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2009年2月28日 (土)

季節は春闘、多忙な日々

新年度に向けた公務員賃金は夏に示される人事院勧告などを踏まえ、秋以降に決まっていきます。なお、この春闘期における民間組合の交渉結果が人事院の調査に反映され、その水準比較をもとに公務員賃金の改定率が勧告されることになります。そのため、民間組合と連帯する意味合いからも、私たち公務員組合も春闘期は昔から何かと多忙な季節となっています。

1週間を振り返ると水曜の夜には、春季生活闘争を成功させる連合三多摩の集いがありました。今年の記念講演の講師は、民主党最高顧問の藤井裕久元蔵相でした。自ら「後期高齢者」と述べられていましたが、年齢を感じさせない熱弁をふるっていただきました。1993年に藤井さんが自民党を飛び出す時、恩人だった後藤田元副首相に事前にその判断を伝えたところ「君、それはいいことだ」と励ましてくれたそうです。

権力者側であった後藤田さん自身が「権力は腐敗する」との信念を持ち、すでに2大政党制の必要性を説かれていたとのことです。そのため、藤井さんらの行動を励ます言葉が出て、さらに「10年はかかるぞ」と2大政党制への道のりの険しさも予見されていたそうです。後藤田さんの指摘のとおり「ここまで来るのに15年。一緒に出た仲間の多くが我慢できず、自民党に戻っている。その1人に首相候補の女性がいる」と感慨深く藤井さんは語られていました。

藤井さんの講演内容だけで今回の記事を綴ることもできますが、翌木曜には連合地区協役員と労働相談情報センターの所長さんらとの懇談会などもあり、いろいろな話題に触れていくつもりです。その懇談会で、東京都の行政組織である労働情報センターの皆さんが日常的に様々な労働問題に傾注されていることを改めて理解し、たいへん頼もしく感じました。

かつて労政係という名称の組織が私どもの市にもありました。しかし、現在では商工振興係の中に仕事が組み入れられ、その名称は消えていました。決して労働行政を軽視している訳ではないのですが、自治体間の役割分担として所管する領域が都側に多く、そのことが背景にあるものと見ています。そのような中で、センターの皆さんが特に昨年秋以降、急激に悪化した雇用問題の相談などへ真摯に対応されている様子を伺いました。

組合側からの報告では、自動車など製造業の厳しさが浮き彫りとなっています。それぞれ本部方針は4500円の賃上げ、年間一時金5か月の要求としていますが、実際の交渉の場で経営側の反応は「組合さん、何を考えているのですか」という冷ややかなものだそうです。派遣切りの問題にとどまらず、正規社員の希望退職も募らざるを得ない情況の中で、賃金改善への難しさに苦慮されている深刻な報告が続きました。

そもそも連合本部段階での春闘要求は、昨年の夏頃から議論が始まるため、その当時と現時点では大きく雇用や経済情勢が様変わりしています。そのため、経営側からは「KY(空気が読めない)な要求」と言われがちですが、賃上げによって内需拡大をめざすことが有効な景気対策の一つであるとの連合の主張も決して間違っていないはずです。

いみじくも2月26日の読売新聞朝刊には、そのような考え方を後押しする記事が掲載されていました。経済企画庁内国調査課長や日興リサーチセンター理事長などを歴任されている経済評論家の横溝雅夫さんが寄稿した「不況下の春闘 内需主導の経済志向を」と題した解説記事で、その内容は大きくうなづけるものでした。ネット上には見当たらないようであり、特に印象深い箇所を抜粋して紹介させていただきます。

輸出依存の経済構造では、海外の状況に国内景気が大きく左右されてしまう。中長期的には、労働者の生活向上が出来る賃金を受け取れるようにし、消費など内需が主導する構造に改めることが、強く求められていると考える。そのためには、効率化、国際競争、株主主権などを「錦の御旗」として、日本の政治経済を席巻していた市場原理主義を修正することが必要となる。

