民主党の代表選後が重要
火曜の夜、タレントの島田紳助さんが突然、芸能界からの引退を発表しました。暴力団関係者との付き合いが明らかになったため、その社会的責任を取るという理由からでした。確かに知名度の高いタレントの電撃的な引退表明は驚きであり、各メディアがトップニュースとして大きく取り上げたことも理解できます。同じに日に表明された前原前外相の民主党代表選出馬の報道が結果的に地味な扱いとなっていたようでした。
水曜朝のスポーツ新聞各紙の一面には島田さんの顔が大きく並び、一般紙の朝刊一面にも島田さんの写真が掲げられ、引退のニュースを大きな扱いで報道していました。さすがに木曜以降、一般紙は民主党代表選の話題が中心となっていましたが、枝野官房長官にまで島田さんの引退について質問したニュースなどに対しては「官房長官に聞くことではない」 という批判の声も上がっていました。
暴力団との関係性に踏み込む視点が重視されていれば、それはそれで社会的な問題提起に繋がり、マスメディアとしての責務も果たせていくのかも知れません。それに対し、単に大勢の方が注目しているからという理由だけだった場合、もっと報道すべき問題が多いはずであるという意見にうなづくことになります。今回の民主党代表選に当たっても、候補者が小沢元代表と会ったかどうかなどいう「ワイドショー」的な報道も目立っていました。
1年前、このブログの記事「民主党代表選への思い」の中で、「もう少し横並びな報道ではなく、プラス面とマイナス面を織り交ぜながら報道していく姿勢があっても良いのではないでしょうか」と書き込んでいました。今回も「たった3日間で決めるのか」という批判が強いようですが、逆に選挙期間を長く設ければ政治空白の問題を非難する声が高まっていたように感じています。そもそも任期途中の代表選は国会議員だけで決められる規約であり、党員やサポーターによる投票がない中、街頭演説するような選挙戦にはなり得ないはずです。
日曜の各局の政治報道番組に5人の候補者が揃って出演し、司会やコメンテーターらが政策面の違いなどを浮き彫りにさせようと試みていました。新しい総理大臣に直結する代表選であり、各候補者の政策や考え方を尋ねることの大事さを否定できません。さらに政策論争が重要であるという指摘も、まったくその通りだと思っています。しかし、あくまでもその内容云々の評価を投票行動の参考にできるのは、民主党の国会議員398人だけであり、とりわけ態度を明確にしていない120人ほどに限られた話でした。
テレビ討論を通し、それぞれの候補者の主張や政策を視聴した方が、投票権を持つ国会議員に働きかける場合があるのかも知れません。緊急な世論調査が行なわれ、その結果が候補者を絞り込む判断材料に繋がる可能性もあり得ます。とは言え、結局のところ限定された398人の選択が日本の命運を左右する新首相を決める局面だと言えます。ただ398人の背中には数多くの有権者の一票が託されていることも間違いなく、現行の民主主義の制度内のルールであり、民主党国会議員の皆さんの賢明な判断を信じるのみです。
菅直人首相の後継を決める民主党代表選は27日午前に立候補を受け付け、29日投開票に向けた短期決戦がスタートした。前原誠司前外相(49)、馬淵澄夫前国土交通相(51)、海江田万里経済産業相(62)、野田佳彦財務相(54)、鹿野道彦農相(69)の5人が届け出た。党内最大勢力を擁する小沢一郎元代表に支持された海江田氏と、脱小沢路線の党内主流派を基盤とする前原氏の対決を軸に多数派工作が本格化。【共同通信2011年8月27日】
前置き的な話が随分長くなりましたが、上記のとおり民主党代表選の結果は明日月曜日に判明します。ちなみに当ブログは週に1回の更新ペースを守っています。したがって、どなたが新しい代表、つまり新首相にふさわしいのか、個人的な論評や願望を綴ったとしても、明日の午後になれば陳腐な話題となっているはずです。加えて、記事タイトルに掲げたとおり私自身は特に今回、民主党の代表選後が非常に重要であるものと思っています。
幸いにも各候補者から、誰が代表になっても全力で支えていくという発言を耳にできています。また、代表に選ばれた後、しっかりと党内での議論を進めていく姿勢を候補者それぞれが強調されていました。この2点が有言実行されていくのであれば、どなたが新しい代表になっても安心して見守っていけるものと考えています。マニフェスト、増税、野党との関係など候補者間に違いや温度差が見受けられました。ぜひ、代表に選ばれた方は、掲げた個別課題の方向性も含めて党内での信任を受けたという早計な判断は避けて欲しいものと願っています。
その点を勘違いして、党内で意見が分かれている問題を強引に結論付けて進めていくと、これまで以上に対立が激化するように思えてなりません。スピード感を重視し、党内での議論が生煮えなまま野党に諮っても、賛否の割れがちな難しい問題が簡単に解決するとは考えられません。結果的に足踏みや遠回りすることとなり、国民にとってもマイナスとなり、ますます政権与党への信頼感が薄らいでいくように思っています。
このような問題意識は「リーダーシップのあり方は?」の中で綴っていた個人的な願望でした。残念ながら菅首相には届かなかった思いでしたが、新しい首相には自分一人で決めることが強いリーダーシップの発揮だと考えないよう謙虚に幅広い意見に耳を傾けながら、丁寧な党運営に努めていただければと願っています。いずれにしても民主党の原点に返るというフレーズも聞こえてきますが、この2年間の教訓を白紙にするような「振り出しに戻る」ことだけは控えて欲しいものです。
少し前の記事「ブックマークしているブログ」で、幅広い立場や視点のブログを日常的に閲覧していることを記しました。そのうちの一つに自民党の河野太郎代議士の「ごまめの歯ぎしり」があり、共感する内容が多いほうのブログでした。最近の記事「さあ、新しい日本へ」などは本当にその通りだと感じていました。最後に、新たな首相の誕生が党派を超えた熟議の国会に生まれ変われる機会に繋がるよう期待を込め、河野代議士のブログ記事の一部をそのまま紹介させていただきます。
この国が直面している問題は、深刻だ。議論はおおいに必要だ。でも、政策の議論もせず、スキャンダルの追及で、無駄な時間を費やすことは避けなければならない。もちろん、前原さんにも説明責任がある。正式に立候補する前に、やましいことはきちんと説明するべきだ。それに納得できないのなら刑事告発でもして、当局に捜査してもらえばいい。国会議員の仕事は捜査ではなくて、立法であり、予算である。やるべきことをきちんとやろう。
| 固定リンク
| コメント (5)
| トラックバック (1)
最近のコメント