« 犯罪被害者と人権 | トップページ | 雇用の危機に際し、様々な動き »

2008年12月14日 (日)

もう少し裁判の話

このブログは週1回の更新を基本としながら続けています。いただいたコメントに対しては素早いレスに努めていますが、記事本文は腰を落ち着けられる週末に書き込んでいます。平日の夜が必ずしも毎日忙しい訳ではありませんが、実生活に負担をかけないペースとして週1回更新が定着してきました。

ちなみに1週間あると様々なニュースや出来事に接し、投稿したい題材には事欠きません。特に最近、経済状況の悪化による深刻な社会不安が広まる中、当ブログを通して発信すべき内容も山積しているのかも知れません。また、新たなKY(漢字が読めない)とまで揶揄されている麻生首相と自民党の混乱ぶりに対し、物申したいことは数多くあります。

さて、「来年5月に始まる裁判員制度」「犯罪被害者と人権」という記事が続きましたが、今回も裁判に関する話題を取り上げさせていただきます。1日に何万人ものアクセスがある「きっこのブログ」へ私も頻繁におじゃましています。そのブログに以前取り上げられた記事を読み、高知県で起こった白バイ事故裁判の理不尽さを知ることになりました。

きっこさんは、さらにテレビ朝日の「報道発 ドキュメンタリ宣言」で、その問題の特集が組まれることを事前に告知されていました。先々週月曜の夜が放映日でしたが、あいにく所要で帰宅できず、間が悪いことにハードディスクが調子悪く録画もできませんでした。それでも先週日曜、きっこさんが「片岡さんの娘さんからのメッセージ」という記事を投稿し、その中で見逃した番組「なぜ私が収監されるのか~高知白バイ事故の真相~」を一通り見ることができました。

お時間がある方はリンク先をご覧いただければ、事件への疑問がわき上がってくるはずです。かいつまんで当ブログでも事件の概要などを紹介させていただきます。発端は2006年3月3日午後、高知県春野町の国道で中学生22人と教員3人を乗せたスクールバスと白バイが衝突しました。白バイを運転していた高知県警交通機動隊巡査長(当時26歳)が死亡し、バス運転手の片岡晴彦さんは業務上過失致死の疑いで逮捕起訴され、裁判は最高裁への上告まで争われました。

片岡さんの無罪を訴えた4万8千人を超える署名が最高裁へ提出されましたが、今年8月、上告棄却という結論が下されました。その結果、片岡さんは禁錮1年4か月の実刑判決を強いられ、10月には兵庫県加古川刑務所に収監されています。「報道発 ドキュメンタリ宣言」は事件の経緯から片岡さんが収監される日までを追い続けた内容でした。

警察と検察は「バス運転手が漫然と駐車場から出て、時速5~10キロで国道に進入し、法定速度を守って走ってきた白バイと衝突した」とし、運転手の一方的過失が事故の原因だったと指摘しています。それに対し、バスに乗っていた複数生徒や教師、バスの直後で車を運転していた校長らは「事故の際、バスは止まっていた」「止まっていたバスに白バイが突っ込んだ」 と証言し、検察側主張に疑問を抱く声が続出していました。

加えて、白バイは時速100キロぐらいで走っていたとの複数の目撃証言もありました。追跡中ではなく、そのスピードでバスへ突っ込んだ場合、明らかにスピード違反であり、白バイを運転していた巡査長の過失責任が大きくなることは明らかでした。その日、事故現場から80メートルほど離れた対向車線の茂みで、死亡した巡査長と同じ交通機動隊に所属する白バイ隊員が取り締まりのため待機していました。

その白バイ隊員は巡査長が「法定速度60キロで走行していた」と証言し、裁判官は「白バイ乗務歴7年を有し、日頃から進行中の車両の速度を目測訓練している隊員の判定に疑問はない」と認めていました。この裁判は「バスが止まっていたかどうか」に対しても一事が万事、数多い中学生や教員らの証言は採用されず、職業的な専門家という評価のもとに警官数名の証言が重要視されていました。

事故現場に残された「スリップ痕」にも疑惑の目が向けられていました。この痕は、急に飛び出したバスが白バイと衝突し、急ブレーキをかけた動かぬ証拠だとされていました。しかし、この「スリップ痕」をめぐり、「タイヤの溝の痕がない」「右と左の車輪の向きが不自然」など数々の疑問点が浮上しています。弁護側は、このスリップ痕を「警察側が証拠をねつ造した」可能性があるとまで指摘していました。

妻と幼い子ども2人を残し、26歳の若さで亡くなられた巡査長は誠にお気の毒だったと思います。なお、本人に重大な過失があったかどうかで公務災害などの補償面は大きく左右されます。疑いたくはありませんが、もし、そのような配慮から警察ぐるみで証言や証拠を作り上げていたとしたら絶対に許せる話ではありません。

