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2008年10月25日 (土)

普通救命講習を受講

木曜の夜は自治労現業統一闘争の集中交渉日でした。徹夜交渉を辞さず、現業職場における懸案課題の解決をめざしました。学校給食配膳員制度見直し提案の撤回や学校用務職の正規補充の確認など評価すべき一定の回答を引き出し、日付が変わらない段階で決着をはかることができました。各自治体で行政改革が進む中、現業職場の存続そのものが危ぶまれています。

同じ自治体で働く職員同士、その職責に差がないはずであり、事務技術系の非現業職と現業職の賃金水準などは基本的に同一な制度設計となっています。そのため、民間の調理業務などの従事者と比べ、公務員調理職らの「賃金は高すぎる」という批判が高まっています。そのような声があることを理由に現業賃金水準の引き下げや新規採用の手控えなど、総務省から自治体への圧力が強まっている現状です。

この動きに対し、自治労は単なる既得権確保の闘争にとどめず、よりいっそう現業職場の仕事の質を高めながら住民の皆さんからの共感を得られる取り組みを重視しています。その一環として、「公共サービス基本法」の制定をめざし、自治体業務の直営の必要性などを各地で訴えています。今回の統一闘争は、私どもの組合にとっても重要な攻防だったため、たくさんの職場組合員の皆さんの交渉への結集は非常に勇気付けられました。

さて最近、こんにゃくゼリーをのどに詰まらせ、窒息死する事故が相次いだため、メーカーがその人気商品を製造中止する事態となりました。船橋市の小学校では児童が給食のパンをのどに詰まらせ、死亡するという痛ましい事故も起きました。救急車で駆けつけた医師らが器具を使って取り出すほどの詰まり方であり、先生たちの応急手当を責めることは酷な話だろうと思っています。

多くの児童生徒と日常的に接することが仕事である教員の皆さんは、最低限、普通救命講習を受講されているはずです。素人では手に負えない難しいケースや、気が動転して適確に応急手当をできない場合もあるかも知れませんが、その講習を受けているかどうかは大きな違いとなります。私どもの市では、これまで児童館の職員らに限った研修でしたが、昨年度から3年かけて全職員に普通救命講習の受講を義務付けました。

私の順番は先週火曜日に回ってきました。朝、直接消防署に出向き、東京救急協会の職員らから講義と実技指導を受けました。3時間近く、心肺蘇生、AED(自動体外式除細動器)の使い方、気道異物除去、止血の方法を懇切丁寧に教えていただきました。まず講師の方から応急手当、即ち救命手当の重要性の説明を受け、特に公共の場に勤める私たち市職員が学ぶ意義を語っていただきました。

突然倒れ、心肺停止している人が出た場合、119番通報してから救急車が到着するまで平均で6~7分かかるそうです。この6~7分が傷病者の生命を大きく左右すると言われています。このような意識不明の人に対し、「救急車が来るまで動かすな」という俗説もありました。しかし、その説は明確に誤りであると講師の方は話されていました。

救命に対する知識がなく、何も手を出せなかったため、そのような話が広がったのではないかとも述べられていました。そもそも救急車が到着するまでの6~7分は、救急隊員や医療従事者では決して埋めることができない時間です。尊い命を救えるかどうかは、その場に居合わせた人たちの機転や行動が問われることになります。

また、応急手当を試み、結果的に救命できなかった時、胸骨圧迫によって骨折させた場合など、その行為に過失があったとしても法的な責任は問われないとの説明を受けました。米国の各州には「善きサマリア人法(Good Samaritan Law)」と呼ばれる法律があり、そのよう点を規定しているそうです。日本には直接定めた法律がない現状ですが、緊急時に市民が善意で行なった行為を罰した例は皆無だと述べられていました。

一方で、居合わせた人たちに対し、心肺蘇生などの救命処置を行なわなければならないとする法的義務もないそうです。しかし、救急現場に居合わせた時は、ためらわず応急手当する必要性があることを改めて認識できました。とは言え、今回のような講習を一度も受けていなければ、いざという時にAED一つ満足に使えなかったかも知れません。

今回の講習だけで、人口呼吸や胸骨圧迫の方法などを取得したとは到底言えません。それでも一度だけでも実際に体験できたのは、たいへん貴重なことでした。特にAEDを一通り操作する機会は意外と少なく、直接触ったのは今回が初めてでした。公共の場所にAEDの設置が急速に進んでいましたので、欠かせない実技の一つだったものと思います。

