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2009年1月31日 (土)

『反貧困』と自己責任論

金曜夕刊一面の見出しは「非正規 失職12万4800人」でした。不況による雇用調整のため、昨年10月から今年3月までに職を失ったか、失うことになる非正規労働者の数が厚生労働省の調査で明らかになりました。次の仕事が見つかっている人は1割にとどまる見込みとも書かれていました。さらに3月に期間満了を迎える人の数がカウントされていない可能性もあり、派遣会社や請負会社の業界団体は「3月までに40万人失職」と試算しています。

企業への助成金など国が雇用対策を打ち出した後も失業者の増加は続き、対策の拡充を求める声も強まっています。一方、多くの自治体が臨時職員の募集など緊急雇用対策を打ち出していますが、いずれも応募者の少なさが目立っているようです。雇用期間の短さ、低賃金、広報不足などが理由としてあげられています。

また、各地のハローワークは失業者の再就職が進まぬ現状に危機感を募らせています。同時に「不況でも飲食業や警備などの求人は多い。経験のない仕事でも思い切って挑戦して欲しい」「求人がある介護職などに目を向けてもらえるよう努力したい」と話しているのもハローワーク側でした。元派遣社員の希望する職場と人手不足から求人している職場が合わない「ミスマッチ」の現状も取り沙汰されるようになっています。

大分キヤノンなどで合わせて数千人の派遣切りが見込まれた大分県で、「JAおおいた」(大分市)が農業の現場で働く求人を呼びかけましたが、問い合わせがあった約50人のうち元派遣社員は数人だけだったそうです。ラーメンチェーンの「幸楽苑」(郡山市)では例年の3倍となる150人の中途採用を発表しましたが、面接に来た元派遣社員は数人にとどまり、担当者は「社会の役に立ちたいと採用数を増やしたが、拍子抜けしました」と語っています。

このような現状に対し、 『朝ズバッ!』の中で司会のみのもんたさんは「働かないと食えませんよ」「ボクなんか、なんでまず仕事しないのと思います」と元派遣社員が甘えていると決めつけた発言を繰り返しました。それに対し、毎日新聞論説委員の与良正男さんは「これを甘いの一言で片付けると今の問題は解決しませんよ」「例えば、人付き合いが苦手だから組み立ての仕事が自分に向いてると思ってやってた人に、すぐサービス業の仕事しなさいっても、なかなかうまくいかない」「(派遣などで人を)安易に扱ってきたことを、社会全体として変えていかないといけない」と逐次反論を加えていました。

みのさんのような受けとめ方をされる人たちは少なくないものと思っています。つまりネットカフェ難民らに対しても自己責任論を唱える人たちの多さに結びつきます。このあたりの話について、『反貧困―「すべり台社会」からの脱出』という著書に詳しく書かれています。著者は反貧困ネットワーク事務局長の湯浅誠さんで、昨年末、注目を集めた「年越し派遣村」の村長として一躍有名になっています。

『反貧困』は具体的な実例が数多く掲げられ、今の日本に存在している貧困の実態を浮き彫りにしています。湯浅さんは貧困の問題の「見えにくさ」を指摘し、ホームレスやネットカフェ難民らが自己責任論で括られがちだと述べています。そもそも貧困の実態を認めたがらない日本政府の姿勢を批判されています。

憲法第25条に基づき、生存権を保障するために生活保護の基準が定められています。その最低生活費を下回って暮らす人たちがいた場合、政府として放置することが許されません。財政が逼迫する中でも、違憲状態とみなされれば、財政出動が迫られます。そのため、政府は意識的に貧困から目をそらしてきていると指摘しています。

逆に生活保護受給者より低収入で暮らす人たちが増えているという理屈で、厚生労働省は生活保護費基準を切り下げようとする本末転倒ぶりを見せていました。湯浅さんは、このような「下向きの平準化」の方向性に強い危機意識を抱いています。また、過剰な「自立」支援が強調されているため、生活保護の打ち切りによって餓死者を出す悲劇などが生じている現状を憂えています。