さらに検察や裁判所が過剰に警察の言い分などを受け入れる背景として、圧倒的なマンパワーが警察側にあり、地元警察との良好な関係が欠かせない事情を耳にします。つまり検事や裁判官は、地元警察から嫌われたくない意識が働くのではないかとの見方も否めません。警察、検察、裁判所、それぞれ職務を忠実に執行しているものと信じていますが、一つの地域の問題だったとしても、このような不信感を抱かれること自体厳しく問われなければなりません。

そして、片岡さんが無実を訴え、控訴したのにもかかわらず、そのことをもって「不合理な弁解をして責任を免れようとしており、真摯な反省の情に欠けている」と断罪した高松高裁の姿勢にはあきれてしまいます。反省していないと決め付けられたため、執行猶予も付かない実刑判決につながっていますが、3審制への信頼を裏切る判決理由だったと言わざるを得ません。

先日は広島女児殺害事件の1審無期判決を高裁が破棄し、差し戻しとなりました。1審は来年5月から始まる裁判員制度のモデルケースとして、公判前整理手続きが適用され、5日間連続の集中審理が行なわれました。そのため、犯行場所が室内か屋外かなどを特定せず、無期懲役という迅速な判決が下されていました。それに対し、広島高裁は「刑事訴訟法の法令に違反した手続き」とまで批判していました。

あまり裁判員を拘束できない制度設計上、公判の迅速化が試行された訳ですが、結果的に充分な審理が尽くされなかった事例となりました。このように裁判員制度導入が間近となり、司法の問題に注目が集まり出したのは好ましいことだと思っています。その上で、高知白バイ事故裁判の理不尽さなど、もっともっと現状に対しても幅広い議論が求められているのではないでしょうか。

|

« 犯罪被害者と人権 | トップページ | 雇用の危機に際し、様々な動き »

コメント

OTSUさま、引き続き裁判関係の問題提起をありがとうございます。どうにも感情的な書き方をしがちですが、ご容赦ください。

白バイ事件のことは、以前なにかの報道番組の特集で拝見しました。証拠捏造を主張する弁護側に対する裁判所のコメントは「警察が証拠を捏造する理由がない」でしたね。とんでもない話です。巡査長の災害補償など二の次三の次、警察にはもっと大きな、組織ぐるみで抗戦するだけの理由がありますよ。裁判所が認識していないか、認識したくないだけだと思います。

大多数の一般の方も、冤罪報道を目にすれば司法の不合理さを感じるでしょうが、実際に冤罪事件を目の当たりにしたあとでは、報道を見聞きするたびに襲われる恐怖と憤りは言葉に言い表せないものになりました。私も以前は、警察はともかく、検察や裁判所にはそれなりの信頼をおいていましたが、今は疑念が先に立ち、どうしてもそれを拭うことができません。
私が関わった事件でも、裁判長は「被告は嘘ばかり言って反省の色がない」と決め付けました。本人は一貫して無罪を主張し、犯行を認める供述調書も一切ありません。していないものをどうやって反省するのか? やっていないことをやっていないと言ってはいけないのなら、法廷に被告を呼ぶ必要などないでしょう。

こうした実情を一人でも多くの方に知っていただいた上で、「市民感覚」を裁判に反映して正しい審理につなげるよう仕向けていければ、裁判員制度は充実したものになると思います(公判前整理が公正にされればですが)。当事者は、たとえ時間がかかっても正当な審判が下されれば救われます。実際問題として、いったん有罪になったものを覆すのは大変困難です。だからこそ、裁判員が参加する1審の場で、慎重かつ公正な審理がされることを強く望みます。

毎度毎度とっちらかった書き込みで申し訳ありません。

投稿: 司法に失望 | 2008年12月16日 (火) 17時10分

司法に失望さん、コメントありがとうございます。
その失望している思いと今回記事に対する温度差はあるかも知れませんが、「何かおかしい」という問題意識は私も同様な立場だろうと思っています。その問題意識を踏まえ、さらに様々な面から今後も司法について考えてみるつもりです。

投稿: OTSU | 2008年12月16日 (火) 23時39分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/130697/43400685

この記事へのトラックバック一覧です: もう少し裁判の話:

» 死人に口なし。高知県警は、亡くなった白バイ隊員にも罪をかぶせているか!? [高知県警の冤罪か - 白バイ衝突事故 - 坂本竜馬の土佐の高知で]
なぜ交通事故で冤罪や捏造が?−K察司法監視委員会 http://r110.blog31.fc2.com/blog-entry-4.html から写真転載 この写真は、高知県警、検察、そして片岡さん側が主張するバイクの2本の走行ラインを表している。 「赤色バス直行」が、高知県警、検察の主張する白バイ隊員のとったライン。 「青色バス回避」が、片岡さん側が主張する白バイ隊員のとったライン。 この記事を読んでいるあなたが、バイクに乗っていて(または車を運転していて)、バス... [続きを読む]

受信: 2008年12月14日 (日) 16時05分

« 犯罪被害者と人権 | トップページ | 雇用の危機に際し、様々な動き »