もう少し自治労の話
時事の話題をブログに書き込むことの利点を感じています。個人の責任による運営とは言え、不正確な情報をインターネット上に発信するのは慎まなければなりません。したがって、日々のニュースへの関心が高まるとともに自分の文章とする際、曖昧な理解内容を整理する機会となっていました。
正直なところ破綻したリーマン・ブラザーズはさておき、米政府が支援を決めたAIGは改めて新聞で確認しなければ自信を持って書き込めない会社名でした。アメリカン・インターナショナル・グループの略称であることが分かりましたので、もう忘れないと思いますが「Aで始まる会社名だった」程度のお恥ずかしい始末です。
いずれにしても米国の金融不安が与える世界経済への深刻な影響をはじめ、事故米の食用転売問題など国民生活を脅かすニュースが続いています。それに対し、政治空白を生じさせた福田首相の「客観ぶり」は相変わらずです。さらに連日、テレビから流される自民党総裁選の茶番さにも辟易し、最近はチャンネルを合わすこともありません。
さて、前回記事「自治労の名前が消える?」へ、イチ公務員さんから「自治労の存在意義には疑問を感じざるを得ません」とのコメントが寄せられました。そのコメントには「ある地方公務員のブログ-市役所のWHYな日々-」の記事「【自治労】なぜ労組で憲法9条問題を議論するのか(苦笑)選挙のための自治労」が紹介され、主に自治労の政治活動に対する疑念の声でした。
このような問いかけは当ブログへ数多く寄せられ、その都度、私なりの考え方をお答えしてきました。そもそもイチ公務員さんや「ある地方公務員のブログ」の管理人さんらの思いは、自治労組合員の中で決して少数ではないものと見ています。その意味で、たいへん貴重な問いかけであり、丁寧にお答えすべき内容だと思っています。そのため、コメント欄でのレスにとどめず、記事本文で自治労の話をもう少し続けることとしました。
自治労の正式名称は、全日本自治団体労働組合です。連合に加盟し、組合員94万6千人を擁する国内最大の産業別組合(産別)です。地方公務員の組合として1954年に結成されましたが、現在は地域公共サービス産別の形成をめざす方針のもとに数多くの民間労働者(2006年の組織基本調査で3万4千人)が自治労組合員となっています。
独立した財政や人事権を持った単位組合を単組(たんそ)と呼びます。自治労はその単組の連合体であり、単組一つ一つが独自の方針を掲げていますので、千差万別な個性の集合体だと言えます。余談ですが、民間組合の皆さんから「同じ自治労でもA市職労さんとB市職労さんは雰囲気が違いますね」と不思議がられる場合があるほどです。
このブログを始めた頃、「組織の力、大事な力」という記事を投稿しました。一人ひとりの力は弱くても組合という組織へ結集することによって、組合員の切実な声を理事者側に直接訴えることができる大切さを綴りました。同様に一つの単組だけで発揮できる力には限界があります。しかし、数多くの単組が自治労へ結集することによって、政府へも直訴できる大きな力となり得ることを「Part2」にわたって書き込んでいました。
また、自分たちの職場だけ働きやすくても、社会全体が平和で豊かでなければ暮らしやすい生活とは言えません。企業内の交渉だけでは到底解決できない社会的・政治的な問題に対し、多くの組合が集まって政府などへ大きな声を上げていくことも重要な活動の一つです。このことは官民問わず、様々な労働組合が心がけている方針だと言えます。
その中で、自治労は社民党の前身である社会党と緊密な支持協力関係を築き、政策的な方針も近い間柄でした。当然、それらの方針は、自治労組合員一人ひとりの意思の積み重ねで決まっていく構図だったことは今も昔も変わりません。ただイチ公務員さんらの立場からすれば、その決定過程に参画している実感が乏しい実情なのかも知れませんが、決して第三者が勝手に決めている訳ではありません。
皆さんが選んだ組合役員や代議員が、もしくは単組の会議では組合員一人ひとり、直接関与する機会も少なからずあり得るはずです。とは言え、自治労の組織は巨大であり、培ってきた歴史の重みもあるため、簡単に旋回できないのも確かです。それでも時代情勢の変化を踏まえ、自治労の方針は常に進化しているものと思っています。