『反貧困』を読み終え、貧困状態にいきなり落ちないための「溜め」の大切さが伝わってきました。「溜め」とは貯金であり、いざという時の家族からのサポートや公的なセーフティーネットなどを指されています。そして、湯浅さんが『反貧困』の中で、最も強調されていたのは「貧困は自己責任なのか」という点でした。貧困状態に至る背景には次のような「五重の排除」があると記しています。

  1. 教育課程からの排除 親世代が貧困状態である場合、その子どもたちの多くが低学歴のまま社会に出なければならず、貧困脱出のための技術や知識などを獲得することが難しい。
  2. 企業福祉からの排除 派遣社員など非正規雇用者は低賃金や不安定雇用を強いられ、雇用保険や社会保険に入れず、企業による福利厚生からも排除され、容易に貧困状態に滑り落ちてしまう。
  3. 家族福祉からの排除 低福祉の日本社会では親族間の相互扶助が、社会的転落を防ぐセーフティーネットとしての重要な役割を果たしている。しかし、貧困状態に陥る人々は、もともと頼れる家族や親族のいないことが多い。
  4. 公的福祉からの排除 福祉事務所が「水際作戦」と呼ばれるような生活保護申請者を排除しがちな傾向にある。「若いし、働けるはず」「まず親族に頼って」などと様々な理由をつけ、申請の受付さえしない場合が多い。
  5. 自分自身からの排除 上記のような排除を受け、何のために生き抜くのか、何のために働くのか、自分自身の存在価値や将来への希望を見失ってしまう。しかも自己責任論によって、貧困状態を「自分のせい」と内面化し、自分を大切に思えない状態まで追い込まれる。

湯浅さんは、とりわけ「自分自身からの排除」の問題が周囲から理解されにくいと述べています。その一例として、前述した「ミスマッチ」の話などが出た際、「なぜ、仕事を選ぶの?」という当事者の意識を想像できない発言などがあげられます。自分自身も湯浅さんの著書を1冊読んだだけで、貧困の問題を分かったような言い方は慎まなければなりません。それでも貧困を自己責任とする風潮の危うさについては充分理解できたつもりです。

自己責任論は、貧困に苦しむ人たちの内面にも刻みつけられ、所持金が底をつくまで頑張りすぎた結果、多重債務、一家離散、自殺などの最悪な事態につながりがちだと湯浅さんは説きます。より早い段階で、生活保護などの支援にアクセスすることによって、そのような最悪な事態は防げるものと訴えています。最後に、「あとがき」の中で、湯浅さんが書かれていた文章の一部をそのまま紹介させていただきます。

誰かに自己責任を押し付け、それで何か答えが出たような気分になるのは、もうやめよう。お金がない、財源がないなどという言い訳を真に受けるのは、もうやめよう。そんなことよりも、人間が人間らしく再生産される社会を目指すほうが、はるかに重要である。社会がそこにきちんとプライオリティ(優先順位)を設定すれば、自己責任だの財源論だのといったことは、すぐに誰も言い出せなくなる。

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2009年1月23日 (金)

オバマ大統領と麻生首相

私の母はデイサービスを受けている要介護度認定者です。週3回ほど近所のケアセンターに通っていますが、時々、そこの利用者同士の会話内容を聞かされています。つい最近、「〇〇さんは夜中に起きて、式を見たと言っていたけど、私も夜、テレビをつけたけど見れなかった」と伝えられました。日本時間では20日の深夜に中継された米国のオバマ大統領の就任式の話でした。

私自身、リアルタイムで見ることを考えていなかったため、中継が衛星放送のみで、地上波では放映されなかったことを後から知りました。私の母は当然、地上波のNHKでも映っているものと思い、目がさめた時、チャンネルを「1」に合わせたようでした。〇〇さんは75歳ぐらいの女性だと聞き、私の母も含め、そのような高齢層までが生放送で見ようとするオバマ大統領の人気の高さに改めて驚きました。

日本でのオバマ大統領の支持率は89.7%に達しているデータが発表されています。インターネット専業保険会社「ライフネット生命保険」が日本の10~50代男女に行なった「オバマ大統領に関する調査」(9~13日実施、有効回答数968人)の結果でした。本国の世論調査(米CNNテレビ18日発表)での支持率84.0%を5.7ポイント上回る水準となっています。

