« 2011年4月 | トップページ | 2011年6月 »

2011年5月29日 (日)

国家公務員給与削減へ

前回前々回の記事で国家公務員給与の削減問題を取り上げてきました。地方公務員に影響を及ぼす可能性がある問題ですが、差し当たっては国家公務員の組合やその組合員の方々が判断しなければならないものでした。そのため、事実関係の報告を中心にした記事の作成に心がけてきました。削減問題が一定の決着をはかったことを受け、今回の記事もニュースや公務労協の情報などをもとに綴らせていただきます。

東日本大震災の復興財源を確保するため、菅政権と連合系の公務員労働組合連絡会(連絡会)は23日、国家公務員給与の削減幅について合意した。課長以上の幹部を10%▽課長補佐・係長を8%▽係員を5%それぞれ削減する。ボーナスは一律10%減らす。給与法の改正後に適用し、2013年度末まで実施する。

菅政権は当初一律10%減で3千億~4千億円の確保を目指したが、削減幅で譲歩した。片山善博総務相と連絡会が同日協議し合意した。政権は労働基本権を拡大する国家公務員制度改革関連法案とともに、給与法改正案を6月3日に閣議決定したい考え。法案が成立すれば人事院勧告を経ない削減は初めて。 全労連系の日本国家公務員労働組合連合会は削減に反発し交渉が続いている。【asahi.com2011年5月23日】

連合系の産業別組合が公務労協(公務公共サービス労働組合協議会)に結集しています。その下部組織として、公務員労働組合連絡会と国営関連部会があります。今回、総務省との削減問題の交渉は、自治労、日教組、国公連合などが結集する公務員連絡会が担っていました。その上で、国家公務員の皆さんが直接的な当事者となるため、国家公務員の組合の連合組織である国公連合が前面に出て、精力的な交渉が重ねられました。

国公連合に属する全財務の公式ブログを拝見すると緊急職場集会などを通し、短期間の中で組合員の皆さんとの丁寧な情報共有や合意形成に努められていたことが垣間見れていました。同時に組合員から「10%…」「こんなやり方、ありなのか…?」「突然そんなこと言われても…」というような率直な戸惑いの声も掲げられていました。最終的に上記の報道内容のとおりの決着に至った訳ですが、全財務労働組合中央執行委員長の「片山総務大臣との交渉を終えて」の中の次のような一文が厳しい情勢に対する認識を表していました。

私たち全財務をはじめとする労働組合は、組合員の生活改善、労働条件の維持改善を最大目的に掲げる組織であり、したがって、給与削減について反対の立場にあることは当然であります。一方で、昨年の参議院選挙の各党マニフェストや人勧深堀論にも見られるように、与野党を問わず国会での公務員人件費への厳しい攻撃、東日本大震災を受けた世論の動向などを踏まえた時、「給与削減絶対反対」を貫くことは戦術上可能ではあるものの、こうしたある意味強力な権限を有する政府・与党等との力関係を含めた情勢を考慮した場合、政府による一方的な給与削減の強行にとどまらず、1割削減以上の更なる人件費削減の攻撃に晒される懸念が強くあったことも事実です。

その一方で、別な役員から“ここからは個人的意見ですが、この度の給与カットは組合員の生活(私自身の生活も含め)を鑑みると、「とてつもない」厳しい内容になったことは言うまでもありません。しかし一方で、この交渉で得たものがあることも事実です。中でも、労使の合意でこの課題を決着させたこと、そして政府の責任で自律的労使関係の導入に係る法案を成立させるという約束を得たことは、「とてつもない」大きな収穫だと思っています。”という前向きな感想も示されていました。ここで、今回の総務省交渉で確認した事項について、改めて整理してみます。

  1. 一般職の国家公務員のボーナスについて一律10%、俸給について役職段階に応じて5%(係員)、8%(係長・課長補佐)、10%(課長以上の管理職及び指定職)を特例法案の成立後、施行から2013年度末までの間、特例的に削減する。
  2. 労働基本権付与の法案と特例法案を同時に提出し、同時に成立をはかる。
  3. 定員への配慮とし、新しい純減計画を作成する状況にはない。総人件費2割削減の見直しに向け、与党の政策責任者に伝える。
  4. 勤務をすれば手当が出るのが原則であり、超過勤務予算を確保し、不払い残業の解消に努める。
  5. 国が財政措置を一方的に決定し、財政面から地方を追い込むというのはふさわしくなく、地方公務員をはじめ、独立行政法人や国営企業等の給与が主体的、自主的に決められるよう注視していく。