競争に勝てばよい、企業のもうけは最高の価値である、労働者や下請けはそのために犠牲になってもやむをえないー。こうした考え方が主流となり、それに労組ものみ込まれていたように思えてならないのである。こうした原理で経済が動いていては、内需主導型になどなれっこないであろう。なお、市場原理主義が先進国で跳梁した結果が、今回の世界不況なのではないか。

人々の最低の生活を守り、成長の成果を多くの人が享受し、人々の温かい相互関係を壊さずに、市場経済が展開するようにしなければならない。労働組合は労働者の生活維持にとどまらず、生活の向上を図るため、もっと存在感を高めてもらいたい。企業も、過度な株主主権的なあり方を慎む必要がある。

以上が横溝さんの主張の一端ですが、このブログの最近の記事「根強い人気の小泉元首相」の中でも同様な考え方を触れてきたところでした。このような発想が当たり前な話として、社会全体に広がっていくことを強く願っています。それでも現実的な問題として、今春闘で一気にそのような展望を切り開けるかどうかは、たいへん難しい情勢であることも否めない見通しです。

続く金曜の夜には、私どもの市における労使交渉が行なわれました。賃金制度の構造を見直す提案に対し、この間、精力的に労使協議を重ねています。職員全体の賃金水準が引き下がる厳しい内容ですが、他団体との比較の中で一定の線まで受け入れざるを得ない詰めの段階を迎えています。とりまく深刻な経済情勢なども受けとめ、下がる方向性を認めていくことになりますが、やはり労働組合として「これ以上譲れない線」は毅然と反論した交渉を進めています。

この協議は週を越えて続き、他に人員配置の問題など春闘期に解決すべき労使課題が山積しています。さらに7日土曜には、明治公園で連合の中央総決起集会が開かれます。他にも10日には自治労都本部の決起集会などが控え、当分、多忙な日々が続きます。このような辛い時期ですが、ストライキ批准投票の単組における結果は、うれしいニュースでした。

今年も前年を上回る批准率となり、それも3%ほど増えました。組合員の皆さんに対し、ここ数年、厳しい後退局面を強いている中、組合執行部への信頼度をはかる一つの目安となる数字が上がることを本当に心強く思っています。また、とりまく情勢を同じような目線で認識され、執行部の判断の多くを「了」としていただいている表われだと受けとめています。

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2009年2月21日 (土)

人事院総裁の言い分

もともと政治的な話題が嫌いな方ではないため、2週続けて小泉元首相を取り上げた記事が続きました。それぞれ本題に入る前の時事ネタとして触れるつもりが、書き込みたい内容が膨れていくため、途中で記事タイトルが変わるパターンをたどっていました。思い返せば、小泉元首相の理不尽な「郵政解散」に物申したかったことも、このブログを始めた動機の一つでした。したがって、まったく余計な話ですが、私のブログ歴は現衆議院議員1回生の在職期間とほぼ一致することになります。

さて、G7会合後の記者会見での中川昭一前大臣の醜態は本当に情けないものでした。この話題を書き進めると、また予定した記事タイトルが変わりそうですので多くは語らず、本題に入らせていただきます。一度取り上げようと考えていたのが人事院の谷公士(まさひと)総裁と政府との軋轢の問題でした。国家公務員に対する制度改革に絡む話ですが、一地方公務員の立場からも強い関心を持ちながら報道を見守っていました。

人事院の谷公士総裁は6日、時事通信のインタビューに応じ、国家公務員制度改革について「(幹部人事一元化を目的とした)改革基本法の枠内で議論を進めるべきだ」と述べ、2010年度に新設される「内閣人事・行政管理局」への人事院の機能移管に反対する姿勢を改めて強調した。

