石原都知事の人気
金曜の夕方、連合三多摩による被災地支援の募金活動がターミナル駅のデッキ上で取り組まれ、私も呼びかけ側の一人として参加しました。三多摩地区トップの乗降客数を誇る駅ですので、たいへん多くの方々が行きかい、いつも混雑している駅前でした。この取り組みは毎週1回続けていましたが、さすがに皆さん、すでに何らかの機会に義援金をお寄せくださっているものと思われ、足を止められる方の数はそれほど多くありませんでした。
それでも小学生からの募金や、わざわざ千円札を複数の募金箱に分けて入れてくださった女性の方、「会社でもしたけど、ここでもやるよ」と話されていたサラリーマンの方など、心暖まる厚意の数々に触れることができました。翌日の土曜は、市長を先頭に私どもの市の職員150人ほどが市内にある主要な駅前で、雨が降る中、被災地支援のための募金活動に取り組みました。
私が所属する納税課は現年度の追い込みの時期に入り、休日訪問の日に当たっていたため、その取り組みには参加できませんでした。ちなみに土曜の朝、急に股関節が痛み、歩くことに苦労していました。自転車を利用できれば何とか頑張ろうと思いましたが、雨が降り続きそうな気配であり、すべて徒歩で回り切るのは難しいものと判断しました。留守番役だった係長と交代し、自分が庁内に残ることとなり、雨の中、ご苦労をおかけしました。おかげ様で、日曜の今は痛みも和らぎつつあります。
さて、少し前の記事「震災後、今、これから」で綴ったとおり徐々に以前のペースに戻ることも必要だろうと思い始めていました。そのため、前回記事「八方ふさがり菅首相」は、このブログのサブタイトルのとおり「雑談放談」的な内容でした。その記事の冒頭でマスコミの話に触れていましたが、菅首相の不人気ぶりと対比し、実は石原都知事への根強い人気に絡んだ内容を取り上げるつもりでした。例によって長い記事となってしまったため、途中から菅首相のみの話題に絞っていました。
改めて今回の記事で石原都知事について書き進めてみます。本日は統一自治体選挙の後半戦の投票日ですが、前半戦の目玉として東京都知事選挙が注目を集めていました。当初、石原都知事は引退の意向を示し、正式に出馬を表明したのは告示日直前の都議会最終日、巨大地震が東日本を襲った日でした。この地震や津波に際し、石原都知事は次のような配慮の欠いた発言を報道陣を前にして行なっていました。
石原慎太郎・東京都知事は14日、東日本大震災に関して、「日本人のアイデンティティーは我欲。この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。やっぱり天罰だと思う」と述べた。都内で報道陣に、大震災への国民の対応について感想を問われて答えた。発言の中で石原知事は「アメリカのアイデンティティーは自由。フランスは自由と博愛と平等。日本はそんなものはない。我欲だよ。物欲、金銭欲」と指摘した上で、「我欲に縛られて政治もポピュリズムでやっている。それを(津波で)一気に押し流す必要がある。積年たまった日本人の心のあかを」と話した。一方で「被災者の方々はかわいそうですよ」とも述べた。石原知事は最近、日本人の「我欲」が横行しているとの批判を繰り返している。【asahi.com2011年3月14日】
「津波は天罰」という発言は被災者の気持ちを慮れば、あまりにも非常識なものでした。今回は翌日に緊急の記者会見を開き、「発言を撤回し、深くお詫びします」と謝罪していましたが、これまでも石原都知事は、たびたび物議をかもす発言を行なっていました。重度障害者に対して「ああいう人ってのは人格あるのかね」、同性愛者には「どこかやっぱり足りない感じがする」などという発言があり、決して失言ではなく、石原都知事の資質から発せられる本音の言葉だったようです。
このような問題発言があった際、マスコミも一定の批判記事を掲げていましたが、あくまでも一過性だったように感じています。4年前には石原都知事の公私混同ぶりがマスコミから強い批判にさらされていました。それが今回、まったく耳にしていませんでした。批判に対して謙虚に反省し、それまでの行ないを改めていたのであれば、耳にしないのは当たり前な話だったのかも知れませんが…。
加えて、新銀行東京の不振、賛否が分かれていた築地市場移転問題、都知事自身が入れ込んで失敗した五輪誘致など、政策面でも目立った成果がない現況でした。『AERA』(2011年4月18日号)の記事を通し、昨年末に自治体専門紙『都政新報』が都職員向けに実施したアンケートの結果を知りました。都職員による石原都政の通信簿は1期目71.1点、2期目58点、3期目48.2点と任期を重ねるごとに評価が下がっていました。
4期目の出馬については賛成6.6%に対し、反対が71%に及び、圧倒多数の部下に支持されていない首長であることが分かりました。それでも世間からの石原都知事に対する人気は根強く、4月10日の都知事選では260万票を獲得し、2位の東国原候補に100万票の差を付ける圧勝でした。今回、震災の影響で都知事選の注目度が薄まり、従来よりもマスコミの取り上げ方が少なく、そのことも現職の石原都知事に有利に働いたという見方が示されていました。
「選挙なんてしている場合じゃないよ」。震災後、石原氏はそう話し、公務に徹すると宣言した。浄水場視察などを通じて現職の強みを発揮。「高度防災都市」を謳うことで、政策面の準備不足を解消する離れ業を演じたわけだ。有権者の関心も防災にシフトし、新銀行の存廃などは些末な事象のように扱われて他の候補者同様にかすんでしまった。
上記は先ほど紹介した『AERA』の記事の一文ですが、福島第一原発から戻った東京消防庁ハイパーレスキュー隊員らを前にし、石原都知事が涙を流しながら感謝する場面も象徴的でした。その涙に偽りはないものと思っていますが、この時の様子がテレビ画面から繰り返し流されることで、ますます新人候補にとって不利な選挙戦につながったはずです。
今回、民主党が独自候補を擁立できず、現職の石原都知事が出馬を表明した段階で勝敗の行方は見えていました。それでも投票率が上がる中、石原都知事は前回より20万票ほど減らしていました。さらに2位と3位だった渡邉美樹候補の得票を合わせると、石原都知事の票数を上回っていました。とは言え、石原都知事の人気の高さは間違いなく、人気が高ければ高いほど、その人気を下支えするマスコミの習性も改めて感じていました。
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