なお、公務員連絡会として“今回の措置は、人事院勧告制度の下で、勧告を経ずに給与を引き下げるという極めて異例な措置であるが、労働基本権の付与と自律的労使関係制度の確立を先取りする形であり、労使交渉で決着することが不可欠であったこと、政府との間で真摯で誠実な交渉を行ったことを踏まえ、今後、労働基本権が付与され、労使交渉によって公務員労働者の適切な賃金・労働条件を自律的に決定することを強く確信し、今回の給与引下げ措置を受け入れることとしたものである。”という見解を添えていました。

一方、全労連系の国公労連は「人事院勧告に基づかない給与削減は憲法違反だ」と断固反対の立場で、6月1日から3日まで総務省前で抗議の座り込み行動に取り組む予定です。それはそれで当該の組合の判断となる話ですが、省庁間で所属組合が異なるため、必ずしも「労使交渉によって決定」という原則には至らない悩ましい現状でした。このような点については、「EU労働法政策雑記帳」の記事「国家公務員の月給10~5%削減 震災財源で政労合意」のコメント欄でも話題になっていました。

いずれにしても今後、地方公務員は本当に影響を受けないのかどうか、まだまだ未知数な要素があります。石原都知事は「国がやるなら都庁もやる」と発言していました。さらに民間への波及の恐れもあり、経済への悪影響も懸念されがちです。ちなみに前回記事のコメント欄でも紹介しましたが、「週刊ポスト」2011年6月3日号の『公務員の給与カットに「ザマアミロ」というしっぺ返し来る』の中で記されていた一つの見方を改めて最後に掲げさせていただきます。

公務員の給与カットに胸のすく思いの国民は多いはずだ。が、「ザマアミロ」ではすまない。この震災賃下げが契機となって、民間にも減給の波が押し寄せ、「給与カットの連鎖」が起きる危険性があるからだ。経済評論家・奥村宏氏がこう指摘する。「企業はいま、とにかく人件費削減を進めたい。日本経団連が2007年にホワイトカラーの残業代をゼロにできる制度の導入を働きかけたように、人件費削減を狙ってきた。今回の公務員の賃下げは、経営者が組合や社員に震災後の業績悪化を補うための賃金カットを求める口実になる」

大震災以後、客足が激減している東日本の観光地の観光業界団体役員が語る。「宴会も減ったままだし、稼ぎ時の大型連休もパッタリでした。いつ従業員に賃下げを切り出そうかと考えていたが、国が範を示したからやりやすくなった」 製造業も震災による部品不足や夏の節電目標などで工場の操業率が低下しており、今期の業績大幅悪化が予測されている。大手から中小、零細企業まで広範囲に人件費削減が行なわれることを警戒しなければならない。

| | コメント (33) | トラックバック (0)

2011年5月22日 (日)

公務員給与削減の問題

5月からのクールビズは早すぎるような気がしていましたが、一度、ネクタイを外してしまうと、もう付けようとは思えない暖かい日が続いています。昨日も汗ばむ陽気の中、納税課の休日訪問があり、60件近くの催告書を持ち、自転車で担当地区を回っていました。私自身も含め、戻ってきた職員は皆、一日で顔や腕を真っ赤に日焼けしていました。今回、出納閉鎖に向けた前年度分の働きかけでしたが、5月末は現年度の固定資産や自動車税の納期となっている場合が多いはずです。ぜひ、該当される皆さんは納め忘れなどにご注意ください。

さて、前回記事「国家公務員給与1割削減?」のコメント欄は、初めて目にする名前の方からの投稿が多く、いろいろなご意見をお寄せいただきました。その中で、私から新規記事を通し、もう少し掘り下げようと考えていることをお伝えしていました。そもそも給与1割削減の提案は、公務員組合側にとって世論が追い風にはなり得ない問題でした。公務員の給与水準は高いという見られ方があり、未曾有の大震災で巨額の復興財源が必要とされている中、「1割程度の削減は当然、もともと民主党のマニフェストは2割削減だったのではないか」という声などを耳にしていました。

大阪府の橋下知事に至っては「緊急時だから3割ぐらいはカットしないと、平時に2割カットなんてできない」と批判し、1割では少なすぎるという考え方でした。たいへん残念ながら橋下知事のような主張が決して少数ではない現状を押さえなければなりません。私たち公務員組合側の立場としては本当に悩ましく、難しい局面であり、よりいっそう的確な情報発信が求められているものと思っています。今回の記事が、そのような一助となれるのかどうか分かりませんが、自分なりの問題意識を書き進めてみるつもりです。