オバマ大統領の就任式典を見届けるため、首都ワシントンの連邦議会議事堂前の広場には180万人の聴衆が集まったそうです。これまでの最高はケネディ大統領暗殺という国難の後、1965年に行なわれたジョンソン大統領就任式の120万人であり、その数字を遥かに上回りました。4年前のブッシュ前大統領の就任式の際、イラク戦争などに抗議した市民1万人のデモもあり、対照的な2人の引継ぎとなりました。

そのオバマ大統領の就任演説では、イスラム世界との「相互理解と尊敬に基づく新しい進路を模索する」との言葉をはじめ、「すべての国々」や「すべての人々」の豊かさや平和をめざす決意が伝わってきました。そして、全体的な主語は「我々」を基調とし、国民一人ひとりの責任も訴えながら難局に立ち向かっていく姿勢が示されました。今後、オバマ大統領がこのような初志を貫き、有言実行されていくことを強く期待しています。

一方、日本の最高責任者である麻生首相は、18日に開かれた自民党大会で「(経団連や公明党から)俺たちが励まされているようじゃダメだ」と「俺たち」を連呼(参考「きっこのブログ」)しました。この場合の「俺たち」は自民党のことでした。自民党総裁の立場での演説であるため、ある程度はやむを得ないのかも知れませんが、麻生首相の念頭にあるのは常に「自民党」であり、さらに「自分」を前面に出すことがリーダーシップの発揮だと思われているようです。

したがって、国民の多くが解散総選挙を望んでいても「自民党が負けそうだから先送りする」、定額給付金を見直すべきとの声が圧倒多数でも「ぶれたと言われたくないからゴリ押しする」、そのように見なさざるを得ません。消費税の「2011年度からの引き上げ」問題に対しても、麻生首相自身の「俺がぶれたと批判されるのが嫌だ」という個人的な思いが露骨に感じられました。

2009年度税制改正関連法案の付則案に「11年度から引き上げ」と明記することが景気へ悪影響を与えるという反対論はその通りですが、総選挙への悪影響を考えて反対している自民党の国会議員も決して少なくありません。いずれにしても麻生首相を筆頭に「国民のために消費税はどうあるべきだ」というメッセージがあまり伝わってきません。結局のところ「自分の選挙のためには…」「自民党が負けないためには…」という国民不在の自民党内のドタバタ劇を見せられていました。

ドタバタ劇の最後は、麻生首相が「俺の国会答弁を変えなくていいんだな。それならいい」との言葉が象徴するような玉虫色の決着となりました。付則の第1項を「11年度までに必要な法制上の措置を講じる」とし、11年度までを準備段階と位置付けています。第2項で「税制抜本改革を具体的に実施するための施行期日等を法制上定める」とし、消費税の引き上げ時期をぼかした「2段階方式」に改まったことにより、中川秀直元幹事長ら反対派も矛を収めたようでした。

それに対し、民主党の菅直人代表代行は「麻生首相の主張と造反をにおわせている人の主張を足して2で割り、何のことだか分からなくなった」と揶揄しています。さらに「麻生首相は今回の重大な問題でもぶれた。(増税を)やるならやる、やらないならやらない。どちらとも分からないのでは首相としての資格がない」と批判を強めています。

そもそも麻生首相は信念を持って、社会保障費の安定した財源確保のために消費税の引き上げを打ち出していたのでしょうか。その必要性を確信している与謝野経済財政担当相の後押しがあったことは確かですが、初めは「消費税増税から逃げない姿勢を示すのが民主党との違いを明確にできる」とし、やはり総選挙を意識した「党利」からの発想だったようです。最後は「答弁を変えなくていいのなら」という個人の面子を優先した「俺が」の判断基準だったと言わざるを得ません。

麻生首相を支持されている方々が今回のような記事を読まれた場合、不快に思われたり、反論も多々あるかも知れません。安倍元首相に関する過去の記事の際に記したことですが、国民の暮らしや未来を左右する最高責任者ではなく、一人の私人だった場合は「アキバで有名」などの評価だけを受け、誰に迷惑をかけるものではありません。厳しい批判が集まるのは、誰よりも高い見識や判断力を求められる役職に就いているからです。

