« 2009年6月 | トップページ | 2009年8月 »

2009年7月26日 (日)

徴税吏員としての職務

2年前の4月に市民課から今の職場、納税課へ異動しました。市民課では管理係に所属し、住民基本台帳の実態調査や人口統計事務などを担当していました。納税課では収納係に配置され、滞納整理事務に従事するようになっています。これまで当ブログの記事を通し、税金に関する題材をいくつか扱ってきました。

それぞれ自分の担当している仕事の話にも触れていますが、主題は税源移譲やガソリン税の暫定税率の問題などにつながっていました。そのような構成となっている理由として、まずローカルな話題に終始した記事を不特定多数の皆さんに発信する意味合いの薄さを考えています。また、ブログでの身近な事例の取り上げ方には、よりいっそう細心の注意が必要とされる点なども留意してきました。

加えて、税務の知識や実務について熟練できるよう日々励んでいるつもりですが、3年目に入っても「新たな発見」に遭遇する場合が珍しくありません。収納業務の奥深さの証とも言えますが、自分自身の勉強不足の露呈であることも否めません。したがって、その程度のスキルの者がブログで具体的な仕事の話について、掘り下げていくことの気恥ずかしさがありました。

とは言え、決して担当業務に対して「半人前」という訳ではありません。前回記事(「スーパー公務員」になれなくても)のコメント欄で、のん気な野良猫さんとイチ公務員さんが交わされていた議論の答えにつながるのかも知れませんので、この点については後ほど改めて説明させていただきます。いずれにしても前回までの記事内容の流れを踏まえ、今回、久しぶりに自分自身が担っている納税課の仕事を題材として取り上げてみました。

私の仕事は徴税吏員として、税金の滞納整理事務を担当しています。納税者が納期限までに地方税を納付しない時、①督促状や催告書等による納税の催告、②差押や交付要求等の滞納処分、③徴収猶予等の納税の緩和措置を行ないながら滞納金を徴収して完結するか、不良債権として滞納処分を停止して徴収権を消滅させる、以上が徴税吏員の主な職務内容です。

滞納処分とは、地方団体等が自力執行権に基づいて行なう租税債権の強制的実現手続きを総称したもので、国税徴収法に規定されている処分です。具体的には預金や不動産などの差押が滞納処分にあたります。徴税吏員は滞納処分に関する職務権限が与えられた者であり、地方公務員一般の守秘義務違反より重い罰則が地方税法によって課せられています。

このように公権力を行使する象徴的な職務に際しても、人事異動した日から職員は新たな仕事で「一人前」の役割を求められます。納税課に限らず、このような位置付けは全庁的なものであり、新入職員であっても「研修中」というような名札を付ける扱いはありません。そのため、事務引継ぎや研修のあり方など配属先によって濃淡がありますが、どこの職場でも新たに配置された職員の経験不足は専ら先輩職員が補うことになります。

のん気な野良猫さんから「2,3ヶ月で一人前になれるとしたら、一人前の水準が低いか、仕事のレベルが低いかのどちらかでしょうね」との投げかけがありました。配属初日から「一人前」を求められるという話は、もっと驚かれるかも知れません。要するに初めて担う仕事ばかりだったとしても、周囲からのフォローを受け、そつなく自分の仕事を遂行しなければならない点を強調しています。

この場合の「一人前」の水準は、新任職員と先輩職員とでは小学生と大学生以上の差があるのかも知れません。だからと言って「仕事のレベル」が担当する職員によって変動する訳ではなく、つまり徴税吏員の職務の重さが人によって変わるものではありません。その仕事の法的な背景を深く理解して担っているのか、慣れれば30分で終わる分量を1時間以上かけてしまうのか、そのようなレベルの差は経験を積むことで埋めていくことになります。

このように書いてきて、うまく説明できているかどうか自信がありませんので、今回の記事の題材とした私の職場の具体例を示しながら補強させていただきます。人事異動の内示が1週間前にあり、発令までの間に前任者と事務引継ぎを行ないました。納税課収納係の仕事はペア制が採用されています。したがって、私とペアを組む先輩職員も同席し、継続している個別案件の説明を受けました。