まず誤解されがちな民主党の衆院選に向けたマニフェストですが、正確には「地方分権改革に伴う地方移管、国家公務員の手当・退職金などの水準、定員の見直しなどにより、国家公務員の総人件費を2割削減する」と記されていました。要するに国家公務員一人ひとりの給与水準を2割純減する公約ではなく、総定数の削減なども踏まえて、政権交代後、4年間で実現をめざすという内容でした。さらに公務員制度改革で労働基本権を回復した後、労使交渉を通して見直していくことも書かれていました。

残念ながら菅首相らが、そのような点を強調している場面を見ることができていません。知らないのか、知っていても言い出せないのか、よく分かりませんが、「守れないマニフェスト」の一つとして数えられがちであり、ますます自らの首を絞めているように思えてなりませんでした。今回、大震災の絡みから労働基本権回復が不透明な段階で、給与削減問題の労使交渉に臨まざるを得なくなりました。しかしながら最低限、どのような決着がはかられようとも、橋下知事のような見方は誤りであることを政府与党側も、しっかり認識すべきものと思っています。

そもそも民主党のマニフェストの中で、財源捻出のための一手法として国家公務員の総人件費削減が掲げられていました。その手法に対する評価は後ほど詳述しますが、「今回は今回、2割の問題は別」という理屈は到底当てはまらないはずです。今回の決着水準で打ち止めなのかどうかは、今後の労使交渉に委ねられる余地が少しは残るのかも知れませんが、公務員組合側にとって最大の難関を乗り越えたものと見ていくべきではないでしょうか。

以前の記事「公務員賃金の決められ方」の中で、「経営が厳しいから固定費である賃金をカットするという手法は禁じ手だと言えます。経費節減のために原材料費の価格そのものや税金の額を値切ることができない話と同様、本来賃金は経営者の思惑で簡単に切り込めない領域であるはずです」と綴っていました。とは言え、「会社が潰れたら元も子もない」という言葉の前に「賃金カットもやむを得ない」とされがちな社会的な雰囲気があることも付け加えていました。

労働基準法による「労働者」の定義は「仕事上の指揮・命令を受け、勤務時間・場所が指定される代わりに、賃金を受け取る者」とされています。ここで「命令を受ける」という意味は「企業経営上の責任を負わない」ことであり、「賃金」とは「企業利益の短期的変動にかかわらず固定した報酬」の意味に等しいものとなります。すなわち経営リスクを直接負わずに安定した報酬を保障されているのが労働者であり、企業の総収入から賃金等の固定費を支払った残り分(残余請求権)を取る者が経営者・事業主となっています。

労働者と対比し、経営リスクを前提とするからこそ、東電の社長が7千万円を超える年収だったと言えます。したがって、今回のような会社存亡の危機に際し、東電役員年収の大幅カットは必然的な流れでした。一方、労働者である東電社員の年収20%カットは、本来であれば「禁じ手」となりますが、様々な意味合いからやむを得ない選択だったろうと思っています。そのような中でも労使交渉を経て決められていますので、手順を踏んだ決着内容であるものと言えました。

今回、国家公務員給与の1割削減問題も最低限、労働組合へ提案し、合意の上に実施していくことが不可欠だろうと思っていました。ただ協約締結権など労働基本権の課題が未整理の段階であり、国家公務員の組合は複数に分かれている現状もありました。そのため、政府として強行突破する選択肢も検討していたかも知れません。それでも連合との支持協力関係がある民主党政権だからこそ、何とか労働組合側と話し合っていく姿勢だけは貫いているものと見ています。ちなみに具体的な交渉の様子は公務労協情報で確認できます。

正直なところ給与を切り下げられる提案を歓迎する労働者は皆無ではないでしょうか。よく政治家である首長が自分の報酬額のカットを公約に掲げています。選挙に落ちれば、その収入がゼロになるため、当選を第一の目的と考えれば、このような傾向が強まってしまうのだろうと思っています。先日、あるテレビ番組の中で、現役の国家公務員が「1割削減など当然」という発言を行なっていました。そのようにサラッと言えるのは、公務員給与に頼らず、別な道に転職を考えているからだろうと見てしまいがちです。

このブログのコメント欄や他のサイトを通し、当事者と思われる方々の意見に接することができています。やはり簡単に納得できる問題ではないことがヒシヒシと伝わってきます。また、公務員組合側の反論材料として、デフレへの影響も指摘されていました。このような組合員の声や経済への影響を踏まえ、組合側が反対の意思を示し続けることも一つの判断だろうと思います。一方で、それぞれの組合が決めていくことですが、震災の復興という非常事態の中、徹底抗戦に向けた一大闘争が築ける情勢なのかどうかは、慎重に見極める必要性があるものと感じています。