少し前までは人気者だった麻生首相の支持率が一気に20%を切るような急落も、その重責に対するミスマッチの結果だと言えます。安倍元首相らと比べ、麻生首相の能力が格段と落ちている訳ではないはずですが、100年に一度の経済危機の局面では荷が重すぎたものと少し同情もしています。とは言え、現段階でのオバマ大統領と麻生首相の評価は、それぞれの支持率の差のとおり歴然としたものがあります。

ちなみに自民党大会と同じ日に開かれた民主党大会での小沢代表の挨拶は、麻生首相の「俺たちが」とは好対照な謙虚さと自信にあふれたものでした。「新しい政権を担おうとする私たちが今、最も求められているものは国民の中に入り、その苦しみや悩みを共有し、国民とともに歩んでいく姿勢を最後まで貫いていくことであります」と述べられていました。

さらに「私たち民主党が政権を担っても、国民との約束を守らなかったり、国民の期待に応えられなかった場合は、直ちにその次の総選挙で私たちを政権の座から下ろしてください。議会制民主主義における主権者の責務とは、そういうものであると思います」と訴えていました。オバマ大統領と小沢代表のタイプは異なりますが、国民が期待する「チェンジ」への責任を充分果たせる力を持ったリーダーであるものと信じています。

当初、今回の記事タイトルは「『反貧困』と自己責任論」でした。日記(週記?)のスタイルをとっているため、出だしの文章では時事の話題をよく取り上げてきました。今回、オバマ大統領の就任式は外せないと考え、その話題で書き始めると主張したい内容がドンドン広がっていきました。と言う訳で、途中で記事タイトルを変更し、このような内容となったことを申し添えさせていただきます。

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2009年1月17日 (土)

もう少しワークシェアリングの話

組合の委員長になってから人前で挨拶する機会が増えています。おかげ様で大勢の人を前にしても上がることはありません。それでも事前に話す内容を整理して臨まないと言いたかったことをもらしたり、後から「こう言えば良かった」などと悔やむ時があります。さらに話が広がってしまい、長い挨拶となる心配もありました。

水曜夜の新春旗びらきでの主催者挨拶は、久しぶりに事前に話す内容を整理しないまま壇上に立ちました。昼休みにも組合四役の打ち合わせがあったり、ゆっくり整理する時間を取れなかったせいですが、懇親の場だという気楽さも手伝っていました。乾杯までの時間短縮を率先するため、目安とした時間は守れたようですが、「ああ言えば良かった」などと少し反省点が残る挨拶内容となりました。

さて、前回の記事は「ワークシェアリングの可能性と懸念点」でした。同じテーマで記事を続ける際、「Part2」を使う場合もありましたが、最近は「もう少し〇〇の話」というタイトル名を好むようになっています。今回もそのパターンの記事タイトルとし、もう少しワークシェアリングの話題を掘り下げてみます。

木曜には連合と日本経団連が首脳会談を開き、2009春闘がスタートしました。連合は「景気回復のためには個人消費の活性化が必要」との認識のもと、8年ぶりにベースアップ要求を打ち出しました。経団連側は経営環境が悪化している中、一律の賃上げはできないことを強調しています。一方で、深刻な雇用情勢の悪化を受け、雇用の安定に労使が協力する姿勢を示した「共同宣言」も採択しました。

また、今春闘ではワークシェアリングが主要な課題となる見込みでした。経団連の御手洗会長は「選択肢の一つ」と前向きな姿勢を示していますが、連合側は賃下げへの警戒感を強めていました。同時に経営側にも実現性や効果を疑問視する声があるようです。そのためなのか、木曜の首脳会談では直接的な議題とならなかったことが報道されています。

前回記事で、ワークシェアリングに向けた「政労使合意」が進まなかった背景を書きました。その他の理由として、経営側は労務管理の難しさをあげていました。組合側としても賃下げに結びつくため、何が何でも導入しようとする意気込みが不足していたことも確かです。しかし、組合員の雇用や生活を守ることが労働組合の主目的である関係上、ワークシェアリングが広がらなかったことや派遣切りの問題を「連合の責任」と批判する声には正直なところ違和感があります。

