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2010年6月27日 (日)

評価が分かれる『独裁者』

つい最近、阿久根市の竹原信一市長の著書『独裁者“ブログ市長”の革命』を読み終えました。この本は今年2月に発売されていました。もともと幅広い立場や視点で書かれている書籍などにも目を通すほうでしたので、昨年6月頃から注目している竹原市長の著書は一度読んでみようと考えていました。したがって、書店で見かけたら、すぐに購入するつもりでした。

しかし、残念ながら(幸いにも?)近隣の書店では、まったく目にすることができませんでした。1575円という高めの価格であり、わざわざ注文して買うほどの魅力も感じていませんでしたので、図書館の蔵書にあるかどうか定期的にネットで検索していました。すると1か月前ぐらいに1冊だけ入手されていることが分かりました。その時は貸出中だったため、さっそく予約し、ようやく少し前に手にすることができていました。

250頁を超える著書を目の前にして、どのような新しい情報や竹原市長の別な側面に触れられるのか、それなりに期待しながら頁をめくっていきました。事前に聞いていたほど誤字脱字などは少ないようでしたが、「です・ます」調と「である」調が混在している文章の多さは目立ちました。それでも普段のブログ「住民至上主義」に書かれている文章と比べれば、ずっと読みやすかったため、編集部の手が細かく入っている印象を受けました。

このような感想は余計なことだったかも知れませんが、肝心な内容は全体を通して、すでに耳にしていた話ばかりでした。辞めさせたい議員アンケート、市職員の給与明細全面公開などのエピソードの紹介があり、それに対して竹原市長の言い分や持論が展開されていました。当たり前と言えば当たり前なことですが、すべてネット上で知り得ていた内容が整理して綴られていた書籍に過ぎませんでした。

阿久根市の話題を中心としながら時折り、二元代表制や地方交付税制度の説明なども加えられていました。それらも独特の視点での解説が目に付き、いずれにしても『独裁者』が竹原市長の世界観の集大成であることには間違いありませんでした。せっかく借りたので最後まで目を通しましたが、もともと竹原市長の言動には違和感を持っていたほうですので、私にとっては義務的な時間を強いられたという読後感でした。

一方で、リンクをはったAmazonの読者レビューでは、「内容は実にわかりやすいです。はっきりメリハリの利いた文章。一気に読めますよ」「世を憂いて私心を捨て行動を起こす姿に心を打たれます」など絶賛するコメントが並んでいます。購買意欲を高めるためには、このような書評を掲げる必要があるものと思っています。それでも先入観や予備知識のない方々が読まれた場合、このように竹原市長を賛同する意見に傾いてしまう書籍にも思えてきました。

そう考えると色眼鏡で見ているのが私のほうであり、白紙の立場で読まれた方々には強い共感を与えていくのかも知れません。特に公務員を敵視している方が読んだ場合、いっそう怒りを倍加させるのだろうと見なければなりません。阿久根市民の平均年収200万円という算出方法の問題点など、竹原市長の思い込みによる記述が多々あります。しかしながら『独裁者』を読む限りにおいては、竹原市長が「正義」、市職員や議員が「悪」という短絡的な構図で描かれてしまっています。

今回の記事タイトルのとおり『独裁者』への評価は大きく分かれていくはずです。竹原市長の言動を懐疑的に見る側からすれば悩ましい話ですが、肯定的に評価する人たちが少なくないという客観的な事実は事実として真摯に受けとめていかなければなりません。さらに最近の竹原市長の動きとして、何とも信じられない専横ぶりが際立ってきていました。

鹿児島県阿久根市の竹原信一市長が7月から市議会(定数16)の議員報酬を月額制から1日1万円の「日当制」に変更する条例を専決処分したことについて、反市長派市議12人は地方自治法に基づき、処分の取り消しを求める審決を伊藤祐一郎知事に申請する方針を固めた。22日には市に対する是正勧告も県に要望する。