まったく税務は未経験であり、初めて聞く専門用語が飛び交う中、前任者の説明を半分も理解できていなかったかも知れません。それでもペア制という安心感に救われていたことは確かであり、前任者も私より先輩職員への説明を重視していたようでした。配属後も基本的にマンツーマンで実務のフォローを受けられるのが私の職場の特色でした。全庁的には、このような完全なペア制は稀ですが、前述したとおり新任職員は同じ係の先輩職員から仕事を教わっていくのが通例でした。

そのようなフォローができない少人数職場では、事務マニュマルが整えられているはずであり、それでも分からない時は異動先の前任者に尋ねることになります。ペア制が採られている納税課は新任職員にとって恵まれた職場ですが、一方で体系的な実務マニュアルの不足が気になっています。つまり実務面は先輩職員のきめ細かい手助けがあり、それほど体系的なマニュアルが必要とされていない職場でした。

それぞれの実務においてマニュアルはあるのですが、散在しているため、「これ1冊あれば実務の遂行は完璧」というようには整えられていません。その一方で、書籍となった滞納整理事務に対する手引や参考書は多数あり、研修を受ける機会も数多くある職場だと言えます。配属初日に課長や係長らから受ける課内研修から始まり、東京税務協会や市町村研修所が行なう初任者研修など、税務のスキルを高めるための機会は体系化されています。

ここで、少し切り口を変えた説明を加えていきます。私ども徴税吏員の仕事の目的は、本来徴収すべき市の債権を少しでも多く回収し、厳しい財政状況に寄与することが一つです。しかし、より重要な使命は、圧倒多数である納税者の皆さんとの公平性を保つことだと言われています。例え千円の滞納だったとしても、納付している人たちとの公平性の観点から未納は認めない姿勢が求められています。

徴税吏員の仕事の第一歩は滞納者に催告し、納めていただくというシンプルなものです。その催告書を郵送するという仕事は、配属初日の職員でも「一人前」にこなせる類いのものです。ただし、単純な仕事だと気を抜くことはできません。送付する書類の中に誤って別な人の市税明細書などを入れてしまったら一大事です。どこの職場でも同様であり、言うまでもありませんが、単純作業であっても常に細心の注意を払わなければならない仕事ばかりです。

徴税吏員の職務は先ほどお伝えしましたが、催告から始まり、滞納処分や執行停止に向けた財産調査などに進んでいきます。その際、実務経験や研修を重ねることで、多種多様なアプローチの仕方や工夫をはかれるようになり、収納率の向上という結果につながっていきます。滞納者のリストを前にして、次に何を行なうべきか、その引き出しの数の差が経験の差と比例するものと思っています。

自分の仕事について書き進めると、取り留めもなく長くなりそうです。さらに「一人前」論議に対する明確な答えにつながっていないことも反省しなければなりません。それでも前回記事を踏まえたまとめとしては、「スーパー公務員」になれなくても徴税吏員としての職務に対して今後も全力を注ぎ、「ばかもの」と言われるようなスキルアップに努めていく決意を新たにしています。

最後に、この仕事は結果が数字に表われるシビアさもあります。徴税吏員の努力だけではどうにもならない要因もつきまといますが、徴税吏員の努力で数字が動くことも確かです。異動して来た初年度、収納率97.4%は東京三多摩地区で第1位となりました。2年目となる昨年度は97.0%と率を落としましたが、2年連続で第1位を確保しました。組織全体で達成した結果であり、その一員であることを正直誇らしく受けとめています。

| | コメント (19) | トラックバック (0)

2009年7月18日 (土)

