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2010年9月26日 (日)

非正規公務員の課題 Part2 

今回の記事タイトルは迷いませんでした。前回の記事「非正規公務員の課題」の続きをもう少し書き込もうと考えていたからでした。また、注目していた裁判の結果も取り上げるつもりでしたので、改めてそのことを報道した新聞記事をご紹介します。大阪府枚方市の住民が「非常勤職員への手当支給は違法」として市を訴えた裁判の控訴審判決を伝える記事でした。

枚方市が条例で基準を設けずに非常勤職員に支給した特別報酬を返還させるよう求めた住民訴訟の控訴審判決が17日、大阪高裁であった。三浦潤裁判長は支給を違法と判断した1審・大阪地裁判決(08年10月)を取り消し、住民の請求を棄却する逆転判決を言い渡した。

三浦裁判長は「名称は非常勤職員だが、勤務実態は正規職員と変わらない」として、非常勤職員が正規職員と同様に手当を受け取る権利を認定。そのうえで「条例で具体的な金額まで規定する必要はなく、執行機関に委ねられている」として、支給を適法と判断した。住民側は、市が03、04年度に非常勤職員約380人に対して支払った特別報酬約5億5000万円を返還させるよう求めていた。【毎日新聞2010年9月18日

この判決結果に対し、ブックマークしているブログ「きょうも歩く」の記事「非常勤職員のボーナス・退職金に違法性はなく返還義務なしとの判決」の中で、訴訟を起こしたオンブズマンの問題意識に疑問を投げかけられていました。その記事の内容に限らず、ブログの管理人である黒川滋さんの主張には、いつも共感を覚えることが多く、更新を楽しみにしているサイトの一つでした。いずれにしても「官製ワーキングプア」という言葉が取り沙汰されがちな中、さらに非常勤職員の待遇を押し下げようとする動きには私も違和感を抱いていました。

前回記事の流れから今回の記事タイトルにも非正規公務員という呼び方を使いました。実は以前、私どもの嘱託組合員から「私たちは正規に雇われていないんですか」という質問を受けたことがありました。勤務時間などの差はありますが、正規に雇用された職員であることに変わりありません。非正規という呼ばれ方に疑問が示された訳ですが、それ以来、なるべく非正規という呼び方を避けるように心がけていました。

それでも参考文献などの引用や場面によっては、臨時、嘱託、非常勤、非正規職員に対し、常勤、正規職員という呼び方が混在していくことをご容赦ください。特に労働問題に切り込んだ著書の中では非正規という呼称でなければ、しっくり話が進まない場合も見受けられます。最近、読み終えた新書『新しい労働社会ー雇用システムの再構築へ』では、非正規労働者という言葉が焦点化され、その歴史や現状の問題点などが綴られていました。

著者である濱口桂一郎さんのブログ「EU労働法政策雑記帳」もブックマークし、いろいろ参考にしているサイトでした。その新書の中から「なるほど」と感じた箇所を少し紹介していきます。高度経済成長以来の日本社会において、非正規労働者とは主として家事に従事しながら家計補助的に働く主婦労働力としてのパートタイマーと、主として学校に通って勉強しながら小遣い稼ぎ的に就労する学生労働力としてのアルバイトが2大勢力だったと濱口さんは述べられています。

とても一人の生活を維持することすらできない低賃金でしたが、夫や父親が正社員として非正規労働者である家族構成員の分も含めた生計費を賃金として得ていました。その前提があったため、以前は非正規労働が貧困というイメージとは結びにくかった点を指摘されていました。ちなみに新卒採用から定年退職までの長期雇用が保障され、年功で賃金が上がっていくシステムは決して企業の温情ではないことを以前の記事「定期昇給の話」の中で綴っていました。

企業の教育訓練投資の成果である熟練労働者を重視し、年功賃金と退職金制度は熟練労働者を企業に縛りつける仕組みでした。労働組合の立場からは、生活給という位置付けで定期昇給をとらえ、子どもの教育費など人生の支出が増える時期に比例して賃金が上がる年功給を合理的なものだと考えていました。スキルアップと生活の変化に対応しながら、働く側にとっては安心して将来の生活設計を描け、経営側にとっては帰属意識の高い人材の安定的な確保や企業内教育を通じた労働生産性の向上がはかれ、双方のメリットがこのような仕組みを支えてきました。

