民主党との距離感
前回記事「静かな船出、鳩山内閣」の冒頭で、前々回記事「9・11テロから8年」へのコメントが久しぶりに1週間たっても0件だったことを書きました。前回記事もコメントが少ない傾向となる政治に関する話題でしたが、一転して数多くのコメントをお寄せいただきました。やはり幅広い視点から思いがけないご指摘やご意見に触れられる機会は意義深いことだと考えています。
特に前回は、その思いが顕著となりました。前回記事の冒頭で「鳩山政権の滑り出しの印象は個々人で温度差があるものと思っていますが」と書きましたが、その温度差が本当に個々人で大きく違うことを改めて認識する機会となりました。まずThorさんから川端文科相がシルバーウイーク中の22日を補正予算洗い直し作業の期限とし、最初から連休返上での仕事を求めたことについて、おかしいのではないかとのコメントをいただきました。
それに対し、私からは「歴史的な政権交代直後の時期ですので、文科省職員の皆さんには申し訳ありませんが、やむを得ない事態だと見ています」とお答えしていました。私どもの自治体に照らしても、緊急に仕上げなくてはならない事務作業が発生した場合、予定外の休日出勤が強いられる時もあります。私自身の経験としても大規模なOAシステム導入の際、年末年始にも出勤したことがありました。
さらに来年5月、新庁舎への移転に伴い大半の職員が「ゴールデンウイークはないもの」と覚悟していますが、この点についても仕方ないものと受けとめています。つまり一過性の緊急を要する任務が課せられること自体、頭から否定できないものと考えています。一方で、言うまでもありませんが、これからも休日や所定内の勤務時間を無視した職務命令が続くような場合は、それこそ労働組合の出番だろうと思っています。
長時間残業の常態化や「サービス残業」は決して容認できるものではありません。当該の組合が声を上げられないのであれば、連合として新政権に申し入れるぐらいの課題だと認識しています。そのような声が直接届いたのかどうか分かりませんが、連合組織内議員である川端文科相は22日の省内ヒアリングの冒頭、事務次官らに対して次のように陳謝した話が報道されました。
川端文科相は「一刻の猶予も許されないという思いの中で、少し配慮が足りなかった」と頭を下げ、「別途、家族と過ごせるようにしてほしい」と代休取得を指示したそうです。このように配慮が不足した点は、すぐ反省する姿勢も大事な点だろうと思っています。今後、マニフェストの実現も重要ですが、よりいっそう幅広い声を謙虚に受けとめていく姿勢も民主党には求められているはずです。
しかし、この謝罪についてもThorさんからは「霞ヶ関の慢性的な人員不足の中で、現実に代休を取れるとお思いでしょうか? そもそも、霞ヶ関は年次休暇の消化率も低調なので、代休が加わっても、非常に無意味なのですが。しかも、これから先もあれこれと通常業務に加えて、民主党政権の追加業務も見込まれる中で、どう休ませるつもりなのかが不思議です。正直な所、マスメディアと国民向けのポーズ、民主党のアピールにしか見えません」とのご指摘を受けています。
連休返上の問題は民主党政権を評価する象徴的な話として取り上げられているものと理解していますが、他にも国会質問などにおける民主党議員の配慮のなさが取り沙汰されていました。とは言え、政権交代以降、民主党の大臣らが私自身としては「思ったより」淡々と官僚の方々と接している印象を抱き、そのことを「静かな船出」と表現し、自分なりの感想を綴ったのが前回の記事でした。
繰り返しになりますが、その思いは本当に個々人での温度差が大きいようでした。前回記事のコメント欄では、あっしまった!さんからも鳩山内閣に対する辛口なコメントが続きました。阿久根市長の手法に対する評価などについて、ほぼ見方が一致できるお二人と民主党絡みの話になると、大きくすれ違うこともやむを得ないものと思っています。