労使交渉を重ねる中で、連合系の公務員労働組合連絡会の「若年層については、給与の絶対額が少ないことから特段の対応を求める」という主張を受け、政府は月給を本省の課長や室長級以上の職員で10%、課長補佐や係長級の職員で8%、若手職員などの係員で5%削減する案に改めていました。管理職手当や期末手当、委員や顧問などの日当や各種手当についても一律10%削減し、年収ベースの平均で約8%削減する提案に修正がはかられていました。

前回記事のコメント欄で、Thorさんから「研究員の眼」の管理人である松浦民恵さんが記した「国家公務員の給与カット表明に熟慮と覚悟があるか」という冷静な問題提起に繋がっている文章を紹介いただきました。日曜の朝には次のようなニュースも紹介いただき、労使交渉の最新情報が把握できています。その報道によると全労連系の組合とは合意できないまま、法案が提出される見通しのようです。連合に結集している組合の一役員としては、最低限、公務員労働組合連絡会とは合意がはかれることを願っています。

国家をめぐる労使交渉が大詰めを迎えている。政府は、主要職員団体のうち連合系の公務員労働組合連絡会と23日にあらためて協議。翌日に迫る菅直人首相の主要国首脳会議(サミット)への出発前に、合意にこぎ着けたい考えだ。月給削減率は、閣僚や裁判官ら特別職も含め、本省課長級以上10%、本省課長補佐・係長級8%、係員5%とし、手当は一部を除いて一律10%削減とする案で調整中。若手職員の削減幅を圧縮する可能性もある。削減で得られる二千数百億円は、東日本大震災の復興財源に充てられる予定だ。

残る全労連系団体との交渉は難航しているが、政府は「説明は尽くした」などとして、連絡会との交渉がまとまり次第、関連法案を今国会に提出する方針。人事院勧告に基づかない給与削減は1948年の制度創設以来、初めてとなる。削減を前提に、連動して地方公務員も給与カットするよう財務省が求めており、地方への波及を抑えたい総務省が「既に独自に給与削減している自治体もある」などと反論している。【スポニチ2011年5月21日

| | コメント (11) | トラックバック (0)

2011年5月15日 (日)

国家公務員給与1割削減?

「ブログ、いつも見ているから」と時々、お会いする教組出身の知り合いの方から顔を合わせるたび、そのような一言を添えていただいていました。しばらく前、その方と当ブログに関して、いろいろ話題にする機会がありました。有難いことにブックマークされ、開設した頃から毎週、ほぼ欠かさずに閲覧くださっているとのことでした。同時に少し意外だった点は、これまで一度もコメント欄を開いたことがないというお話でした。

記事本文の下の「コメント」か、右サイドバーの「最近のコメント」に並ぶ名前をクリックすると、コメント欄が開くことを説明させていただきました。合わせて、いつも本当に多様な意見が寄せられ、拙い記事本文よりも貴重な書き込みが多いこともお伝えしたところでした。ちなみに記事本文は斜め読みされ、コメント欄のほうを注目しているという声も耳にしたことがありました。それでも記事本文には目を通しても、コメント欄までは開かない方々が多いことも間違いないようです。

そのため、これまでコメント欄に書き込んだ内容をもとに最新の記事本文を綴ったことも少なくありませんでした。前回記事「浜岡原発への停止要請」のコメント欄は投稿された方の数は少なかったのですが、原発や原子力政策への評価に繋がる意見が交わされました。ただ正直なところ、うまく論点がかみ合わない側面もありました。一方で、そのような側面も含め、前回記事のコメント欄の内容は記事本文に焼き直し、多くの皆さんにお示しすることも興味深い題材だろうと考えていました。

しかし、やはり「公務員のためいき」というタイトルを付けたブログですので、下記の報道にある国家公務員給与1割削減の話題は真っ先に取り上げるべき内容だと判断しました。地方公務員への影響も取り沙汰されていたため、すぐ私どもの組合の中でも話題に上がっていました。すでに4月中から聞こえていた話でしたが、金曜日、正式に国家公務員の労働組合側と交渉に入ったというニュースが流れました。

片山総務相は13日、2011年度から13年度まで、国家公務員給与を1割削減する方針を正式に表明し、国家公務員労組側との交渉に入った。東日本大震災の復興財源確保に充てることが目的だが、労組側は反発を強めており、今後の交渉は難航も予想される。 

片山氏は総務省内で、日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)と国公関連労働組合連合会(国公連合)の二つの職員団体幹部とそれぞれ協議し、「財政事情が非常に厳しい中、震災への対応もしなければならない。すべての歳出を見直す必要があり、心苦しいが、1割カットを提案したい」と説明した。だが、国公労連は給与削減への反対を明言。国公連合は「給与カットは労働基本権の回復問題と密接不可分だ」として、基本権付与が前提条件との考えを示した。【読売新聞2011年5月13日