このような日本型雇用システムのメンバーであるのか、その枠外の労働者であるのかという点では、正規か、非正規かという呼称が見事に当てはまっていました。前述したとおり主婦労働力や学生労働力が非正規の主流だった頃は、この明確な区分けも特に問題視されていませんでした。しかし、バブル経済が崩壊し、海外の廉価な労働力と競わされるようになり、各企業が正規労働者の数を急激に絞る込むようになっていきました。

その結果、リストラされて非正規雇用を余儀なくされているケース、就職氷河期の中で正社員となれずフリーターを強いられているケースなどが目立つようになっていました。とりわけ公務職場の場合、正規職員の待遇が安定した長期雇用システムの代名詞のように見られている中、同じ役所内での非正規雇用との「格差」は、より顕著な事例が多いのだろうと認識しなければなりません。

前回の記事で、朝日新聞の編集委員兼論説委員である竹信三恵子さんの講演の話を報告しました。その時、配られた資料『記者有論』の中で、非正規職員の増加は短期で担い手が変わりがちとなり、公務サービスの質が下がるという問題意識を竹信さんは示されていました。このような現状に際し、竹信さんは次のような考え方を『記者有論』を通して提起されていました。

打開策として、熊沢誠・甲南大学名誉教授は、正規との賃金の分け合いによる非正規の安定化を提案している。日本の正規公務員の国民1千人あたりの数は主要先進国中で最低水準だが、賃金水準は高めだ。こうした特徴を土台に、賃金を平準化して非正規も正規として公認する策だ。

問題提起の方向性としては否定できません。しかし、「自治労委員長の問題提起」でさえ、反論が示される現状も押さえていかなければなりません。加えて、正規公務員の賃金水準を大幅に引き下げる便法に使われかねないため、そのような面からも慎重になる必要性を感じています。この戸惑いに対し、明確な答えが示唆されている訳ではありませんが、濱口さんは『新しい労働社会』の中で次のように語っています。今後の議論を進める上で欠かせない基本線として、濱口さんの言葉を紹介し、この記事の結びとさせていただきます。

正社員の待遇を下げることが主な目的になってしまっては、その正社員たちが同意することは不可能です。重要なのは正社員と非正規労働者の間で賃金原資をどのように再配分し、両者にとって納得できるような共通の賃金制度を構築していくかという問題でしょう。

労働者にとって生活設計の根幹に関わるような仕組みの改革を、その労働者の意に反して強制することができるなどと考えるのは、労働問題の基本的な姿勢として大きな問題があります。賃金や労働条件のあり方は労使が集団的に決める。これが産業民主主義の基本原則です。

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2010年9月19日 (日)

非正規公務員の課題

民主党代表選の結果、菅首相の続投が決まり、改造内閣が金曜日に発足しました。同じ日、阿久根市の係長懲戒免職訴訟の福岡高裁での控訴審判決が示されました。「社会通念上、著しく妥当性を欠き、裁量権の乱用に当たり違法」とし、処分を取り消した鹿児島地裁判決を支持して市側の控訴を棄却しました。その前々日の水曜には阿久根市長のリコールに向け、有権者の半数を超える1万364人の署名が集まった報道も目にしていました。

いろいろ「雑談放談」の題材となるニュースが続いていますが、久しぶりに今回の記事はローカルな話題から入らせていただきます。木曜の夜に私どもの組合が開いた嘱託組合員交流会について取り上げていきます。会場は旧庁舎隣にある市民会館の会議室でした。今年5月の連休明けから新庁舎に移転したため、このあたりに足を運ぶ機会は極端に少なくなっていました。

