自治労の名前が消える?
プロフィール欄でも記しているとおりハンドルネーム「OTSU」で、このブログの記事を投稿しています。このようなサイトの一般的な決め事を踏まえたものですが、私どもの組合員の皆さんらに対しては特に匿名の扱いとはなっていません。
時々、組合の機関紙で当ブログをPRし、一人でも多くの組合員の皆さんにご覧いただけることを願いながら続けています。組合の様々な活動を身近に感じてもらうこと、組合役員が抱えている問題意識と組合員の皆さんとの距離が縮まることをめざし、3年前の夏に開設(「秋、あれから2か月」参照)しました。
一方で、やはりプロフィール欄で記していますが、不特定多数の方へ公務員やその組合側の言い分を発信することもブログ開設の大きな目的としていました。つまり二兎を追う欲張りな面があり、そのため、前回記事のような内輪の話題を取り上げてきた理由の一つでした。
とは言え、「中立的な第三者から見ると、当事者以外には検証できない一方的な批判をしてるようにも見えます」とのThorさんからのご指摘はズシリと重く、私自身が熱くなり気味だったことを反省しています。第三者から見れば、五十歩百歩の言い合いだと取られかねない点を思い返し、今後、このような話題に関しては極力冷静な対応に努めていきます。
さて、先月末に千葉市で自治労定期大会が開かれました。私も参加していましたが、大会の報告は別な機会に譲り、「あるチラシへの苦言」という記事の投稿に至っていました。今回の記事で、改めて自治労大会の内容を取り上げさせていただきます。今年は中間年の大会であり、本格的な方針確立などは来年の熊本大会に送られています。
かつての自治労大会は各マスコミから注目されていました。自治労出身の村山元首相が現職総理として出席した年もあり、自治労委員長や来賓の方々の発言が全国紙の記事となることも珍しくありませんでした。ここ数年、自治労大会を伝える新聞記事などは極端に少なくなっていました。
単に注目を浴びれば良いとは思っていませんが、中間年の大会にもかかわらず、久しぶりに自治労大会を報道するニュースが目立った年となりました。各紙共通した見出しとして「自治労の名前、消滅へ」というものが多く、自治体経営のバスや地下鉄の職員でつくる都市交、公営の水道事業の職員らによる全水道との3産別統合に際した名称問題が注目を浴びたようです。
地方自治体職員らでつくる労働組合の連合組織「自治労」(全日本自治団体労働組合)の名称が消えることが29日、決まった。54年に結成された組織名への愛着は根強く、千葉市内で開かれた定期大会では、地方組織から反対論が出たものの、10年に予定される他の2産別労組との統合後の新組織名称について、「対等合併」を強調するため「自治労以外の名称を選択する」ことが、賛成多数で可決された。
自治労は10年に、日本都市交通労組(都市交)、全日本水道労組(全水道)との組織統合が決まっている。3産別は昨年9月に結成した地域公共サービス労働組合連合会(地域公共連合)の傘下に入り、連合加盟を一本化。その後も自治労は名称を残す道を探ったが、都市交と全水道は「我々も名称への愛着はあったが乗り越えた。新組織は新名称で」と主張していた。
28日から開かれていた自治労の定期大会では、「本部は自治労という名称に対する単組や組合員の思いを受け止める必要がある」「自治労の旗の下に結集しようとやってきた」「慎重に合意を図ってほしい」など、名称変更に慎重な発言が相次いだ。29日の採決で、出席代議員892人のうち、579人の賛成で名称変更が可決された。【朝日新聞2008年8月29日】
上記の報道のとおり2010年秋に「自治労」という名称はなくなります。しかし、自治労がなくなる訳ではなく、都市交と全水道との統合を契機に新しい質の公共サービス産別へ踏み出す大きな一歩と位置付けています。さらに対等な立場での統合が前提にあり、「自治労」の名称にこだわり続けた場合、岡部自治労委員長は「統合の理念、目的が否定されかねない」と大会代議員へ理解を求めていました。
自治労が94万6000人、都市交は3万1000人、全水道は2万8000人という組織規模の違いがありますが、それぞれの歴史や運動の蓄積などを踏まえ、対等合併の道筋を選択していました。そもそも昨年の岩手大会を経て、2007年9月に3産別が結集した地域公共サービス労働組合連合会(地域公共連合)を発足させていました。
つまり今年の春闘期の連合中央総決起集会などにおいて、すでに「自治労」の名前はなく、会場の配置図には「地域公共連合」と記載されていました。今回の千葉大会で、名称問題への異議を唱えた代議員の声も「統合そのものに反対ではないが、自治労という名称は残すべきである」「議論が不充分であり、もっと組織内の合意形成が必要である」という内容が大半を占めていました。