一方で、100万人近い組合員で構成しているため、イチ公務員さんらと対極的な「もっと反戦平和運動に力を注ぐべき」との根強い意見もあります。このような両極端な声を受けとめていく立場は、自治労本部も単組の役員も同様だろうと考えています。そのことを踏まえ、組合員のため、社会全体のため、どのように組織の力を発揮していくのが適切なのか判断していかなければなりません。
言うまでもなく労働組合は、まず足元の日常的な職場活動を全うする責務があります。その上で、社会的な課題や政治活動へも運動領域を広げていくバランス感覚が欠かせず、主客が逆転するようでは問題だと思っています。中には自分たちの政治活動を進めるために労働組合の役員になる人たちもいますが、まったく論外な話です。
長々と書いてきましたが、イチ公務員さんの疑問に対して適確に答え切れていないかも知れません。特に「選挙」に関する記述がありませんが、不充分な点は次回以降の記事で補わさせていただきます。最後に念のため、社会保険庁の「標準報酬月額」改ざんは大きな問題であり、「是々非々の議論」で述べたとおり「非」を「是」とする立場ではないことを付け加えさせていただきます。
| 固定リンク
コメント
OTSUさんがが図らずもこのブログで記されているように「イチ公務員さんや「ある地方公務員のブログ」の管理人さんらの思いは、自治労組合員の中で決して少数ではないものと見ています」というのは、そのとおりだと思います。
したがって、イチ公務員さんや「ある地方公務員のブログ」の管理人さんが、その思いを自ら所属される組合で発言されることをお勧めしますし、場合によっては執行部案に対して対案や修正案を提出されることを推奨します。またその思いを理由として組合役員に立候補されることをお勧めします。
かなりの賛同者を得て、対案や修正案が通る、あるいは立候補されても当選される確率は高いものと思います。
私は、自治体職員の労働条件は国の法令に制約されており、全国の自治体労働者が結集して国会議員の送り出し含めて積極的に国の政策にコメントすべきと思っていますし、自分たちの仕事と同様に、世の中のあり様について、積極的に提言すべきと思っています。
もちろん、冒頭に述べたような組合員も相当おられると思われ、組合の中で論議になると思いますが、それはそれで組合が組合たるべきというか、組合があるこそできる素晴らしいことと思います。
投稿: 福岡のある自治体職員 | 2008年9月21日 (日) 22時37分
福岡のある自治体職員さん、おはようございます。
いろいろな意味で、組合をとりまく情勢は厳しいものがあります。そのような中で、組合役員を新たに担おうとされる人の少なさは、どこの組合も同様な悩みがあるのではないでしょうか。
記事本文でも少し触れましたが、だからと言って「やりたい人」だけが組合役員を担うようになった場合、ますます職場組合員の思いと乖離した執行部となってしまう恐れがあります。そのためにも、幅広い考え方の人たちが組合役員を担える仕組み作りが非常に重要だろうと思っています。
言葉足らずのレスとなっているかも知れませんが、福岡のある自治体職員さんの問題意識を受けとめながら私自身の思いを取り急ぎ綴らせていただきました。
投稿: OTSU | 2008年9月22日 (月) 07時31分
おはようございます。
組織の中にさまざまな意見があることの方が健全ですよ。
そのさまざまな意見に対し、議論し、落とし所を探り、全体の意思決定を行っていくことこそが、大切だと考えています。
うまくまとまらないこともありますが、議論することによってお互いの立場や考え方が多少なりとも理解できるはずです。
OTSUさんのこのブログの精神がまさにそれではないでしょうか。難しいことですけど本当に大切なことと思います。
投稿: shima | 2008年9月22日 (月) 08時10分
shimaさん、コメントありがとうございます。
様々な意見を率直に議論し合える組織が健全であるものと私も考えています。一方で、組織として一つの答えを出さなくてはならない場面も少なくありません。その際、執行部側は「なぜ、そのような方針なのか」丁寧な説明が求められ、多様な意見に対して率直に耳を傾け「結論ありき」ではない柔軟さも重要だと思っています。
そして、このような議論を経て確立した方針こそ、たいへん力強いものとなり得るはずです。また、政治や平和活動の方針などで、自分たちの組合員の中でさえ一枚岩となれないような場合、働きかけが弱いのか、アピールの方法が下手なのか、もしくは方針そのものに何か問題があるのか検証していく姿勢も欠かせません。