強い雨が降る中、懐かしい場所を歩くことになりましたが、旧庁舎の半分は撤去され、新しい施設に生まれ変わるための工事中でした。その周囲は高い壁で目隠しされ、工事がどの程度で進んでいるのかは分からないようになっていました。よく利用したコンビニの前を通り過ぎた時には、「市役所の移転は売上げに響いているのだろうなぁ」という思いが頭の中に浮かんでいました。本題とは関係ない話が長くなりましたが、それも「日記・コラム・つぶやき」をカテゴリーとしている当ブログの特徴ですのでご理解ご容赦ください。

さて、私どもの組合は、かなり昔から恒常的な業務を担う嘱託職員の皆さんの組合加入を働きかけてきました。なお、嘱託、非常勤、非正規という呼び方が混在した記事となりますが、基本的に同じ意味合いで使っています。それに対して常勤、正規職員という呼び方となります。その常勤職員の定数を削減することが行政改革の主眼とされる中、学童保育所や学校事務などの職場が嘱託職員化されてきました。

その結果、市民公募で採用された嘱託職員の皆さん、約200人が私どもの組合の一員となっています。言うまでもありませんが、常勤職員に比べて待遇面が劣るため、非常勤職員の課題は組合活動の中でも特に重視すべきものとなっていました。これまで当ブログでも「非常勤職員も昇進」「憂慮すべき“お役所蟹工船”」などの記事を通し、市役所内の「格差」の問題について提起してきていました。

複数の職場に及ぶ嘱託組合員の皆さんの意見や情報交換の場として、このような交流会を年に1回は開いてきました。情勢や問題意識の共有化に努めるため、いつも講師を招いた講演会も同時に行なっていました。今回は講師に朝日新聞の編集委員兼論説委員である竹信三恵子さんを招き、「非正規労働者を取り巻く状況と今後の課題~質の高い公共サービスの再構築と均等待遇の視点から」というタイトルでのお話を伺いました。

竹信さんは朝日新聞社内の経済グループの中で、労働チームに所属されています。ご自身の生い立ちや育児の経験などから公務の質の重要さを認識され、これまで「非正規公務員 法の谷間 フルで働いても年収140万円」などいう見出しを付けた特集記事などを手がけていました。少し前までは、このような問題はあまり世間の関心を集めず、新聞の記事として取り上げづらかったそうです。

それが「官製ワーキングプア」という言葉とともに注目されるようになり、竹信さんが書きたい内容の記事も載せやすくなったと話されていました。「公務委託で雇用不安 自治体財政難対策」「自立困難な低賃金 1年以内の契約 増える非正規公務員」などという竹信さんの署名入りの記事が、ここ数年の朝日新聞の紙面を飾るようになっていきました。つい最近では、6月8日の『記者有論』に「公務員切りブーム サービスの質保てるのか」という内容を寄稿し、みんなの党の主張などに苦言を呈されていました。

生活にかかわる公務サービスの需要が高まっている一方、公務員減らしの動きに竹信さんは危機意識を持たれています。さらに非正規の図書館司書や介護ヘルパーが結婚を機会に「好きな仕事だけど生活できない」という理由で職場を去っている現状、3年から5年で契約が切られる不安定な非常勤職員の実態を憂い、公務の担い手が変わらざるを得ないため、サービスの質が下がっていくことを竹信さんは問題視しています。

非常勤職員の問題が「法の谷間」と言われるのは、パート労働法などが適用されず、現行の地方公務員法上の嘱託職員が学校医のような臨時的・一時的な雇用のみを想定している点でした。そのため、昇給制度や手当支給に異議が差し込まれるようになり、3年や5年で雇い止めされる実態につながっていました。竹信さんは、いくつかの自治体の人事課長に雇用年限の問題を問いただしたところ、「市民の皆さんに対するワークシェアリングである」と答えるケースが多いと述べられていました。

私どもの自治体の嘱託職員も当初、雇用年限5年という方針が示されていました。しかし、労使交渉を通して実質的に雇用年限による雇い止めを見送らせることができています。かなり前の労使交渉になりますが、「市民のワークシェアリング」という当局側の説明に対し、私から「5年先に失業者を出すのがワークシェアリングですか?」という反論を加えていました。竹信さんも人事課長らに同様な言葉を投げかけていた話を伺い、そのような昔の交渉のやり取りを思い出していました。

