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2010年8月22日 (日)

減収に苦しむ公営競技事業

夏季休暇に充てた水曜の午後、連合地区協議会が催した職場見学会に参加しました。連合には民間と公務員の組合が結集しています。民間や公務員の職場も多種多様です。このような催しは、それぞれの職場の実情や問題点などを知り、交流を深めることで、よりいっそう力を出し合っていける基盤作りを目的としていました。

今回、その対象となった職場は市内にある競輪場でした。競輪、地方競馬、ボートレース(競艇)、オートレース、この4種類の公営競技事業に従事する皆さんらが結成している組合の連合体だった全競労は、2002年に自治労と組織統合していました。もともと各地方の単位組合は自治労に直接加盟していましたが、1961年に独自な産別組織として全国競走労働組合が設立されていました。自治労に再び結集した全競労は一評議会の位置付けであるとは言え、たいへん力強い存在感を発揮されています。

一方で、労働組合としての影響力を発揮しなければ、それぞれの組合員の生活を守れない厳しい局面に置かれているとも見なければなりません。日頃から親しくお付き合いいただいている地元の競輪労働組合の皆さんは、投票券の発売窓口などに従事されている方々です。組合員の大半が女性で、委員長をはじめ組合三役も全員が女性でした。東京にある2つの競輪場の従事者が加入しているため、団体交渉の相手方となる雇用主も2つの競輪事業施行者に分かれていました。

したがって、賃金や一時金などの交渉もそれぞれの施行者側と行なっています。また、年間を通した常用的な雇用でありながら、身分は日雇いにとどまっている不安定さが指摘されていました。さらに公営競技全体に共通した深刻な問題があります。軒並、売上の減収に苦しんでいる状況が続いています。4種類の公営競技は戦後、地方財政復興の財源として収益を上げることを目的に始まりました。

私どもの市の場合、平成元年度には75億1千万円の収益を繰り入れ、一般会計決算額に占める比率は11.6%に達していました。昭和26年度に創設されて以来、一般会計への繰り入れ総額は1322億円を超え、都市基盤や公共施設の整備を進める貴重な財源となっていました。現在、かろうじて赤字にまで至っていませんが、収益は数億円程度に落ち込んでいます。

公営4競技の売上のピークは平成3年度で、全体で5兆円をはるかに超えていました。長引く不況や趣味の多様化など様々な理由があげられますが、そのピーク時に比べて売上は5割から6割以上の減収を強いられています。それぞれの公営競技が過去、各自治体の財政に大きく寄与してきたはずですが、現在、赤字に陥ってしまった事業が数多くあります。つまり税金を投入して事業を継続しているという本末転倒な事態を招いています。

当然、このような経営状態が続くようでは撤退すべきという声が強まり、これまで数多くの地方競馬場が閉鎖され、競輪事業などから手を引く自治体が相次いでいました。事業そのものがなくなる事態は、そこで働く人たちの雇用の喪失に直結します。そのため、自治労に結集している全競労の皆さんは深刻な売上減を受けとめ、賃金引き下げや様々な合理化提案に対処してきています。

同時に組合の立場からも売上が伸びるような努力や呼びかけを重ねられていました。このような経緯を踏まえ、施行者である自治体の職員であり、同じ自治労の組合役員という立場から私自身、連合地区協議会として一度、地元の競輪場に絡むイベントが開ければと考えていました。したがって、冒頭に紹介した職場見学会は、そのような思いも加味された催しでした。

当日は連合が推薦している地元の市議会議員も含め、各組合の役員を中心に30名ほど集まりました。公営競技事業部長から現況の報告、担当係長から競輪の基本的な説明を受けるなど、いろいろ市側からも協力をいただきました。競輪労働組合の皆さんとの意見交換の場もありましたが、やはりメインは参加者全員に車券を買ってもらうことでした。初めて競輪の車券を購入した方も多かったようですが、バンクを疾走する選手の迫力を間近に感じ、一人でも多くの方に競輪の「楽しさ」を持ち帰っていただけることを願っていました。

連合地区協議会として一昨年には、私どもの市へ提出した「政策制度の充実に向けた要請書」の中に「オリンピックの種目となっている競輪のイメージアップに努め、幅広い層をひき付けるための一つの集客施設への転換をめざすこと」という内容を盛り込んでいました。それに対して、市側の姿勢も基本的に同様である旨の回答が示されていました。どうしても競輪場は迷惑施設、ギャンブルは害悪というイメージがつきまとい、実際、嫌悪している人たちは決して少なくありません。