竹原市長は18日、日当制に加え、固定資産税と法人市民税の税率引き下げ、住民票交付などの手数料引き下げの条例改正2件も専決処分した。同法は専決処分を議会を招集する時間がない場合などに限定。

これに対し、竹原市長は6月定例会を招集せず、議会側の臨時議会開催請求にも応じておらず、反市長派市議は議決する権利を奪われたとして、3件の専決処分が審決を定めた地方自治法255条の「違法に権利を侵害された」状態に当たると判断した。

知事は90日以内に審決し、結果は強制力も持つ。2008年に佐賀県上峰町議会から除名処分を受けた議員が、審決で処分を取り消され、復職したケースなどがある。ただし、審決に従わなくても罰則はない。【西日本新聞2010年6月22日

このような竹原市長の専決処分などに対し、鹿児島県の伊藤知事は事務処理の適切な対応を求める「助言」を行ないました。①議会の臨時議会招集請求に応じる、②地方交付税の減額対象になる可能性があることなどから、固定資産税の税率を改正前に戻す、③議員報酬・職員給与の専決処分を見直し、議会の議決を得る、という中味でした。

鹿児島県議会も竹原市長の市政運営に抗議し、改善を求める決議を全会一致で可決しています。決議の内容は「首長による恣意的な自治体運営で(首長と議員を有権者が選ぶ)二元代表制を崩壊させる」と非難し、適切な行政運営を求めていました。さらに伊藤知事は竹原市長と直接面会し、「戦い方が少々ずれていますよ」と苦言を呈していました。しかしながら竹原市長に改める意思は、まったく見られていないようです。

一般的な常識に照らせば、竹原市長の行動は常軌を逸しています。ただ市職員や議員の年収を高すぎると思い、税金の減額を歓迎する住民の方々からすれば、竹原市長は強く支持すべき対象になり得てしまうものと見ています。つまり今後、竹原市長が3回目の当選を果たす可能性も充分想定していかなければならないはずです。

このような現実に対し、必ずしも適確な答えを持ち合わせている訳ではありません。その上で、1点だけ強調させていただきます。完璧な人間は皆無と考えるべきであり、様々な視点から検証を加えられた「答え」にこそ、信頼感の厚みが増していくはずです。要するに健全な組織運営のためには、『独裁者』はなじまないものと確信しています。そのような意味合いから問題が多少あったとしても、三権分立や地方自治体における二元代表制などが位置付けられているものと考えています。

竹原市長は、組織のトップに背いた職員を懲戒免職にしました。その竹原市長自身、『阿久根時事報』というチラシを全世帯に配布していた際、自分の経営する建設会社の仕事に支障をきたすほどの時間と労力を費やしていたと著書の中で綴っています。挙げ句の果て、会長である実父から会社への出入りを禁止されるほど、組織のトップの意向に背いていたことが書かれていました。

このような記述が自己矛盾につながっていながら、頑なまでに考えを曲げなかった自慢話として語られていました。一事が万事、竹原市長の『独裁者』を読み終えて、つくづく完璧な人間は皆無という言葉を思い浮かべています。最後に『独裁者』の中で、思わず苦笑いした箇所を紹介します。どうも竹原市長は心温まる逸話として書かれていたようですが、文章を読んでブラックジョークと感じてしまうのは私だけでしょうか。

このような状態でしたので、もちろん家庭の中も平穏とは言えない空気に包まれていました。こうやって思い返してみると、私のやることを半ば観念して見守り続けてくれた妻に感謝したい。後になってわかったことですが、私の身を案じた家族がこのとき私の生命保険をかなり高額なものに替えたそうです。

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2010年6月20日 (日)

参院選は、えさきたかしさん

菅首相に代わり、民主党の支持率はV字回復しました。鳩山前首相らに対しての失望感が高まっていたとは言え、昨年の政権交代に託された民主党そのものへの期待感は、まだまだ薄れていなかったことの証しだと思っています。しかし、さすがに「仏の顔も三度」とはならないのでしょうから、菅政権までつまづくような場合、改めて国民から信を問わなければならないはずです。それこそ1年ごとに表紙の顔を変えた自民党政権への批判がブーメランのように民主党へ返ってくることを覚悟しなければなりません。