中には、産別の名称を変えることによるコストの問題を訴えた県本部もありました。確かに組合の旗などから「自治労」の名前を変えることの経費の総額は小さくありません。市町村の合併でも名称問題は常に悩ましい論点となっています。銀行が合併する際、旧行名をつなぎ合わせ、三菱東京UFJ銀行という長い名称に落ち着く場合がありました。
三井住友銀行の場合、英語の表記はSMBCとなり、住友が三井より先の順番となります。このように名称問題は決して軽く扱えない繊細さがあるものと思っています。とりわけ「自治労か、自治労連か」という熾烈な組織選択を経験してきた県本部や組合役員の皆さんらの切実さは、私どもの想像を超えるものなのかも知れません。
しかし、「結局は吸収合併と同じ」と受けとめがちな都市交や全水道の皆さんらの気持ちを斟酌し、合併の総論に意義を見出す立場だとすれば、「自治労」の名称に固執しない判断が求められているものと考えていました。したがって、反対意見が多い中でも、採決によって次のステップへ進まざるを得なかったことも充分理解しているつもりです。
いずれにしても3分の1余りの意思が反映されなかった結果となりましたが、今後、民主的な手続きで確認された組織の方針は尊重されるという健全さを疑っていません。逆に名称問題を引きずり、自治労の団結にヒビが入るようでは「コップの中の嵐」に過ぎず、決して組合員のプラスとはなりません。
千葉大会では、夕張市職労と社会保険庁の組合役員からの報告を聞くこともできました。ご存知のとおりの厳しい状況の中、その過酷さに現在進行形で立ち向かっている組合役員の声でした。それぞれ財政再建や信頼回復に向け、現場から必死に努力していても簡単に解決できない問題が山積し、一組合の力ではどうしようもない無力さなどが訴えられました。
社会的に広がり気味の筋違いな公務員バッシングへ反論することや必要な法制度改正を求める力は、自治労本部のみが発揮できる機能です。そのためにも名称問題という内向きな議論は今回の大会で区切りを付け、様々な難問の解決に向けて自治労が一丸となっていくことを強く信じています。
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コメント
突然のコメント失礼致します。
勝手ながら私どものサイトからこの記事へリンクをさせていただきました。
http://sirube-note.com/civil-servant
もしよろしければ、こちらのページより相互リンク登録もしていただけましたら幸いです。
http://sirube-note.com/civil-servantlink/register/
現在のページからのリンクは一定期間の予定ですが、よろしくお願い致します。
(自動書込のため、不適切なコメントとなっていましたら申し訳ございません)
token:lP4R9iN7
投稿: sirube | 2008年9月14日 (日) 17時08分
sirubeさん、貴サイトへのリンクありがとうございました。
相互リンクの件ですが、自動書き込みによる依頼には少し違和感がありますので、今回は見送らせていただきます。よろしくご理解ください。
投稿: OTSU | 2008年9月14日 (日) 21時54分
自治労の名前には愛着があります。
さみしいというのが、本音です。
しかし、相手方の思いも同じでしょうから地公三産別統合という大きな目標に向かって進むのなら、しょうがないことですよね。
ただし、全国一般との統合問題もしかり、組織統合を急ぐあまり、組合員のコンセンサスがどの程度得られているか?ここがもっとも大切ではないかと思います。
中央本部以下、各都道府県本部、単組で十分な組織討議を行っていかないと名前だけの巨象になってしまうのではないかと危惧しています。
私も採用から18年近く役員を担わせていただいてきましたが、そろそろ世代交代をと考えています。
なんだか総評から連合に結集した時のように一時代が変わろうとしているのかなとも感じています。
投稿: shima | 2008年9月15日 (月) 11時01分
shimaさん、コメントありがとうございました。
「自治労」の名称に愛着を持つ方が多い中、なかなか満場一致とはならない問題だったろうと思っています。そして今後、重視されるのは新たな公共サービス産別として、職場組合員に対しても存在意義をアピールできる役割の強化ではないでしょうか。個人的には産別統合や新名称がその大きな転機になることを願っているところです。
投稿: OTSU | 2008年9月15日 (月) 20時47分
そうですね。
どのような名前になろうと地域公共サービスの担い手の労組として住民サービスの維持・向上を念頭に組合員の労働条件の確保や新たな住民サービスの提言などを進めていかなければなりませんよね。
新たな名前で新たな歴史を刻んでいくと前向きに考えればいいか!