その日の講演会でのお話や資料として配られた竹信さんの新聞記事などから、まだまだ紹介したい内容が数多くあります。とは言え、そろそろ今回の記事も終わらせるつもりです。講演会の最後のほうで、竹信さんは「正規が皆、非正規にされていくのか。正規が非正規の上にあぐらをかいていくのか。何かをしなくてはならない」と提起されていました。その講演の中では抽象的な言い回しでしたが、常勤職員の課題を中心としがちな自治労への叱咤激励だと受けとめています。

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2010年9月11日 (土)

民主党代表選への思い

これまで当ブログでは政治に関する話題を数多く取り上げてきました。公務員が政治的な立場を明らかにすることの批判意見も寄せられていましたが、組合活動の一部にそのような領域に絡む方針があるため、あえて「なぜ、民主党を応援しているのか?」という切り口などで綴ってきました。インデックス代わりに前々回記事「混迷を深める阿久根市の夏」の時のように関連記事のリンクをはるのには数が多すぎるほどでした。バックナンバーから「新政権への期待と要望」という内容のような記事がすぐ見つかるはずですので、お時間がある際、ご覧いただければ幸いです。

今、政治の話題で最も注目を集めているのは民主党代表選挙の行方です。14日火曜日に投開票され、菅首相の続投か、小沢前幹事長が新首相となるのかが決まります。その結果に直結する一票を投じれない国民が圧倒多数を占め、このブログをご覧くださっている方々の大半も傍観者であろうと思います。残念ながらか、幸いなことなのか、私自身もどちらの候補者を選ぶべきか悩まずに済む立場でした。そのような意味合いから今回の記事は、きわめて個人的な視点で民主党代表選への思いを綴らせていただきます。

過去の記事(“骨っぽい挨拶の菅直人さん”“安倍首相と小沢代表の「党首力」”)にあるとおり菅首相と小沢前幹事長は、これまでの民主党代表の中で特に高く評価してきたお二人でした。菅首相とは地元のつながりが大きいことに加え、「第三の道」という路線に対しても強く共感していました。一方の小沢前幹事長に対しては、連合との信頼関係を再構築された点をはじめ、強烈な個性と指導力で困難な局面を打開していく可能性が期待できました。このような板挟みに連合組織内議員の皆さんも非常に苦慮されているようです。

民主党代表選(14日投開票)に向けて、連合傘下の労組が支援する同党議員が相次いで態度を表明し始めた。連合が「中立」を守る中、労組の組織内議員の動向は系列の地方議員や党員・サポーター票への影響が大きいとみられるだけに、菅首相、小沢一郎前幹事長の両陣営も注視している。

電力総連の支援を受ける藤原正司参院議員は8日、神戸市で開かれた電力総連の大会に出席し、代表選について「皆さん方に強要するものでも、参考にしてくれというものでもない」と強調した上で、「私は小沢に投票する」と明言した。その理由として、藤原氏は電力業界の関心が強い地球温暖化対策で小沢氏支持の平野博文前官房長官の協力を得たことを挙げ、「信頼する人間が小沢をやるからだ」と説明した。

藤原氏が属する旧民社党系グループは代表選対応を決めておらず、同様に電力総連から支援を受ける小林正夫参院議員は支持を明言しなかった。自動車総連の支援を受ける直嶋経済産業相は菅氏支持を打ち出しており、藤原氏が小沢氏支持を明言したことで、旧同盟系労組の支援を受ける議員も両陣営に分かれる構図が明確になった。

一方、旧総評系労組の支援を受ける議員も分裂気味だ。自治労には「自民党出身の小沢氏より、結党以来の仲間でリベラルな菅氏に仲間意識を感じる」(幹部)との声もあり、「組合員には菅氏支持が多い」との見方が強い。しかし、菅氏が代表選で「人事院勧告を超える国家公務員人件費の削減」を掲げたことが反発を招き、組織内議員の江崎孝参院議員は6日、小沢氏支持の文書を支援者に送付した。