前回記事「あえて市議選の話題」でお伝えしましたが、今朝7時から市議会議員選挙の投票が始まっています。私どもの組合が推薦している候補者をはじめ、民主党の公認候補は6名で、その他に推薦候補1名が立候補していました。定数が2減となる中、民主党は現有勢力6名から1名増やす積極策に出ていました。民主党への支持率が急落していた時は、それぞれの候補者は非常に厳しい風当たりを感じられていたようです。

菅政権となって劇的に支持率が回復したとは言え、それでも7名全員の当選はきわめて高いハードルとなっている選挙戦でした。みんなの党の推薦候補者など有力な新人候補が数多く名乗りを上げているため、28の議席を37名で争う激戦を制するのは容易ではありませんでした。複数の現職候補の落選が免れない情勢と言われ、私どもの組合が推薦する候補者も最後まで混戦を抜け出したとは断言できない厳しい見通しです。

さて、参議院議員選挙の日程は当初の予定通り6月24日公示、7月11日の投票日が確定しました。その日程で準備を進めていた自治体の選挙管理委員会としては正直安堵しているところでした。ただ国会の会期が延長されなかったため、廃案や継続審議となった法案が数多くありました。インターネットを利用した選挙運動を解禁する公職選挙法改正案(ネット選挙解禁法案)もその一つでした。

私自身もブログを運営し、政治的な話題を頻繁に取り上げていたため、これまで「選挙運動とインターネット」や「参院選公示後も政党のHP更新」などの記事を投稿していました。結局、現行制度の枠内で注意していくことになりますが、基本的な考え方は大きく変わっていません。したがって、以前の記事に掲げた内容(赤字)を改めて紹介しながら、話を進めさせていただきます。

選挙期間中、ネット上のブログのあり方について様々な考え方があるのも確かです。候補者やその関係者かどうか特定できない性格上、コメント欄も含めて閉鎖や凍結する方もいらっしゃるようです。その中で、私自身は最低限、特定の候補者への呼びかけとなる記事を選挙期間中に新規投稿しなければ大丈夫だと判断しています。

もう少し慎重を期し、基本的に立候補者の固有名詞は出さないように心がけてきました。また、政党名をJ党やM党などとイニシャルで記したブログも見ましたが、一般的な政治談義の中で具体的な政党名や党首の名前が出ても問題がないものと考えています。そこまでダメだと言われた場合、選挙期間中のテレビや新聞の報道も成り立たなくなる理屈です。

このような基本線を踏まえた時、来週末は参院選の選挙期間中に突入しているため、このブログでは固有名詞が示せなくなります。3年前の参院選の公示日直前には「自治労の思い、あいはらくみこさんへ」という内容を投稿していました。ちなみに相原久美子さんは、民主党結党以来最高となる50万を超える得票で初当選を果たすことができていました。なお、私どもの組合では市議選の候補者と同様、昨年11月の定期大会で今回の参院選における推薦候補も決めていました。

そして、組合の機関紙などで参院選を取り組む意義や候補者の政策などについて周知をはかってきていました。したがって、前回記事で述べたとおりの趣旨から当ブログでも一度、参院選の話題について取り上げようと考えていました。それがいつのまにか名前を出せるタイミングとしては、前述したとおりラストチャンスを迎えていました。その組合推薦候補のお名前は、記事タイトルに掲げているとおり自治労組織内のえさきたかしさんでした。

えさきさんは今回の参院選において民主党公認の新人候補として、比例代表区から国会の議席をめざしています。初めてお会いし、名刺交換した時、えさきさんが「公務員のためいき」のことをご存知だったことには驚きました。えさきさんは、公共サービスの再生を基本政策の筆頭に掲げています。えさきさんの何よりの強みは、公共サービスの最前線で働く現場の声を直接聞けることだと思っています。