そのような中、やはりコメント欄では常連のKさんから「Thorはんは、ブログ主はんと似た様な属性やったんとちゃうかったっけ?せやけど民主党に対する評価はずいぶん違うやんか。これはなんで?」という質問を受けていました。もともとThorさんと私は民主党に対する基本的な評価が違っていました。このあたりは民主党の政策の幅広さが起因していますが、Thorさんは「特に労働者が民主党を支持しているということも無いような気もします」とも述べられています。
正直なところ私自身もスタートしたばかりの新政権ですが、注文を付けたい点がない訳ではありません。民主党の手法などについて、すべて「是」と見ている訳ではありませんが、逆にすべて「非」と見るような政党だとは思っていません。私自身のとらえ方は「新政権への期待と要望」で記したとおりですが、民主党のマニフェストをすべて実現させようとした場合、いろいろ問題点が生じる懸念も抱えています。
まだ船出した直後の鳩山政権に対し、好意的に見れるのか、厳しい批判の目で見るのか、個々人の民主党との心情的な距離感によって左右されているはずです。当たり前な話ですが、連合や自治労が民主党を応援しているからと言って、その構成員すべてが民主党を支持している訳ではありません。先ほど述べたとおり私自身も、民主党の方針に全面的に従う必要性がある立場ではありません。
それでも私どもの組合員の皆さんに対し、民主党への支持を強く訴えてきた責任者であることも重く受けとめています。そのような経緯もある中、望んでいた政権交代ですので、現時点では至らない点を指摘するよりも前向きな点を評価していこうと考えています。加えて、もう少し政権全体の働きぶりを見守った上で、評価していくことの大事さも感じているところです。
その上で、どうしても民主党に改めてほしい問題が生じた際は、支持協力関係のある連合を通し、直接物申していくことが重要です。その具体例を思い出した時、現在の前原国交相の苦闘ぶりがオーバーラップしてきました。4年前、前原国交相が代表に就任した直後、公務員組合を切り捨てようとする発言が繰り返されていました。直前の総選挙戦で懸命に応援していた労働組合側に冷や水を浴びせるものであり、私が所属する連合三多摩は「前原民主党代表と語る会」を開き、その真意をただす機会を設けました。
その会で、前原国交相からは「脱労組の言葉は使っていない。小選挙区で勝つためには労組だけにこだわっていては勝てないとの趣旨での発言だった。今まで通りの応援があることを前提であり、不愉快な思いを与えていたとしたら率直にお詫び申し上げたい」と謝罪の言葉が示されました。また、前原国交相は訪中直前に「中国脅威論」という発言を行ない、期待していた中国側の要人と会談できなくなる結果を招いた時もありました。
前原国交相は「中国の軍事力を脅威」と言っただけで、軽率な発言ではなく、信念に基づいたものだと弁明されていました。今回、八ッ場ダム建設中止の問題に際しても、なぜ、地元との話し合いの前に「撤回はあり得ない」と言い切ってしまったのでしょうか。建設中止を反対する住民からすれば、「結論ありき」の態度では意見交換会が単なる「アリバイ作り」だと見えてしまうのも仕方ないことです。
結局のところ地元の同意がない限り、強行しないと表明できるのならば、「マニフェストに掲げた民主党の方針は建設中止だが、地元の皆さんにもご理解いただけるよう充分話し合っていきたい」と述べるだけで良かったのではないでしょうか。前原国交相が非常に誠実で正直な人物であることは間違いありません。ただ発する言葉の重みをもう少し慎重に考え、相手側がどのように受けとめるのか、想像できるようになってほしいものと願っています。
話が横道にそれ、いつものことながら長い記事となって恐縮です。これからも機会があれば当ブログの中で、民主党に対する要望などを綴っていこうと考えています。合わせて今後も、必要に応じて民主党への不満や注文について、自治労や連合を通し、もしくは地元選出の代議士や都議会議員に対して直接訴えていくつもりです。
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