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2008年3月29日 (土)

ベストは見出せない人事制度

桜の花が咲き始めた年度末、期限が迫った租税特別措置の取扱いをめぐり、国会情勢は緊迫感を高めていました。5月末まで2か月間延長する「つなぎ法案」は成立される見込みですが、争点となっている道路特定財源は切り離されています。したがって、4月からのガソリンの値下げが確定しました。この問題は「もう少し税金の話」などで触れてきましたが、機会がありましたら改めて掘り下げていきたいテーマだと思っています。

さて、公務員の定年は年度の末日である3月31日となっています。今年もお世話になった多くの先輩職員が定年を迎えます。退職者の定年に伴い、翌4月1日が新入職員の採用日となります。必然的に職員全体を対象にした大規模な人事異動も4月1日発令が定着しています。この時期は市民課や課税課など多くの職場が繁忙期であり、4月は小幅にとどめて10月頃に大きな異動を行なう自治体もあるようです。

内示の時期も多少ばらつきがあるようですが、私が勤めている役所では1週間前を基本としています。そのため、毎年3月25日の午後3時過ぎは独特なざわめきに役所全体が包まれています。昇任や希望職場への異動の内示が出た職員、希望がかなわなかった職員との心情的なコントラストが際立つ日でした。役所に限らず、どのような分野でも誰もが100%満足する人事を行なうのは極めて難しく、宿命的な課題ではないでしょうか。

笑う人がいれば、泣く人が出るのが人事だと思っています。限られたポストには、限られた人しか座れないからです。それでも100%近い人が納得する人事を行なうことは不可能ではなく、そのような人事をめざすことが非常に重要です。個人的には不満足な人事でも、ある程度納得できる場合があります。希望していたポストに他の人が座ったとしても、「あの人なら仕方ないか」という場合です。

大多数の人たちが納得できる人事を行なうためには、人事に権限を持つ人たちの高度な情報収集力や人物観察能力が求められることになります。とは言え、そのような能力を完璧に備えた人ばかりが人事を司るとは限りません。相互リンクさせていただき、いつも興味深く訪問している「お役所仕事~世間の常識は役所の非常識~」の管理人さんがストレートな感想を最近の記事で吐露されています。

このような気持ちを抱く職員は少数派ではなく、すべての自治体の人事担当者が意識すべき率直な職員の声だろうと感じています。その上で、できる限り人事の一貫性や公平性を保っていくためには、仕組みや制度面を充分整える必要性があります。言うまでもなく労働組合は人事に関与できません。当局側の責任事項であり、組合が口をはさむ場面はありません。

一方で、賃金水準に直結する人事の制度面の問題は労使協議の対象としています。4年前、足かけ5年間の労使協議を重ね、賃金人事任用制度を大幅に見直しました。その時、初めて管理職候補者選考などの試験制度を導入しました。試験制度の長所は、意欲のある人に手をあげさせる点、恣意的な登用を払拭する意味合いなどがあります。当然、短所もあり、もともと人事制度はベストと言い切れるものを簡単に見出せません。

いろいろ試行錯誤を繰り返しながらベターな選択を模索していくことになります。いずれにしても最も重要な点は、どのような役職や職種の職員も職務に対する誇りと責任を自覚でき、常にモチベーションを高めていけるような人事制度が欠かせないはずです。全員が横並びなフラットな組織にも限度があり、やはり一定のピラミッド型な指揮命令系統も築かなければなりません。

その際、ピラミッドの上下を問わず、士気を低下させない人事制度が理想です。難しい話かも知れませんが、まず大事な点は、可能な限り公平・公正・納得性が担保された昇任制度の確立だろうと思います。合わせて大事な点は、部長でも一職員でも担っている仕事の重さに大きな変わりがないという自負を持たせることではないでしょうか。ある面で、会議や折衝が中心的な仕事である部長よりも、子どもの命そのものを託されている保育士の責任の方が重いとも言えます。

