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2009年1月23日 (金)

オバマ大統領と麻生首相

私の母はデイサービスを受けている要介護度認定者です。週3回ほど近所のケアセンターに通っていますが、時々、そこの利用者同士の会話内容を聞かされています。つい最近、「〇〇さんは夜中に起きて、式を見たと言っていたけど、私も夜、テレビをつけたけど見れなかった」と伝えられました。日本時間では20日の深夜に中継された米国のオバマ大統領の就任式の話でした。

私自身、リアルタイムで見ることを考えていなかったため、中継が衛星放送のみで、地上波では放映されなかったことを後から知りました。私の母は当然、地上波のNHKでも映っているものと思い、目がさめた時、チャンネルを「1」に合わせたようでした。〇〇さんは75歳ぐらいの女性だと聞き、私の母も含め、そのような高齢層までが生放送で見ようとするオバマ大統領の人気の高さに改めて驚きました。

日本でのオバマ大統領の支持率は89.7%に達しているデータが発表されています。インターネット専業保険会社「ライフネット生命保険」が日本の10~50代男女に行なった「オバマ大統領に関する調査」(9~13日実施、有効回答数968人)の結果でした。本国の世論調査(米CNNテレビ18日発表)での支持率84.0%を5.7ポイント上回る水準となっています。

オバマ大統領の就任式典を見届けるため、首都ワシントンの連邦議会議事堂前の広場には180万人の聴衆が集まったそうです。これまでの最高はケネディ大統領暗殺という国難の後、1965年に行なわれたジョンソン大統領就任式の120万人であり、その数字を遥かに上回りました。4年前のブッシュ前大統領の就任式の際、イラク戦争などに抗議した市民1万人のデモもあり、対照的な2人の引継ぎとなりました。

そのオバマ大統領の就任演説では、イスラム世界との「相互理解と尊敬に基づく新しい進路を模索する」との言葉をはじめ、「すべての国々」や「すべての人々」の豊かさや平和をめざす決意が伝わってきました。そして、全体的な主語は「我々」を基調とし、国民一人ひとりの責任も訴えながら難局に立ち向かっていく姿勢が示されました。今後、オバマ大統領がこのような初志を貫き、有言実行されていくことを強く期待しています。

一方、日本の最高責任者である麻生首相は、18日に開かれた自民党大会で「(経団連や公明党から)俺たちが励まされているようじゃダメだ」と「俺たち」を連呼(参考「きっこのブログ」)しました。この場合の「俺たち」は自民党のことでした。自民党総裁の立場での演説であるため、ある程度はやむを得ないのかも知れませんが、麻生首相の念頭にあるのは常に「自民党」であり、さらに「自分」を前面に出すことがリーダーシップの発揮だと思われているようです。

したがって、国民の多くが解散総選挙を望んでいても「自民党が負けそうだから先送りする」、定額給付金を見直すべきとの声が圧倒多数でも「ぶれたと言われたくないからゴリ押しする」、そのように見なさざるを得ません。消費税の「2011年度からの引き上げ」問題に対しても、麻生首相自身の「俺がぶれたと批判されるのが嫌だ」という個人的な思いが露骨に感じられました。

2009年度税制改正関連法案の付則案に「11年度から引き上げ」と明記することが景気へ悪影響を与えるという反対論はその通りですが、総選挙への悪影響を考えて反対している自民党の国会議員も決して少なくありません。いずれにしても麻生首相を筆頭に「国民のために消費税はどうあるべきだ」というメッセージがあまり伝わってきません。結局のところ「自分の選挙のためには…」「自民党が負けないためには…」という国民不在の自民党内のドタバタ劇を見せられていました。

ドタバタ劇の最後は、麻生首相が「俺の国会答弁を変えなくていいんだな。それならいい」との言葉が象徴するような玉虫色の決着となりました。付則の第1項を「11年度までに必要な法制上の措置を講じる」とし、11年度までを準備段階と位置付けています。第2項で「税制抜本改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定める」とし、消費税の引き上げ時期をぼかした「2段階方式」に改まったことにより、中川秀直元幹事長ら反対派も矛を収めたようでした。

それに対し、民主党の菅直人代表代行は「麻生首相の主張と造反をにおわせている人の主張を足して2で割り、何のことだか分からなくなった」と揶揄しています。さらに「麻生首相は今回の重大な問題でもぶれた。(増税を)やるならやる、やらないならやらない。どちらとも分からないのでは首相としての資格がない」と批判を強めています。