10年以上前の話となりますが、組合の機関誌に掲載したクロスワードパズルの設問の一つに「競輪グランプリ」という答えを加えていました。年末まで働いている職員のこと、地元で開催するビッグイベントの認知度を少しでも高めたいと思い、あえて加えた設問でした。ところが、組合員の一人から「組合の機関誌に競輪のことを載せるのは問題だ」とお叱りを受けました。あえて載せたという前述した理由を説明しましたが、「組合がギャンブルを薦めているようであり、納得いかない」と言われ、残念ながら理解は得られませんでした。

今回の記事に対しても賛否が分かれるのかも知れませんが、あえて公営競技の危機的な現状や売上増の必要性を取り上げています。私自身、競輪はもちろん、JRAから地方競馬、競艇、totoまで、インターネットから購入できる環境を整えています。頻繁に利用しているのはJRAだけですが、それもローリスク・ハイリターンとなる楽しみ方に徹しています。いずれにしてもギャンブルそのものを害悪と決め付けるのではなく、あくまでも自制心の問題だろうと考えています。加えて、闇の資金源となる野球賭博などとは一線を画して論じるべきことも言うまでもありません。

実は公営競技を題材にした記事について、いつか取り上げたいものと考えながら『バクチと自治体』という著書をかなり前に読んでいました。今回の記事がその本の直接的な紹介となっていませんが、公営競技の歴史や現況、今後を考える上で非常に参考となった著書でした。最後に、前回の記事が「人事院勧告と最低賃金目安」、前々回記事が「国債問題に対する私見」でした。話題やテーマが極端に変わり続け、違和感を持たれる方がいらっしゃるかも知れませんが、このような点も「日記・コラム・つぶやき」をカテゴリーとしている当ブログの特徴ですので、ご理解いただけるようよろしくお願いします。

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コメント

競輪等の公営ギャンブルと言われる事業ですが、いまやかつての収益というより赤字のお荷物とかしているものが多いようです。
全競労との統合は本部の方針は別として周囲では否定的な意見が多かったですね。
それに対する執行部の説明はまったくなかった、のが現実ですね・・・

組合に対する不信感というのはこういうところで広がっていく感じがします。

あまのじゃく氏曰くの日本破綻より前に自治体破綻、その前に組合破綻がありそうな予感もする最近です。

今回の人事院勧告に対する本部見解などは、ただ感想を述べただけ・・・
まぁ指定職給料表を使う本部役員など、なにも感じてはいないでしょうね

オールド組合員としては悲しい限りですね・・・

投稿: 元役員 | 2010年8月22日 (日) 19時44分

元役員さん、コメントありがとうございます。

自治労本部に対する見方は、それぞれあろうかと思います。公営競技事業に対しても、実際そのとおりの現状であることも確かです。ただ現在同じ自治労組合員である全競労の皆さんとの関係で考えれば、「お荷物」であるような言い方は好ましくないものと感じています。

投稿: OTSU | 2010年8月22日 (日) 21時47分

お荷物なる言い方は言葉が悪かったですね。
申し訳ありませんでした。
ただ、多くの自治体で公営ギャンブル事業の精算に向けて苦しんでいる事実はあります。
かつては自治体の収益に大いに貢献した公営ギャンブルも時代が、時代の曲がり角にあるのでしょうね。

ただし、統合問題については、全競労の統合の後に出てきた三単産の統合問題と突然のその破綻・・・
自治労本部の取り組みについては大いに疑問があるのは事実ですよ。

投稿: 元役員 | 2010年8月23日 (月) 06時31分

元役員さん、おはようございます。さっそくのレス恐縮です。

記事本文で記したとおり収益を目的とした事業が赤字になるようでは深刻な問題です。先週水曜の連合地区協の取り組みと今回のブログ記事は、そのような現状に対するささやかなエールの思いをこめています。それでも一自治体でできることも限りがあり、全国的、制度的な改善も求められているものと思っています。

投稿: OTSU | 2010年8月23日 (月) 07時44分

労働団体及びその役員さんが、「雇用」という側面を最重要視して論じられるのは、
”存在意義からして、当たり前過ぎること”なので、その事自体に異議は無いのです。
この点は、先ず最大限強調しておきたいと思います。

一方で、公営競技を積極的にPRというと、「地方公共団体が推進するのもどうなん?」というのも、感じるんですよ。
だから、「廃止」は論外としても「公営でなくても・・・」という感情は残るんです。
「公営を廃止して、何の規制もしない」のは論外だけど、
財政は「民営とした上で特別税を創る」という事でもよさそうでわ?とか。