政府の国家公務員制度改革推進本部は、係員から幹部までの職員数を給与水準別に定める人事院の権限を人事・行政管理局に移管する方針を決め、法案策定作業を進めている。同総裁は、移管は審議官以上の幹部の給与決定権にとどめ、それ以下は残すよう求めた人事院の譲歩案について、「改革基本法の趣旨を踏まえれば十分合意を得られる内容のはずだ」と述べ、今後も協議を続ける考えを示した。

また、改革の一環として検討されている公務員の労働基本権制約の見直しについて、「公務員の基本的なあり方にかかわる重要な問題」として、「公務の特殊性を踏まえ、慎重に議論した上で結論を出すべきだ」とした。近年続出している幹部職員の不祥事については「残念ながら、人事院としても大いに反省すべき点がある」と述べる一方、「ほとんどの公務員はまじめに頑張っている」と理解を求めた。【時事ドットコム2009年2月6日

紹介した上記記事には「基本法枠内で議論を」という見出しが付いていました。この基本法とは国家公務員制度改革基本法を指しています。谷総裁の主張は「途中から(すべての)人事管理機能の一元化が前提となり、政府から独立的な地位を認められている人事院も含めて移管する話になった」とし、労働基本権制約の代償機能が損なわれるというものです。

審議官以上の指定職は600ほどあり、当初の案はその幹部人事に政治主導を発揮するための機能移管にとどまっていました。それが充分な議論もなく、勤務条件の中で主要な要素となる「級別定数」の移管が労働基本権の見直しに先立って「工程表」に明記されることについて、谷総裁は強く抵抗を示されたようです。

この谷総裁の反発に対し、甘利明行政改革相は「権限を手放したくないから抵抗しているのだろうが、それは人事院の組織防衛だ」と批判を強めていました。甘利行革相は「幹部人事は課長以下の職員の人事と連動するため、級別定数の移管は不可欠だ」とし、さらに「内閣人事・行政管理局が設置されても人事行政の公正さが損なわれる恐れがない」と説明しています。

谷総裁の経歴が問題視されている「渡り」を繰り返していることなども取り沙汰され、官僚組織を代表した抵抗であるようにも見られています。しかし、「級別定数が総人件費の抑制に使われるとすれば、人事院勧告が骨抜きになるに等しい。労働基本権のあり方も合わせて見直すべきだ」との谷総裁の主張は正論であるものと受けとめています。

もともと谷総裁は、幹部職員に関する人事院の機能移管には反対していませんでした。その理由として「審議官以上の指定職は、経営に近い所にいる人たちだ。組合は作れないが、最低の保障はされている」とし、「どうして一般職員の係長、係員まで内閣で見なければならないのか」という労働基本権の問題への危機意識が前面に出ていることは確かだろうと思っています。

結局、谷総裁の反論は受け入れられず、2012年までに取り組む改革の道筋を示す「工程表」に級別定数管理機能の移管も明記されました。「工程表」を発表した後の記者会見で河村官房長官は「法制化に当たっては人事院の意見も拝聴しながら進める」と述べ、人事院の一貫した反対姿勢にも配慮し、実際の法整備までに修正の余地は残されたようです。

国民の信任を得て選ばれた国会議員が政治を主導する、本来のあるべき姿ですが、一方で戦前の国家公務員は党派色が強く出すぎていたという反省もありました。その反省点を踏まえ、採用や任免の中立性・公平性を確保するため、1948年に人事院が設けられていました。今回の改革の方向性は政治主導を強固とするためのものですが、「全体の奉仕者」であるべき公務員が与党への「奉仕者」となりかねないリスクも注視していかなければなりません。

そもそも甘利行革相は谷総裁を「抵抗勢力」の中心人物とみなし、対立した内容を積極的にマスコミへリークしているように見えました。厳しい雇用危機の中、ますます公務員は叩かれやすくなっています。したがって、大多数の人たちは甘利行革相の姿勢に共感し、今回の記事のような問題意識にも強い反発を示されるのかも知れません。一方で、谷総裁との軋轢は、麻生内閣が官僚組織を適切に使いこなせない力量不足の象徴的な姿だったとも言えます。

最後に付け加えますが、次のような民主党の基本政策にも違和感を持っています。民主党政権が実現した場合、中央省庁の局長級以上の幹部にいったん辞表を提出させ、民主党の方針に賛成する官僚のみを引き続き採用するというものです。鳩山幹事長が「それくらい大胆なことをやらないと官僚の手のひらに乗ってしまう」と話していますので、民主党としての決意の表れだと思いますが、正直なところ大胆すぎる懸念を抱いています。

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2009年2月15日 (日)

小泉発言の波紋は?

