季節は春闘、多忙な日々
新年度に向けた公務員賃金は夏に示される人事院勧告などを踏まえ、秋以降に決まっていきます。なお、この春闘期における民間組合の交渉結果が人事院の調査に反映され、その水準比較をもとに公務員賃金の改定率が勧告されることになります。そのため、民間組合と連帯する意味合いからも、私たち公務員組合も春闘期は昔から何かと多忙な季節となっています。
1週間を振り返ると水曜の夜には、春季生活闘争を成功させる連合三多摩の集いがありました。今年の記念講演の講師は、民主党最高顧問の藤井裕久元蔵相でした。自ら「後期高齢者」と述べられていましたが、年齢を感じさせない熱弁をふるっていただきました。1993年に藤井さんが自民党を飛び出す時、恩人だった後藤田元副首相に事前にその判断を伝えたところ「君、それはいいことだ」と励ましてくれたそうです。
権力者側であった後藤田さん自身が「権力は腐敗する」との信念を持ち、すでに2大政党制の必要性を説かれていたとのことです。そのため、藤井さんらの行動を励ます言葉が出て、さらに「10年はかかるぞ」と2大政党制への道のりの険しさも予見されていたそうです。後藤田さんの指摘のとおり「ここまで来るのに15年。一緒に出た仲間の多くが我慢できず、自民党に戻っている。その1人に首相候補の女性がいる」と感慨深く藤井さんは語られていました。
藤井さんの講演内容だけで今回の記事を綴ることもできますが、翌木曜には連合地区協役員と労働相談情報センターの所長さんらとの懇談会などもあり、いろいろな話題に触れていくつもりです。その懇談会で、東京都の行政組織である労働情報センターの皆さんが日常的に様々な労働問題に傾注されていることを改めて理解し、たいへん頼もしく感じました。
かつて労政係という名称の組織が私どもの市にもありました。しかし、現在では商工振興係の中に仕事が組み入れられ、その名称は消えていました。決して労働行政を軽視している訳ではないのですが、自治体間の役割分担として所管する領域が都側に多く、そのことが背景にあるものと見ています。そのような中で、センターの皆さんが特に昨年秋以降、急激に悪化した雇用問題の相談などへ真摯に対応されている様子を伺いました。
組合側からの報告では、自動車など製造業の厳しさが浮き彫りとなっています。それぞれ本部方針は4500円の賃上げ、年間一時金5か月の要求としていますが、実際の交渉の場で経営側の反応は「組合さん、何を考えているのですか」という冷ややかなものだそうです。派遣切りの問題にとどまらず、正規社員の希望退職も募らざるを得ない情況の中で、賃金改善への難しさに苦慮されている深刻な報告が続きました。
そもそも連合本部段階での春闘要求は、昨年の夏頃から議論が始まるため、その当時と現時点では大きく雇用や経済情勢が様変わりしています。そのため、経営側からは「KY(空気が読めない)な要求」と言われがちですが、賃上げによって内需拡大をめざすことが有効な景気対策の一つであるとの連合の主張も決して間違っていないはずです。
いみじくも2月26日の読売新聞朝刊には、そのような考え方を後押しする記事が掲載されていました。経済企画庁内国調査課長や日興リサーチセンター理事長などを歴任されている経済評論家の横溝雅夫さんが寄稿した「不況下の春闘 内需主導の経済志向を」と題した解説記事で、その内容は大きくうなづけるものでした。ネット上には見当たらないようであり、特に印象深い箇所を抜粋して紹介させていただきます。
輸出依存の経済構造では、海外の状況に国内景気が大きく左右されてしまう。中長期的には、労働者の生活向上が出来る賃金を受け取れるようにし、消費など内需が主導する構造に改めることが、強く求められていると考える。そのためには、効率化、国際競争、株主主権などを「錦の御旗」として、日本の政治経済を席巻していた市場原理主義を修正することが必要となる。
競争に勝てばよい、企業のもうけは最高の価値である、労働者や下請けはそのために犠牲になってもやむをえないー。こうした考え方が主流となり、それに労組ものみ込まれていたように思えてならないのである。こうした原理で経済が動いていては、内需主導型になどなれっこないであろう。なお、市場原理主義が先進国で跳梁した結果が、今回の世界不況なのではないか。
人々の最低の生活を守り、成長の成果を多くの人が享受し、人々の温かい相互関係を壊さずに、市場経済が展開するようにしなければならない。労働組合は労働者の生活維持にとどまらず、生活の向上を図るため、もっと存在感を高めてもらいたい。企業も、過度な株主主権的なあり方を慎む必要がある。
以上が横溝さんの主張の一端ですが、このブログの最近の記事「根強い人気の小泉元首相」の中でも同様な考え方を触れてきたところでした。このような発想が当たり前な話として、社会全体に広がっていくことを強く願っています。それでも現実的な問題として、今春闘で一気にそのような展望を切り開けるかどうかは、たいへん難しい情勢であることも否めない見通しです。
続く金曜の夜には、私どもの市における労使交渉が行なわれました。賃金制度の構造を見直す提案に対し、この間、精力的に労使協議を重ねています。職員全体の賃金水準が引き下がる厳しい内容ですが、他団体との比較の中で一定の線まで受け入れざるを得ない詰めの段階を迎えています。とりまく深刻な経済情勢なども受けとめ、下がる方向性を認めていくことになりますが、やはり労働組合として「これ以上譲れない線」は毅然と反論した交渉を進めています。
この協議は週を越えて続き、他に人員配置の問題など春闘期に解決すべき労使課題が山積しています。さらに7日土曜には、明治公園で連合の中央総決起集会が開かれます。他にも10日には自治労都本部の決起集会などが控え、当分、多忙な日々が続きます。このような辛い時期ですが、ストライキ批准投票の単組における結果は、うれしいニュースでした。
今年も前年を上回る批准率となり、それも3%ほど増えました。組合員の皆さんに対し、ここ数年、厳しい後退局面を強いている中、組合執行部への信頼度をはかる一つの目安となる数字が上がることを本当に心強く思っています。また、とりまく情勢を同じような目線で認識され、執行部の判断の多くを「了」としていただいている表われだと受けとめています。
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