乱暴な比較だとお叱りを受けるかも知れませんが、市職員一人ひとり、そのような自覚と責任を持って勤めているつもりです。実際、住民サービスの維持向上のためには、手を抜ける仕事など皆無です。したがって、そのような点が意識でき、積極的な動機付けとなる人事配置が非常に重要だろうと考えています。逆に「評価されていない、左遷された」などとの印象を与える人事は、その職員の意欲を低下させる機会となりかねません。

誰もが、人のために役に立っている仕事を担っているものと意識できた時、たいへんな苦労や困難な案件に対しても前向きに立ち向かっていけるはずです。さらに他の人から評価の言葉などが投げかけられた場合、その労苦も軽減され、大きな励みにつながっていくものと思います。このような張り合いは、ポストや待遇面にかかわらず持つことができるもので、人事制度の要諦だろうと考えています。

以上のように評論家的に物申すことは簡単ですが、実務を担っている人事担当者の苦労も充分承知しています。書記長時代は人事異動の内示後、組合員から寄せられた疑問を事務折衝の際に尋ねたことが多々ありました。すると全てのケースに対して、経緯や事情などの説明が加えられました。つまり職員一人ひとりの希望や適性を丁寧に判断し、一つ一つ目的を持った人事異動に努めている点を垣間見ていました。

人事制度の話題は評価の仕方やジョブローテーションの問題などにも広がるため、このまま延々と続けることができます。日記(現状は週記?)的なブログの良さは、次回以降に続きを書ける点です。まだまだ消化不良な記事内容であることをご容赦願いながら今回は、ここで終わらせていただきます。ただ記事を重ねても、簡単にベストは見出せないのが人事制度の宿命ですが…。

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2008年3月22日 (土)

改正パートタイム労働法

連合は2008春季生活闘争の中で、賃金改善要求とともに非正規雇用の問題も運動の大きな柱としていました。このブログの前回記事「追い風と逆風が交錯した今春闘」で、福田首相が経営側に対して異例の「賃上げ要求」を行なった話を紹介しました。実は福田首相のメールマガジンでは次のような内容も掲げられていました。

雇用をめぐる問題は、給与だけではありません。フリーターやアルバイト、派遣社員などの非正規雇用は、最近の統計でも雇用全体の3割を超えています。バブルの後遺症に苦しんだ時期でも、企業は、雇用を守るために努力してきました。その中で、非正規雇用に頼らざるを得なかった時期がありました。

しかし、これまで不安定な雇用に耐えてがんばってきた人たちのために、ここで、経営者の皆さんには、もう一段の努力をお願いしたいと思います。安定した雇用は、消費を増やし経済の拡大にもつながります。企業と家計は車の両輪。正規雇用を増やす必要性は、経済界もご理解いただけるはずです。政府も、そうした取組を後押しする政策を、早急にとりまとめていきます。

労働の二極化の問題に関しても、福田首相と労働組合側の思いが一致する内容を示しています。ちなみに小泉元首相と安倍前首相の政治手法や政策の方向性について、私自身、強い疑義と危うさを感じていました。そのため、たびたび当ブログで二人に対する批判的な記事(「小泉政権最後の骨太の方針」「安倍首相の辞任、そして総裁選」など)を投稿してきました。

振り返ってみると福田内閣に代わった以降、「舛添厚労相の発言」などで閣僚を非難したことはありましたが、それまでに比べると首相本人を直接批判した記事内容が少なくなっています。「UFO論議から思うこと」の最後の方で、福田首相の浅薄さを指摘した程度かも知れません。いずれにしても自民党の首相だから、何でも批判するという短絡的な思考ではない点を受けとめていただければ幸です。