先週日曜のサンデープロジェクトで、田原総一朗さんが「一番悪いのは連合だ。連合が正社員ばかり守っていたからだ」とまで言い切っていたのには驚きました。それに対し、民主党の鳩山幹事長はその言葉に憤ることもなく、「これからはパートや派遣なども面倒を見ていく連合に仕立て上げなければ」とまったく言葉足らずで、いっそう誤解を与えかねない発言にとどまっています。

朝日新聞の星編集委員からは連合だけの責任ではないとの趣旨の発言があり、共産党の市田書記局長は「連合の肩を持つ訳ではないけど」などと少しフォロー気味の意見も続きました。とは言え、何年も前から連合が非正規雇用の課題に力を注いできていること、前回記事で紹介した2002年の「ワークシェアリングに関する政労使合意」のことなど、出演していた人たちの認識は明らかに不足していたようです。

自治労の出身である社民党の重野幹事長も同じ番組に出ていましたが、田原さんの連合批判に対して反論を加えることはありませんでした。定額給付金と社民党が提案している定額減税との違いを説明した時も不明瞭で、自民党の細田幹事長からは「訳が分からない」と切り捨てられていました。やはりテレビ討論の中で、存在感を発揮していくためには場慣れが必要なのだろうと感じています。

いずれにしてもワークシェアリングの問題をはじめ、連合の方針や日頃の活動が適確に伝え切れていない証左なのだろうと思います。これまで連合は数多くの中小零細企業などの労働組合づくりを支援してきています。注目を浴びた年越し派遣村へも連合のスタッフである労働相談員を派遣していました。せめて支持協力関係がある政党の幹事長らには、実際の連合の活動などを充分理解していただきたいものです。

前回記事の最後に書きましたが、ワークシェアリングを私どもの自治体にも引き付けて考えてみます。昨年7月に「最適な選択肢の行政改革とは?」という記事で、図書館などを民間に委ねる計画があり、その是非について議論していることをお伝えしました。私自身の問題意識は「直営責任と格差是正」で綴ったとおりですが、非常勤職員制度の活用は自治体業務のワークシェアリングの一つだと見ることができます。

各業務における繁閑の実態や職務の特性などを精査し、常勤職員の配置数や位置付けを見直す一方、短時間勤務の非常勤職員を多数採用する方向性は雇用創出の面からも意義深いことではないでしょうか。市民サービスに対して直営責任を果たしながら、雇用に対しても自治体が直接的な責任を果たす構図にもなり得ます。その際、繰り返し述べてきたことですが、均等待遇の原則を重視しながら自治体内の「格差是正」に最大限努めていかなければなりません。

このような趣旨のもと、私どもの組合は非常勤職員の皆さんの組合加入を積極的に呼びかけ、様々な労働条件の改善に向けて日常的に交渉を重ねています。そのため、常勤職員の数は大幅に減っていますが、10年以上前から組合員数の約1500人という数字は変わらないまま推移しています。ちなみに自治労らの強い要請に応えるかたちで、人事院が非常勤職員給与ガイドラインを取りまとめる動きなども出てきています。

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2009年1月10日 (土)

ワークシェアリングの可能性と懸念点

私どもの組合の「新春旗びらき」は14日水曜に予定していますが、すでに6日夜に執行委員会を開き、組合の活動は本格化しています。もちろん仕事も初日からトップギアとし、滞納整理事務に励んでいます。定額給付金の問題の迷走ぶりは相変わらずですが、徴税吏員の職業柄、差押ができるのかどうか職場で話題になりました。

税収確保に苦心している自治体の発想はどこも同様で、昨年末、奈良県が正式に総務省へ照会していました。国民の生活支援や消費刺激策という給付金の趣旨を考慮し、総務省の方針は「現時点では未定」とし、即答できなかったようです。ちなみに国税徴収法で失業に伴う給付金などは差押禁止財産となっています。つまり閣僚が受け取るかどうかで足並を乱していますが、この事例からも定額給付金の位置付けの曖昧さが垣間見れます。

さて、元旦に投稿した前回記事(希望の「変」となる2009年に!)の中で、ワークシェアリングについて触れました。その後、日本経団連の御手洗会長が深刻化する雇用問題に対して「ワークシェアリングも一つの選択肢で、そういう選択をする企業があってもいい」との考え方を年頭の記者会見で示しました。さらに経済界の新年祝賀パーティーの冒頭挨拶では「企業が緊急的に時間外労働や所定労働時間を短くして(非正規労働者らの)雇用を守るという選択肢を検討することもあり得る」と述べています。