ちなみにAEDの操作は難しいものではなく、誰もが使えるようになっています。どのメーカーの製品も基本的な操作は同じであり、カバーを開け、電源を入れると音声案内が流れます。その案内通りに操作を進め、貼る位置のイラストが入った電極パットを傷病者の体2か所に貼ります。自動的に心電図の解析が始まり、解析の結果、電気ショック(除細動)が必要な場合のみ、続いて「ショックボタンを押してください」の指示が案内されます。

電気ショック後、音声案内に従い、胸骨圧迫30回、人口呼吸2回の心肺蘇生を行ないます。2分経過すると心電図の解析が始まり、電気ショックが必要な場合、再び「ショックボタンを押してください」と指示されます。傷病者から何らかの応答や目的のある仕草が出るか、普段通りの呼吸に戻らない限り、心肺蘇生とAEDの手順は救急隊が到着するまで繰り返すことになります。

気道異物除去は救命処置の一つであり、背部叩打法や腹部突き上げ法などを教わりました。傷病の悪化を回避することを目的とし、市民により行なわれる最小限の手当を狭義の応急手当と呼びます。止血法は狭義の応急手当に位置付けられているようです。市民が行なう止血法として、直接圧迫止血法の説明を受けました。出血部位をガーゼやタオルなどで直接強く圧迫して出血を止める方法でした。

最後に、この講習は管理職も含め、すべての職種の職員が受講します。つまり市職員として、救急現場に居合わせた時、応急手当に全力を尽くすための使命を啓発する重要な研修に位置付けられています。このような使命感の求められ方は、公務員として当たり前なことであり、大地震の際などにも発揮しなければならないものです。今回の記事の冒頭で申し上げたとおり現業非現業問わず、課せられた市職員としての職責の重さの一つだと受けとめています。

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コメント

おはようございます。
救命救急講習のお話、すばらしいことだと思います。
私の職場も毎年、職場研修の一環として「簡易」講習(さすがに半日の講習を全員で受けるのは困難ですので・・)を行っていますが、救命の方法を多少なりとも知っているか否かでは、大きく違ってくると思います。
いつどこで事故や災害の現場に出くわすかわからない中で、市の職員としてできる最善を尽くすためにも必要な技術だと思います。
このような取り組みが広がればいいですね。

投稿: shima | 2008年10月27日 (月) 08時18分

shimaさん、コメントありがとうございます。
全職員が半日コースの講習を受けることは、やはり画期的なことのようですね。確かに数年前、先行して始めた近隣市の例が新聞の地域版に取り上げられたこともありました。このように貴重な研修でしたので、いざと言う時に実践できるようテキストの復習に励むつもりです。

投稿: OTSU | 2008年10月27日 (月) 21時41分

>事務技術系の非現業職と現業職の賃金水準などは基本的に同一な制度設計
 確かに、職責に違いは無いと思う反面、世間一般の「給料」には、職種によって違いがあるんも事実で、ここらへん難しいところではあるわな。せやけどここに楔を打たれて、公務員全体の給与が下がってしまう事になっても、困るしな。あと学校給食かて、どっかの業者まかせにしてしもたら、コストダウンと引き換えに、安全面での不安が出てくるかもしれん。そらあんさん、娘の給食にメラミンとか入ってたらブチギレやで。せやから世間一般の現業よりは高めの水準ってのがええ感じやと思うんやけど、それでは事務技術系と差が出てまうんやろな。難しいのう。

難しいといえばAED、あれ、メーカーによる微妙なインターフェースの違いとか、冷静に判断できるかどうかわからん場面でちゃんと対応できるか、実際のところ不安やな。大阪ではAEDで命が助かった高校球児がおったんやけど(打球が胸に当たったらしい)、それを操作してたんはたまたま観戦してた救急救命士やったらしいからな。一般人のオレが意識のない人間相手に冷静になれるんやろか、と、駅のAEDを見るたび思うねん。あれな、テレビでCM流したら、使い方頭に入ると思うねんけどな。そうそう、AEDって、心電図はずっと記録されるから、患者の意識が戻っても外さずに、そのままにしとくらしいな。技術の進歩はすごいのう。あとは、それを使う人間にかかってくるんやな。

投稿: K | 2008年10月29日 (水) 02時43分

Kさん、コメントありがとうございます。
現業職の位置付けは本当に丁寧な説明が求められているものと思っています。
AEDの操作は記事本文でも書いたとおりでした。それでも誰もが講習を受けられる訳ではありませんので、ご指摘のようなCMも必要かも知れませんね。

投稿: OTSU | 2008年10月29日 (水) 07時22分

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