えさきさんが自治労の代表として頑張っていただくことに間違いありませんが、自治労のためだけの利益代表と見られてしまうことは本意ではないはずです。自治労の抱える問題意識や考えが国会や政権与党内に反映されることで、様々な政策の幅に厚みが増すという構図を強くアピールしていかなければなりません。逆に「だから心配」という声もあろうかと思いますが、えさきさんを先頭に自治労全体で乗り越えていくべき課題だと受けとめています。

えさきさんは今回、民主党参院幹事長の高嶋良充さんから自治労のバトンの引き継ぐことになります。その高嶋さんが『自治労通信(NO.742)』の中で、えさきさんへの応援メッセージを書かれていました。先ほど私が記した思いと合致する言葉であったため、印象深く残っていました。抜粋となりますが、今回の記事の最後に高嶋さんの文章を紹介させていただき、えさきさんのご健闘を私からも祈念申し上げます。

参院比例で立つ自治労組織内議員の役割は、何よりも、現場で頑張っている声を、政治に反映させることにあります。私はある本で、「自治労の自治労による自治労のための政治家」と揶揄されたことがありましたが、自治体の現場の声は、公共サービスを提供される市民の声にほかなりません。「えさきたかし」さんも、現場の声を政治に生かす政治家として、自信を持って活動してください。そして、「ともに先へ、先へ。」のキャッチフレーズの通り、先見性のある「社会的に価値のある公共サービス」の実現をめざしていただきたいと思います。「えさきたかし」さんのこれからのご活躍を期待しています。

(追記)市議会議員選挙の開票結果は、おかげ様で私どもの組合推薦候補は1,997票を獲得し、6選を果たすことができました。ご支援いただいた皆さん、本当にありがとうございました。なお、民主党系の候補者7名全員が当選できました。

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2010年6月12日 (土)

あえて市議選の話題

明日、私どもの市の議会議員選挙が告示されます。来週日曜、6月20日に投票され、即日開票で新たな28の議席が判明する運びとなっています。4年前を振り返れば、すでにブログを開設していたため、次のような記事を連続で投稿していました。その頃は週1回の間隔ではなく、「頭の中は市議選モード」「市議選闘争、いよいよ本番」「豪州戦は残念、でも市議選は!」「応援した候補者が当選」と続き、2週間で4回も更新していました。

現在は週1回の投稿間隔となっている点と合わせ、政治的な話題には慎重を期すよう心がけていたため、このブログの記事として取り上げるタイミングを逃していました。ただ前回記事「沖縄に揚がる自治労の旗」の最後に「今後も多面的な批判や反論が加えられがちなテーマも避けずに取り上げていくつもりです。賛否が分かれるテーマこそ、丁寧な情報発信と一方通行とならない意見交換の場が必要である」と書かせていただきました。

組合活動の中でも、きわめて政治的な色彩の強い取り組みが選挙闘争です。ちなみに「闘争」という言葉に不快感を持つ人たちが少なくないようですが、法律上の選挙運動と明確に区分するためにも選挙闘争と呼ぶこだわりがありました。あくまでも組合活動の一環であることの毅然とした意思表示にもつながっていました。いずれにしても私どもの組合は、以前の記事「地公法第36条と政治活動」の内容を基本としながら、組合活動の範囲内で様々な選挙闘争に臨んでいました。

その選挙闘争の中でも、私どもの組合にとって市議選闘争の行方は最も重要な位置を占めています。市職員の労働条件は労使交渉で決まる原則と平行し、議会で定める条例に基づくことが原則とされています。そのため、市議会の中で連絡を密にできる議員の存在は非常に重要なことでした。また、図書館への指定管理者制度の導入などが行革の柱とされがちな中、現場で働く職員の声を市議会の場に届けるためにも、緊密な連携をはかれる議員の存在は貴重なことでした。

加えて、そのような推薦議員の多面的な政策提言は、多様な住民ニーズに対応していく価値ある役割につながっているものと思っています。一昔前、組合の代表イコール利益代表という言葉が強調されていました。前述したとおりの関係性があることも間違いありませんが、職員の既得権などを守るためだけの存在だった場合、今の時代、広範な支持は得られないはずです。したがって、職員の待遇面などに対しても説得力ある是々非々が欠かせず、組合と推薦議員との間に適切な距離感が求められていることも認識しています。