ここ数日、新聞やテレビでもワークシェアリングの言葉が頻繁に取り上げられています。その中で、もう何年も前から取り組まれている大分県姫島村のワークシェアリングのことを知りました。姫島村は離島という立地条件から経営的に民間の参入が難しく、診療所やフェリーの運航など「官ができることは官で」という小泉元首相の謳い文句の間逆を進めています。

雇用の場が少なく、過疎化を防ぐためにも、村内で最大の雇用体である役場が「職員の給与を低く抑えて、できるだけ多くの人を雇用する」というワークシェアリングを実践していました。村の職員数は190人で、給与水準の国家公務員との比較であるラスパイレス指数は73、全国で3番目に低い数字です。それでも役場の職員の給与は、村内の農協や漁協などの職員の給与と比べれば、かなり高いそうです。 

群馬県の太田市では今年1月から職員の残業を減らし、新たな雇用を創出するワークシェアリングを始めます。自動車工場などを解雇された市内在住者を対象とし、土木現場や窓口業務での臨時職員として20人ほど採用する予定です。財源は職員1500人の残業を減らすことで、その浮いた時間外手当を充てるそうです。

時間外勤務を減らし、新たな雇用を確保する手法は歓迎すべきものです。しかし、予算を減らされた職場の仕事量が変わらない場合は、サービス残業の常態化につながらないよう注意する必要があります。通常の勤務時間内で「待ったなし」の仕事が終わり、そのことで給与の手取りの総額が減っても誰も不満には思いません。

懸念されるのは姫島村の例がワークシェアリングの典型とみなされていく場合ですが、姫島村としても「ベストではないかも知れませんが、ベターであると考えています」と説明しています。前回記事で紹介したオランダのダッチ・モデルも連合と民主党との信頼関係があることを前提とし、その功罪も含めて検証すべきものとして例示しています。

その上で、経団連の御手洗会長のワークシェアリング発言は、派遣切り批判をかわすための姿勢が明らかです。実際、解雇された人がテレビのインタビューで「今さらクビを切ってから言われても」と不信感を募らせていました。そもそも経団連は総額人件費の抑制を強調しているため、「労働者間だけで仕事と賃金を分け合え」と言うのに等しく、必ず賃下げに連動するものと見られています。

実は2002年の不況期に政府、経団連、連合との間で「ワークシェアリングに関する政労使合意」が結ばれていました。しかしながら「その後、景気が持ち直したため、企業で導入する動きが広がらなかった経緯があります」と新聞記事には書かれていました。リンク先の「政労使合意」の内容を改めて目を通しましたが、仕事と家庭の両立などライフスタイルの見直し、多様な働き方に見合った短時間労働者の処遇改善などが目標として掲げられていました。

実施にあたっては労使の納得と合意が必要とされ、連合側の思いが強く反映された内容だったものと思います。経営側としては「経済のグローバル化、産業構造の変化等に対応し、企業による多様な雇用形態の活用を容易にすることにより、経営効率の向上」という利点を考えていました。しかし、2004年に製造業まで労働者派遣法が解禁され、労働力需給の調整弁を廉価で得られるようになりました。

この「合意」が実現できなかったことに連合側の責任も免れませんが、短時間労働者への均等待遇などコスト増の伴う内容に対し、経営側が熱意を示さなくなったことは間違いありません。その背景として労働者派遣法の適用拡大があり、失業手当も出ない解雇者が続出している現状につながっています。今朝のテレビ番組で、連合に加盟するJAM本部の役員の方も御手洗発言に「今さら」と答えていた気持ちがよく分かりました。

2009春闘に向け、連合は「賃上げも雇用も」を強く打ち出し、賃下げの口実とされるようなワークシェアリングには警戒感を示しています。今後、2002年に合意した内容を改めてアピールし、雇用創出も春闘の大きな柱とすべきではないでしょうか。このワークシェアリングの問題は、私どもの自治体にも引き付けて考えるべきことが多くあります。できれば次回以降の記事で、さらに掘り下げてみるつもりです。

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2009年1月 1日 (木)

希望の「変」となる2009年に!