そもそも麻生首相は信念を持って、社会保障費の安定した財源確保のために消費税の引き上げを打ち出していたのでしょうか。その必要性を確信している与謝野経済財政担当相の後押しがあったことは確かですが、初めは「消費税増税から逃げない姿勢を示すのが民主党との違いを明確にできる」とし、やはり総選挙を意識した「党利」からの発想だったようです。最後は「答弁を変えなくていいのなら」という個人の面子を優先した「俺が」の判断基準だったと言わざるを得ません。

麻生首相を支持されている方々が今回のような記事を読まれた場合、不快に思われたり、反論も多々あるかも知れません。安倍元首相に関する過去の記事の際に記したことですが、国民の暮らしや未来を左右する最高責任者ではなく、一人の私人だった場合は「アキバで有名」などの評価だけを受け、誰に迷惑をかけるものではありません。厳しい批判が集まるのは、誰よりも高い見識や判断力を求められる役職に就いているからです。

少し前までは人気者だった麻生首相の支持率が一気に20%を切るような急落も、その重責に対するミスマッチの結果だと言えます。安倍元首相らと比べ、麻生首相の能力が格段と落ちている訳ではないはずですが、100年に一度の経済危機の局面では荷が重すぎたものと少し同情もしています。とは言え、現段階でのオバマ大統領と麻生首相の評価は、それぞれの支持率の差のとおり歴然としたものがあります。

ちなみに自民党大会と同じ日に開かれた民主党大会での小沢代表の挨拶は、麻生首相の「俺たちが」とは好対照な謙虚さと自信にあふれたものでした。「新しい政権を担おうとする私たちが今、最も求められているものは国民の中に入り、その苦しみや悩みを共有し、国民とともに歩んでいく姿勢を最後まで貫いていくことであります」と述べられていました。

さらに「私たち民主党が政権を担っても、国民との約束を守らなかったり、国民の期待に応えられなかった場合は、直ちにその次の総選挙で私たちを政権の座から下ろしてください。議会制民主主義における主権者の責務とは、そういうものであると思います」と訴えていました。オバマ大統領と小沢代表のタイプは異なりますが、国民が期待する「チェンジ」への責任を充分果たせる力を持ったリーダーであるものと信じています。

当初、今回の記事タイトルは「『反貧困』と自己責任論」でした。日記(週記?)のスタイルをとっているため、出だしの文章では時事の話題をよく取り上げてきました。今回、オバマ大統領の就任式は外せないと考え、その話題で書き始めると主張したい内容がドンドン広がっていきました。と言う訳で、途中で記事タイトルを変更し、このような内容となったことを申し添えさせていただきます。

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コメント

新海和明です。
諏訪東京理科大学の今年4年生になる新海和明です。
長野県小諸市出身です。
もっこり、もっこりですね。
オバマ大統領も、麻生総理も、俺ともっともっこり、もっこりしましょうね…
ああっ、金正日総書記(将軍様)万歳、万歳、万歳です。

投稿: 新海和明 | 2009年1月23日 (金) 23時00分

文部科学省は23日、就職内定を取り消された今春卒業予定の大学生が264校の732人(5日現在)に上ると発表した。短大では16人(14校)、高等専門学校では5人(5校)が内定を取り消された。計753人のうち397人がまだ就職活動を続けている。

 国公私立の大学と短大、高等専門学校計1235校を対象に調査し、1190校から回答を得た。大学生の内訳は▽国立63人▽公立20人▽私立649人。

 753人のうち、内定取り消しを撤回されたのは41人で、企業との示談に応じたのは345人。他の企業などから内定を得たのは269人で、33人が留年する予定という。

 内定は取り消されていないが、企業から何らかの連絡を受けたのは456人で、うち14人が自宅待機を命じられ、274人が内定を辞退するよう示唆された。採用時期の繰り下げを伝えられたのは43人。

内定切り:悪質「自己都合で辞退と書いて送れ」

途切れなくかかってくる内定取り消しの相談電話の対応に追われる連合のメンバー=東京千代田区の連合本部で2008年12月10日午前11時、東海林智写す 雇用状況の悪化に伴い、来春卒業予定の大学生の内定取り消しが相次いでいる問題で、連合は10日までの2日間、緊急電話相談を実施した。2日間に寄せられた相談は21件。内定した職種の変更を迫られたり、採用してもすぐ解雇することを明言された例があり、内定者が入社前から退職勧奨を受けているような状態にあることが浮かび上がった。【東海林智】