麻生首相の郵政民営化見直し発言に対し、小泉元首相が「笑っちゃうぐらいあきれている」と厳しく批判しました。定額給付金の問題についても「3分の2を使ってでも成立させなきゃならない法案だとは思ってないんです」とまで語っています。前回の記事は「根強い人気の小泉元首相」でしたが、そのことを裏打ちする小泉発言に対するマスコミ報道の過熱ぶりが見られました。

当初、民主党は定額給付金への小泉発言を「神風が吹いた」と喜び、輿石参院議員会長は「(小泉元首相は)私たちの声を代弁している」と評価していました。鳩山幹事長も「法案が通らないと麻生政権は行き詰まる。もはやこれまでだ」と意気込んでいました。一方、「小泉劇場」が再燃し、民主党が埋没する危機感を抱く菅代表代行は昨日の遊説で「究極の愉快犯」だと小泉元首相への批判を強め始めています。

私も今回の小泉発言を聞いた時、菅代表代行と同じような違和感を持ちました。確かに定額給付金の問題に限れば、今でも見送るべきだと考えていますので至極真っ当な発言だったと思います。しかし、郵政民営化の問題で考えれば、負の側面が浮き彫りになってきている中、その流れを変えたい思いが強くにじみ出た行動であったことは間違いありません。

さらに麻生首相から「奇人変人」呼ばわりされ、とうとう堪忍袋の緒が切れた個人的な怒りの爆発だった側面も否めません。いずれにしても元首相が同じ政党の現首相を多くのマスコミの前で、あのように皮肉をこめて批判する行為は常識では考えられないものです。しかし、小泉元首相の周辺からは計算し尽くした行動であり、深謀遠慮をめぐらした発言だと持ち上げる国会議員も少なくありません。

その発言後、マスコミやインターネット上から知り得る情報では、小泉元首相への評価は定まっていないように感じています。日頃から幅広い考え方に接することの大切さを重視し、いわゆる右から左まで視点が異なるサイトをブックマークしています。その一つに「依存症の独り言」というブログがあり、最近の記事「小泉さんが怒った!」のコメント欄へ寄せられている意見も賛否が大きく分かれているようでした。

ところで前回記事へのコメントで、KEIさんから『ムダヅモ無き改革』というコミックスを紹介いただき、さっそく購入して読んでみました。小泉元首相が麻雀を通し、ブッシュ前大統領らと対決する姿を描いたギャグ漫画でした。その中で、小泉元首相は「日本のため」に体を張って闘う力強いリーダーとして描かれています。一方、チョイ役で出ている民主党の菅代表代行は下劣な「セクハラオヤジ」として描かれていました。

「この作品はフィクションです。実在の人物とはあまり関係ありません」と注釈されていますが、作者自身が抱いているイメージとそれほど遠くない中での表現方法なのだろうと思います。特にKEIさんは「小泉元首相のイメージを絶妙に表現している漫画だと思います」と述べていますので、まだまだ小泉元首相を信奉する人たちは数多いのだろうと認識を新たにしています。

したがって、久しぶりに小泉元首相が脚光を浴び、その発言が呼び水となって政局が大きく流動化していく可能性を一概に否定できません。中川秀直元幹事長らの動きやポスト麻生の高まりなど、小泉発言の波紋の広がり方は未知数ですが、民主党にとって「郵政解散」時のトラウマがちらつくのは仕方ないことだろうと思います。来るべき総選挙に向け、改めて引き締める機会とすべきでしょうが、過剰反応も避けなければなりません。