菅首相は、震災が発生した以降の公務員の働きぶりを高く評価しながらも「さらなる東日本大震災対応を考えると歳出削減は不可欠で、人件費も例外ではない」とし、公務員給与の1割削減に向け、総務大臣を軸に総務三役が補佐し、関係閣僚とも話し合って進めるよう指示していました。その中で、被災地で遺体収容などに従事した自衛官については、特別な配慮をすべきという考え方も北沢防衛大臣に伝えていました。

政府は今回の削減案で確保できる約3千億円は2次補正に回す考えを示しています。片山総務相は記者会見で「人事院勧告によらない異例の引き下げで、丁寧に交渉を進め、理解を得たい」と述べ、職員団体の要望にも配慮する考えを表明していました。さらに地方公務員給与の引き下げについては「国が決める仕組みではなく、地方公務員法に基づいて、それぞれの自治体が条例で決める」と述べています。

中野寛成国家公安委員長からは「警察官は基本的に地方公務員なので、対象に入っていない」という説明も加えられていました。枝野官房長官も地方公務員の給与について記者団に聞かれた際、「国が直接的に給与について関与できるのは国家公務員のみで、地方自治体が地方自治体の判断で適正に対応していくべき」と答えていました。このような報道がある一方、ネット上から次のような共同通信の配信があったことも知りました。

財務省は12日、東日本大震災関連の復興財源を捻出するため、国家公務員の給与引き下げに合わせ、地方公務員の給与に充てる地方交付税も最大10%削減する方針を固めた。国費ベースで最大6千億円を2011年度第2次補正予算に充当する。地方公務員の給与水準は地方自治体の自主性に委ねられているが、人件費は国家公務員の約4倍に達しており、国家公務員に準じた引き下げが必要と判断した。引き下げ対象には教員給与も含まれる。【共同通信2011年5月13日

「財務省は12日」とあるとおり財務省からのリークだと見受けられます。日付も片山総務相が国家公務員の組合と交渉に入った前の日のものでした。交渉後の記者会見で、地方公務員給与との関連が質問され、上記のような片山総務相や枝野官房長官の発言に繋がっていました。つまり政府の公式見解は「地方自治体のことは地方自治体が決める」というものであり、財務省のフライングなのか、何か意図したリークなのか分かりませんが、現時点では極めて「誤報」に近い共同通信の勇み足だったように理解しています。

ここまでは報道を通した情報を整理してきました。実は最近の記事「石原都知事の人気」のコメント欄の中で、この問題に関する議論が交わされていました。私からは「今回の提案は国家公務員の労働組合が判断すべき課題であり、当事者ではない者が踏み込んだ論評は控えさせていただきます」とし、その交渉の行方に対し、自治労に属する組合の一役員がネット上で先走った発言は慎まなければならない意味合いを端的にお答えしていました。

その基本的な考え方は今でも変わりませんが、少し気になった点を一言だけ付け加えさせていただきます。確かに自衛隊の皆さんの苦労や活躍を考えれば、「特別な配慮」という発想が出てくることも頭から否定できません。しかしながら公務員一人ひとりは、もともと与えられた職務を粛々と全力で当たることが使命とされています。その意味では自衛隊員に限らず、被災対応のために日夜奮闘されている国家公務員の方々が多いことも押さえなければならないはずです。

そのような点を踏まえれば、給与削減の問題を決着させる際は、やはり国家公務員全体の制度や運用として一律に判断すべきではないでしょうか。それこそ辛く厳しい任務に配慮するのであれば、特殊勤務手当の見直しなどで埋め合わせるべきだろうと思っています。最後に、地方公務員の賃金水準の決められ方は、国家公務員との「均衡の原則」も大きな柱の一つとなっています。したがって、今回の問題は決して他人事ではないという自覚があることも一言添えさせていただきます。

| | コメント (23) | トラックバック (1)

2011年5月 8日 (日)

浜岡原発への停止要請

このブログは週に1回、週末に新規記事を投稿しています。開設した当初は毎日のように投稿し、しばらくしてから週に複数回の更新間隔となり、2年目に入る頃には現在のペースが定着していました。あまり実生活に負担をかけないための一つの心得でしたが、週に1回は必ず更新するという動機付けや習慣化にもつながっていました。そのような目安が曖昧だった場合、もしかしたら「開店休業」状態のブログとなっていたかも知れません。

