ネガキャンの中の自治労
このブログは土日に時間を作って、週に1回新規記事を投稿しています。土日ともに日程が詰まっている時などは、平日夜の時間を使いながら新たな記事を書き進める場合もあります。それでも投稿するのは土日に行ない、週末更新という間隔を定着させています。そのようなサイクルがあるため、閲覧いただく人の数は月曜以降が段違いに多くなります。
今回、歴史的な総選挙戦の結果を見届けてから更新しようとも考えていました。つまり投稿のタイミングを日曜の夜とするもので、一昨年の記事「参院選、民主党大躍進」がそのパターンでした。しかし、前回記事「総選挙戦、真っ只中」のコメント欄の中で、自民党のネガティブキャンペーンの中に取り上げられた自治労の話題となり、その誤解や先入観を少しでも解消するためにも土曜日のうちに投稿する意義を感じ始めました。
とは言え、先ほど述べたとおり今回の記事をご覧いただいている人は、衆院選後に訪れている方々が大半だろうと思っています。したがって、その点も踏まながら月曜以降、著しく鮮度が落ちた記事とならないように留意していくつもりです。新たな政権の枠組み中でも問われていく自治労と民主党との関係性について、事実に基づいて論評されていくことが重要であり、そのための参考材料の一つとなれるような内容を綴っていこうと考えています。
さて、前回の記事の冒頭で、300議席を超す民主党の圧勝が各マスコミの世論調査から示されていることを書きました。残された1週間で劇的に情勢が変わる場合もありましたが、投票日前日まで民主党はその勢いを保っているようです。バンドワゴン効果とアンダードッグ効果という言葉を耳にします。バンドワゴンとは行列の先頭の楽隊車のことであり、先行者に同調する傾向が強まる効果を指します。勝ち馬に乗るという言葉と同じ意味合いとなります。
アンダードッグとは負け犬のことであり、劣勢だった側を応援する傾向が出てくる効果を指します。判官びいきという意味合いと同じです。「自分が投票しなくても勝てそう」「あまり勝たせすぎてもいけない」「死票は投じたくない」など、事前の選挙予想は有権者の判断へ様々な影響を与えます。また、候補者やその陣営に対しても、楽勝予想はラストスパートの緩みとなり、苦戦予想は必死の巻き返しにつながる場合がありました。
このように1週間前の予想数字は両極端なアナウンス効果を生み出すため、投票箱のフタが閉じられるまで勝負の行方は分からないとも言われています。しかしながら最近は期日前投票と当日の出口調査などをもとに、そのフタが閉じられた瞬間、日曜午後8時に当確が出るケースも少なくありません。いずれにしても今回は、バンドワゴン効果の傾向が強まっているように感じています。
このような情勢に強い危機感を持った自民党は、なりふり構わないネガティブキャンペーンに打って出ています。その一つである「知ってビックリ民主党 これが実態だ!! 労働組合が日本を侵略する日」というビラを知って本当にビックリしました。いわゆる差出人を隠した怪文書の類いではなく、「このパンフレットは、政党の自由な政治活動であって、選挙期間中でも、自由に配布できます」と書かれ、自民党からの発信が明らかにされています。しかも自民党の公式ホームページには、そのビラも含めてネガキャンの宣伝広告などがズラリと並べられています。
現政権与党であり、半世紀にわたって衆院で第1党の座を占めてきた政党として、あまりにも残念な姿です。一方で、自民党の広報責任者をはじめ、自民党幹部が記載内容すべてを事実だと思い込んでいるとしたら、それはそれで非常に恐ろしいことです。事実誤認だった場合、情報収集や分析能力が欠けた政党となり、意図的な歪曲だった場合、品格のない政党だと言わざるを得ません。今回の記事で、そのビラを手にしていない方々にも分かるような記述に努めながら、書かれている内容の誤りなどを指摘させていただきます。
まず大前提となる立場性ですが、前回の記事で首長が公務員と政治家の立場という2面性があることを書きました。同様に私たちも地方公務員と組合員という立場の2面性の中で、様々な活動に取り組んでいます。当然、職務とそれらの活動領域の線引きは明確にわきまえています。他の産別である日教組のことについては、あまり踏み込んだ物言いはできませんが、基本的な考え方は同じだと思っています。それでも自治労に所属する一組合の役員という立場であるため、やはり自治労の問題に絞っての論評となることをご容赦ください。
続いて自民党のビラの中で、「いまだに革命や闘争という言葉を使うような労働組合」との表現がありました。春季闘争など確かに「闘争」という言葉は頻繁に使っていますが、だから何なのでしょうか、というレベルの慣用句にすぎません。一方、「革命」という言葉は公式の場で、まったく見たことも聞いたこともありません。100万人近くいる組合員の中には「革命」という言葉を好んで使う人たちがいるかも知れません。しかし、そのごく少数の組合員の言葉をもって、自治労そのものを危ない団体のように印象操作しようとするのは論外な話です。
次に労働基本権を公務員に認めると「出来レースの労使交渉」となると書かれています。組合の交渉相手となる大臣は、労働組合に支持されているからだという説明です。労働組合の意向に従う政党が交渉した結果は、談合まがいの国民の意識とかけ離れた公務員優遇の結論しか出ないと決め付けています。このような自民党の主張が最も事実とかけ離れた「買いかぶり」だと言えます。
「歳入庁」新設も社会保険庁の組合員を守るためという理屈をつけ、地方分権の推進によって国家公務員が地方へ移る案も労働組合の勢力拡大を狙ったものであると書いています。その結果、地方議員はもちろん、知事や市長まで労働組合の息のかかった人たちに占領されてしまうと訴えています。そして、そのビラの最後には「労働組合が自分たちの思惑通りに活動するためのクーデター計画といえます」という言葉で結んでいます。
確かに連合は民主党の有力な支持団体ですので、日頃から意見交換する場があり、課題によっては緊密な連携をはかれることも間違いありません。その連合の中で、自治労は最大の組合員数を擁する産別ですので、一定の発言力があることも事実です。しかし、あくまでも支持団体の一つにすぎず、民主党のマニフェスト全体に影響を与えるほどの存在感がある訳ではありません。逆にもっと民主党に対して、自治労本部は物申して欲しいという現場の声が上がっているほどです。
したがって、この衆院選における民主党の政策が労働組合の影響のもとに作られ、さらに日本を侵略するためのものであるという自民党の説は驚くべき「妄想」にすぎません。しかしながら、このようなビラを公然と配布している自民党の「責任力」とは何なのでしょうか。とにかく事実に基づかないネガキャンは信頼を失っていくだけであり、そのような「想像力」さえも働かなくなってしまっているようです。ビラの表紙にある「民主党にだまされるな!」という言葉は、そのまま「自民党にだまされるな!」として返さなければなりません。
最後に、自治労の定期大会が昨日まで熊本市で開かれていました。議案すべてが可決されていますが、政党との関係を位置付ける基本的な考え方として「政党と労働組合との関係は運命共同体的なものではなく、労働組合は、あくまでも勤労者の生活向上のための政策実現を求め政治に向き合うことが重要である」と記されています。なお、この大会をもって岡部謙治委員長が退任され、徳永秀昭書記次長が新委員長に選出されました。退任された役員の皆さん、たいへんお疲れ様でした。新たに重責を担う役員の皆さん、頑張ってください。
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