誤解がないよう付け加えますが、決して福田政権をトータルで評価している訳ではありません。幅広い声に対して「聞く耳」を持つことは重要ですが、聞きすぎて身動きが取れず、行き詰まっている内閣だと思っています。財務省の意向に縛られすぎた結果が日銀総裁人事のお粗末さであり、チベット問題に対して毅然とした発言ができないのも中国政府の顔色をうかがいすぎる難点だろうと感じています。

記事タイトルから少し横道にそれましたが、ユニクロ、ロフト、ワールド、キャノン、三井住友銀行など、非正規雇用だった人たちを正規化していく動きが広がっています。さらに今年4月からは大きく改正された「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」、いわゆる改正パートタイム労働法が施行されます。今回、1993年にパートタイム労働法が制定された以降、初めての大幅見直しとなります。

この法律が制定された当時からパートタイム労働者は増加傾向にありました。パートタイム労働者とは、同一事業所に雇用されている通常の労働者に比べ、1週間の所定労働時間が短い労働者を指します。労働の短さの程度は問わず、パートタイマー、アルバイト、嘱託、契約社員、準社員など呼び方が異なっても前述の条件を満たせば、すべてパートタイム労働法の適用対象となります。

パート労働者に対しても、労働条件の最低基準を定めた労働基準法を正社員同様に適用させるよう企業に促すことが法律の狙いでした。したがって、その時点から「均等待遇」原則の理念は掲げられていたことになります。 しかし、残念ながらその理念が必ずしも順守されないまま、各企業のコスト削減の一環としてパート労働者が急増していきました。雇用者全体の約4分の1、約1200万人まで増えている現状に至っていました。

かつてパート労働者は専業主婦が大半で、家計を補うために働くのが一般的でした。最近は生活の糧を得るために就労する女性や若者などが増え、補助的な仕事だけではなく、正社員同様の業務を行なう実態も目立っていました。このようなパート労働の多様化や格差社会の深刻化などが、罰則規定も盛り込んだ今回の大幅な法改正につながっているようです。なお、改正パートタイム労働法の概要は次のとおりです。

  1. 労働条件の文書交付・説明義務 労働条件を明示した文書の交付等の義務化(違反の場合は過料あり)等
  2. 均衡のとれた待遇の確保の促進 (1)「通常の労働者と同視すべき短時間労働者」に対する待遇の差別的取扱いの禁止 (2)すべての短時間労働者に対し、通常の労働者と均衡のとれた待遇の確保措置の義務化等
  3. 通常の労働者への転換の推進 通常の労働者への転換を推進するための措置を義務化
  4. 苦情処理・紛争解決援助 (1)苦情を自主的に解決するよう努力義務化 (2)紛争解決援助の仕組みの整備

この法改正を通し、ぜひ、今度こそ「均等待遇」原則が普遍化されていくことを切望しています。一方で、このような社会的な趨勢に背を向ける硬直した動きがあることも報告させていただきます。何とも不思議な話ですが、法令順守を率先垂範すべき総務省や東京都が最近示した「指導」の具体的な事例でした。

非常勤職員の労働意欲向上と待遇改善を目的とし、港区が勤務年数に応じた昇給制度を検討していました。しかし、東京都総務局行政部区政課から「地方公務員法で恒久的雇用を前提としない非常勤職員にはなじまない」と指摘され、この4月からの導入を港区は見送ることになりました。その背景には総務省自治行政局公務員部公務員課からの指示があり、その指示を都がそのまま各区へ押し付けた構図でした。

地方公務員の労働条件は条例で定める原則などがあり、すべて地方公務員法に基づくため、労働基準法の一部やパートタイム労働法が適用されません。しかし、労働基準法を下回ることが許されない原則と同じく、パートタイム労働法の趣旨も適用されなければならないはずです。私どもの市でも非常勤職員の待遇改善に向け、精力的に労使協議を重ねていますが、このように国や都の頭が硬くては先が思いやられます。最後に、法政大学の早川征一郎教授(社会政策論)のコメントを紹介させていただきます。

