なるほど、国の借金問題
前回記事「コメント欄雑感」は、要するに「これまで通りオープンなスタイルでコメントを受け付けていきます」という話を綴ったものでした。それだけの内容で、長々と一つの記事に仕上げてしまいました。国家財政のあり方などについて関心を持たれている方々にとって、退屈な記事内容だったものと思います。それでも時折り、前回記事のような他愛ない話題を投稿しているのが当ブログの特徴であり、カテゴリーを「日記・コラム・つぶやき」としている所以でした。
さて、前々回記事(もう少し「第三の道」の話)のコメント欄では、日本の財政が破綻寸前という危機意識から大所高所からのご意見が多く寄せられていました。その議論の流れからすれば、まったく前回記事は横道にそれたものでした。意図的に話題転換をはかろうとした訳ではありませんので、改めて難解なテーマに対して自分なりの切り口で挑んでみるつもりです。
ただ専門に財政面の問題を研究している立場ではなく、特に詳しい知識を持ち合わせている訳でもありません。他の分野を扱ったブログ記事でも言えることですが、手にした様々な著書の中から共感した内容などを取り上げていることが常でした。自分自身の言葉で語らない点について批判を受ける場合もありますが、そもそも自分自身の「考え」だと思っていることも、元をたどれば他人の「考え」を見聞きしたものの蓄積ではないのでしょうか。
そのような前置きを行ないながら、今回、日本の借金などを考える上で非常に参考になった著書を紹介します。細野真宏さんの『最新の経済と政治のニュースが世界一わかる本!』でした。細野さんは『経済のニュースがよくわかる本』『「未納が増えると年金が破綻する」って誰が言った?』などの著書を持ち、ビジネス書のベストセラーを連発されていました。そのタイトルに違うことなく、本当に分かりやすい本でした。
このような発想もあるという点で、ぜひ、このブログで紹介したいものと考えながら読み進めていました。年金の問題なども分かりやすく、「目からウロコ」と呼べる興味深いものでしたが、今回は国の借金に絡んだ内容を中心に紹介していくつもりです。なお、私自身は細野さんの問題意識に強く共感しているところですが、やはり見方や評価は個々人で枝分かれしていくのだろうと思っていることも、あらかじめ付け加えさせていただきます。
日本は「低負担・低福祉」を選択している国
まず細野さんは国の借金の定義を次のとおり整理していました。長期の国だけの借金が約600兆円、長期の地方分を合わせると約800兆円、短期の借金なども含めて国と地方分を合わせると1000兆円以上とし、どれも「正解」ではあるが「理想的な解答」は約800兆円だと述べられています。会社の連結決算と同様、親会社(国)の経営状態だけではなく、子会社(地方)も含めた全体を見るのが「世界標準」であり、あまり期間の短いお金のやり繰りに目を向けないのが一般的だそうです。
国の借金である国債の9割以上は国内の会社や個人が保有しています。海外のお金は逃げ足が早く、「キャピタル・フライト(資本の逃避)」を起こしやすい面があり、このようなリスクが少ない点から日本の場合は安心であるという見方があります。また、日本の個人金融資産は1400兆円ですが、大半は銀行や郵便局に預貯金の形で預けられています。景気が回復していない中、会社への貸し出しが少なく、金融機関は大量に国債を買っている現況です。そのため、多くの国民は銀行を通して、間接的に国へお金を貸している状態だと細野さんは述べられていました。
先進諸国の対GDP比による日本の債務残高はダントツのワースト1です。ただ社会保障費を除いた内訳は、世界的に見て圧倒的にお金を使っていないことを細野さんは指摘しています。さらに高齢化率世界一の日本でありながら、社会保障費を含めた全支出の比較の中でも低いほうにランクされていました。それにもかかわらず、債務残高がワートス1になる理由は、税と社会保険料を合わせた国民負担率が最下位近くとなるからでした。
細野さんは「高齢者の割合が世界一」であるにもかかわらず、「国民負担が世界的にも低い」という状況なので、借金が増え続けているのは当然の状況だと語っています。なぜ、そのような「低負担・低福祉」となっているのか、私たち国民が選挙で選択してきた結果だと説かれています。日本は「自分のことは自助努力」という社会であり、国民は自分の生活を守るため、増税に反対し続けます。
加えて、国民感情として「無駄遣いがあるうちは、増税なんて絶対反対」という声が強まります。そのような声を受け、小泉政権は徹底的な国の支出削減に取り組みましたが、「無駄の削減」で捻出できる金額は大した規模とならないことを見込んでいたようです。2006年6月22日の経済財政諮問会議の中の「歳出をどんどん切り詰めていけば“やめてほしい”という声が出てくる。“増税してもいいから必要な施策をやってくれ”という状況になるまで、歳出をカットしなければならない」という発言が紹介されていましたが、国民を見下した冷たい響きが感じ取れてしまいます。
すでに日本の財政は破綻?
細野さんは国の財政破綻も会社の倒産も、基本的な仕組みは変わらないと説明しています。多くの会社は資金に余裕がないため、借金して金利を払いながら経営を進めています。資金繰りができている限り、会社が倒産することはあり得ません。経営が傾き、将来に不安が出てくると貸し手は高い金利などを要求するようになります。その金利の水準が持続可能な限界を超えると、会社は倒産せざるを得なくなります。
国の財政破綻も同様に借金が約束通り返せなくなる状態を指します。専門用語で「デフォルト(債務不履行)」と言いますが、1998年にデフォルトに陥ったロシアは短期国債に対して172%という金利を市場から要求されていました。それに対し、現在の日本の「10年物国債」は2%に満たない水準で推移しています。現時点で世界のマーケットは「まだ日本の財政は安心できる」と考えていることが分かります。
続いて、まさしく「なるほど」と感じた話に触れられる機会となりました。細野さんは、個人の借金と同じような発想で国の借金も「将来はゼロにしなければならない」と考えている人も多いが、それは誤解であると述べられていました。国に借金があること自体は、決して問題視すべきではないと強調しています。会社の借金と同様、国も借金しながら事業を続けるものであり、無理なく資金繰りができている限りは問題ないということでした。
問題視すべきは、借金があるということではなく、際限なく借金が増え続けていくことであり、未来の借金に歯止めをかけることだそうです。そのためのプライマリー・バランスの黒字化であり、単年度の基礎的収支を考える中で「低負担・低福祉」のままで良いのかが重視されていくものと私自身も受けとめています。なお、このあたりについては、また別な機会に掘り下げてみたいものと考えています。
景気と借金の関係など…
景気が回復すれば税収が増えるので、国の借金は減っていくと言われています。しかしながら細野さんは、景気が回復すれば金利も上がるため、800兆円の1%は8兆円となり、消費税3%以上の負担が増える試算を示されていました。したがって、抜本的な解決策としては、借金の金利の上昇率よりも経済規模(GDP)を増やす必要性を説かれていました。金利が2%増加しても、経済成長率が3%だった場合、国の借金の負担は減っていく理屈でした。
私自身が特に注目した箇所を綴ってきましたが、まだまだ紹介したい内容が数多くありました。ここで今回の記事は終えますが、必要に応じて補足すべき点があれば対応させていただきます。とりわけ「無駄の削減」の記述などは、自分たちの既得権を守りたいための言い分のようにとらえられる心配もあります。いずれにしても、今回のテーマは引き続き取り上げていくべきものと考えていますので、言葉が不足しているような場合などはご容赦いただければ幸いです。
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