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2011年4月 3日 (日)

震災後、今、これから

東日本巨大地震の後、この間、日本全体で様々な催しが自粛されていました。被災された皆さんの苦難を慮り、お亡くなりになった方々に哀悼の意を表するためにも、欠かせない姿勢や申し合わせだったものと思っています。プロ野球やJリーグの開幕が延期され、東日本でのJRAの開催も見送られていました。一部のスタジアムなどが実際に被災していた事情もありましたが、セ・リーグの場合は迷走の末、自粛という意味合いでの大幅延期に落ち着いたようでした。

私どもの役所では退職者の送別会などが取りやめられ、3月末に予定していた組合主催の家族向けの行事も中止していました。自粛する理由にはもう一つ、計画停電の影響もありました。催しの時間帯に停電が実施されていなくても、節電という観点から取りやめる判断はやむを得ない現状でした。このような中、花見の自粛を呼びかける公園が全国的に相次いでいました。節電のためのライトアップの中止にとどまらず、宴会そのものを自粛するよう求めた看板が上野公園や井の頭公園には立てられていました。

石原都知事が「桜が咲いたからと言って、一杯飲んで歓談するような状況ではない。同胞の痛みを分かち合うことで連帯感が出てくる」と発言していたため、都内の花見スポットでの宴会自粛の流れが強まっていたようです。都知事選挙の真っ最中ですが、対立候補からは揃って「何でも自粛すると経済が萎縮し、自粛不況につながる」というような反論が加えられていました。蓮舫節電啓発担当大臣からは「権力によって自由な行動、社会活動を制限するのは最低限にとどめるべき」という発言も示されていました。

石原都知事と蓮舫大臣とのバトルは「どっちもどっち」という周囲の見方がありますが、対立候補からの「自粛不況につながる」という言葉は留意しなければならないはずです。いずれにしても祭りやイベントを中止する動きが広まる中、「行き過ぎた自粛は、沈んだムードに拍車をかける」「日本全体が落ち込むことを被災者も望んでいないのではないか」「経済の活力が損なわれると復興も難しくなる」という声が上がっていますが、私自身もそのように考え始めています。

被災した火力発電所の復旧があり、さらに最近は暖かい日が続くようになり、計画停電も連続して見送られていました。このような状況の変化や前述した自粛に対する見方が加わることで、これから徐々に以前のペースに戻っていくような気がしています。しかし、簡単に以前のような生活に戻れない被災された方々が大勢いらっしゃることは絶対忘れてはなりません。合わせて、節電する努力は継続しなければならず、燃料や物資を大切にする姿勢も持ち続けなければならないはずです。

政府は先週金曜、復興構想会議の設置や震災担当大臣など閣僚3人の増員を発表しました。菅首相は記者会見で「従来(の姿)に戻すという復旧を超えて、素晴らしい東北、日本を作っていくという大きな復興計画を進めたい」と強調されていました。その発想自体に異論は示されないのかも知れませんが、非日常の避難所生活を強いられている皆さんからすれば、まず「復旧を急いでくれ」という思いが先立つのではないでしょうか。その意味で、中長期的なビジョンと当面する手立てについて、バランス良く提示していく丁寧さも求められています。

なお、取り急ぎ私たちができることとして、まず義援金への取り組みがありました。3月末には行政と自治労を通し、被災地に支援要員を派遣する要請が入りました。それぞれ独自に募ることになりますが、自治労都本部としては4月10日から5月末にかけて、毎週15人、延べ150人を派遣する計画です。このブログをご覧になっている自治労組合員の方で、被災地での支援に力を貸していただける場合、ぜひ、当該の組合にご相談ください。

一方で、思いは現地に飛べても、多くの皆さんは実際に足を運べない現状を抱えているはずです。そのような方々の思いを広く、かつ継続的に受けとめていくためには、やはり義援金の取り組みが欠かせません。私どもの組合では震災直後、市長と委員長名による共同の呼びかけとしましたが、今後は組合事務所でも常時カンパを受け付けていきます。「給料日だから」「時間外勤務手当が多かったから」というようなサイクルや動機付けを踏まえながら、息が長い支援活動につながるよう努めていくつもりです。

イチロー選手の1億円や石川遼プロの賞金全額のような桁違いの義援金に比べると本当にささやかな額だったとしても、身の丈に合った気持ちを一人ひとりが末長く寄せ合っていく取り組みも大事なことだろうと思っています。また、余った年賀状や書き損じハガキを組合が回収し、換金後、義援金として送る活動も進めます。このように被災者支援の取り組みは、組合としても、個人的にも長期にわたって対応していく予定です。

最後に、自分の仕事で実際にあった話を紹介します。先日、月々の分納を約束している方から電話がありました。宮城県に転出されていた方で、「家が流されてしまい、3月分が納められそうにありません」という連絡でした。そのような状況の中でも連絡くださった誠実さに頭が下がりながら「生活再建を優先してください」とお答えしていました。本来、どのような事情があっても、いったんは期限を区切った約束を交わすことが基本ですが、街全体が大津波に流されていく映像を思い浮べた時、とても「いつまでに改めてご連絡ください」という言葉は投げかけられませんでした。

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