう勤務時間内での集中力を高め、結果が出せるよう努力しています。

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2011年8月 7日 (日)

再び、職務に対する心構え

ココログの機能として、カテゴリー別に記事を分類し、サイドバーに掲げることができます。この機能に気付いたのは開設してから、かなり後になってからでした。その機能を活かすためには新規記事を投稿する時点で、カテゴリーを分類していく必要がありました。機能を充分把握しないまま記事を重ねていたため、すべて「日記・コラム・つぶやき」として投稿していました。途中で気付いた訳ですが、遡って以前の記事のカテゴリーを修正するのも手間であり、結局、ずっと「日記・コラム・つぶやき」で通してきています。

そのため、以前に書いたテーマ別の内容を探しやすくするためにも、インデックス代わりに時々、最新記事の中で関連する記事を並べてみることがありました。現在、配属されている職場は納税課で、徴税吏員として滞納整理を担当しています。これまで当ブログの中で、自分の仕事に引き付けた話題を何回か書き込んできました。今回、そのようなカテゴリーをインデックス代わりに並べてみましたので、お時間が許す際、ご覧いただければ幸いですのでよろしくお願いします。

さて、前回の記事「ブックマークしているブログ」の最後に予告的な意味合いで、あるブログを紹介しました。大田区の犬伏秀一区議の「激辛活動日誌」ですが、自分自身の仕事柄、先日、たいへん興味深い記事「大田区役所納税課は街金より怖い??!!!」に目がとまっていました。今回、その記事の内容を題材としながら、久しぶりに徴税吏員としての職務について取り上げてみます。記事タイトルは安直ですが、「再び、職務に対する心構え」として書き進めてみます。

まずリンク先の犬伏区議のブログ記事を必ずしも皆さんがチェックされるとは限りませんので、論点を明確にするためには記事内容の大半をそのまま掲げさせていただきます。なお、コメントやトラックバックも送れないため、犬伏区議に直接お知らせすることができませんが、たいへん恐縮ながら改行の仕方についてはオリジナルから少し変わっている点をご容赦いただければと思っています。

納税課長と担当係長を前に、本日はヤクザを演じてしまった。それは、ある区内中小企業A社の社長のボヤキから始まった。このA社は、いまでこそ復活したが、リーマンショックのあおりで、業績が悪化。従業員さんの源泉徴収した区民税を延滞していた。大田区納税課地区担当舎(原文のまま)との話し合いで、毎月10万円を分納していた。ところが、本年6月29日突如、A社所有の土地建物に大田区が差し押さえをしたのだ。突然!

当然、差し押さえ通知は担保設定している金融機関にも届けられる。受けた金融機関においては、A社の信用は下落するのは誰もが理解できるだろう。無論、源泉徴収した住民税は「預かり金」だから、流用してはいけないのはわかっている。しかしだ、中小企業の経営とは、そんな奇麗事ではすまないのも現実である。まして、分納中に差し押さえとはヤクザなみである。

私;ふざけんな!何考えているんだ。突然、差し押さえとは。

担当:いえ、ご説明したました。7月6日に。

私:何言ってんだ。6月29日に差し押さえをして、7月8日ご説明だと。そんなのは説明とは言わない。担当がかわったら、前の約束は反故にして差し押さえするのか。

担当:地区担当から特別徴収係(原文のまま)に担当が替わったご説明は4月22日に電話でしました。特別整理係に替わったことにより差し押さえをした。

私:あんたらは、中小企業を潰すのが仕事か?滞納を徴収するのが仕事か?あなたたちは、毎月15日にお給料をもらい、60歳になれば退職金を山ほどもらい、関係先へ天下って65歳までノンビリ。その給料を払うために納税している中小企業は必死なんだ。わからないだろうよ。この差し押さえで、金融機関は新規の手形割引は貸し出しは渋るだろう。つまり、倒産の危機もあるんだ。あなたが、この会社の死刑台のボタンを押したんだ。もっと、楽しい仕事にしようよ。

担当:差し押さえをしても、倒産などの危機は来ないと判断した。

私:なんだと!じゃあ、A社の財務諸表は見たのか。キャッシュフロー計画は見たのか?直近の試算表は?まして、それが読めるのか?

担当:いずれも見ていない。

私:じゃあ、どうやって判断したんだ!

担当:‥‥

私:課長さん、あなた納税課の方針に「特別整理係に担当替えを行うのは、滞納者と個別交渉を丁寧に行い」と書いてきたネ。どこが丁寧な対応なのさ。あまりに乱暴じゃないか。差し押さえをする前に、何回、A社と接触したのか。

担当:6月16日にご来庁いただいた。

私:あんたたちの仕事は、何ひとつ法令違反はないよ。公務員として立派だよ。でもさ、人として「感謝される仕事」をしようじゃないか。滞納額を減らすミッションは、最後は人と人の信頼関係だ。野州市(原文のまま)のような「丁寧な対応」は無理だとしても、電話1本、10円をケチるなよ。差し押さえは、公用だから登記費用もかからない。でも、財産のないヤツはどうだ。毎年、滞納者の大多数が「消滅時効」で、逃げ得になっているじゃないか。そいつらは確信犯だ。くやしかったら、確信犯も徴収しろよ。今回のA社は、必死に分納している善意の滞納者だろう。