国は非正規職員が継続雇用されている違法状態を黙認し、解決策も示してこなかった。自治体がノウハウを持つベテラン職員の待遇改善を考えるのは当然で、いまさら地方公務員法違反の一点張りで押さえ付けるのはおかしい。待遇が劣悪な非正規職員が安心して働けることは、住民サービスの向上にもつながる。通常の試験とは別に、意欲と能力のある人が正職員になれる制度などを作るべきだ。

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2008年3月15日 (土)

追い風と逆風が交錯した今春闘

各労働組合の2008春闘要求に対し、火曜日に大手企業を中心とする経営側の回答が一斉に示されました。今春闘は様々な面で異色な側面がありました。昨年末に公表された経団連の経営労働政策委員会報告の中で初めて「賃上げ容認」が盛り込まれました。また、経団連の御手洗会長は「リストラも一段落して業績もいいのだから、上げられるところは上げるべきだ」と主張していました。

交渉が大詰めを迎えた段階では、福田首相がメールマガジンで「今こそ改革の果実が給与として国民、家計に還元されるときだ」と指摘し、経営側に異例の「賃上げ要求」を行ないました。首相は「日本経済はここ数年、成長を続けている。大企業を中心に、バブル期をも上回る、これまでで最高の利益を上げている。構造改革の痛みに耐えて頑張った国民の努力のたまものだ」と述べていました。

「企業も、給与を増やして消費が増えれば、より大きな利益を上げることにつながる。給与引き上げの必要性は経済界も同じように考えているはずだ。政府も経済界のトップに要請している」とし、実際に御手洗会長らを官邸に呼び出したことも報道されていました。「賃上げ容認」派である御手洗会長も「企業に大幅賃上げを強制するのは難しい」と説明せざるを得ないほどの熱弁だったようです。

原油や穀物価格の高騰で食料や日用品の値上げが相次ぐ中、看板に掲げている「生活者重視」の姿勢を強調するための一種のパフォーマンスであることは確かです。さらに大きな責任と権限を持つ総理大臣なのですから、他力本願的な言葉ではなく政策面からのアプローチで具体策を示して欲しい思いもあります。しかし、このような首相の行動は労働組合側にとって歓迎すべき追い風であったことも間違いありません。

税引き後利益が1兆7千億円に上る見通しのトヨタ自動車、御手洗会長も福田首相も真っ先にトヨタを念頭に置いた発言だったはずです。そのような視線を集めるトヨタの経営側は、サブプライムローン問題の影響は深刻であり、経団連が示した「報告書は誤った期待を与える」と批判していました。年明けから株価も下落していく中、トヨタ経営陣は一貫して「ベクトルは下」と語り、組合からの1500円の賃金改善要求に対し、早い段階で上限を前年並の1000円に設定していたようです。

トヨタの渡辺社長は「前年実績を下回る500円の回答も真剣に検討していた」と話し、最終盤での首相の要請を重く受けとめたとしながらも、最後まで前年実績1000円超え回答の決断は下しませんでした。この結果は他の労働組合の回答へも大きな影響を及ぼしました。大手電機メーカーの経営側は「カーナビゲーションを納入する大切な取引先のトヨタを上回る額は出せない」とし、やはり前年並1000円の回答にとどまっていきました。

春闘相場を主導する自動車や電機など大手製造業の一斉回答が、12日あった。労組側は、好業績を理由に前年実績を上回る賃上げを求めたが、経営側は景気の先行き不透明感を盾に大幅な賃上げに難色。大半の企業は3年連続の賃上げとなったが、水準は「前年並み」が目立った。食品など身近な商品の値上がりが相次ぐ中、労組側が期待する水準の賃上げを達成できなかったことで、消費がどれだけ刺激されるかは不透明だ。