「スーパー公務員」になれなくても

「スーパー公務員」という言葉をGoogleで検索すると、スーパー公務員塾やスーパー公務員フォーラムなどのサイトが上位に並びました。「スーパー公務員とは?」と検索しても結果は変わらず、期待したウィキペディアなど用語を解説したサイトは見つかりませんでした。念のため、電子辞書でも調べましたが、やはり見当たりません。最近、よく耳にするようになった言葉ですが、まだまだ明確に定義付けられていない業界用語であるのかも知れません。

それでも塾生を募集したホームページの記事などから「スーパー公務員」について、次のような条件や資質が求められていることを感じ取りました。あるサイトの記事の中に「これまでの公務員のイメージを打ち破る方で、現場ありき・ニーズ重視の視点と、特区などでは100地域を回って、その狙いと仕組みを膝詰めで地域の人たちと話をするなど24時間365日、無休で走り回る!?新しい公務員の方です」という説明がありました。

さらに公務員に限らず、「公」に関わる仕事をする人には志・行動・情熱を持って、自分の周囲から行動を起こして変化させていく、そのように期待する言葉も掲げられていました。365日無休で走り回るという話は意識の問題を問うものでしょうが、このレベルで活動している公務員は正直なところ決して多くありません。だからこそ「スーパー」と呼ばれるのですが、その呼び名にふさわしい公務員の活動ぶりがNHKの番組で紹介されていました。

今年5月19日に放送されたドキュメンタリー番組『プロフェッショナル仕事の流儀』の中で、小樽市の職員だった木村俊昭さんのバイタリティーあふれる姿が映し出されました。木村さんは1960年に北海道で生まれ、1984年に小樽市役所へ入りました。その職員だった時代、歴史的建造物を活用した全国初のライトアップ、東京から老舗ガラス工房を誘致して「ガラスの街・小樽」としてのブランド化などを成功させていました。

このような街おこしの手腕を買われ、2006年に内閣官房の企画官に出向、つまり国からヘッドハンティングされた自治体職員でした。地域活性化に関する政策、地域再生制度事前・事後評価、地域と大学との連携講座「地域活性化システム論」の開講などを担当し、2009年4月からは農林水産省大臣官房政策課企画官へ転任しています。土日には全国各地で講演活動を重ね、地域活性化の伝道師とも呼ばれ、北陸先端科学技術大学院大学非常勤講師や地域活性学会理事も務められている「スーパー公務員」でした。

木村さんの話は機会を見て、このブログでも取り上げようと思い、自分のテレビに録画保存していました。その回のタイトルは「“ばかもの”が、うねりを起こす」というものでした。「ばかもの」とは、あふれるほどの情熱と行動力を持ち、一度信じたら最後までがむしゃらに突き進む人のことであると解説されています。普通は「どうせ無理だろう」と周囲から冷ややかに見られていても、わずかな可能性を信じて挑戦する、そのがむしゃらな姿が次第に人々の心を動かし、協力者を増やし、うねりを起こす場合がありました。

木村さんは小樽市職員時代、その「ばかもの」ぶりで、職場の仲間や市民の皆さんを巻き込み、様々な街おこしの成果を上げてきました。木村さんの「ばかもの」伝説の一つとして、小樽市で開く世界職人学会へマイクロソフト社のビル・ゲイツ会長を呼んだエピソードが紹介されていました。結局、本人は「どうしても都合がつかない」との返事だったようですが、それでも副社長が代理で参加されたとのことです。

木村さんは国の企画官になってから地域再生の知恵袋として、全国を飛び回り、街おこしの相談に乗っています。その際、最も大切にしていることは、地域の人たちを「その気にさせる」ことだそうです。あくまでも地域再生の主役は地元の人たちであり、「動き出せば、何かが変わる」と信じ、小さなことでも行動を起こすことの大事さを訴えています。木村さんは「よそもの」の目で、地元の人たちが気付いていない魅力や可能性を指摘します。地元の人にとっては、身近なだけに価値を見出せずにいることが意外に多いのだそうです。