投稿: shima | 2008年9月16日 (火) 08時22分
shimaさん、いつもご訪問ありがとうございます。
本当にその通りだと思います。この機会を前向きにとらえ、対外的にもイメージアップにつながるような新名称を期待しています。今のところ具体的な妙案がある訳ではありませんが…。
投稿: OTSU | 2008年9月16日 (火) 22時53分
やはり自治労の存在意義には疑問を感じざるを得ません。国や地方の役所で働く方のブログを、しばしば読んでいるのですが(そのうちの1つが貴ブログでもありますけど)、その中にこのようなブログ(下記URL)がありました。
http://komuin.sblo.jp/article/19483282.html
これを読んで、組合加入率が9割超という自治体が珍しくないというのも納得しました。加入しなければ職場の調和が保てない、そんな組織はおかしいと思います。
投稿: イチ公務員 | 2008年9月17日 (水) 23時58分
自治体の仕事で個人プレーでできる仕事はまったくと言って良いほどありません。
チームプレイというか、お互いが協力し、お互いが助け合わなければなりません。
相互扶助の精神が必要です。
このことは「ある地方公務員」さんも重々承知されてあるようで、「仕事を進める上で調和を保つ」ことの必要性を充分認識してあると思います。
労働組合も相互扶助の精神で成り立っています。
したがって、仕事上での相互扶助の精神を持っておられる「ある地方公務員」さんが、所属する組合の方針に異議があったとしても、労働組合に身を置いてあるのは何の不思議もありません。
投稿: 福岡のある自治体職員 | 2008年9月18日 (木) 00時50分
イチ公務員さん、福岡のある自治体職員さん、おはようございます。
福岡のある自治体職員さんのご指摘がイチ公務員さんの疑問の答えの一つだと私も思っています。その上で、様々な運動方針を掲げているのが自治労ですので、組合員の皆さん一人ひとりの問題意識と合致できるような発信力が求められています。そのような点を当ブログでも意識していますので、今後ともよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2008年9月18日 (木) 07時25分
私は何も調和を保つことに意義を唱えているわけではありません。
組合に加入しなければ「仕事を進める上で調和を保つ」ことができないような職場が不思議だと思うだけです。また、そこに半ば強制と言えなくもない課金が存在することを、いかがなものかと思っているだけです。
もっとも、組合以外に親睦会が無いという組織であるなら、仮に100%加入であっても納得です。ただし、普通の親睦会であれば政治色(ましてや公務員ですよね?)を前面に押し出すのは、かなりおかしいと思います。
ま、それがおかしいと思わない方々の集団なのでしょうけど。
投稿: イチ公務員 | 2008年9月19日 (金) 00時27分
イチ公務員さん、おはようございます。
出勤前の時間にお答えするには難しい問いかけですので、できれば次回以降の記事本文で取り上げさせていただきます。少し時間を頂戴することをご容赦ください。
投稿: OTSU | 2008年9月19日 (金) 07時16分
社保庁元職員、改ざん教えあったと証言
動画を他のプレイヤーで見るWMP高 WMP低 Real高 Real高 厚生年金記録の改ざん問題で、自らも改ざんに手を染めていたという社会保険事務所の元職員がJNNの単独取材に応じ、「改ざんの手法を同僚同士で教え合っていた」と証言しました。
「標準報酬を下げていましたけどね・・・」(社保事務所元職員)
こんな犯罪者集団は一人残らず豚箱行きですな。
それとかばい続けたblog主も道義的には同等かと。
自治労は役目を終えて社会のお荷物と化したので解散するのが世の為人の為です。
投稿: 懲戒免職 | 2008年9月19日 (金) 19時50分
懲戒免職さん、訪問ありがとうございます。
最近の記事「過ちとその処分のあり方」(7月6日投稿)へいただいたコメントと同様な発想によるご意見だと受けとめています。それに対し、私の考え方は「是々非々の議論」(7月13日投稿)を通してお答えしたとおりです。
投稿: OTSU | 2008年9月19日 (金) 21時59分
2008年9月19日 (金) 00時27分 に投稿した文の1行目「意義」は「異議」の誤りです。訂正させていただきます。(もちろんこの投稿に対するリアクションは不要です)
投稿: イチ公務員 | 2008年11月 3日 (月) 18時05分