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2008年3月 9日 (日)

直営責任と格差是正

先週木曜夜、春闘と人員の課題で集中的な労使協議を重ねました。自治労都本部の統一行動として取り組んだ春闘の課題は解決できましたが、新年度に向けた人員配置の問題は週を超えた継続交渉となっています。それでも具体的な増員回答がいくつかの職場で示され、減員提案の一部も撤回させることができています。

一人でも多くの職員数を削減したい行革方針が示されている中、少しでも人員の問題で結果を出せることは組合活動にとって大きなプラスです。職場からの要求をまとめ、交渉を行なってもまったく成果が上がらない場合、徒労感や労使協議の形骸化を招き、組合員からの信頼感も薄らぎかねません。今回、全体的な回答としては不充分な点も残り、さらに人員確保要求の前進をめざす判断を下しました。

このように人員の問題は完全に決着できていませんが、昨日、組合役員を中心とした日帰りの勉強会を開きました。これまで春闘期に土曜日曜の一泊二日で行なっていましたが、幅広い組合役員の皆さんの参加しやすさを考慮し、今年は土曜日の朝から夕方までの日程で開催しました。残念ながら参加者数は大幅に増えることなく、執行委員会の拡大版程度のメンバーでの勉強会となりました。

講師は自前で揃えています。自前とは言え、重責を担って活躍されている特別執行委員のお二人で、自治労都本部中央執行委員長に「都本部の当面する課題」、連合政治センター事務局長に「労働組合と政治」というテーマでお話いただきました。もう一人、私自身が「春闘期、諸課題の解決に向けて」との演題で90分ほどの時間を与えられ、日頃から感じている問題意識を披露しながら個々の課題に対しての議論材料を提起させていただきました。

職場委員会などの場面では時間の制約があり、長い挨拶は避けるようにしています。今回、時間を気にすることなく、様々な思いを話すことができました。このブログの記事数は227に及び、話す材料に事欠きません。過去の記事内容をピックアップしながら原稿を用意しましたが、実際に作業を始めると伝えたい内容が広がりすぎて、まとめる時間が予想以上にかかってしまいました。

その学習会の資料の中で、改めて行革計画に対する組合の考え方をまとめてみました。私どもの市では5か年ごとの第1次から第3次までの行財政改革推進計画を経て、第4次にあたる経営改革プランと称した行革計画が2006年6月に策定されました。その経営改革プランに対し、市当局と教育委員会当局と「労働条件の変更に伴う事項は労使で事前協議し、労使合意なく一方的に実施しない」などの原則を確認しています。

その上で組合は、組合員が健康でいきいきと働き続けられる職場を守る立場で交渉に臨み、労働条件の安定が良質な住民サービスの維持向上につながるものと考えています。同時に広く市民からも共感を得られる公務のあり方を対抗軸に打ち出しながら個別課題に対処していく方針を掲げています。組合員の職や雇用を守ることが組合の最も重要な役目ですが、その仕事や職場を熟知した職員の目線で行革提案をチェックすることも重要な役割であるはずです。

そのことが住民のメリットにつながるものと確信し、労使交渉の場を通して当該職場の組合員の声を当局へ伝えていくことになります。行政の責任と役割を明らかにし、過剰な効率性を重視した行政運営とならないよう組合が歯止めの役割を担います。安全・安心・公正な市民サービスの維持向上を優先課題とした視点で、市民ニーズに対応した地域公共サービスの確立(最近の記事参照)をめざしていきます。

前々回記事で、問題が多い「構造改革」が進められた結果、短絡的な「官から民へ」が顕著になった旨を記しました。決して指定管理者制度など行政のアウトソーシング(過去の記事参照)を頭から否定する立場ではありません。自治体直営でなければ住民サービスが低下するという発想は民間で働く皆さんへ失礼な話だと思っています。その一方で、民間に任せれば多様なニーズに応えられ、効果的なサービスができるという謳い文句にも違和感があります。