「魅力は、あなたたちの中にある」という最も伝えたいメッセージを携え、全国各地に「ばかもの」を生み出すため、来る日も来る日も人に会い続けている木村さんの熱い姿が強く印象に残るドキュメンタリーでした。木村さんは、なるべく人に直接会うことを心がけています。言葉だけではなく、体全体で相手にメッセージを伝えられるからだそうです。1年間で4000に及ぶ人と名刺交換し、地域再生の種をまき続ける木村さんは「人と会うことが好きでなければ、公務員は出来ない」と述べられていました。

岡山県真庭市を訪れた際、木村さんに付き添った35歳の男性職員へアドバイスした言葉も印象的でした。「目先の事務に追い回されて、精神的にも時間的にも(街おこしを)考える余裕がない」と悩みを打ち明ける男性職員に対し、「出来るんだろうか、出来ないんだろうかと考えるのではなく、実際これをやらなきゃいけないとしたら、どうしたらやれるのかと考えていかないと、出来ない理由ばかり考え、プラスではない」と諭されていました。

わずか2日間でしたが、木村さんに随行した男性職員の意識が確実に変化したことも番組の最後に描かれていました。木村さんの訪問から2か月後、その男性職員は仕事の合間を縫って街づくりのヒントを得るため、知り合いを訪ね回るようになっていました。現場の声を聞きながら自分なりに何が出来るのかを考えていく、「ばかもの」への道を一歩踏み出した姿が映し出されていました。

公務員のすべてが木村さんのような「スーパー公務員」にはなれないものと思います。しかし、「スーパー公務員」に実際にはなれなくても、なろうとする意識や、街づくりなどに対して出来ない理由を探さない「ばかもの」にはなれるはずです。一方、公務員の仕事は千差万別で、独創的な力を発揮できない、ほぼルーチンワークである、木村さんのような人は特別であるとの思いを抱く方々も少なくないのかも知れません。

これまで「公務員のためいき」を続けてくる中で、「公務員の待遇は、このような法的な位置付けで成り立っています」と説明する場面が数多くありました。しかし、公務員を批判的な視点でとらえている人たちに対し、それらは説得力を持つ言葉になり得ないことを痛感してきました。つまりイチロー選手に数十億円の年俸が支払われても「高すぎる」と批判する人はいません。

「同様に」と言ってしまったらイチロー選手やそのファンに怒られるのかも知れませんが、公務員の賃金なども同じように考えています。やはり公務員一人ひとりが自分の仕事を見つめ直し、どのように住民の皆さんに役立っているのか、必要なのか、より付加価値を高められるのか、様々な切り口から検証し、実践していく姿勢が重要な点であることを感じています。そして、このような努力を重ねることによって、いっそう住民の皆さんからの信頼を高めていけることが最も大事な道筋だろうと認識しています。

その上で、配置されている職場や職種を問わず、公務員全員が心がけるべき点として次のような内容を思い描いています。まず自分の仕事の意義や位置付けを常に意識すること、よりいっそう法令等に熟知し、公平公正さや丁寧な説明責任を全うできること、出来る限り担当外の業務内容も熟知し、きめ細かく総合的なサービスの提供ができること、勤務時間外でも公務員であることの自覚を持ち続けることなど、当たり前なようなところから職員全員の力量や意識を高めることが重要であるもの思っています。

例えば、保育園や児童館の職員が児童虐待の気配をいち早く察知し、素早く行政としての対応がはかれることや、徴税吏員が納税相談を行なう中で、多重債務の整理や生活保護への相談を紹介するような複合的な視点について、よりいっそう高めたいものと考えています。つまり自分の守備範囲を決めるような縦割りの発想を取り外し、良い意味の「お節介」をやくことの大事さを感じています。

木村さんを取り上げた番組内容の紹介も重視したため、自分自身の足元に引き付けた具体例を多くは語れませんでした。このようなテーマは今後も続けるつもりですので、長い目で見たお付き合いをよろしくお願いします。最後に繰り返しとなりますが、「スーパー公務員」にまではなれなくても、前述したようなレベルには公務員すべてが到達できるはずです。私自身がどうなのか問われないように今後も努力していくことになりますが、最低限、そのような心構えは持ち続けていくつもりです。

| | コメント (40) | トラックバック (2)