 悪質なケースとしては、内定取り消しを通告された男子学生が理由を聞くと「内定だから、説明する必要はない」と言われた例があった。会社は「こちらの取り消しではなく、自己都合で辞退すると書いて書面で送れ」と言い、学生が拒否して働くことを希望すると「採用してもすぐに解雇する」と言われたという。内定は実質的な雇用契約で、取り消す場合は基本的に解雇と同じ扱いになる。やむなく取り消す場合も合理的な理由の説明などが求められる。

 内定は設計などの職種で得たのに営業職でないと仕事がないと言われた例や、「大阪で仕事をするという内定を取り消し東京でならば可能性がある」などと伝えられた例もあった。「経営が厳しく採用を延期する」と言いながら、延期期間を明確にしないケースも。連合は、自ら内定を辞退させるための嫌がらせとみている。

 連合は11、12日も午前10時~午後8時まで、非正規雇用労働者の解雇・雇い止め、内定取り消しの相談に応じる。相談電話は全国共通(0120・154・052)。

投稿: 新海和明 | 2009年1月23日 (金) 23時02分

新海和明さん、おはようございます。

内定切りを新海さんも受けられ、その憤りを当ブログのコメント欄へ寄せられたのでしょうか。記事本文の内容と直接関係しないコメントですが、スパムとも言い切れないため、このまま掲げさせていただきます。

ただ何ともコメントしづらい内容でしたので、具体的なレスはご容赦ください。もし今後、議論を求められている場合は別な記事に対し、もう少し新海さんのお考えが示されたコメントをよろしくお願いします。

なお、2点目の途中からの「内定切り:悪質…」以下の内容と3点目のコメントは、まったく同じでしたので、3点目のコメントは削除させていただきました。

投稿: OTSU | 2009年1月24日 (土) 07時08分

お久しぶりです。
オバマ大統領と麻生首相を比較することすら、どうなのかと考えます。
そもそも両者に対する国民の期待自体が、大きく違う。
同じ一国のリーダーといっても、直接リーダーとして国民の選挙によって選ばれた人と訳の分からない政党の組織理論で棚ぼた的になれた人では「格」が違う。
本当にこの国が「未曾有」の危機に直面しているのであれば、いたずらに体制維持に固執するのではなく、一刻も早く直接国民に意を問うべく解散総選挙を行うべきでしょう。
確かに解散権は首相にあるのでしょうが、主権は政府にあるのではなく、国民にあるのです。国民から負託され統治している人たちが与えられた権力を間違った方向に使っている。
誰もが感じている現状ではないでしょうか。
小泉さんの時から劇場型政治なんて言われ方がされていますが、長い差別の歴史を踏まえた上で史上初の黒人大統領を生み出したアメリカのような熱いドラマも感動もなく、この国の現状は政治や経済の実権を握る権力者が、自分たちの既得権益にしがみついてあの手この手の悪あがきの末に民衆から倒される?そんな使い古された典型的な安っぽい物語のようで、滑稽ですらありますよ。トホホ・・・。


投稿: shima | 2009年1月25日 (日) 13時16分

shimaさん、お久しぶりです。コメントありがとうございました。

オバマ大統領と麻生首相の支持率と不支持率は、ちょうど対称的な数字となっているようです。今後、二人のその数字はどのように推移していくのでしょうか。

就任後の外交演説で、オバマ大統領がガザへの攻撃を「イスラエルの自衛権」と言い切ったことは正直残念でした。一気にイスラエルとの関係を変えられない現状もあるのでしょうが、今回の記事で紹介したような方向性を忘れないで欲しいものと願っています。

投稿: OTSU | 2009年1月25日 (日) 20時40分

>「イスラエルの自衛権」

良くも悪くもアメリカとはそういう国なんやろ。お金の問題もあるしな。
オバマは黒人やけど、その前にアメリカ人なんやな。
イスラエルのやり方って、日本人の感覚としては、なんかおかしいて思うわな。
でも、立場上なんも言われへん。
そういう立場の我が国が、情けないっちゅうか、悔しいっちゅうか・・・。
ゆうてもしゃあないんやけどな。
もしアメリカとイランが戦争なんてことになったら、日本はどうするんかな。
くだらん事書いてもたわ。すまんな(投稿するけど)。