あけましておめでとうございます。  Usi_2

今年もよろしくお願いします。 

毎年、元旦に年賀状バージョンの記事を投稿しています。いつも文字ばかりの地味なレイアウトであるため、せめてお正月ぐらいはイラストなどを入れ、少しだけカラフルになるように努めています。2005年8月に「公務員のためいき」を開設してから270タイトル目となりますが、昨年1年間で52点の記事を投稿しました。毎週必ず1回更新したため、ちょうど昨年1年間の週の数と一致しています。

当ブログへのアクセスの累計は現時点で48万件近くとなっています。昨年元旦までの数が30万件近くでしたので、1年間で約18万件のアクセスがあったことになります。1日あたりの平均が約500件、9月8日には1546件を記録し、1日のアクセスの過去最高だった1302件を上回りました。更新が週1回にもかかわらず、毎日、たくさんの方々にご訪問いただき、ブログを続けていく大きな励みとなっています。

また、いつも幅広い視点や立場からの貴重なコメントを多数いただき、記事本文の拙さが補強されているものと思っています。とりまく社会経済情勢の厳しさが増す中、ますます公務員への風当たりが強まるものと見ています。したがって、このブログを通し、公務員やその組合に対する批判や率直な意見を伺えることは非常に貴重なことだと考えています。そのような声があることを意識せず、やみくもに日常的な活動を進めることよりも、耳に痛い話も適確に把握した上で臨んでいく大切さをかみしめています。

さらに厳しい声を謙虚に受けとめながらも、主張すべきことは主張する目的を掲げながら続けています。寄せられたコメントに対しても、なるべく一つ一つお答えするように心がけてきました。そのことによって、公務員側の言い分が少しでも理解いただけた場合、ブログを開設して本当に良かったと思える時でした。ちなみにコメント数の累計は2100件に及びます。改めて当ブログを訪れていただいた皆さんに感謝申し上げます。ありがとうございました。

さて、これまで年賀状バージョンの記事の中には、十二支にちなんだ話題を盛り込んできました。今年はウシ年ですが、昨年末に投稿した記事が「剣を売りて牛を買う」とし、すでに十二支のネタは使っていました。そのため、今年は十二支から離れて、2008年の世相を漢字1文字で表した「」というキーワードに着目してみました。日本漢字能力検定協会(京都市)が公募し、全国から過去最多の11万1208通の応募があり、「変」は全体の約5%に当たる6031票を獲得したそうです。

「変」を選んだ理由として、「Change(変革)」を訴えたオバマ氏が次期米大統領に選ばれたこと、2年続けて首相が短期間で交代したこと、サブプライムローン問題に端を発した世界経済の大変動、世界的な気候変動などがあげられていました。その他、秋葉原の無差別殺人のような凶悪で変な事件が頻繁に起こったことも、「変」が選ばれた理由としてあげられています。

やはり暗い世相を反映し、ネガティプな意味合いが多くこめられていたようでした。一方、「変」の文字を大きく揮毫した清水寺の森清範貫主は「政治や経済、社会を変えて欲しいという願いだと思う」と述べています。つまり米大統領選の結果と同様、今後に希望を託した「変」であったことも確かです。

そもそも一昨年の参議院選挙で自公政権に対し、「変革」を求める判断が下されていたはずです。それにもかかわらず、自民党内での政権のたらい回しが続いてきました。さらに支持率が低落していく中、麻生首相は政局より景気対策と取り繕いながら解散総選挙から逃げている状況が明らかです。しかし、秋には任期満了を迎えるため、時期は多少流動的ながら必ず今年中に衆議院選挙が行なわれます。

事前の予想では民主党の健闘、自民党の苦戦ぶりが伝えられています。しかし、政権交代そのものが目的であっては問題だろうと思っています。民主党を中心とした政権ができることによって、今の閉塞状況を打ち破れるという希望への「変革」につながることが重要です。とりわけ労働ダンピングが進み、雇用の危機が叫ばれる中、民主党の有力な応援団である連合の責任と役割も大きく問われていきます。