2009年7月12日 (日)

公務員批判への「答え」は? Part2

それほど蒸し暑くもない好天の日曜、前回記事の冒頭でお伝えしましたが、全国的にも大きな注目を集めている東京都議会議員選挙の投票日を迎えています。先ほど投票所となっている近くの小学校へ出向き、自分なりの思いを託した1票を投じてきました。以前は投票事務に毎回従事していましたが、最近は投票所に足を運ぶ程度で、のんびりできる日曜日を過ごさせていただいています。即日開票が定着し、ますます長い1日となっていますが、選挙事務に従事されている皆さん、たいへんお疲れ様です。

さて、週1回の投稿間隔ですので、書きたい内容に困ることはありません。その一方で、記事本文のタイトルを決めるのに手間取る時が少なくありません。したがって、書き終えてから決める場合や最初に考えたタイトルと本文の内容が合わなくなり、後から変更する場合もありました。最もスピーディーな決め方は前回のタイトルに「Part2」を付けることでした。今回もその手法を取らせていただきますが、どこまで正解に近付く「答え」となるのかどうかは、やはり読み手の皆さんそれぞれの判断に委ねられるのだろうと思っています。

前回の記事に寄せられたコメントのご意見などを受けとめ、いろいろ考えを巡らしています。批判の背景となる論点として、公務員は特権に守られている、民間会社の厳しい実態とかけ離れた待遇である、その待遇に見合った仕事をしていない、このような言葉が投げかけられがちです。前回、記した内容の焼き直しのような話も出てくるかも知れませんが、改めて自分なりの「答え」を探してみます。

まず特権があるようなご指摘ですが、公務員という特殊性を考慮し、様々な面で区分けがあることも確かです。しかし、特権と言われるようなプラス面ばかりではなく、公務員側に厳しい制約を課している場合も少なくありません。その上で、特権的な見られ方の代表例として、「公務員はクビにならない」という話があります。この点について、前回の記事で労働者の「クビ」が簡単に切られるようになっては問題であることを申し上げ、整理解雇に対する4要件を紹介しました。

その4要件とは、①会社を維持するために人員整理を行なう経営上の必要性があること、②解雇を避けるための努力がなされていること、③解雇をされる人間の選定基準が妥当であること、④事前に従業員側に対して充分な事情説明があることとされ、解雇を避けるために役員報酬のカットや希望退職の募集などの措置が求められています。また、事前に労働組合や従業員代表と充分な協議が欠かせず、使用者側は従業員側に対して整理解雇について説明し、納得を得られるように努力しなければなりません。

地方公務員法第27条には、法律で定める事由による場合でなければ、職員の意に反して処分できないと書かれています。このあたりが公務員の身分保障、つまり「クビは切られない」という見方につながっているようです。しかしながら一方で、第28条では「勤務実績が良くない場合」など免職することもできると明記されています。即ち現行法上でも勤務成績不良者に対する「クビ」はあり得るという話ですが、あっしまったさん!が前回記事のコメント欄で詳しく解説くださった論点でした。

あっしまったさん!は、さらに「私見ながら、どうも有権者の公務員叩きは、クビにならないという根拠のない神話を前提にして論じられている傾向があるとも感じています」と述べられていました。現実的には前回記事で紹介した鳥取県のような例がニュースになるほどですので、成績不良の公務員が「クビ」になることは稀なのだろうと思っています。ここで押さえる必要がある点として、民間会社でも公務員も成績不良者が「クビ」になることはあり得ても、簡単に労働者の「クビ」は切れないという問題です。

このように考えを巡らしていくと、公務員批判の背景となりがちな法的な区分けなどは可能な限り撤廃し、同じ土俵に立つことが望ましい方向性であるものと感じてきました。とりわけ公務員の特権のように見られている「身分保障」の規定などは見直し、同時に労働基本権を完全に回復するなど、相互不信につながるような「壁」を取り払うことによって「公務員は…」という批判が少なくなるのでしたら幸なことです。