このような意義や関係性などを踏まえ、私どもの組合は昨年11月の定期大会で市議選闘争における候補者の推薦を決めていました。組合の元委員長で、現在の市議会議長であり、民主党からの公認を受け、6期目に挑まれる候補者です。今回、定数が2減となり、28議席を36名の候補者で争われる見通しです。前回と同様、泡沫候補が皆無に近い中、現職複数名の落選が噂される激しい選挙戦の様相でした。私どもの組合が推薦している候補者も、その噂される一人に数えられ、予断の許されない厳しい局面を迎えています。

このブログで、何が何でも匿名にこだわっている訳ではありません。それでも名前を売る必要のない素人が運営しているブログの一般的な慣わしに従い、これまで自治体名などは伏せてきました。コメント欄では具体的な市の名前が示される場合もありましたが、私からは一度も実際の名前を明かしたことがありませんでした。とは言え、三多摩地区で明日市議選の告示を迎える市は一つですので、今回のような記事内容を投稿すれば、公表しているのも同然だと言われても否定できません。

今回の記事内容に対しても数多くの批判にさらされる可能性もありますが、その候補者の名前を知ってもらう一つの機会と考えれば、いっそのこと実名を出すという判断もあり得るのかも知れません。しかし、告示日前の投稿とは言え、明日からは選挙期間中に入ります。私自身、まったく問題のない明確な線引きを意識しながら書き込んでいるつもりですが、固有名詞を出すことで余計な誤解を広げる恐れがありました。

とりわけ、より身近な選挙戦であり、より慎重になることが必要であり、やはり固有名詞は横に置いた上で話を続けてさせていただきます。そもそも、あえて今回の記事を投稿する理由は次のとおりでした。まず一般論として、組合が選挙闘争に取り組む意義やその妥当性を不特定多数の皆さんにも訴えたかったことが一つでした。続いて、市議選闘争は重要な組合活動の一部であるため、このブログで一度も取り上げないという選択肢はあり得ないという見方がありました。

先ほど匿名で発信しているブログだと述べましたが、組合員の皆さんをはじめ、知り合いの皆さんから見れば、管理人「OTSU」は決して匿名ではありません。この時期、市議選の話題に一切触れなかった場合、その候補者を一緒に応援している関係者の方々からは「何をのんきに!」とお叱りを受けることも考えられました。そして、組合員の皆さんに対しては、これまで組合のニュースなどを通して市議選闘争の意義や候補者の政策を訴えてきました。

このブログでも取り上げることによって、改めて認識が共有化できる機会となり得ることを願っていました。とにかく選挙闘争の方針は組合員の皆さんへ押し付けるべきものではなく、その重要性や意義を訴え続けることによって、ご理解やご協力を求めていくべきものだと考えています。ただ押し付けているつもりがなくても、呼びかけそのものに対し、しつこすぎると感じている組合員の方もいらっしゃるはずです。その点は、たいへん申し訳なく思っています。

ここまでお読みいただき、不快感を持たれた方も少なくないのかも知れません。公務員の組合が特定の候補者を応援している話をネット上に書き込むことに対し、公務員の「政治的な中立性」を強調される方からは手厳しい批判を受けるのでしょうか。また、違法ではなくても、不信感を助長するような行為は慎むべきとのご意見などが示されることも覚悟しています。しかし、後ろめたいことは一切ないという思いもあるため、あえて今回のような内容をブログでも取り上げる判断を下していました。

最近、北教組(北海道教職員組合)の違法献金事件で、会計担当者が有罪判決を受けました。いろいろな意味で組合として取り組む意義がある選挙闘争ですが、結果がストレートに出るシビアな側面があります。万が一、結果が伴わなかった場合のダメージもはかり知れません。そのため、厳格な自制心を働かせていかなければ、北教組の事件のように違法性が問われる取り返しのつかない事態を引き起こしかねません。

