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2009年1月10日 (土)

ワークシェアリングの可能性と懸念点

私どもの組合の「新春旗びらき」は14日水曜に予定していますが、すでに6日夜に執行委員会を開き、組合の活動は本格化しています。もちろん仕事も初日からトップギアとし、滞納整理事務に励んでいます。定額給付金の問題の迷走ぶりは相変わらずですが、徴税吏員の職業柄、差押ができるのかどうか職場で話題になりました。

税収確保に苦心している自治体の発想はどこも同様で、昨年末、奈良県が正式に総務省へ照会していました。国民の生活支援や消費刺激策という給付金の趣旨を考慮し、総務省の方針は「現時点では未定」とし、即答できなかったようです。ちなみに国税徴収法で失業に伴う給付金などは差押禁止財産となっています。つまり閣僚が受け取るかどうかで足並を乱していますが、この事例からも定額給付金の位置付けの曖昧さが垣間見れます。

さて、元旦に投稿した前回記事(希望の「変」となる2009年に!)の中で、ワークシェアリングについて触れました。その後、日本経団連の御手洗会長が深刻化する雇用問題に対して「ワークシェアリングも一つの選択肢で、そういう選択をする企業があってもいい」との考え方を年頭の記者会見で示しました。さらに経済界の新年祝賀パーティーの冒頭挨拶では「企業が緊急的に時間外労働や所定労働時間を短くして(非正規労働者らの)雇用を守るという選択肢を検討することもあり得る」と述べています。

ここ数日、新聞やテレビでもワークシェアリングの言葉が頻繁に取り上げられています。その中で、もう何年も前から取り組まれている大分県姫島村のワークシェアリングのことを知りました。姫島村は離島という立地条件から経営的に民間の参入が難しく、診療所やフェリーの運航など「官ができることは官で」という小泉元首相の謳い文句の間逆を進めています。

雇用の場が少なく、過疎化を防ぐためにも、村内で最大の雇用体である役場が「職員の給与を低く抑えて、できるだけ多くの人を雇用する」というワークシェアリングを実践していました。村の職員数は190人で、給与水準の国家公務員との比較であるラスパイレス指数は73、全国で3番目に低い数字です。それでも役場の職員の給与は、村内の農協や漁協などの職員の給与と比べれば、かなり高いそうです。 

群馬県の太田市では今年1月から職員の残業を減らし、新たな雇用を創出するワークシェアリングを始めます。自動車工場などを解雇された市内在住者を対象とし、土木現場や窓口業務での臨時職員として20人ほど採用する予定です。財源は職員1500人の残業を減らすことで、その浮いた時間外手当を充てるそうです。

時間外勤務を減らし、新たな雇用を確保する手法は歓迎すべきものです。しかし、予算を減らされた職場の仕事量が変わらない場合は、サービス残業の常態化につながらないよう注意する必要があります。通常の勤務時間内で「待ったなし」の仕事が終わり、そのことで給与の手取りの総額が減っても誰も不満には思いません。

懸念されるのは姫島村の例がワークシェアリングの典型とみなされていく場合ですが、姫島村としても「ベストではないかも知れませんが、ベターであると考えています」と説明しています。前回記事で紹介したオランダのダッチ・モデルも連合と民主党との信頼関係があることを前提とし、その功罪も含めて検証すべきものとして例示しています。

その上で、経団連の御手洗会長のワークシェアリング発言は、派遣切り批判をかわすための姿勢が明らかです。実際、解雇された人がテレビのインタビューで「今さらクビを切ってから言われても」と不信感を募らせていました。そもそも経団連は総額人件費の抑制を強調しているため、「労働者間だけで仕事と賃金を分け合え」と言うのに等しく、必ず賃下げに連動するものと見られています。

実は2002年の不況期に政府、経団連、連合との間で「ワークシェアリングに関する政労使合意」が結ばれていました。しかしながら「その後、景気が持ち直したため、企業で導入する動きが広がらなかった経緯があります」と新聞記事には書かれていました。リンク先の「政労使合意」の内容を改めて目を通しましたが、仕事と家庭の両立などライフスタイルの見直し、多様な働き方に見合った短時間労働者の処遇改善などが目標として掲げられていました。

実施にあたっては労使の納得と合意が必要とされ、連合側の思いが強く反映された内容だったものと思います。経営側としては「経済のグローバル化、産業構造の変化等に対応し、企業による多様な雇用形態の活用を容易にすることにより、経営効率の向上」という利点を考えていました。しかし、2004年に製造業まで労働者派遣法が解禁され、労働力需給の調整弁を廉価で得られるようになりました。

この「合意」が実現できなかったことに連合側の責任も免れませんが、短時間労働者への均等待遇などコスト増の伴う内容に対し、経営側が熱意を示さなくなったことは間違いありません。その背景として労働者派遣法の適用拡大があり、失業手当も出ない解雇者が続出している現状につながっています。今朝のテレビ番組で、連合に加盟するJAM本部の役員の方も御手洗発言に「今さら」と答えていた気持ちがよく分かりました。

