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2008年3月22日 (土)

改正パートタイム労働法

連合は2008春季生活闘争の中で、賃金改善要求とともに非正規雇用の問題も運動の大きな柱としていました。このブログの前回記事「追い風と逆風が交錯した今春闘」で、福田首相が経営側に対して異例の「賃上げ要求」を行なった話を紹介しました。実は福田首相のメールマガジンでは次のような内容も掲げられていました。

雇用をめぐる問題は、給与だけではありません。フリーターやアルバイト、派遣社員などの非正規雇用は、最近の統計でも雇用全体の3割を超えています。バブルの後遺症に苦しんだ時期でも、企業は、雇用を守るために努力してきました。その中で、非正規雇用に頼らざるを得なかった時期がありました。

しかし、これまで不安定な雇用に耐えてがんばってきた人たちのために、ここで、経営者の皆さんには、もう一段の努力をお願いしたいと思います。安定した雇用は、消費を増やし経済の拡大にもつながります。企業と家計は車の両輪。正規雇用を増やす必要性は、経済界もご理解いただけるはずです。政府も、そうした取組を後押しする政策を、早急にとりまとめていきます。

労働の二極化の問題に関しても、福田首相と労働組合側の思いが一致する内容を示しています。ちなみに小泉元首相と安倍前首相の政治手法や政策の方向性について、私自身、強い疑義と危うさを感じていました。そのため、たびたび当ブログで二人に対する批判的な記事(「小泉政権最後の骨太の方針」「安倍首相の辞任、そして総裁選」など)を投稿してきました。

振り返ってみると福田内閣に代わった以降、「舛添厚労相の発言」などで閣僚を非難したことはありましたが、それまでに比べると首相本人を直接批判した記事内容が少なくなっています。「UFO論議から思うこと」の最後の方で、福田首相の浅薄さを指摘した程度かも知れません。いずれにしても自民党の首相だから、何でも批判するという短絡的な思考ではない点を受けとめていただければ幸です。

誤解がないよう付け加えますが、決して福田政権をトータルで評価している訳ではありません。幅広い声に対して「聞く耳」を持つことは重要ですが、聞きすぎて身動きが取れず、行き詰まっている内閣だと思っています。財務省の意向に縛られすぎた結果が日銀総裁人事のお粗末さであり、チベット問題に対して毅然とした発言ができないのも中国政府の顔色をうかがいすぎる難点だろうと感じています。

記事タイトルから少し横道にそれましたが、ユニクロ、ロフト、ワールド、キャノン、三井住友銀行など、非正規雇用だった人たちを正規化していく動きが広がっています。さらに今年4月からは大きく改正された「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」、いわゆる改正パートタイム労働法が施行されます。今回、1993年にパートタイム労働法が制定された以降、初めての大幅見直しとなります。

この法律が制定された当時からパートタイム労働者は増加傾向にありました。パートタイム労働者とは、同一事業所に雇用されている通常の労働者に比べ、1週間の所定労働時間が短い労働者を指します。労働の短さの程度は問わず、パートタイマー、アルバイト、嘱託、契約社員、準社員など呼び方が異なっても前述の条件を満たせば、すべてパートタイム労働法の適用対象となります。

パート労働者に対しても、労働条件の最低基準を定めた労働基準法を正社員同様に適用させるよう企業に促すことが法律の狙いでした。したがって、その時点から「均等待遇」原則の理念は掲げられていたことになります。 しかし、残念ながらその理念が必ずしも順守されないまま、各企業のコスト削減の一環としてパート労働者が急増していきました。雇用者全体の約4分の1、約1200万人まで増えている現状に至っていました。

かつてパート労働者は専業主婦が大半で、家計を補うために働くのが一般的でした。最近は生活の糧を得るために就労する女性や若者などが増え、補助的な仕事だけではなく、正社員同様の業務を行なう実態も目立っていました。このようなパート労働の多様化や格差社会の深刻化などが、罰則規定も盛り込んだ今回の大幅な法改正につながっているようです。なお、改正パートタイム労働法の概要は次のとおりです。