ただ、民営化とすると(収益を公益目的で使うから、賭博ではないという論法は苦しくなるから)
刑罰の問題に絡んで、現行の刑法体系の偏向という政治的には難しいだろう壁が生じるとは思う。
となると、「公営でなく、民営で・・・」という選択肢は現行法の下では考えられず、
現状では「公営維持 or 廃止」という選択になるでしょうけれど。

公営競技の問題は、「雇用問題」とは別に「財政の問題」や「刑罰の問題」が絡んでくるし、
”廃止したら地下経済化の虞が皆無でない”という「社会政策の問題」も考える必要があるだろうし、
「民営で許可するなら、規制の実効性の問題(現実問題として、一番しんどいかも)」もあるだろうし、
諸々の複合的な視点が必要な問題だろうとは思う。
故に、公営競技を単純に否定していいのか?と考えてしまう部分は確かにあるのですけど。

それでも、現状でそれぞれの根拠法をみると、
競馬は、「馬の改良増殖その他畜産の振興に寄与する」(競馬法)
自転車競技は、「自転車等機械工業、体育等公益事業の振興、地方財政の健全化」(自転車競技法)
モーターボート競走は、「モーターボート等船舶に関する事業、海事思想の普及、観光事業、体育等公益事業の振興、地方財政の健全化」(モーターボート競走法)
小型自動車競走は、「モーターボート等船舶に関する事業、海事思想の普及、観光事業、体育等公益事業の振興、地方財政の健全化」(小型自動車競走法)

う~ん、(考)(汗)(汗)
競馬について考えると、競走馬と畜産振興が現代において密接に関連するかなぁ?
畜産の研究発展は、正面から畜産の研究発展を図る専門組織で対処可能でわ?と思うし、
残りの3つは、今重視されるのは地方財政の健全化の部分だよなぁ?と思う。
財政問題が主となるなら、「別の政策手段も考え得るよなぁ・・・」と思わなくも無いというか。

アレコレ考えると、「雇用の問題は疎かに出来ない。更には、完全廃止は社会政策上どうか?という論点はある。けれど、公営の必然性はどの程度か?」という命題からは、私の思考は逃れられない。(考)

投稿: あっしまった! | 2010年8月23日 (月) 15時53分

直近の投稿、間違えました。m(__)m
小型自動車競走は、「小型自動車その他の機械の改良輸出の振興、機械工業の合理化、体育事業その他の公益増進事業の振興、地方財政の健全化」(小型自動車競走法)
でした。元投稿は、モーターボート競走と小型自動車競走の目的が同じになってる。

投稿: あっしまった! | 2010年8月23日 (月) 15時59分

博打経営に必要なものは何でしょう。

それは恐らく「楽しさに対する貪欲な感性」と「移り変わる現状に対する厳しいコスト意識」でしょう。
何の事は無い、公務員には「最も欠ける」素質です。公務員は「楽しさ」とか「コスト意識」なんて考えた事も無いでしょうから。

結論は博打経営は公務員がやってはならない・・です。
夕張は、それやって破綻した。

最大の問題は収益の多くが非合法組織に流れる事ですね。野球賭博とは規模が違うでしょうから。
つまり、この部分に網をかけてしまえば、さっさと民営化すべきでしょう。ラスベガスなんてもう役人なんて居らんでしょう。
お役人さんも「我こそは・・」と思う人は早く転職を。収入が数倍になりますよ。税収も数百倍になるでしょう。

まあ近い将来のカジノ法に合わせて(全ての博打の)シミュレーション位はやってるとは思うが・・・しかし最近のキャリアーは知能も想像力も激減しとるから当てにゃ~ならんな(笑)。

投稿: あまのじゃく | 2010年8月23日 (月) 17時41分

あっしまった!さん、あまのじゃくさん、コメントありがとうございました。

公営競技事業部は市役所の職場の中では異彩を放っていますが、部長以下の常勤職員数は10数名です。記事本文で紹介した従事員の組合は労組法を適用し、つまり民間職員の位置付けとなっています。さらに選手の斡旋などは専門の財団法人が仕切っています。そのような意味合いで見れば、現状も純粋な公務員直営とは言えないようです。

ちなみに今後、赤字で苦しむ自治体のSOSを受けとめ、選手の活躍の場や従事員の雇用を喪失させないためには、JRAのような全体を経営する中央組織の必要性を『バクチと自治体』の著者である三好円さんが示されていました。このような案も含め、曲がり角を曲がらなければならないのであれば、ぜひ、皆がケガをしないような曲がり方に知恵を絞れればと思っています。

投稿: OTSU | 2010年8月23日 (月) 22時08分

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