繊維や食品業界などの労組でつくるUIゼンセン同盟が8日にさいたま市で開いた定期大会では、あいさつに立った落合清四会長が「本来は具体的な表明をすべきだが、自主投票としたい」と苦悩をにじませる場面もあった。【読売新聞2010年9月9日

以上の新聞記事にあるとおり自治労出身の参院議員の江﨑孝さんは、人事院勧告の取扱いが判断するための大きな決め手となっていました。この経緯についてはご自身のブログで詳しく心情が記されていました。「労働基本権という武器を持たない相手、素手の相手にいきなり権力と言う刃を突きつけ言い分を聞かせるようなやり方を認めるわけにはいかないのです」と述べられ、公務員組合側の代表として率直な気持ちを代弁していただいているものと受けとめています。

ただ小沢前幹事長も「総人件費2割削減のマニフェストは守っていく」と語っています。事務事業の地方移管に伴う国家公務員の総定数減を示唆していますので、菅首相陣営の意図する中味とは大きく違うのかも知れません。とは言え、公務員に労働基本権を認めていく方向性は両者とも同じである一方、基本権が拡充された先に人事院という枠組みをどうするのか明らかにしていない点も共通していました。

したがって、「労働基本権の課題を整理した後、労使交渉を通して公務員賃金の水準の是非を決めていきたい」と言われれば、頭から否定できるものではないはずです。それにもかかわらず、菅首相が人事院勧告を超えた削減をめざすという論調は、あまりにも公務員組合側を逆撫でし、言葉が不足しているものと思えます。参院選前の「消費税10%」発言に相通じる先走り感が否めません。

もう一点、代表選の中で菅首相の対応に違和感が生じるのは、小沢前幹事長を「政治とカネ」の問題で攻め立てている姿でした。この問題に関しては、次のような見方があることも留意しなければなりません。以前にも紹介したことがあるブログ「永田町異聞」の中では、小沢前幹事長の「政治とカネ」問題は存在しないという記事も掲げられていました。この問題をはじめ、同じ党内の代表選であるのにもかかわらず、ネガティブな側面を攻撃しがちな菅首相側の戦術には疑問を持っています。

一方、小沢前幹事長への印象としては、あまりにも衆院選マニフェストに固執している点が気になっていました。そもそもマニフェストに掲げていたガソリン税の暫定税率廃止が見送られたのは、小沢前幹事長が主導した結果だったことに間違いありません。また、財源の捻出などの課題についても、幹事長だった時に鳩山内閣をサポートせず、自分が代表になれば実現できるような話には首をかしげざるを得ません。

民主党の代表選に対してポジィティブな話ではなく、ネガティブな指摘を長々と書き進めてしまいました。それでも一番「何だかなぁ」と感じているのはマスコミ報道のあり方でした。円高、株安が進む最中に「代表選などやっている場合か」という批判の声があります。しかし、逆に話し合いで新代表が決まっていれば、「密室談合」の批判の大合唱だったはずです。一事が万事、右を向いても左を向いても、政権への辛口な報道が目立っていました。

例えば、エコカー補助金制度の予算残額が駆け込み重要の効果で、一気に底を突き、9月末の期限を待たずに終了しました。評論家は政府の見通しの甘さを非難し、制度終了後の需要落ち込みなどに懸念を示しています。緊急経済対策の一環ですので、期限が区切られるのは仕方なく、厳しい財政状況の中では予算額に制約があるのも妥当だろうと思っています。販売店側も「予算がなくなれば打ち切られますので、お急ぎください」というPRに努めていましたので、予定した期限前に補助金制度がなくなってもやむを得ないはずです。

