新型インフルエンザ
前回記事「『実は悲惨な公務員』を読み終えて」に対し、再び著者の山本直治さんからトラックバックをいただきました。ご自身が運営するブログ記事「あとがきのあと…誤解は解けるか?」へのリンクでした。その記事を読ませていただきましたが、どうも私の前回記事で暖かい目で見守る「太陽」との記述は、山本さんの真意を正確につかめていなかったようです。
山本さんの意図した「太陽」とは、灼熱の日差し(これも叱咤)を指されているとのことでした。「当事者にプレッシャーをかけることで物事を実現させる場合、プレッシャーのかけ方にもやりようというものがある。押してもだめなら引いてみなということだ」と書かれていました。「北風」一辺倒の問題点は理解していたつもりでしたが、山本さんの真意を充分くみ取れず、たいへん申し訳ありませんでした。
さて、水曜の夜、連合地区協議会の幹事会に出席しました。その会議の冒頭、地元選出の衆議院議員の一人である民主党の末松義規さんから国会情勢などの報告を受けました。短い時間でしたが、衆院山口2区補選の状況などタイムリーな話題が盛りだくさんでした。その中で特に注目したのが新型インフルエンザの問題でした。
新型インフルエンザウイルスとは、動物、とりわけ鳥類のインフルエンザウイルスが人に感染し、人の体内で増えることができるように変化し、人から人へと効率良く感染できるようになったもので、このウイルスが感染して起こる疾患です。人間界にとっては未知のウイルスで、ほとんどの人は免疫を持っていません。このウイルスは容易に人から人へ感染して広がり、急速な世界的大流行(パンデミック)を起こす危険性が指摘されています。
WHO(世界保健機構)は「新型インフルエンザは、起こるか起こらないのかの問題ではなく、いつ起こるかの問題だ。明日起こっても不思議ではない」と警告しているようです。新型インフルエンザは飛沫感染のため、1人の患者から10日間で10万人へ感染し、死亡率は60%と見込まれています。日本だけで死亡者は17万から64万人と推定されています。過去、1918年にスペインかぜが流行した時は約39万人が死亡し、世界全体では約4千万人の死者を出しました。
その当時より大幅な人口増、都市への人口集中、飛行機などの高速大量交通機関の発達などから短期間に地球規模での蔓延が懸念されるため、推計以上の被害の可能性も否定できないそうです。そのため、WHOは1999年にインフルエンザパンデミック計画を策定し、2005年には世界インフルエンザ事前対策計画を改訂し、各国における対応を要請してきました。
日本も内閣官房を中心に関係省庁からなる「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する関係省庁対策会議」を設置し、2005年12月には「新型インフルエンザ対策行動計画」を取りまとめています。2007年3月には新型インフルエンザ対策専門家会議において「新型インフルエンザ対策ガイドライン(フェーズ4以降)」を策定していますが、アメリカなどに比べると危機意識が薄くテンポも遅いようです。
末松さんはオオカミ少年ならぬオオカミ中年と言われながらも、この2年間、新型インフルエンザの大流行に備えた国家危機管理体制づくりの必要性を国会の場で訴え続けてきました。最近、日本政府は医療従事者や社会機能維持者(警官やライフラインの関係者等)のみに備蓄していた1千万人分のワクチン接種を決めました。政府はプレパンデミックワクチンの有効性や副反応が確認されていないため、不必要な接種は避けることも対象者を絞る理由の一つにあげています。
それに対し、末松さんは国民の命を守るため、無用なパニックを防ぐためにも、ワクチンの製造を急がせ、希望者全員に接種すべきだと舛添厚労相へ強く迫っています。国民全員に接種しても費用はイージス艦の購入費1300億円程度であり、これで数十万から数百万人の国民の命が救われるのならば決して高い額ではないと話されています。さらに道路特定財源や埋蔵金(特別会計の30兆円ほどの余剰金)の一部を充てれば賄えるとも主張されています。
このような末松さんの孤軍奮闘ぶりが政府の重い腰を上げさせ、1千万人分のワクチンの追加製造や与野党対立の構図としない法案協議へ導いています。先週25日には、新型インフルエンザに備えた感染症法と検疫法の改正案が参議院で可決・成立しました。未発生の感染症を両法で規定するのは異例なことであり、発生直後から感染拡大を防ぐための隔離や入院などの強制措置が取れるようになります。
その他、都道府県知事による外出自粛勧告や感染の恐れがある人をホテルなどに収容できる規定が盛り込まれています。与野党の協議を通し、潜伏期間中の感染者も強制措置の対象に含められ、ワクチン開発や備蓄も努力規定として加えられています。ネジレ国会と言われ、民主党の対決姿勢が強調されていますが、国家的危機の問題に対しては迅速に法案審議している具体例の一つでした。
今回の末松さんの報告は非常に衝撃的な内容で、新型インフルエンザに対する断片的な情報を整理する貴重な機会となりました。お正月に3日連続でNHKが特集を組み、徐々に国民の間でも知れわたるようになってきましたが、マスコミの扱いは意識的に自制している気がしています。末松さんはセンセーショナルな報道は慎むべきだが、正確な情報の周知も重要であると述べられていました。私自身もその必要性を受けとめ、この間の話題の流れから逸れて恐縮ながら今回のような記事内容を投稿させていただきました。
最後に昨日の土曜日、三多摩メーデーが開かれました。過去の記事で報告したとおり全体で3万人から集まる一大イベントとなっています。さらに私どもの組合は、ご家族含めて700人近くの方々が参加しています。ますます組合への結集力が重視される中、本当に喜ばしいことです。ご参加いただいた皆さん、役員の皆さん、たいへんお疲れ様でした。
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