おかげ様で毎回、多くの皆さんが訪れてくださっていることも、そのペースを維持しながら長く続けられている大きな理由でした。前回記事「内閣官房参与が辞任」のコメント欄では、消防協さんからブログ「消防職員協議会の憂鬱」をご紹介いただきました。その記事の中で、公務員労働者で労働組合関係者に非常に有名な「公務員のためいき」という記述がありました。過分な評価だろうと思っていますが、このブログを続けていく上で励みになる一言であることも確かでした。

ちなみに週1回の投稿間隔であるため、新規記事の題材には事欠きません。日常の組合活動を補うためのテーマは数多くあります。機会があればブログで取り上げようと考えながら読み終えた書籍も複数あります。日々の雑感を綴ろうと試みれば、取りとめもなく字数は埋められるはずです。このような選択肢がある中、週の初めに次回記事の内容を考え始める時も少なくありません。それでも週末近くに接したニュースなどを受け、予定した内容をガラッと変えるのは、いつものことでした。

今回の記事も当初、別なテーマを考えていました。しかしながら金曜の夜、菅首相が浜岡原発の全面停止を中部電力へ要請したという報道に接し、少し迷いましたが、やはり当ブログの最新記事で取り上げるべき題材であるものと判断しました。私自身のスタンスは「原発議論と電力問題」で記したとおり原発への依存度を徐々に弱めていくべきというものですので、菅首相の決断を積極的に評価していくつもりです。緊急の記者会見を開き、菅首相が発表した要旨は次のとおりでした。

首相として海江田万里経済産業相を通じ、浜岡原発のすべての原子炉の運転停止を中部電力に要請した。国民の安全と安心を考えた結果の判断だ。浜岡原発で重大な事故が発生した場合に、日本社会全体に及ぶ甚大な影響も考慮した。文部科学省地震調査研究推進本部の評価では、これから30年以内に浜岡原発の所在地域を震源とするマグニチュード(M)8程度の東海地震が発生する可能性は87%と、極めて切迫している。特別な状況を考慮すれば、東海地震に十分耐えられるよう防潮堤の設置など中長期の対策を確実に実施することが必要だ。対策完成まで、定期検査中で停止中の3号機のみならずすべての原子炉を停止すべきだ。

浜岡原発は活断層の上に立地する危険性が指摘されてきた。先の震災と(東京電力福島第1)原発事故に直面しさまざまな意見を聞き、海江田経産相とともに熟慮を重ねて決定した。中部電力管内の電力需給バランスに大きな支障が生じないよう、政府として最大限の対策を講じる。電力不足のリスクは地域住民をはじめ全国民が一層、省電力の工夫をすることで必ず乗り越えられる。国民のご理解とご協力をお願いする。(停止は)基本的に要請だ。指示や命令は現在の法制度では決まっていない。(中部電力に)十分に理解いただけるように説得していきたい。【毎日新聞2011年5月6日

このブログは一つの「答え」を押し付けることを目的としていません。個々の事例に対して多様な見方があることを紹介しながら「私はこのように思っています」という論調を基本としています。そのような記事の発信内容を受け、読み手の皆さんがどのように感じるのかどうかという淡々とした関係性を重視しています。もちろん、私の考え方が一人でも多くの方から共感を得られるよう願いながら記事を綴っていますが、物事の見方が枝分かれしていくことは当たり前な話だろうと思っています。

とりわけ原発の問題は個々人での評価が分かれがちであり、今回の内容も「このような見方がある」という一意見として受けとめていただければ幸いです。それでも福島第一原発の惨禍を目の当たりにしている今、浜岡原発を停止するという方向性に対しては大半の方が賛同されるのではないでしょうか。とは言え、この政府方針が示された以降、静岡県の川勝平太知事のように「英断に敬意」と高く評価する声がある一方、電力不足から生じる経済への影響、充分な根回しがない唐突な発表、支持率回復を狙った菅首相の「行き当たりばったりの行動」だと批判する山本一太参院議員のような意見も多く耳にしていました。

地元の御前崎市の石原茂雄市長は「危険だと、不安だと思うのであれば、浜岡原発だけ停めるのではなく、すべての原発を見直すべきではないのか」という見解を示していました。原子力委員会専門委員であり、独立総合研究所の青山繁晴社長は菅首相の決断を肯定しながらも「横須賀に第7艦隊の母港があるため、アメリカからの圧力に屈した結果」という話をテレビ朝日『ワイド!スクランブル』の中で暴露していました。その番組の出演者は揃って「方向性は正しい」と述べながらも、「全体的にはおかしい」「今まで菅さんはヘマばかりしていたから期待できない」というような否定的な発言ばかりでした。