仮に予算額を青天井にした場合、今度は「財政が厳しいのに新車を購入できる人たちだけに手厚すぎる政策だ」という批判が増したのではないでしょうか。また、自動車や家電製品の補助制度が、どれだけの経済効果を与えたのか疑問視する声も聞こえています。それでも自動車や家電業界は大手のメーカーに限らず、部品製造から販売店まで周辺に広がる企業や労働者の数が非常に多い産業です。したがって、エコ補助金制度などの経済的な波及効果は、一定の期待に応えていたのだろうと見ています。

とにかく物事には表と裏、光と影がつきものですが、どうも日本のマスコミはステレオタイプの政権批判の報道に偏りがちです。自民党が与党の時代も同様だったのでしょうから、その意味での「ブレ」はないのかも知れません。さらに報道の自由がなく、政府批判が一切タブーとされる国より、ずっと健全であることは言うまでもありません。しかし、もう少し横並びな報道ではなく、プラス面とマイナス面を織り交ぜながら報道していく姿勢があっても良いのではないでしょうか。

民主党代表選の話から少し横道にそれてしまいましたが、最後に一言。どちらが勝っても負けても「ノーサイド」の気持ちで、国民生活のために一致結束して難局に立ち向かって欲しいものと心から願っています。ちなみに「ノーサイド」を手元の電子辞書で調べたところ「ラクビーで、試合の終了をいう。原義は、試合が終わった瞬間に敵味方の区別がなくなること。ラクビーは紳士のスポーツとされ、戦いのあとはお互いの健闘をたたえ合うという精神が尊重される」と書かれていました。

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2010年9月 5日 (日)

自治労委員長の問題提起

前回の記事は「混迷を深める阿久根市の夏」でした。そのコメント欄で今朝ほど記したことですが、先週日曜に放映された「サンデー・フロントライン」の内容に憤った竹原市長は番組制作者らに対して、謝罪と訂正を求める抗議文を送ったようです。専決処分が違法であると決め付けられたことに反発した抗議でしたが、議会が開ける状態でありながら開かずに下した専決処分が違法であることは明白でした。

竹原市長いわく、首長と議会との間が不信任の関係だから専決処分は許され、その是非は司法が判断すべきと主張されています。裁判官も公務員だから信用できないと語っていた竹原市長の変節ぶりは横に置きますが、普通に考えれば到底裁判で争えるような論点ではないことも明らかでした。独特の理屈で地方自治法の条文を解釈されているようですが、結局のところ仙波氏も適切な助言を行なえるブレーンとはなり得ず、毎度のことながら竹原市長の致命的な問題だと言えます。

また、先日の阿久根市議会で議決された通年議会条例について、公布しないことを竹原市長は宣言していました。地方自治法第16条で「条例の送付を受けた場合、20日以内に公布しなければならない」とされていますが、またしても法律を無視する暴挙に出ようとしています。このように竹原市長絡みの話題は尽きることなく、まだまだ混迷を深める阿久根市の夏でした。引き続き新規記事で取り上げることも考えましたが、今回の記事は8月末に徳島市で開かれた自治労の定期大会について触れてみます。

そもそも阿久根市の騒動を「対岸の火事」としないためにも、自治労に所属する各自治体の職員組合は自分たちの足元を見つめ直していく努力が欠かせません。私自身の問題意識の一端は、最近の記事「人事院勧告と最低賃金目安」の中で表していました。すると自治労大会冒頭の主催者を代表した挨拶で、徳永委員長からも同様な趣旨の問題意識が示されていました。たいへん心強く感じたところであり、その発言の要旨は次のとおりでした。

自治労(全日本自治団体労組)の徳永秀昭委員長は26日、徳島市で開かれた定期大会のあいさつで、「正規職員と非正規職員が賃金をシェアすべきだ」と述べた。一例として、人事院勧告に準じて地方公務員の正規職員の給与が削減された場合、削減分を非正規職員に配分する方向で労使交渉を進めることを提案。正規と非正規の格差解消に向け、産別労組のトップが具体的な提案をするのは極めて異例で、労働界全体に影響を与えそうだ。