「官か民か」の区分けは、安全・安心・公正な住民サービスの維持向上を基本とした上で、採算性をどう見るかにかかっているはずです。利益を目的とするかどうかが官と民の決定的な違いだと考えています。利益の有無にかかわらず、必要なサービスを提供するのが官の責任と役割です。法律や規則の枠内で、競争しながら利益を上げようとするのが民間企業の役割です。企業によっては社会的な責任を負っている側面がありながら、そのバランスが崩れた例が様々な食品の偽装や耐震偽装問題だと思っています。

確かに学校給食業務など民間で担えるものも少なくありません。実際、全国の学校給食の15%ほどが民間委託化されているそうです。言うまでもなく学校給食は児童生徒に対する食の安全を最優先しなければならない業務であり、O-157やBSEの問題など非常に神経を使う状況となっています。繰り返しになりますが、民間だと安全対策が疎かになると決めつける訳ではありません。万が一でも起こしてはならない事態が不幸にして起きた場合、その責任から行政は免れることができません。

だとするのならば、学校給食業務への直営責任を全うすることが非常に重要なことではないでしょうか。加えて、経費節減イコール低賃金を強いられる労働者が増える社会構造であることに強い問題意識を持たなければなりません。もともと公務員賃金は民間相場の反映であるという点を考えれば、人件費の安さが「民へ」のメリットとなるのは理不尽な構図だろうと考えています。社会的な「均等待遇」原則が貫かれ、所得格差の是正が進むことが理想ですが、残念ながら一朝一夕に解決できるものではありません。その中で、指定管理者の選定などにあたっては、金額のみの競争としない公契約制度改革(過去の記事参照)などを検討していく必要性を痛感しています。

今後、経営改革プランに対峙し、各施設を中心とした行革提案へ一定の判断が求められていきます。その際、重視すべきキーワードは「直営責任と格差是正」だと考えています。一見すると無関係な言葉のようですが、それぞれ密接に絡み合いながらどのように実現すべきか非常に重要な課題となります。「直営責任」は、子どもや「食」などに対する安全責任の全う、居住する地域によってサービスの質が偏在しないような公平さなどについて、自治体がどのように担う必要性があるのか、その検証を通して判断すべきものとなります。

また、直営を維持する上で人件費の問題が避けて通れないものと判断した場合、勤務時間などの実情に応じた非常勤職員制度の活用が検討対象となり得ます。その際、均等待遇の原則を重視しながら自治体内の「格差是正」に最大限努めていかなければなりません。さらに労使交渉の結果、PFIなどのアウトソーシングを合意するに至った場合は、その企業に働く人たちとの「格差是正」も前述したとおり強く意識しなければなりません。このような視点を押さえながら個別課題に対処していく決意を新たにした機会となりました。

最後に一言、思いがけない話を特別執行委員のお二人から伺うことができました。特にお二人が宣伝した訳ではないそうですが、自治労中央本部の岡部委員長や金田書記長、自治労組織内参議院議員の高嶋良充さんらも当ブログを注目くださっていることが分かりました。たいへん光栄なことであり、これからも続けていく上で大きな励みとなる情報でした。

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コメント

旭山動物園のような鮮やかな成功例が羨ましい限り。
あれが特殊例外的成功なのか、他の自治体も直営施設の成功体験を次々に打ち出せれば市民の見方も変わってくるのでは。大方地味な施設が多いですから難しいとは思いますが。

投稿: かでる | 2008年3月13日 (木) 20時24分

かでるさん、コメントありがとうございます。
旭山動物園の例は「官だから…」「民だから…」の言葉を反論するための好例だと私も感じています。「官」は採算を度外視して行なう事業などが多いとも考えていますが、やはり財政が厳しい中、黒字であることに越したことはありません。特に動物園や図書館など市民生活へ潤いを与える施設が切り捨てられがちな中、旭山の成功例を多くの自治体も参考にすべきだろうと思っています。

投稿: OTSU | 2008年3月13日 (木) 23時10分

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