さらに労働基本権制約の代償措置だった人事院勧告もなくなるため、批判を受けがちな調査対象「事業所規模50人以上」という問題も解消されることになります。新たな賃金決定システムが確立されるまで試行錯誤も続くのかも知れませんが、地方公務員法を全面的に見直さない限り「均衡の原則」などは残る可能性もあります。いずれにしても地域住民の皆さんから、よりいっそうの信頼を得るためには、ますます情報公開や説明責任が欠かせなくなるはずです。

そして、住民の皆さんとの信頼関係を高めるため、最も重要な点は「待遇に見合った仕事ぶり」の実践とそのアピールだと考えています。地方公務員法第15条で「職員の任用は、この法律に定めるところにより、受験成績、勤務成績その他の能力の実証に基づいて行なわなければならない」とされています。つまり公務員試験に合格した時点で、その能力が認められた制度設計であると言えます。

試験に合格するまで懸命に努力し、入所してから気を抜くような職員は少ないはずです。それでも公務員というスタートラインに立つことによって、生涯「安定した待遇」が保障されることに厳しい目も注がれ始めていることを敏感に受けとめなければなりません。ただ仕事ぶりの公務員批判の声は「木を見て、森を語られる」傾向があります。数百万人の中で、一部の公務員の働きぶりを見て、公務員全体を論じられがちです。しかし、それはそれで仕方ない話であり、自分のできること、できる範囲内で頑張っていく決意を新たにしています。

最後に、先日参加した自治労都本部組織集会の中で、印象に残った言葉をご紹介します。自治労都本部の顧問弁護士である西畠正先生の「自治労組合員へのメッセージ」と題した記念講演があり、「自治労は権利闘争を重視してきたが、もっと仕事の中味を見直す運動にも力を注いで欲しい」という提起が強く心に刻まれています。今後、このブログを通し、これまで以上に「仕事の中味」を問いかける記事も綴っていければと考えています。

| | コメント (35) | トラックバック (0)

2009年7月 5日 (日)

公務員批判への「答え」は?

金曜日、東京都議会議員選挙が告示されました。総選挙の前哨戦として位置付けられ、各党の党首クラスが初日から街頭で応援演説を繰り広げています。都議選の結果が今後の国政の行方に大きく影響を及ぼす見方はその通りだと思いますが、東京都独自の課題の是非を問う自治体選挙の性格がかすむようでは本末転倒なことです。

2週間前の土曜日に開かれた自治労都本部の組織集会の中で、都議会民主党幹部の方からお話を伺う機会がありました。一番印象に残った点は、やはり石原都知事の非常に強い影響力や権限の問題でした。1000億円を投入し、開業した新銀行東京ですが、事実上経営破綻しました。都知事の発案で始まった事業であり、その面子からも撤退することができず、400億円の追加出資まで行なわれています。

そもそも都が銀行経営に乗り出すことに周囲は皆、懐疑的に見ていたようです。その民主党幹部の方は、中小零細企業への都独自な支援策の必要性を認めながらも、補助制度の充実など直営ではない別な方策が適切であると訴えていたそうです。しかし、都知事の個人的な「大銀行への対抗心」などが強かったこともあり、都民から圧倒的な支持で選ばれている首長の意向が最終的な結論となることは当然の帰結でした。

その都知事を支えているのが都議会で過半数を占めている自民党と公明党の会派でした。強烈な個性でワンマンとなりがちな都知事に対し、適確なチェック機能を果たすためにも都議会勢力図の塗り替えの必要性を感じていました。したがって、そのような意味合いも含め、来週日曜日の都議選での貴重な一票の投じ先を判断すべきものと考えています。