言うまでもありませんが、選挙に関しては様々な制約があり、その中でも公務員の組合は特に注意しなければならない点が多々あります。北教組の問題を重大な反面教師とし、私どもの組合は改めて選挙闘争の範疇を問い直してきました。推薦候補者の勝利は不可欠、しかし、法令順守はもっと重要であり、北教組のような事態を招けば、候補者の勝利も吹っ飛び、多方面に大きな迷惑をかけることになります。そのため、アクセルと同時に必要に応じてブレーキを踏むことも意識しなければなりません。

ただ、このような発想は、必死さの不足というような見られ方につながる心配もありました。過剰に萎縮している訳ではなく、決して選挙情勢を甘く分析している訳でもありませんが、公務員の組合として取り組める範囲内で全力疾走しているつもりです。その上で、力及ばず残念な結果に終わった場合、候補者の出身組合の委員長として重い責任を痛感することになります。そうならないためにも残された期間、できる限りの努力を尽くそうと考えています。ぜひとも、関係者の皆さん、改めてご理解ご協力をよろしくお願いします。

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2010年6月 6日 (日)

沖縄に揚がる自治労の旗

大雨警報が出されている土砂降りの中、沖縄県宜野湾市にある普天間基地が1万7千人の人間の鎖で囲まれました。先月16日のことでした。折りしも普天間基地の移設問題が大きな注目を集めていたため、全国ネットのニュースでも頻繁にその模様が映し出されていました。私どもの組合からも2人が参加していましたが、雨ガッパを着ていても膝から下がびしょ濡れになるほどの豪雨だったそうです。

その行動があった翌々日の火曜夜、自治労三多摩の組織集会と呼ばれる会議には私が出席していました。定員100人の会議室は、ほぼ満杯となる参加状況でした。普天間基地の包囲行動から帰京した参加者が多かったため、その日の苦労話や成功させた達成感などの報告を複数聞く機会となりました。それぞれの言葉からは「たいへんだったけど、参加して良かった」という雰囲気が共通して伝わってきていました。

前回記事「自治労と当ブログについて」の中で、このような取り組みを否定する立場ではないことを述べていました。したがって、豪雨の中での行動に対し、ねぎらいの思いを持ちながら皆さんの報告に耳を傾けていました。同時に当ブログのコメント欄に寄せられる様々な声も頭に浮かべながら、このような自治労ならではのムードに嫌悪感を持つ人たちも多いのだろうなあ、という考えを巡らしていました。

「沖縄現地の新聞では、自治労の旗が大写しになっていた」と誇らしげな紹介もありました。いみじくも前回記事のコメント欄で、とーるさんから自治労の旗が現地に揚がることの問題性の指摘を受けていました。つまり組合の旗がテレビなどで映し出されることで、その企業や組合へのマイナスイメージが発信されるという懸念の声でした。この点については、コソコソと身を隠しながら参加している訳ではありませんので、まったく問題ないものと考えています。

とーるさんからは、違法であるかどうかの問題ではなく、そのような行動は世間から強い反発を受け、自治労そのものへの批判につながるという趣旨の問いかけが繰り返されていました。ある意味で、親身になって心配されている善意からのご意見だと受けとめています。しかし、包囲行動そのものへの評価、その出発点が180度違うため、どうしても論点がかみ合わない平行線をたどりがちです。結局、前回記事で述べたことの焼き直しのような言葉が並ぶのかも知れませんが、私なりの問題意識を改めて箇条書きにしてみます。

  1. 普天間基地包囲行動などは一定の意義がある。反対の声が強いという意思を直接的に表し、報道を通して全国にもアピールできる、政策決定への影響を与えるための手段としては評価すべき行動である。
  2. あくまでも平和行進などの反対行動は手段であり、目的ではない。それらの行動を多数の参加者を得て成功させた、それだけで終わっていては本末転倒である。めざすべき結果をどのようにしたら出せるかを最重視しなければならない。
  3. このような行動を冷ややかに見ている人たちが少なくないことを忘れてはならない。その傾向は組合員の中でも同様であることを留意する必要がある。そのため、丁寧な情報発信を重ねていくことが欠かせない。