  1. 労働条件の文書交付・説明義務 労働条件を明示した文書の交付等の義務化(違反の場合は過料あり)等
  2. 均衡のとれた待遇の確保の促進 (1)「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」に対する待遇の差別的取扱いの禁止 (2)すべての短時間労働者に対し、通常の労働者と均衡のとれた待遇の確保措置の義務化等
  3. 通常の労働者への転換の推進 通常の労働者への転換を推進するための措置を義務化
  4. 苦情処理・紛争解決援助 (1)苦情を自主的に解決するよう努力義務化 (2)紛争解決援助の仕組みの整備

この法改正を通し、ぜひ、今度こそ「均等待遇」原則が普遍化されていくことを切望しています。一方で、このような社会的な趨勢に背を向ける硬直した動きがあることも報告させていただきます。何とも不思議な話ですが、法令順守を率先垂範すべき総務省や東京都が最近示した「指導」の具体的な事例でした。

非常勤職員の労働意欲向上と待遇改善を目的とし、港区が勤務年数に応じた昇給制度を検討していました。しかし、東京都総務局行政部区政課から「地方公務員法で恒久的雇用を前提としない非常勤職員にはなじまない」と指摘され、この4月からの導入を港区は見送ることになりました。その背景には総務省自治行政局公務員部公務員課からの指示があり、その指示を都がそのまま各区へ押し付けた構図でした。

地方公務員の労働条件は条例で定める原則などがあり、すべて地方公務員法に基づくため、労働基準法の一部やパートタイム労働法が適用されません。しかし、労働基準法を下回ることが許されない原則と同じく、パートタイム労働法の趣旨も適用されなければならないはずです。私どもの市でも非常勤職員の待遇改善に向け、精力的に労使協議を重ねていますが、このように国や都の頭が硬くては先が思いやられます。最後に、法政大学の早川征一郎教授(社会政策論)のコメントを紹介させていただきます。

国は非正規職員が継続雇用されている違法状態を黙認し、解決策も示してこなかった。自治体がノウハウを持つベテラン職員の待遇改善を考えるのは当然で、いまさら地方公務員法違反の一点張りで押さえ付けるのはおかしい。待遇が劣悪な非正規職員が安心して働けることは、住民サービスの向上にもつながる。通常の試験とは別に、意欲と能力のある人が正職員になれる制度などを作るべきだ。

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コメント

なんか職員の処遇に直接関係がないと関心を持つ方がほとんどないようで。
自治体職員の処遇といえば、団塊の世代の退職に際しては財政状態が悪くても退職金債まで発行して手厚くしときながら、そのせいでより悪化した財政の尻拭いに現職の給与を7%前後カットするという県も幾つか見受けられます。

最近は大阪府で女性職員の発言がとりだたされましたが、彼女の背景は役所でも取り扱いに苦労するのではないでしょうか?
地方公務員法16条、36条に抵触しそうですもんね。

非正規職員の継続雇用が違法なら、時間外でも臨時の朝礼など採るに足らぬこと。
個人的には組合の職員としての気概より労働者としての自己主張の強さが勝っているところが胡散臭いと感じています。
また、新卒採用はしないほうが有益であろうと思います。
それと邪魔になるような職員を昇給させないよう透明性のある評価法も必要ですね。

投稿: dementia civil servant | 2008年3月24日 (月) 21時09分

dementia civil servant さん、コメントありがとうございます。
あの場で発言した大阪府女性職員の勇気には頭が下がります。ただ発言内容や言葉使いには、少し選ぶ必要性があったのではないかと感じていました。
なお、「dementia」の意味を辞書で調べさせていただきました。なるほど「地方」公務員の方のHNであることが分かりました。

投稿: OTSU | 2008年3月24日 (月) 22時14分

OTSUさん、あなたにはガッカリです。
あなたも公僕の立場より労働者の団結という虚構を支持されるのですね。
これだから職員にも組合はそっぽを向かれるんですよ。

投稿: dementia civil servant | 2008年3月24日 (月) 22時41分

dementia civil servant さん、おはようございます。
大阪府女性職員に関するレスに対し、「ガッカリ」や「労働者の団結という虚構を支持」と指摘されているのでしたら少し言葉を付け加えなければなりません。マスコミ報道から女性職員の発言内容は、ほぼ把握しているつもりです。その内容に対しては前回レスのとおりの感想を抱いています。その後、女性職員がある集会に参加したことも知りました。しかし、この一連の情報のみで、前回のレス以上に踏み込んだ表現はできない自分なりの判断でした。
したがって、このような端的なやり取りから「これだから職員にも組合はそっぽを向かれるんですよ」の指摘には正直違和感を感じています。私の理解力や表現力の不足で誤解を与えていましたら本意ではありませんので、改めてご指摘ください。よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2008年3月25日 (火) 07時02分