海外販売が好調な自動車では、トヨタ自動車が過去2番目に高い組合員平均年間253万円の一時金(ボーナス)要求に満額回答。しかし、月額1500円を要求していたベースアップ(ベア)は、3年連続して1000円で決着した。連合幹部は「トヨタですら前年並みにとどまったことが、大手製造業以外の企業の賃上げを前年実績以下にする口実として使われかねない」と警戒する。(2008年3月12日asahi.com

サブプライムローン問題に端を発し、原油高や円高など、日本経済の先行き不安感が昨年以上に賃上げ交渉を難しくさせ、強い逆風下での春闘であったことは否めません。一方で、アメリカの低所得者向け住宅融資の破綻が世界経済へ深刻な打撃を与えている構図は、「風が吹けば、桶屋が儲かる」という諺のようなグローバル化の特質でした。脆さが裏腹となるリスクから脱却するためには内需の拡大が欠かせず、大幅賃上げが最も効果的な対策の一つだと言われていました。

そのような背景もあり、福田首相から経団連への異例な「賃上げ要求」につながっていました。最近の記事「内需拡大に向けた春闘へ」で記したとおり連合側も、その思いを強く前面に出して今春闘に臨んでいました。以上のような動きや視点は、労働組合側への追い風でした。したがって、今年の春闘は追い風と逆風が交錯した複雑な情勢で取り組まれていたことになります。

春闘は序盤戦が終わっただけであり、まだまだ多くの組合のたたかいは続いていきます。しかし、残念ながらトヨタの前年並回答に象徴されるように組合側の出バナがくじかれたスタートを強いられました。経営側の「安い人件費で台頭する中国と競争するためには賃上げは論外」という発想を突き崩せなかった結果であり、その理屈が「労働ダンピング」を加速させてきた点を今後も厳しく問い続けなければなりません。

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2008年3月 9日 (日)

直営責任と格差是正

先週木曜夜、春闘と人員の課題で集中的な労使協議を重ねました。自治労都本部の統一行動として取り組んだ春闘の課題は解決できましたが、新年度に向けた人員配置の問題は週を超えた継続交渉となっています。それでも具体的な増員回答がいくつかの職場で示され、減員提案の一部も撤回させることができています。

一人でも多くの職員数を削減したい行革方針が示されている中、少しでも人員の問題で結果を出せることは組合活動にとって大きなプラスです。職場からの要求をまとめ、交渉を行なってもまったく成果が上がらない場合、徒労感や労使協議の形骸化を招き、組合員からの信頼感も薄らぎかねません。今回、全体的な回答としては不充分な点も残り、さらに人員確保要求の前進をめざす判断を下しました。

このように人員の問題は完全に決着できていませんが、昨日、組合役員を中心とした日帰りの勉強会を開きました。これまで春闘期に土曜日曜の一泊二日で行なっていましたが、幅広い組合役員の皆さんの参加しやすさを考慮し、今年は土曜日の朝から夕方までの日程で開催しました。残念ながら参加者数は大幅に増えることなく、執行委員会の拡大版程度のメンバーでの勉強会となりました。

講師は自前で揃えています。自前とは言え、重責を担って活躍されている特別執行委員のお二人で、自治労都本部中央執行委員長に「都本部の当面する課題」、連合政治センター事務局長に「労働組合と政治」というテーマでお話いただきました。もう一人、私自身が「春闘期、諸課題の解決に向けて」との演題で90分ほどの時間を与えられ、日頃から感じている問題意識を披露しながら個々の課題に対しての議論材料を提起させていただきました。

職場委員会などの場面では時間の制約があり、長い挨拶は避けるようにしています。今回、時間を気にすることなく、様々な思いを話すことができました。このブログの記事数は227に及び、話す材料に事欠きません。過去の記事内容をピックアップしながら原稿を用意しましたが、実際に作業を始めると伝えたい内容が広がりすぎて、まとめる時間が予想以上にかかってしまいました。