このブログを長く続けているため、上記「3.」についての問題意識は自治労の中でも人一倍敏感になっているはずです。しかしながら決して自治労の総論的な方針を全否定する発想がないため、とーるさんらの問題意識と大きくすれ違ってしまうようです。補足した思いとして、行動自体が世論から反発を受ける実態が強いようであれば、やめるという選択肢の前に共感を広げるための努力を尽くすべきものと考えています。

「人間の鎖で本気で平和が訪れると本気で思っているならば、紛争地帯に行って行動すべし。平和な日本でやる必要はない」という指摘も受けました。言葉のアヤだと受けとめていますが、普天間は国内の問題です。あえて紛争地帯に行くべき理由が見当たりません。一方で、確かに平和な社会だからこそ、このような行動の自由があり、死傷者を出すような強権的な弾圧がないことも理解しているつもりです。

また、前述したとおり人間の鎖が成功したから、すべて問題が解決するとは考えていません。一方で、このような行動が「日本国の利益を阻害しがち」かどうかの評価は一つではないはずです。さらに包囲行動などへの批判の声があり、そのような反感が自治労そのものへの批判につながる場合があることも否定しません。しかし、そのことが「公務員たたき」を誘発しているという見方も含め、一因かも知れませんが、すべてではないことも明らかです。

とーるさんからは、例え一因だったとしても、そのような不信感につながる可能性のある行動は慎むべきという訴えをいただいているものと思っています。この点は、自治労のHPの「自治労って?」に掲げてある3番目の「社会正義を実現すること」に対する違和感と同様な問題提起だと受けとめています。なお、とーるさんは自治労のHPに「地域貢献」がないと指摘されていましたが、2番目の「やりがいのある仕事が出来るように話し合ったり、考える場を提供すること」の中に含まれているものと私は理解しています。

とにかく根本的な論点として、なぜ、労働組合である自治労が「社会正義」を掲げるのか、組合員を沖縄へ派遣するのか、人によって見方が大きく分かれることも間違いありません。いずれにしても優先順位の問題は絶対重視しなければなりませんが、私の考え方は「本題に入る前の長話」に記してきたとおりでした。まったく仮定の話として、白紙の状態から新しく具体的な活動方針を決めるのであれば、力量面なども考慮しながら現状とは異なる内容を選ぶ可能性までは否定できません。

つまり自治労はその歴史も長く、他の団体との関係性なども含めて非常に大きな存在であり、簡単に急旋回できないことも確かでした。このように書いてしまうと、現状に大きな問題点があるように誤解されそうですが、あくまでも白紙から積み上げていく場合の順位付けの話であることをご理解ください。また、自治労の進むべき方向性は、その組織内の構成員が議論して決めるべきものであることも言うまでもありません。

一方で、その方向性などの問題点をネット上にさらし、多様なご意見をいただくことの意義深さも強く認識しているところです。と言いつつ、いつものことながら「分かりました、すぐ改めます」という展開が少なく、たいへん恐縮しています。加えて、単に「聞く耳を持っている」というアリバイ作りだと批判する声が出ることも覚悟しています。今回の記事内容も、とーるさんらの疑念を少しは払拭できたのか、歩み寄れる可能性を残したのか、もっと溝を広げてしまったのかどうか何とも言えません。

これまで「言葉にすることの大切さ」などで述べてきましたが、やはり今後も多面的な批判や反論が加えられがちなテーマも避けずに取り上げていくつもりです。賛否が分かれるテーマこそ、丁寧な情報発信と一方通行とならない意見交換の場が必要であるものと考えているからでした。最後に一言、お願いがあります。決して自虐的な嗜好がある訳ではなく、厳しい言葉に免疫力が高まっている訳でもありませんので、わざわざ相手を不快にさせるようなコメント投稿には慎んでいただけるようご協力ください。

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