結果的に偏ったメンバー構成となったのかも知れませんが、とにかく政府の足を引っ張ろうとしているようにしか思えない内容でした。その番組に比べれば、日曜の朝のフジテレビ『新報道2001』は海江田経産相を出演させ、バランスが取れていました。実は記者会見のニュースに接した時、私自身も最初、また菅首相が独断専行で判断したのではないかと心配していました。すぐに今回は、原発問題担当の細野首相補佐官や海江田経産相らと相談した結果であることが分かってきました。さらに『新報道2001』の中で、海江田経産相は経産省あげて浜岡原発を停める方向性で努力していることも語られていました。

「なぜ、浜岡原発だけなのか」という疑問は、そもそも菅首相が説明しているとおり東海地震の発生する可能性の高さからです。30年以内という言い方も、この瞬間から発生する可能性も示唆している話です。加えて、どのような地震や津波にも日本の原発は耐えられるという安全神話がありましたが、3月11日以降、もろくも崩れ去っていました。したがって、大津波への対策が充分とは言えない現状の中、活断層の上に建つ浜岡原発の全面停止という判断は必然であるものと思っています。

確かに浜岡原発に限らず、日本中のどこでも地震に襲われるリスクがあります。すべての原発を停められれば、それに越したことはないのでしょうが、それこそ電力供給の問題が深刻化します。今後、長期的な視点で電力政策を検討していく中で、他の原発の停止問題は判断していくべき事案だろうと考えています。このような現実的な側面と合わせ、危険性の度合いを勘案すれば、まず浜岡原発を停止するという判断に至ったことは充分理解できます。

数多い批判意見として、中部電力の夏に向けた電力供給力の問題が取り沙汰されています。すでに浜岡原発の1号機と2号機は廃炉となっています。3号機は定期検査のため休止中であり、今回、4号機と5号機の停止を中部電力は政府から要請されたことになります。浜岡原発を全面停止した場合、中部電力における2011年度の電力供給力の12%にあたる約360万キロワットが不足すると試算されています。

その結果、今夏想定している最大電力需要2560万キロワットに対し、供給力は2637万キロワットになるため、ほとんど余力がなくなるという見方でした。しかし、金曜夜の『NEWS23クロス』の中で、環境エネルギー政策研究所の飯田哲也所長は「企業活動に影響を与えない節電と300万キロワットぐらいある揚水発電を織り込めば充分に余裕がある」と解説され、まったく心配ないという話でした。

いずれにしても「支持率アップのため」「アメリカから圧力を受けたため」などという声があり、そのことを全否定できないとしても「国民の安全と安心のため」という目的が最大の判断材料となっていることは間違いないはずです。「菅首相のやることだから駄目」という批判などは論外であり、評価すべき政治的な決断に対しては、特に国会議員の皆さんは様々な立場を超えて応援していって欲しいものと願っています。

中部電力は「法的根拠がないが、重く受けとめざるを得ず、要請を断ることは困難」とし、全面停止を受け入れる方向で調整を進めていました。しかしながら土曜日に開いた臨時取締役会では結論を出せなかったようです。年間2500億円のコスト増となる試算もあり、一企業としては非常に難しい判断を迫られています。それでも最終的には安全最優先の判断が下されることを信じています。最後に、前回の記事に掲げた20ミリシーベルトの不安を払拭できるような説明責任や政策判断が示されれば、もう少し菅首相を支えていこうという気運も改めて高まっていくのではないでしょうか。

| | コメント (17) | トラックバック (0)

2011年5月 1日 (日)

内閣官房参与が辞任

東日本大震災復興支援活動として、自治労都本部からの要員派遣が4月10日から始まっていました。私どもの組合からの派遣は4月30日から始まり、10名以上の組合員が福島県相馬市と新地町での任務に当たります。緊急な組合からの呼びかけに対し、すぐに多くの方が名乗りを上げていただき、たいへん心強く思っていました。ちなみに平行して市長会を通した派遣募集もあり、両方申し込まれた方がいらっしゃるほどでした。

火曜の夕方、自治労都本部派遣の第一陣で現地に赴いた方から話を伺う機会がありました。これから出発するメンバーに対するレクチャーを主な目的とし、被災地の様子や支援活動中の写真などをパワーポイントで映しながらの説明でした。その方は阪神淡路大震災の直後、神戸での支援活動にも行かれていました。神戸では建物の倒壊や火災による被害を受けた風景が一面に広がっていたことに比べ、今回は津波が押し寄せた地域かどうかで極端な被害の違いを目にしてきたと話されていました。