徳永委員長は、一部の正社員が賃下げを受け入れて非正規雇用をなくした広島電鉄の例を挙げ、「正規・非正規の均等待遇を実現するためには、もう一歩進んだ運動展開が必要な時期に来ている」との考えを示した。自治労が09年に実施した調査によると、全国の自治体の非正規職員は推定60万人。特に財政の厳しい地方の町村では、正規を非正規に切り替える傾向が強く、職員の半数が非正規という状況にある。また、非正規職員の6割が正規職員並みに働く一方、定期昇給はなく、各種手当も支払われないため、8割が年収200万円以下の「官製ワーキングプア」とされる。

徳永委員長は「非正規職員が搾取されているのが実態」と現状を指摘した。だが、公務員に対する国民の目は厳しく、非正規職員の処遇改善のための新たな原資は見込めないのが実情。人事院勧告に準じて全国の自治体が給与や手当を切り下げた場合、影響額は2340億円になると総務省が試算しており、徳永委員長は格差解消へ向けた原資として着目している。地方公務員の労使交渉は自治体ごとに行われる。徳永委員長の発言を受け、各単組がどのように取り組むかが注目される。【毎日新聞2010年8月26日

徳永委員長は、官製ワーキングプアと称される自治体非正規職員の処遇改善、その実現を通した公共サービスの向上を強調されたようです。「非正規職員の存在が行政サービスを左右するようになっているにもかかわらず、非正規職員が搾取されている自治体の現実を改善させるためには正規職員と非正規職員が賃金をシェアし、全体として処遇改善と安定雇用をはかるという方策を大胆に採用すべきだ」という問題提起でした。

そのための原資について「現実的な問題への対応は避けて通れない。非正規職員の処遇改善のため正規職員を含めた総原資のあり方について議論を開始し、本年の場合で言えば、人勧の削減原資を非正規職員の処遇改善に確保する交渉・協議を行なうことなどを大胆に運動展開する必要がある」と述べ、連合評価委員会が求めた「人間を対立させようとする、よこしまな意図を拒否し、『人間が人間としての尊厳を実現できる社会を、働く者たちの共同意思のもとに築く』という指摘を受けとめ、自治労こそが変革と挑戦の最先頭に立つ、という意思を固め合おう」と呼びかけていました。

さらに「この問題提起は、組織的・全体的な判断と覚悟が不可欠ともなる。来年の春闘に向けた議論の中で、さらに深化していきたい」と徳永委員長は話されています。来賓として出席されていた連合の古賀会長も「まったく同感。連合内部でも具体的なプロセスを明確にしなければならない」と述べられ、来賓の枝野民主党幹事長ともども徳永委員長の発言に賛同されていました。自治労の置かれている現状や課題などを考えれば、徳永委員長の問題提起は私自身にとって大きくうなづけるものでした。

その一方で、大会議論を通しては、次のような発言が示されることも自治労の等身大の姿でした。「賃下げ人勧を認めるのか」「正規を減らして非正規を増やした当局を許すのか」「正規化を要求する非正規の思いに冷や水を浴びせるのか」という内容の意見が大会代議員から示されていました。言うまでもありませんが、様々な意見が交わせる組織こそ健全で力強く、それぞれの発言の内容を決して批判するつもりはありません。

このような発言に対し、徳永委員長は「財政に限りがある」「社会的に通用する運動を」「原理原則が正しくても実現できなければ無意味」という率直な言葉で総括答弁されていました。最後の採決では議案すべてが可決されましたが、いずれにしても自治労組合員90万人の思いは非常に幅広いものがあるはずです。そのことを認め合った上、激しい議論の末に確認できた方針については一致結束して立ち向かっていく信頼関係という「絆」が、よりいっそう大切だろうと思っています。

最後に、自治労大会の会場では阿久根市職労が阿久根名産品とストラップを販売していました。また、阿久根市職労が大会参加者に配布したチラシには、竹原市長との対立の中から組合員同士の「団結」「連帯」「絆」を獲得し、閉塞感の広がる職場にあっても明るさを失わず、堂々と業務に活動に取り組めたことが記されていました。そして、団結グッズとして作製したストラップには「絆」の文字を刻んでいました。

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