2009春闘に向け、連合は「賃上げも雇用も」を強く打ち出し、賃下げの口実とされるようなワークシェアリングには警戒感を示しています。今後、2002年に合意した内容を改めてアピールし、雇用創出も春闘の大きな柱とすべきではないでしょうか。このワークシェアリングの問題は、私どもの自治体にも引き付けて考えるべきことが多くあります。できれば次回以降の記事で、さらに掘り下げてみるつもりです。

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コメント

主題ではなく副題に反応してしまうようで申し訳ないのですが、定額給付金について私が思いますこと。

「定額給付金」については、「課税所得か否か?」とか「課税するなら一時所得か雑所得か?」とか「申告納税か源泉徴収か?」とか
「源泉徴収なら利子所得のような定率か所得比例か?」とか。。。。
考えるほどに色々疑問が生じてきて、一個人として興味本位にあれこれ考えるにはおもしろいのですが、広義での税法を所管する
財務・総務両省の担当者や自治体の税務担当者からすれば、支出の根拠となる法案策定&執行段階で論じることの多い制度なのでしょうね。
仮に実施が確定するのなら、現場の混乱が最小限度で済むようにせめて準備時間が十分に確保できれば宜しいのでしょうが、
今の報道に鑑みるとそれすら許されそうもない様に見受けられ、「大丈夫かいな、本当にやる気なのかいな、与党様?」って感じがします。

別の視点からは、住民票記載の住所と現実の居所との乖離がある方々が、(特に学生さんとか、単身赴任の方とか、諸々の施設に所在の方とか)
それなりの人数存在することに鑑みると、定額給付金以前の問題として住民基本台帳法の規定を遵守した届出励行を
もっと広報した方が良いのではないかと、総務省様に対して思ったり。

現実問題として、おそらく実務上は住民基本台帳法の趣旨に則って住民票の住所を基準に処理するほかはないだろうと、
そんな想像をする私にとってはその辺りも気になります。
正論としては、法律上明文規定をもって定められている「住民基本台帳の記載内容を正確に維持するための届出義務を適正に果たしていない者が悪い」
のですが、特に都心部に於いて実際には窓口で諸々の混乱がその辺りの面からも予想されるんじゃないかと、
思ったりも致しますので。

投稿: あっしまった! | 2009年1月11日 (日) 20時14分

あっしまった!さん、コメントありがとうございます。
定額給付金が非課税となることは決まっているようですが、確かに住民票がない人たちの支給に対する情報は不足しています。
与党政治家のテレビなどでの発言では、ホームレスの人たちにも支給する話が聞こえていますが、果たしてどのような方法となるのでしょうか。

投稿: OTSU | 2009年1月11日 (日) 20時45分

> 定額給付金が非課税となることは決まっているようです
これは大変失礼いたしました。m(__)m
良い勉強をさせていただき、投稿して良かったです。(._.) φ メモメモ

一応住民票に記載があっても、実態と一致しない事による混乱が予想されるのに加えて、
ご例示のような方を対象とするには、私の素人考えでは万全な方策を探すのは難しいだろうと思います。
与党様の立場としては、導入の主旨に鑑みて「係る方針」を掲げざるを得ないのでしょうが、
「言うは易し」の象徴的な事例の様な気がします。

投稿: あっしまった! | 2009年1月11日 (日) 21時30分

あっしまった!さん、コメントありがとうございます。
本当に自治体にとって年度末の忙しい時期、たいへんな重荷となります。それも大半の国民が歓迎しない制度ですから困ったものです。

投稿: OTSU | 2009年1月11日 (日) 22時10分

「ワークシェアリング」については連合もおいそれと誘いにのれないだろうと読売新聞1月10日付で記事になってました。
記事の要約として「派遣労働の導入は経営判断の範囲で、労使交渉のテーマにもならない」、「ワークシェアリング」は、現状では賃下げの口実になりかねない。その記事の中で「高木会長は(略)戦闘的な思想の持ち主ではない。その高木会長でさえ、いまや、折あるごとに経営者の不信感を口にする。」と・・・
ホワイトカラー・エグゼンプションのときと同様に、経営側の都合のよい思惑に乗らないように注意が必要ではないかなと思いますが、難しい問題ですね。
定額給付金の実施は、業務繁忙期に加え期間も長くなりそうで窓口の負担も相当なものになりそうですね・・・
(給付金を受け取っても、焼け石に水のような気がするのですが)

投稿: ためいきばかり | 2009年1月12日 (月) 18時36分

ためいきばかりさん、コメントありがとうございます。

私も同じ記事を読んでいます。痛みを伴う改革のためには双方の信頼関係が欠かせません。ご指摘のとおり痛みを労働者のみに押し付けるような経営側の姿勢には注意しなければなりません。

その上で、既存の労働組合がどのような存在意義を発揮するのか難しい問題ですが、決して静観できない局面だと思っています。次回以降の記事でも自問自答していく予定ですので、またご意見などよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2009年1月12日 (月) 21時27分

アドバイスをいただきたいのですが。

投稿: | 2009年1月13日 (火) 16時48分

2009年1月13日(火)16時48分に投稿くださった方へ
お力になれるようでしたらご協力したいものと思いますが、もう少し具体的に記していただかないと何も申し上げられません。その点についてご理解いただき、改めてよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2009年1月13日 (火) 22時32分

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