700万人の連合組合員の生活を守ることが大事であることは言うまでもありませんが、未組織や非正規雇用も含め、よりいっそう労働者全体の声を適確に代弁できる組織への脱皮が欠かせません。例えば連合と民主党との信頼関係を踏まえ、オランダの政・労・使が取り組んだワークシェアリング(参考記事「大胆な改革、オランダのダッチ・モデル」)などの手法も検証し、安定した雇用の創出をめざすことも必要だろうと考えています。

世界に目を向ければ、昨年末、イスラエルがパレスチナ自治区ガザへ大規模な空爆を続けていました。その空爆の犠牲となっているのは子どもたちも含む数多くの民間人でした。イスラエルを全面的に支持してきたブッシュ政権を背にした攻撃であることは明らかであり、1月下旬にオバマ政権が発足すれば停戦に向かうものと見られています。それまでオバマ政権移行チームは「大統領は1人」として介入を避け、イスラエル政府は米政権が代わるまでに有利な停戦締結にこぎつけたい思惑のもとに軍事的圧力を強めているようです。

このように武力行使の行方も政治によって大きく左右されてきた歴史と現状があります。かけがえのない人の命を尊重するのが政治の重要な役目だとすれば、やはり戦争や紛争の根絶に向けて最大限努力する政治家を頼もしく感じる人が多いのではないでしょうか。未知数のところもありますが、オバマ新大統領がその1人であることを期待し、世界中から少しでも戦火が消えていく「変」の年となるよう切望しています。

清水寺の森貫主は「自分自身が変わっていくことも大切」と述べられたようですが、様々な切り口において示唆に富んだ言葉だと受けとめています。いずれにしても2009年が希望にあふれ、明るい「変」の年となることを心から願っています。末筆ながら当ブログへご訪問いただいた皆さんのご健康とご多幸をお祈り申し上げ、新年早々の記事の結びとさせていただきます。

        ☆新春特別付録☆ 「2008年ブログ記事回想記」 

年賀状バージョンの恒例となっていますが、今回も2008年に投稿した記事をインデックス代わりに10点ほど並べてみました。改めて皆さんへ紹介したい内容を中心に選び、いわゆる「ベスト10」ではありません。したがって、10点の並びも投稿日順となっています。それぞれ紹介した記事本文へのリンクをはってありますので、のんびりご覧いただければ幸です。

  1. 2008年、転換の年へ ⇒ 今回と同じ年賀状バージョンで、ネズミ年の年頭の思いを綴りました。やはり特別付録として「2007年ブログ記事回想記」も掲げました。
  2. 千円札の重み ⇒ 徴税吏員となり、ガソリンの暫定税率の問題など税金に関する記事を複数投稿しています。この記事は実体験を反省しながら綴ったものでした。
  3. 脱成果主義の動き ⇒ 人事異動の時期、協力関係を築く評判情報の記事などと合わせ、過剰な成果主義が見直されている企業の動きなどを綴りました。
  4. 図書館の役割と可能性 ⇒ 指定管理者制度の導入提案を受け、本の貸出だけではない多様な図書館サービスの大切さについて、3回にわたって提起しました。
  5. 橋下知事の人件費削減案 ⇒ コメント数94は1つの記事への記録を更新しました。決して「炎上」ではなく、投稿者同士でハイレベルな議論が交わされました。
  6. ルワンダの悲しみ ⇒ 「公務員」にかかわらない話題も時々取り上げています。手記『ルワンダ大虐殺』と映画『ホテル・ルワンダ』を通した感想を書き込みました。
  7. 講演会「小さな政府」を考える ⇒ 『脱「構造改革」宣言』の著者である山家悠紀夫さんの講演会をPRしながら「小さな政府」の問題点を提起した記事でした。
  8. あるチラシへの苦言 ⇒ いろいろな意味で注目を集めた記事だったようです。1日のアクセス数の記録更新(1546件)につなげた記事でもありました。
  9. 民主党を応援する理由 ⇒ 直前の記事では民主党の政権公約を取り上げています。この記事で、表題のとおり私なりの民主党への期待感を書き込んでいます。
  10. 犯罪被害者と人権 ⇒ 「地下鉄サリン事件被害者の会」代表世話人である高橋シズヱさんの講演をもとに綴りました。高橋さんご本人からコメントも頂戴しました。

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