このような考え方に対し、異論を持たれる人たちも少なくないものと見ています。リーダーシップ不足だと批判されるかも知れませんが、私自身、「結論の押し付け」ではない組合運動にこだわっていこうと考えています。shimaさんからご指摘いただいたとおり当ブログがその一助となることを願いながら今後も地道に続けていくつもりです。
投稿: OTSU | 2008年9月22日 (月) 21時19分
福岡のある自治体職員様
私は組合に加入していません。加入しないことで意思表示としております。ですので役員に立候補することは100%ないでしょう。私の職場内では組合加入者は減少の一途をたどっています。だからといって職場内の人間関係が悪いということも全くありません。逆に組合活動を熱心に行う方々の方がどちらかというと浮いている(言葉が悪くて申し訳ありません)感じです。
おそらくOTSUさんの勤務先や「福岡のある自治体」さんは、そういう雰囲気ではなく、古き良き(というべきか、古き悪しきというべきか)組合なのでしょう。
これは、例えて言うなら、「この宗教団体に入れば絶対に幸せになれるよ」と言われて素直に入る人もいれば入らない人もいる、そして、その「幸せになれる」の価値基準が各人によって異なる、ということに似た感覚だと思います。(例えとしてはおかしいかもしれませんがご容赦願います)
もっとも、そう考えれば、いろいろな思想や主義主張を持った人が世の中にいてもいいと思うので、今後一切、こちらへ意見を書き込まないようにしたいと思います。(やけくそになってるわけではなく(苦笑)少しばかり反省も込めての考えです)
それでは、心底より、「『結論の押し付け』ではない組合運動にこだわって」いただきたいことをお願いして、最後の書き込みとさせていただきます。
投稿: イチ公務員 | 2008年9月25日 (木) 01時01分
otsu様 ご無沙汰しております。
こちらも大会シーズンに向けて準備中で、明日から県本部大会に出席してきます。
総選挙も近づき、どのような展開になるのか・・・私の地区では民主党県連と連合の関係がいまひとつよくなく、特に単組のある選挙区ではまだ候補者の名前も挙がっていません。ちなみに自民党は前首相ですが・・・
さて大会の議案集を作成をしている忙しいさなかに、組合員の雇用問題が出てきてそれの対応に非常に苦慮しています。
otsu様の単組においては、メンタルヘルスの関係で雇用問題まで発展したことはないですか?
前回からの話を見ていますと、「確かに」と思う点と「?」と思う点があります。ただ、職場のおかれている環境はうちだけかもしれませんがかなり厳しいものになっていると痛感しています。
私の組織も組織率9割程度で、入っていない職員もいることは確かですが、非組合員においてもメンタル問題は生じています。
今回は組合員のみ対応を図りましたが、組合員の望む結果を導き出すことは出来ませんでした。
委員長としては強がってはいますが、結構ショックです。
投稿: ある市職労委員長 | 2008年9月25日 (木) 17時30分
イチ公務員さん、コメントありがとうございました。
ご存知のとおり組合員、非組合員に関係なく、公務員の労働条件は条例や規則に基づくものですので、一律の処遇となります。オープン・ショップ制の民間組合にも当てはまる話ですが、その意味で非組合員の皆さんは「フリーライド」と見られがちです。
そして、皆が組合に加入しない状態に至った場合、もしくは役員の担い手が皆無となった時、必然的に組合は消滅します。組合に距離を置こうと考えていた自分が辞められず、役員を長年にわたって務めてきている理由は「組合は絶対必要」だと考えているからです。
また、組合と宗教団体は性質がまったく異なるものですので、もう少し違った角度から労働組合を眺めてみてください。今後、イチ公務員さんの率直なご意見を伺えないことは残念ですが、お時間が許す時はお気軽にご訪問くださるようよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2008年9月25日 (木) 21時01分
ある市職労委員長さん、コメントありがとうございました。
私どもの役所でもメンタルの病で長期にわたって休職されている方が増えています。その方たちの復帰に向けては労使それぞれの立場から最大限のサポートに努めています。しかし、残念ながら休職制度にも年限というルールがある中、復帰が果たせず退職に至った方たちも少なくありません。