阿久根市の竹原市長の話題から最近、このブログを訪れてくださっている人たちにとって、唐突、もしくは「空気が読めない」出足の文章が続いているのかも知れません。常連の人たちは慣れていただいているものと思いますが、これまで時事の話題や幅広い組合活動の領域をフォローする内容を綴ってきました。そのため今回、きわめて重要な都議選の話題は外せず、前置き的な話として取り上げさせていただきました。

ただし、単なる時事の話題ではなく、竹原市長の手法や発想に一石投じる伏線でもありました。つまり住民から選ばれた首長の判断は最大限尊重されるべきものと思いますが、誤った判断を下そうとした場合、議会などを通してチェックできる機能も民主主義の健全な姿だろうと受けとめています。8449票の支持を得て再選された竹原市長の主張の大半は正しいのかも知れません。しかし、すべて正しいのかどうか、7887票集まった反対する声にも謙虚に耳を傾ける姿勢も大事なのではないでしょうか。

私自身、常々意識していることですが、「答え」を一つと決め付けない心構えの大切さがあります。自分自身の「答え」が唯一絶対的な正解だと決め付けてしまった場合、その「答え」と異なる考え方の人の主張する言葉に耳を傾けづらくなる恐れがあります。竹原市長に関してはネット上からの情報で判断していますが、自分の考えが絶対正しいと思い込むタイプなように見受けられ、石原都知事と相通ずるものを感じ取っています。

言うまでもありませんが、YESかNOかを明確に示し、調整型ではない強力なリーダーシップを発揮する政治家に人気が集まる傾向も充分承知しています。そのため、石原都知事や竹原市長の手法を批判することが、多くの人たちから批判を受けることも覚悟しています。それでも私自身のとらえ方であって、あくまでも受けとめ方は個々人それぞれのものであり、これこそ「答え」は一つではないものと思っています。

一方で、自分自身の「答え」に自信を持ち、その「答え」が他の人にも理解を得られるよう熱く語ることに疑問を呈するものではありません。より正解に近い「答え」をめざし、様々な視点や立場から率直な議論を交わす大切さも強く認識しています。前回の記事(ネット議論への雑感)でも書きましたが、公務員やその組合に対してネガティブな印象を持たれている方々との「溝」を埋める言葉は簡単に見つからないかも知れません。それでも言葉にして、公務員側の言い分を発信し続けない限り、その「溝」が埋まることもあり得ません。

今回の記事では公務員に対する批判の声を受けとめ、これまで「公務員のためいき」で綴ってきた以前の記事内容を紹介しながら私自身の考え方を示させていただきます。なお、このブログは個人の責任で運営している点を改めて強調しなければなりません。当たり前な話ですが、公務員や自治労全体を代表しているものではなく、一定の前提や制約があることをご理解ください。⇒参考記事“「襟を正す」記載の難しさ”“是々非々の議論

公務員の年収は高すぎる?

阿久根市では地域実情と比べ、その市の職員の年収は高すぎるという批判の声が高まっています。竹原市長の主張は「阿久根市の実態に合わせるべき」というものでした。しかし、公務員の賃金は国や他の自治体職員との均衡をはかるように求められています。その公務員賃金の相場そのものも労働基本権制約の代償機能である人事院が年に1回、同種同等の原則を踏まえ、企業規模50人以上かつ事業所規模50人以上の民間会社の実態を調査して決まっています。⇒参考記事“ブログで有名な阿久根市長”“公務員賃金の決められ方

もともと地方公務員の賃金水準は全国画一ではなく、ある程度地場の相場に応じた差がありました。さらに最高18%までの地域手当によって、都市部と地方との実情の差を埋めるような仕組みが取り入れられています。それでも阿久根市のような官民格差が指摘される理由として、年齢給が強く反映された制度設計も一因だと言えます。若手職員の年収は300万円前後ですが、どこの自治体も職員数を抑制するため、新規採用を手控えている状況があります。その結果、職員の平均年齢が高くなり、必然的に年収の平均も高くなる傾向をたどっています。