その学習会の資料の中で、改めて行革計画に対する組合の考え方をまとめてみました。私どもの市では5か年ごとの第1次から第3次までの行財政改革推進計画を経て、第4次にあたる経営改革プランと称した行革計画が2006年6月に策定されました。その経営改革プランに対し、市当局と教育委員会当局と「労働条件の変更に伴う事項は労使で事前協議し、労使合意なく一方的に実施しない」などの原則を確認しています。

その上で組合は、組合員が健康でいきいきと働き続けられる職場を守る立場で交渉に臨み、労働条件の安定が良質な住民サービスの維持向上につながるものと考えています。同時に広く市民からも共感を得られる公務のあり方を対抗軸に打ち出しながら個別課題に対処していく方針を掲げています。組合員の職や雇用を守ることが組合の最も重要な役目ですが、その仕事や職場を熟知した職員の目線で行革提案をチェックすることも重要な役割であるはずです。

そのことが住民のメリットにつながるものと確信し、労使交渉の場を通して当該職場の組合員の声を当局へ伝えていくことになります。行政の責任と役割を明らかにし、過剰な効率性を重視した行政運営とならないよう組合が歯止めの役割を担います。安全・安心・公正な市民サービスの維持向上を優先課題とした視点で、市民ニーズに対応した地域公共サービスの確立(最近の記事参照)をめざしていきます。

前々回記事で、問題が多い「構造改革」が進められた結果、短絡的な「官から民へ」が顕著になった旨を記しました。決して指定管理者制度など行政のアウトソーシング(過去の記事参照)を頭から否定する立場ではありません。自治体直営でなければ住民サービスが低下するという発想は民間で働く皆さんへ失礼な話だと思っています。その一方で、民間に任せれば多様なニーズに応えられ、効果的なサービスができるという謳い文句にも違和感があります。

「官か民か」の区分けは、安全・安心・公正な住民サービスの維持向上を基本とした上で、採算性をどう見るかにかかっているはずです。利益を目的とするかどうかが官と民の決定的な違いだと考えています。利益の有無にかかわらず、必要なサービスを提供するのが官の責任と役割です。法律や規則の枠内で、競争しながら利益を上げようとするのが民間企業の役割です。企業によっては社会的な責任を負っている側面がありながら、そのバランスが崩れた例が様々な食品の偽装や耐震偽装問題だと思っています。

確かに学校給食業務など民間で担えるものも少なくありません。実際、全国の学校給食の15%ほどが民間委託化されているそうです。言うまでもなく学校給食は児童生徒に対する食の安全を最優先しなければならない業務であり、O-157やBSEの問題など非常に神経を使う状況となっています。繰り返しになりますが、民間だと安全対策が疎かになると決めつける訳ではありません。万が一でも起こしてはならない事態が不幸にして起きた場合、その責任から行政は免れることができません。

だとするのならば、学校給食業務への直営責任を全うすることが非常に重要なことではないでしょうか。加えて、経費節減イコール低賃金を強いられる労働者が増える社会構造であることに強い問題意識を持たなければなりません。もともと公務員賃金は民間相場の反映であるという点を考えれば、人件費の安さが「民へ」のメリットとなるのは理不尽な構図だろうと考えています。社会的な「均等待遇」原則が貫かれ、所得格差の是正が進むことが理想ですが、残念ながら一朝一夕に解決できるものではありません。その中で、指定管理者の選定などにあたっては、金額のみの競争としない公契約制度改革(過去の記事参照)などを検討していく必要性を痛感しています。

今後、経営改革プランに対峙し、各施設を中心とした行革提案へ一定の判断が求められていきます。その際、重視すべきキーワードは「直営責任と格差是正」だと考えています。一見すると無関係な言葉のようですが、それぞれ密接に絡み合いながらどのように実現すべきか非常に重要な課題となります。「直営責任」は、子どもや「食」などに対する安全責任の全う、居住する地域によってサービスの質が偏在しないような公平さなどについて、自治体がどのように担う必要性があるのか、その検証を通して判断すべきものとなります。