おはようございます。
昨日、地元の連合地域協議会の春闘中小連帯集会に参加してきました。
その中で地元弁護士による「非正規労働者の現状と課題」と題した講演があったのですが、感想としては派遣法などの現行の法整備をしっかりやらなければ根本の解決は難しいなというものでした。
民間の非正規労働者のおかれた現状は、使用者側の思惑でいかようにもされる非常に弱い立場にあり、その多くは労働組合にも組織されていない孤立状態で、表面化されないところで厳しい状況におかれています。派遣労働に関しては、マスコミでの報じれている大手企業だけでなく、隠れた多くの違法状態がまさに常態化しており、これらを改善するためにも国は責任を持って実態の把握と改善策をとるべきと考えます。
また、公共サービスにおける非正規労働者についても、その実態の把握と任用根拠の整備が喫緊の課題ですね。
現行の任用制度だけでは多様化する住民ニーズ・サービスに対応するだけの人材の確保が困難となっています。
特に専門性の高い職種・職域においては深刻な人材不足も見られます。
多くの中小自治体ではこれまでゼネラリスト養成に重きを置いた人事異動が行われてきましたが、複雑多様化する社会に対応するにはスペシャリストの養成が急務でしょう。
時代に対応した人事制度、任用制度への見直す時期でしょうね。
支離滅裂になりました。???

投稿: shima | 2008年3月27日 (木) 08時21分

shimaさん、コメントありがとうございます。
パートタイム労働法など法的な面から非正規の雇用条件の底上げ、それを重要と考える社会的な雰囲気の盛り上げ、このような課題は連合などへ結集して幅広い運動を築かなければなりません。一方で、それぞれの単位組合では、同じ職場で働く正規と非正規の垣根を越えた活動がますます重視されているものと思っています。
また、shimaさんが指摘しているスペシャリストの必要性、養成していく大事さは言うまでもありませんが、外部から即戦力として確保することも選択肢の一つだと考えています。その際、非常勤職員としての採用となる場合、よりいっそう「均等待遇」原則の順守が求められていくはずです。
shimaさんの問題意識に対し、ストレートなレスではないかも知れませんが、個人的な思いを補足させていただきました。

投稿: OTSU | 2008年3月27日 (木) 20時38分

パートタイム労働者の待遇改善、通常の労働者への転換の促進が、長期的には住民税の増収や福祉予算の増大を抑制し社会の安定につながる、といっては
さすがにオーバーな表現でしょうか(笑)
OTSUさんの問題意識は私も重なる部分が多くあります。特にチベット問題の言及など、旧来の組合役員の方では中々言えない?ようなことも指摘される点に、OTSUさんの知的誠実さを感じました。
dementia civil servantさんの御意見を見て私なりに感じたことを述べてみたいと思います。
まず、個人レベルでは相互意見の尊重と対話が大事だという前提で、思うことは、公務員労働運動の中で、ある種の行動を行ってきた団体(過去に内ゲバ、ゲリラ活動など)がヘゲモニーを握ることは(握ることはないでしょうが)非常に運動自体にとってダメージを負いかねないこと。個人としての思想信条は自由、発言も自由としても、法令を逸脱しかねないと疑念を持たれる団体とは距離を置く以外にないと考えています。
また、運動の中で仮に接点というか、たまたま交差する場面があったとして、彼らの動員をあてにすると、その百倍千倍の無党派一般市民を遠ざける結果を招きかねないということ。
そんな感想を一介の地方公務員として、個人的には思った次第です。

投稿: かでる | 2008年3月28日 (金) 21時18分

かでるさん、コメントありがとうございます。
ある種の目的があって、その実現のために労働組合運動を担う方々がいることも認識しています。自分自身は組合運動の大切さを受けとめ、その活動の前進のために一定の社会的な運動も必要だと考えています。この順序は非常に重要なことであり、したがって、かでるさんの後段部分のご意見に私も共感する立場です。
短い文章では誤解を招きがちですので、抽象的な一言にとどめさせていただきました。

投稿: OTSU | 2008年3月28日 (金) 21時56分

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