原発事故の影響
被災した福島第一原子力発電所からの放射能漏れの脅威は、東京の水道水にまで及んでいました。東京都葛飾区にある金町浄水場で、水道水から放射性物質が検出されました。放射性ヨウ素131の乳児向けの暫定規制値は1kg当たり100ベクレルですが、210ベクレルという数値まで上昇していました。金町浄水場の配水地域は、東京23区や武蔵野市、町田市など多摩地区の一部となっています。乳児に対しては水道水の摂取を控えるように呼びかけられたため、ミネラルウォーターの品切れが続出していました。
その後、千葉や茨城県内の浄水場からも規制値を超える放射性ヨウ素が検出されていました。一方で、金町浄水場における最新の採取結果は79ベクレルまで下がり、東京都は乳児に対する摂取制限を解除していました。一般の規制値は300ベクレルであり、「成人にはほとんど影響ない」と言われています。「検出されたヨウ素はごくわずかで、乳児にも危険は少ない。数値は注視すべきだが、過剰に不安になる必要はない」という専門家のコメントもありました。
とは言え、「乳幼児は放射性ヨウ素の影響を受けやすいので、安全面を優先して摂取制限の措置を取った」という説明も加えられる中で、「ミネラルウォーターが足りない」「1歳になったばかりなのに大丈夫なの?」というような戸惑いや心配も広がっていたようです。原発事故の問題では様々な情報や見方が流れていますが、第一義的には政府からの発信を信じ、無用な混乱を起こさないようにしなければなりません。
信頼関係を繋ぎとめる前提として、正確で迅速な情報発信が政府側に求められています。これまで政府は適宜、水道水や野菜などに対する放射能汚染の実態を数値として明らかにしてきました。その数値が今後、どのような影響を及ぼしていくのか、不安が簡単に拭えないことも確かですが、やはり現行の規制値との絡みや専門家の言葉を信じていくしかありません。万が一にもパニックを防ぐため、あえて重大な情報が隠匿されているような現状ではないことを祈るのみです。
一部の農産物に対し、政府は「食べても健康に害が出ない」と訴える一方で、出荷制限を加える情報発信のチグハグさが非難されがちです。少しでも汚染されている場合、食べないほうが好ましいため、そのような表現になってしまうことも一定理解しなければならないのかも知れません。それでも汚染の恐れのない農産物までも取引されなくなる風評被害に繋がり、結局、そのような被害に関しても政府は原子力損害賠償法に基づき補償の対象とする方針を固めていました。
前回と前々回記事の中でも、放射能漏れについて触れてきました。もともと原子力や放射能に関して詳しい知識がある訳ではありませんので、今回の事故がスリーマイル島やチェルノブイリの事故に比べ、どのような類似点や差異があるのか、適確な論評を行なう力は持ち得ていません。そのため、せめて基本的な事柄だけは自分自身の頭の中を整理しようと考え、ネット上を中心に少しだけ調べてみました。
まず放射能と放射線の違いですが、放射線は放出されるエネルギーを指し、放射線を出す能力が放射能であり、放射線を出す物が放射性物質と呼ぶそうです。調べた先のサイトでは、次のような例えが示されていました。放射性物質がホタル、放射線がホタルの光、放射能が光を出す能力に例えられています。さらに放射線漏れはホタルの光が虫カゴから漏れること、放射能漏れはホタルが虫カゴから逃げ出すことに例えられていました。
最近、よく耳にするベクレルという単位は放射能の強さを表しています。1秒間に崩壊する原子の数を指し、毎秒1個の崩壊数を1ベクレルと呼びます。 放射線の量は、放射線のエネルギーがどれだけ物質に吸収されたか(吸収線量)をグレイ、人体への影響がどの程度なのか(線量当量)をシーベルトと呼ぶそうです。
放射能には時間の経過とともに減っていく特徴があります。放射能の強さが元の半分になるまでの時間を半減期と言います。今回、水道水から検出されたヨウ素131の半減期は8日間でした。しかしながらウラン238の半減期は45億年という途方もない時間を必要としています。なお、一度に6~7シーベルト以上の放射線を全身に浴びると、急性障害によって99%以上の人が死亡すると言われています。直接被曝していない場合でも、一定水準以上に汚染された水や農産物を摂取することで健康被害の恐れが生じます
このような放射能汚染を防ぐため、福島第一原発の現地では日夜、冷却放水や外部電力との接続、コントロール回復などをめざし、決死の作業を続けている方々が大勢いらっしゃいます。残念なことに先日、電気ケーブルの接続作業に当たっていた二人の方が年間被曝限度に近い放射線を浴び、ベータ線熱症を起こす可能性があるため、福島県立医大病院に搬送されていました。このように文字通り命懸けの作業を続けている方々に改めて感謝しながら、全員のご無事を心から祈願しています。
先週水曜日には連合三多摩の会議があり、冒頭、東京電力労組の組合役員から出席していた私たちに対して謝罪の言葉が示されました。福島原発の事故と計画停電に際し、「たいへん迷惑をおかけし、申し訳ありません」と述べられ、いったん「会社がつぶれるまで…」と発した後に「会社がつぶれても頑張ります」と言い直されていたことが印象深い一瞬でした。東電の関係者全員が肩身を狭くし、復旧へ向けて必死に努力している様子もヒシヒシと伝わってきました。
最後に、巨大地震に襲われてから2週間が過ぎ、新聞や週刊誌、ネット上からいろいろな話が耳に入ってきます。誰彼を責めるような論調も目立ち始めていますが、被災された方々のためには様々な枠組みを超え、一人ひとりが発揮できる最大限の力を合わせていくことこそ、最も重要な局面だろうと思っています。また、国内の多くの善意はもちろん、国際社会の中での日本に対する善意の大きさにも感銘している昨今でした。
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