この後、大田区の納税課長は「丁寧な対応を心がける」と答えていましたが、「ウソつけ!喝!」で犬伏区議のブログ記事は締められていました。犬伏区議は以前、旅行会社を経営していましたが、9・11テロの影響から業績が悪化し、倒産した経験をお持ちでした。そのため、A社の社長のボヤキを聞き流せず、感情移入した憤りを納税課長らに直接ぶつけたものと思われます。

最近、どこの自治体でも議員の口利きに制約を定める動きが強まっています。納税交渉や滞納処分のケースは、きわめて利害関係が左右されるため、議員の皆さんが特に自制心を働かせている領域だと受けとめています。そのような中、犬伏区議のようなストレートな行動は珍しくなっているはずです。言うまでもなく、犬伏区議に今回の処分を覆す意図はなく、あくまでも一般論としての業務の進め方に対して批判を加えているのだろうと想像しています。

議員の責務や立場から行政に対し、様々な注文を加え、制度や運用面を改めさせようとする動きは肯定すべきものです。ただTPOに注意しないと結果として、自分の支持者のための口利きに繋がる場合があります。いずれにしても今回の抗議によって、A社のバックに犬伏区議が控えていることを大田区側は否が応でも認識し続けるはずです。そのことで今後の公正さに影響を与えるとは思いたくありませんが、微妙な裁量の幅がある事例だった場合、あえて波風を立たせない判断を下してしまう可能性も否定できません。

本論から離れた内容が少し長くなりました。実は犬伏区議が指摘しているとおり大田区納税課に「何ひとつ法令違反」はありません。さらに大田区側の言い分を強調すれば、決して「突然」の不動産差押ではなかったはずです。そもそも国税徴収法第47条は、滞納者に対して「差押ができる」という規定ではなく、財産が見つかっていた場合、「差し押さえなければならない」と定めています。とは言え、杓子定規に運用している訳ではなく、納付の見通しが確認できている場合などは留保していました。

記事の中でA社の滞納総額が示されていませんでしたが、特別整理係に移した事案ですので間違いなく50万円以上だと見込まれます。さらに徴収猶予の規定などで1年以内という期限が大きな目安とされ、仮に10万円の分納で1年以内に完納できる額だった場合、土地建物の差押は見送られていたのではないでしょうか。つまり1年を超える分納の場合、担保的な意味合いで不動産を差し押さえるのが通常のパターンでした。したがって、ただちに公売を目的とした差押ではなく、あくまでも長期の分納を認めるための措置だったものと見ています。

地区担当者とA社との話し合いの中で示されていた正確なニュアンスも分かりませんが、1年以内の完納に至らない場合、ずっと10万円で良いという伝え方はしていないはずです。「当面、その額でやむを得ませんが、分納額の増額をご検討ください」「本来、不動産差押も執行しなければならないのです」というような説明を行なっていたのではないでしょうか。万が一、滞納額が100万円ほどで、約束が毎月履行されていたケースだった場合、見当外れな話となってしまいますが、まず以上のような前提は間違いないものと思っています。

続いて、交渉を重ねてきた地区担当者の心情に思いを巡らしてみます。地区担当者は上記の原則を承知していながらも、10万円ずつ納付が続いている場合、どうしても強行姿勢に切り替えづらい心情となりがちです。ある意味で、自分自身の姿に重なり合うため、良く理解できる心情でした。今回の大田区の事例は、地区担当から特別整理係に引き継いだタイミングがギアチェンジに繋がっていました。したがって、大田区納税課の立場としては、本来、行なうべきことを粛々と行なった点を強調したかったはずです。

加えて、突然かどうかで考えれば、文書や直前の来庁相談の中で必ず差押については触れられていたのではないでしょうか。ここまで書いてきましたが、犬伏区議の批判が少し一方的すぎるように感じていたため、同じ職務を担っている立場上、大田区納税課側の言い分を代弁する展開となっていました。ただ「中小企業を潰すのが仕事か?」という犬伏区議の問いかけに対しては、自治体職員の立場から「否」と即答しなければなりません。

一方で、徴税吏員の立場からは原則にそって職務を遂行しなければならず、その前提は公平性を貫くことだと考えています。土地建物を差し押さえた結果、その会社の倒産する可能性がゼロと言い切ることはできません。しかしながら滞納整理の研修では「自らの滞納処分によって会社が倒産してしまうのではないかと心配する必要はありません。差押を受けて倒産するような会社は、遅かれ早かれ潰れてしまうものです。顧客として評価できる会社であれば、銀行が簡単に潰しません」という話が出るようなシビアなものでした。

たいへん長い記事となってきましたが、最後に犬伏区議が例示した野洲市のような「丁寧な対応」の話について触れてみます。人口4万人の野洲市では「多重債務相談受付の流れ」とういうマニュアルを整え、税金、国民健康保険、給食費の滞納などの情報を市民相談室が一元管理し、その他にも借金があるかどうか本人に確認していました。その上で、関係各部局が一堂に会し、滞納解消と借金返済について協議し、弁護士、司法書士に取り次ぐ対応をはかっていました。

その結果、平成21年度から22年度までの2年間で、取り戻した過払い利息は1億1900万円、払わなくて済んだ借金は1億5000万円、税金滞納への充当が1100万円という実績を上げていました。ちなみに野洲市の足元にも及びませんが、私どもの市でもそれに近い対応をはかるように努めています。納税相談を行なう中で、法律相談や生活保護申請への案内などを職員一人ひとりが適宜判断していました。ただ組織的・体系的な整備は、まったく行なっていないため、今後、野洲市の事例を参考にしながら検討していければと考えています。

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