定額給付金の関連法案の採決に際し、民主党幹部が「ロシア訪問中の小泉元首相の帰国を待ってから行ないたい」とするような発言は慎むべきものと考えています。そのように反応することが小泉元首相の発言や行動を過大評価し、民主党が振り回されているように見えてしまいます。そもそも今回の騒動は、麻生首相から「売られたケンカ」を大人気なく小泉元首相が倍返ししている単なる内輪モメではないでしょうか。

今回の小泉発言は「自分の顔がつぶされた、重用してやった麻生から恩を仇で返された」というような私憤が先走っているはずです。つまり「国民のため」に苦言を呈したとは到底思えません。したがって、民主党は小泉発言を過剰に意識せず、これからも小泉元首相の進めてきた「改革」が決して「国民のため」ではなかった点を強調しながら、政権交代をめざして欲しいものと願っています。万が一、政権交代を急ぐあまり、反麻生という一致点のもとに民主党が「改革を逆行させるな」と訴える勢力と結びつくようでは本末転倒な話です。

そのような事態はあり得ないものと思いますが、国民の目線を大事にした場合、麻生政権の粗探しばかりではない姿勢も求められているのではないでしょうか。小泉「改革」路線の歪みを見直そうとしている麻生首相や「かんぽの宿」で奮闘している鳩山総務相に対し、状況に応じては党派を超えて応援する場面があっても良いはずです。ぜひ、民主党には常に「国民のためには?」という意識を忘れない政党であって欲しいものと一支持者の立場から願っているところです。

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2009年2月 8日 (日)

根強い人気の小泉元首相

昔から試験勉強などで一夜漬けが多く、切羽詰まらないと集中できないタイプでした。社会人となってから日々たまっていきがちな業務だけは、できる限り早めに処理するよう習慣化しています。それでも締め切りに幅がある原稿の依頼などに関しては、本来のタイプ通り「明日がある」と先送りしていく自分に戻りがちでした。

ある原稿を仕上げるため、年末年始からその作業に集中する時間を意識的に作ってきました。しかし、どうも一気に仕上げるまでに至らず、1月に入ってから何回かの週末が過ぎていきました。日程の目処を尋ねられた際、「1月中には」とお答えしたことによって、ようやく切羽詰まり、先週日曜日には一区切りつけることができました。まだまだ不充分な内容ですが、とりあえず今は試験が終わったような身軽さを感じています。

さて、木曜の読売新聞朝刊に意外な結果を示した記事が掲載されていました。読売新聞が1月31日と2月1日に実施した面接方式の全国世論調査で、首相に最もふさわしいと思う国会議員を尋ねたところ、トップが14.4%を獲得した小泉元首相だったそうです。2位が13.7%の小沢民主党代表、3位が7.5%の舛添厚労相、4位に4.7%の麻生首相、5位に4.6%の渡辺前行革相と続いていました。

折りしも日本郵政の保養宿泊施設「かんぽの宿」のオリックスへの一括売却問題に対し、鳩山総務相が「待った」をかけたことにより、郵政民営化のネガティブな側面にも注目が集まっている時期でした。麻生首相自身、郵政民営化の問題を「市場原理主義でモノを考え、ドライな改革をやり過ぎたのではないかという反省をしないといけない」と国会で答弁するほど小泉「改革」への疑念が強まっている中で、相変わらず小泉元首相が根強く支持されている調査結果に正直驚きました。

取り沙汰されている派遣切りの問題も、そもそも経営側の意向にそった労働者派遣法の見直しなど「構造改革」を進めたことが背景にあります。最近、よく竹中元総務相がテレビに出演し、小泉「改革」の正当性を立て板に水の説明を繰り返しています。その姿を見るたびに『脱「構造改革」宣言』の著者である山家悠紀夫さんの言葉を思い出しています。いろいろまずいことが起こると「構造改革」が充分進められていないからだとする話は、まったく誤解であるのと山家さんの言葉でした。