宝島』8月号の特集「99%の公務員は貧乏だ!」という記事の中で、「『公務員は恵まれている』というのは、ある意味正しく、ある意味誤解です。特に、年齢層の違いによる待遇格差は大きい」「35歳・キャリア組の課長補佐にしても、民間の大手企業と比べればけっして高額ではありません」などと記されています。その他、様々なデータや取材記事が掲げられていましたが、一口で「公務員は…」と言い切れないことを実証している内容だったものと思います。

公務員の年収について、結局、どこと比べるのかによって高低の評価は分かれます。『会社四季報』をめくれば、テレビ局従業員の平均年収は1300万円台が並んでいます。上があり、下があって平均というモノサシとなります。なお、これまで「なぜ、人事院は50人未満の企業も調査対象としないのか」という問いかけを数多く聞いてきました。もっと極端な「公務員は安定しているのだから民間の平均以下でいいのでは」という言い方も示されていました。

クビにならないという安定分を収入から引くべき?

まず公務員は「クビにならない」という見方がありますが、確かに整理解雇の対象とはなりません。しかし、民間でも整理解雇するためには4要件があり、労働者のクビは簡単に切れるものではありません。ちなみに雇用調整を行ないやすくしたのが労働者派遣法の対象拡大であり、そのことが昨年末から大きく取り沙汰されている「派遣切り」の問題につながっています。

一方で、公務員は法令遵守の率先垂範が義務付けられ、ひとたび違反した際、民間の人より厳しく処分されるようになっています。例えば飲酒運転などによる厳罰化が顕著であり、身から出たサビで仕方ないことですが、その面では民間の人より一般的に公務員のクビは切られやすくなっています。また、マスコミによる事件の注目度も高くなり、社会的な制裁の受け方も厳しくなっているようです。

もっと収入を得たいと思っても公務員はアルバイトができません。兼業が法律で禁止されています。それは職務に専念する義務があるからです。つまり夜間のアルバイトをして、昼間の公務に支障が出ることが絶対許されないからです。その代わり余程ぜいたくをしない限り、生活に困らない賃金が保障されていると言われています。なお、多くの民間会社も就業規則によって兼業は禁止されているようですが、自社の仕事に専念させる趣旨などは同様だろうと思います。⇒参考記事“「公務員はいいね」に一言

身分保障があって、賃金水準がほぼ横並びだから「働かない公務員が多い」と批判されがちです。しかしながら鳥取県では、2年連続で勤務成績が最低ランクだった職員に自主的な退職を求めるような時代に変わろうとしています。「ローリスク・ハイリターンはおかしい」という指摘もありましたが、そのような見られ方の多さは非常に残念なことです。本来、平均である公務員賃金を引き下げようとする発想よりも、賃金水準の社会的な底上げを理想視すべきものと思っています。

賃金の引き下げは労使交渉で!

このように長々と書いてきましたが、まだまだ公務員批判に対する私なりの「答え」は不充分であり、様々な角度から反論を受けるのだろうと思います。これから述べることについても「公務員に労働組合はいらない」と思われている方々とは、かみ合わない論点となるのかも知れません。今回記事の最後に、改めて阿久根市のような例に戻ります。どうしても地域の実情などを踏まえ、賃金の引き下げを行なう場合は使用者側の目線だけで決めるのはフェアではないため、当該の労働組合と協議を尽くすべきものと考えています。

財政破綻の危機を前にしても「人件費は聖域にすべき」と言い切るものではありませんので、その必要性などを使用者側が充分説明した上で、組合との合意形成をはかる手順が求められています。その際、住民の皆さんに対する情報公開も重視すべきですが、団体交渉そのものをリアルタイムで公開するかどうかは当該の労使の判断だろうと思っています。いずれにしても住民の皆さんに「非公開」とすべき労働条件はないはずであり、その中味を厚遇と評価するのかどうかは個々の皆さんの「答え」に委ねるしかありません。⇒参考記事“公務員に組合はいらない?”“橋下知事の人件費削減案

| | コメント (37) | トラックバック (1)

« 2009年6月 | トップページ | 2009年8月 »