内陸部を車で走っていると、あの大地震に見舞われた場所なのかどうか分からないほど普通の街並が続くそうです。それが突然、絶句する瓦礫の山となった景色に切り替わるという話でした。今回、地震そのものよりも津波による被害の甚大さを思い知らされる光景だったようです。実は瓦礫という言葉を使ってしまいましたが、被災された方々にとって瓦礫でもゴミでもなく、「帰るべき我が家」であり、「かけがえのないもの」という説明も加えられていました。

さて、今回の記事内容は当初、別な話題を考えていました。しかしながら日曜の朝、ためいきばかりさんから前回記事に寄せられたコメントが切っかけとなり、小佐古内閣官房参与の辞任に至った問題を取り上げることとしました。私自身も気になっていたニュースでしたが、事実関係の真偽や評価が簡単に下せず、このブログでは荷が重いように感じていました。とは言え、たいへん重要な問題提起であるため、そのような経緯を広く伝える意味合いからも今回の記事内容としています。

小佐古敏荘内閣官房参与(東大大学院教授)は29日夕、衆院議員会館で記者会見し、30日付で参与を辞任すると表明した。小佐古氏は「今回の原子力災害に対して(首相)官邸および行政機関はその場限りの対応を行い、事故収束を遅らせているように見える」と述べ、菅政権の福島第1原発事故への対応を辞任理由に挙げた。小佐古氏は放射線安全学の専門家で、3月16日に起用された。

菅直人首相は東日本大震災発生後、東京電力や内閣府の原子力安全委員会などへの不信感から、専門家6人を内閣官房参与として迎えた。その一人の小佐古氏が今回、政権の対応を公然と批判して辞任することは、首相にとって痛手だ。小佐古氏は会見で、年間累積放射線量が20ミリシーベルトを上限に、学校の校庭利用を認めた政府の安全基準について「(同程度の被ばくは)原発の放射線業務従事者でも極めて少ない。この数値を乳児、幼児、小学生に求めるのは受け入れ難い」と見直しを求めた。【時事ドットコム2011年4月29日

テレビからのニュース映像で、小佐古参与は途中で声を詰まらせ、涙の辞任会見となっていました。その模様は衝撃的であり、子どもたちへの放射線被曝の問題が非常に不安視される出来事でした。ためいきばかりさんは中部大学の武田邦彦教授のブログから次のような言葉も紹介されていました。「被ばくしている児童生徒を疎開させるのは面倒なのだろうか?文科省は子供に20ミリという高い放射線をあびさせている。疎開させれば無事なのに、なぜ子供達を被ばくさせたいのだろうか?まるで戦時中の竹槍精神を思い起こす.先生方、立ち上がってください!」

言うまでもありませんが、児童生徒の疎開が難しいという理由で、基準値が改められるのであれば論外な話です。政治や行政の怠慢であり、許されない不作為という厳しい批判にさらされることになります。この小佐古参与の強い抗議の意を込めた辞任に対し、菅首相は「参与の意見も含め、議論の結果に基づく原子力安全委員会の助言で対応しており、決して場当たり的な対応とは考えていない」と衆院予算委員会の場で反論していました。

上限値は国際放射線防護委員会(ICRP)の考え方に沿ったものであり、文科省は「余裕を持って決めた基準で、実際に年間20ミリシーベルトを被曝することはない」と説明しています。日本原子力研究所の笠井篤元室長は「一時的に年間20ミリシーベルトを学校に適用することはやむを得ないとしても、通常時の一般人の基準である年間1ミリシーベルトに、できるだけ早く収まるよう努力していくべきだ」と話しています。

一方で、放射線の専門家からは「子どもを大人と同様に扱うべきではない」という異論があり、原子力安全委員会の中でも「子どもの基準は10ミリシーベルトにすべきだ」という意見も示されていたようです。福島県災害対策本部の荒木宏之事務局次長は「今回の件で、児童への安全性に改めて不安を抱く住民がいるかも知れず、国が科学的な根拠に基づいた説明を住民に対して繰り返していくべきだ」という指摘は本当にその通りだと思います。

ためいきばかりさんからは「子供たちに通常の基準値の20倍(1年あたり)もの放射線量を浴びせてもよいとする基準は即刻やめていただきたい。労働組合として子供たちの健康を守る行動をとって欲しい」という訴えもありました。自治労は幅広い運動方針を掲げ、子どもたちの安全を守るという立場も大切な柱の一つとしていました。したがって、今回の問題を看過せず、政府が本当に「場当たり的な対応」だった場合、子どもたちの健康を守るための具体的な行動が必要であるものと考えています。

| | コメント (9) | トラックバック (0)

« 2011年4月 | トップページ | 2011年6月 »