また、竹中さんは派遣切りが大きな問題となっているが、派遣労働者の比率は2.6%に過ぎないと述べています。さらにオリックスの宮内会長は郵政民営化を論じた経済財政諮問会議のメンバーではなかったのだから鳩山総務相の介入は不当であると反論し、それぞれの問題に対して持論を展開しています。しかし、宮内会長は規制改革・民間開放推進会議の議長であり、郵政民営化推進論者でした。経済財政諮問会議の議論に直接関与していないから不問とする理屈は、派遣労働者2.6%の言い分と同じように本質論から逃げるための詭弁だと言わざるを得ません。

このような竹中さんの主張に対し、その不当性を植草一秀さんがご自身のブログ「知られざる真実」の記事(「かんぽの宿」疑惑新事実とTBS竹中平蔵氏詭弁演説会)の中で詳しく反証されています。その前後の記事も合わせてご覧いただくと、ますます郵政民営化の負の側面が垣間見えてきます。一方で、植草さんの指摘がすべて正しく、竹中さんらが頭から不公正な「改革」に取り組んできたと決め付けるものではありません。

小泉元首相も竹中さんも使命感を持って、郵政改革や規制緩和を進めてきたのかも知れません。しかし、政策判断していく方向性が強い者をより強くする、いわゆる市場主義であったことは間違いありません。圧倒多数を占める勤労者の賃金は抑制しても、国際競争力や株主への配当を高め、見た目の企業価値を押し上げる手助けに力を注いできたことは明らかです。

前述した山家さんも指摘していますが、小泉「改革」は供給サイドに偏りすぎた政策を進め、需要サイドへの配慮を軽視したものでした。小泉政権では定率減税の廃止、医療費の引き上げ、財政出動の徹底した削減など、需要創出策がない需給バランスを欠いた路線だったことが否めません。「いざなぎ超え」の景気回復も、その恩恵が賃金に充分反映されなかったどころか、非正規雇用が急増してきたのも小泉「改革」の特徴でした。

歴史に「if」は禁物ですが、もう少し需給バランスに配慮した政策が進められてきたら、この世界同時不況の中でも違った局面を迎えていたのでしょうか。いずれにしても、このような評価の仕方も個々人で枝分かれしていくものと思っています。今回綴ってきた主張も複数の著書を読み、個人的に賛同している内容を取り上げているものです。

つまり小泉「改革」に対する評価には賛否両論があるはずです。それでも「少し間違っていた」という雰囲気が高まってきたことは確かです。麻生首相の郵政改革見直し発言も、そのような国民の中の変化を意識しているはずです。横道にそれますが、「内閣の一員として最終的には賛成したが、(個人的には)反対だった」という麻生首相の言い訳は、突っ込み所満載の非常識なものでした。この一言で、さらに支持率は落ち込むのではないでしょうか。

記事タイトルにある小泉元首相の根強い人気の問題に戻りますが、何とも不思議な構図だと思っています。「改革」の方向性の誤りによって、もたらしている現状に対する結果責任が小泉元首相への批判に結びつかない…、不思議な構図です。読売新聞の調査によると今の時代の首相に必要な資質として、「指導力」と「決断力」が1位2位にあげられています。

したがって、小泉元首相にはその2つが強いイメージとして、国民の中に深く刻まれているのだろうと推測できます。しかし、独善的な「指導力」や誤った方向性への「決断力」が発揮されても、国民にとっては悲劇的なことです。例えば常に「仮想敵」を作り、国民受けする勇ましい発言を繰り返すことによって、支持率が上がるような姿は決して好ましいものではありません。心から信頼できる政治家を選ぶためには、私たち有権者が多様な情報を適確に取捨選択し、人物評価の観察眼を磨くことも重要な責務だろうと考えています。

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