投稿: K | 2009年1月27日 (火) 23時07分

Kさん、コメントありがとうございます。

もっともっと集中すべき課題が山積している中、国民の大多数が批判している定額給付金問題で、国会が振り回されている情況は本当に残念なことです。

オバマ大統領のイスラエルへの姿勢が従来の路線に対する激変は残念ながら果たせませんでしたが、今後、徐々に変えていきたい気持ちもあることを願わざるを得ません。

投稿: OTSU | 2009年1月28日 (水) 08時24分

やはり、オバマ大統領といえどもしがらみがあるのでしょう。(残念ですが・・)
さて、国会は論戦が続いてますが定額給付金問題などこれで良いのだろうかと本当にこちらも残念な状況ですね。
「民主党代表質問に真紀子氏」と報道されていましたが、彼女も(高木会長の言葉を借りるとすれば)「小泉改革の迷夢」
を共に見た方なので、民主党の危うさも感じられます。(小沢代表が前面に出て欲しいのですが・・・)
職場では、民主党政権への期待は残念ながら感じられません。(定員削減+純減+非常勤職員の大幅削減に加え「人件費20%削減」≒自民党と変わらないか「さらに現場に強くあたる」傾向も懸念されてます。)
麻生総理は今回、小泉路線と一定の決別をしたようですが、現場では「小泉改革の迷夢」はまだ生きています。
(自分より後の採用はほとんどないためいまの仕事をしながら部下を持つ経験もほとんどなく管理職になるいびつな年齢構成など
もありますが、同世代(いわゆるローストジェネレーション)の鬱、精神障害等(職員、利用者のかたも含めて)も増えているんだなと窓口で実感しています。)

投稿: ためいきばかり | 2009年1月28日 (水) 22時55分

ためいきばかりさん、コメントありがとうございます。

先行きが見通せない不安が本当に深刻です。さらに社会的な深刻さの度合いと反比例した政治への失望感が、いっそう深刻さを増幅させています。

ご指摘のような未知数の不安があることも確かですが、やはり民主党への「変革」を期待しています。とは言え、私自身は今後の民主党と渡辺前行革相らとの連携だけは避けて欲しいものと思っています。「劇場型」を意識した短絡的な発想で、引き回されそうな心配が否めません。

投稿: OTSU | 2009年1月28日 (水) 23時37分

民主党にいつも辛口のコメントを書いてしまうのも渡辺前行革相との連携をにおわす発言など「劇場型」が
大好きな方々がいること。手柄とりの「思いつきの発言」をして現場にゴリ押しをしてあとのフォローは全くない方々がいること。(もちろん与党にも多数いますが・・・)
おかげで職場は小泉改革とあいまってボロボロです。
他の省庁ですが、測候所の廃止(機械化)がラジオで取り上げられていましたが、「漁業や農業は天候等が本当に重要なので
合理化できないものもある」とパーソナリティーの方が発言されてましたが、「何をいまさらもう手遅れだよ」というのが自分の
正直な心境です。(労組はかなり訴えていたのですがその時はどこのマスコミもとりあげませんからね・・・)
昼休みが45分になったときの非常勤のかたの話が忘れられません(非常勤のかたも不利益をこうむるのですから)
「15分」減ってなにか世の中が変わるの?役所は面白いところやね。
小沢代表や連合の高木会長の発言は本当に「変革」をかんじることができ、民主党の中で上記の考えと違う方も多数いることも
しっていますが、前原元代表のように「ミニ小泉」のような方がいることも不安材料の一つです。
政権交代が望ましいのですが・・(大連立などは勘弁して欲しいです)

投稿: ためいきばかり | 2009年1月29日 (木) 22時10分

ためいきばかりさん、いつもご訪問ありがとうございます。
昨日のレスのとおり私もその通りだと感じています。どうも最近、オールorナッシングの議論の多さが気になっています。その結果、ご指摘のような大事な点が抜け落ちていくのかも知れません。

投稿: OTSU | 2009年1月29日 (木) 22時38分

総理大臣の麻生さんとアメリカ合衆国大統領のオバマさんと比べてはいけない。私からみれば、麻生さんには志が無い。無い人に一国の主など勤まるはずがない。オバマさんは、それなりに苦労をしてきたし徐々にアメリカも良くなっていくでしょう。いい加減に麻生さんも国民に信頼されていないのだから、早く解散総選挙をするべきだ!そして、議員を辞めて、ハローワークで仕事を探してもらいたい。昨年、ハローワークに視察しに来た時に「仕事を選んでいちゃ駄目だ!」と紹介窓口で若者に言っていた事が、いかに世間知らずか分かるんじゃないか!

投稿: 赤い彗星 | 2009年2月14日 (土) 18時28分

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