また、労使で構成する安全衛生委員会で、日頃からメンタルヘルスは重点課題として取り組んできています。年に1回、所属長による全職員対象の面談制度を数年前から実施していますが、メンタルヘルス対策の一つとして安全衛生委員会で創設してきました。
組合として強く心がけている点は、各職場における適切な人員配置だと考えています。健康を害するような不充分な人員配置は論外であり、余裕がなくギスギスした職場もメンタメヘルスを誘発するものと危惧しています。その意味合いから「人員確保・職場改善要求アンケート」を毎年、職場ごとに集約して要求書をまとめ、新年度に向けて要求の前進をめざした労使交渉に力を注いでいます。
ある市職労委員長さんが知りたかった内容と少し異なるのかも知れませんが、私どもの組合の状況を取り急ぎ報告させていただきました。なお、総選挙に関しては次回記事で触れる予定ですので、ぜひ、またご訪問ください。最後に、いろいろたいへんな時期ですが、お互い前向きに頑張りましょう。これからも、どうぞよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2008年9月25日 (木) 21時31分
お疲れ様です。
県本部・単組それぞれにおいて様々な状況や実態・運動があることが自治労の特徴かもしれません。その中で、私が経験してきたことを書き込みしつつ、「こんな考えもあるんだ」くらいでも結構ですから、組合が行う政治・平和活動の取り組みに少しの理解をもらえればと思います。この記事の趣旨と若干異なりますが、ご容赦ください。
私も自治体に採用された当時(10数年前のことですが)、組合への加入を誘われました。私の自治体は組織率100%で組合に入るのが当たり前的な風潮があり、そういう風潮があまり気に入らなかったことと「公務員が組合活動してもいいのか?」という考えから、すぐには加入しませんでした。加入してからも協力的な組合員ではなく、小さな自治体でしたから動員等にやむなく参加するような状態でしたし、組合が取り組む政治活動も嫌いでした。
そんな中、当局というか首長自らが労基法に明らかに違反する言動をとり、大問題に発展しました。私自身、どう考えても首長側に非があるとしか思えず、この時ばかりは組合の行動に積極的に参加しました。その際に感じたのは、公務員は法的に拘束されている部分が多く、好むと好まざるとを別に政治活動は必要だということです(組合の支持政党と運動のジレンマ、私の政治についてのジレンマ等の問題はありますが・・・)。
平和運動については、平和と職場は切り離せないということを学んだことから必要だと思っています。第二次大戦時、国家総動員体制の中で全ての国民が直接的間接的に戦争に協力せねばならない状況が作られました。大きな労働力である20~40代の労働者が戦場に送られ、職場も当然、過酷な状況に追い込まれました。戦争とは国と国が行うものですが、犠牲になるのは国民であり、その国民の多くは労働者です。そのように考えたときに、労働者の集まりである労働組合が平和活動に取り組むのは、当然のことと考えています。もちろん組合員の生命と権利を守るのが、組合の第一義と認識しています。
こうした考えの基盤に、私自身がヒロシマに生まれ住む(といっても厳密には広島県ですが)人間として『平和』を意識しなければいけないという思いがあるのも事実です。
また私たち自治体職員は、第二次大戦時と同様に有事の際には住民を戦争に協力させる側に立つことも考えておかなければいけないのではないかと思います。
この他、様々な経験や学んだことから、私自身も「組合は必要」と思うようになり、役員も担いました。長文、失礼しました。
投稿: アンディ・ベム | 2008年9月26日 (金) 12時27分
アンディ・ベムさん、お久しぶりです。コメントありがとうございました。
今回の記事やコメント欄でのやり取りを踏まえた意義深いご意見だと受けとめています。本当に「組合は必要」と感じる人たちが増え、その活動への共感の輪が広がることの大切さをかみしめています。
そのためにも「空回り」とならない運動の進め方が重要であり、日々、自問自答しています。そのような中、このブログは幅広い皆さんの本音に接することができ、さらに同じような悩みを共鳴し合える貴重な場だと思っています。
ぜひ、これからもお時間が許す際、貴重なご意見をお待ちしています。よろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2008年9月26日 (金) 17時41分