また、直営を維持する上で人件費の問題が避けて通れないものと判断した場合、勤務時間などの実情に応じた非常勤職員制度の活用が検討対象となり得ます。その際、均等待遇の原則を重視しながら自治体内の「格差是正」に最大限努めていかなければなりません。さらに労使交渉の結果、PFIなどのアウトソーシングを合意するに至った場合は、その企業に働く人たちとの「格差是正」も前述したとおり強く意識しなければなりません。このような視点を押さえながら個別課題に対処していく決意を新たにした機会となりました。

最後に一言、思いがけない話を特別執行委員のお二人から伺うことができました。特にお二人が宣伝した訳ではないそうですが、自治労中央本部の岡部委員長や金田書記長、自治労組織内参議院議員の高嶋良充さんらも当ブログを注目くださっていることが分かりました。たいへん光栄なことであり、これからも続けていく上で大きな励みとなる情報でした。

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2008年3月 2日 (日)

自治体財政健全化法

ブログの記事を作成するにあたって、一番労力を省けるのは他のサイトに掲げられた文章を貼り付ける場合です。その際は、必ず自分の文章との区分けを明確にし、その引用元を明らかにしなければなりません。また、あくまでも引用した文章は自分の記事の中での参考資料程度にとどめなくてはならず、雑誌や他人のブログなどの記事を全文掲載すると著作権法違反に問われかねません。

ちなみに当ブログは引用した文章をゴシック体(太字)としていますが、携帯電話からの閲覧は字体が一種類のみであるため、少し分かりづらくなっているようです。意外に思うかも知れませんが、労力がかかるのは前回記事(脱「構造改革」宣言)の中にあったような書籍の文章を紹介する場合です。引用した文章を勝手に改ざんすると著作権法に触れるため、テニヲハも間違わないよう本を見ながら一字一句を書き込むのは結構手間取る作業でした。

さて、金曜の夜、自治労都本部が主催した「自治体財政健全化法」の学習会に出席しました。一度じっくり勉強したいテーマの一つであり、直前に団体交渉が入って少し遅れましたが、あやふやな知識を整理できる貴重な機会となりました。講師は地方自治総合研究所菅原敏夫さんでした。菅原さんは東京自治研究センターの出身で、私どもの組合の学習会の講師としても何回かお招きしたことがある方です。

地方公共団体の財政の健全化に関する法律、つまり財政健全化法は昨年の6月15日に参議院本会議で可決成立し、6月22日に公布されています。健全化の指標となる実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率などは、各自治体の19年度決算の内容から適用されます。各比率の数字は自治体内の監査を経て、今年の9月頃の議会に報告され、広く公表されることになります。

各指標の算出式の分母は、すべて標準財政規模が基本となります。ちなみに標準財政規模とは、市税、地方交付税などの一般財源をベースにした標準的な財政規模を示す指標です。実質赤字比率の分子は、一般会計の実質赤字額となります。連結実質赤字比率は、国民健康保険や下水道事業などの特別会計の赤字も含んで計算されます。実質公債費比率は公債費の割合、将来負担比率は将来的に負担すべき債務の割合を示すものです。

将来負担すべき債務として、自治体職員全員が一斉に退職した場合の退職金総額も想定されるそうです。それぞれの指標ごとに基準が設けられ、早期健全化基準を超えると早期健全化団体となります。さらに悪化した財政再生基準を超えると従来の財政再建団体にあたる財政再生団体となります。一昨年、財政破綻した夕張市が財政再建団体の指定を受け、住民の皆さんが多大な負担を被っています。

19年度決算に基づく各指標の数字の公表は20年度から始まりますが、早期健全化団体の指定は20年度決算からの適用となります。つまり赤字が要注意ラインを超えた自治体は、21年度から財政健全化計画の策定が義務付けられます。どうも文字ばかりの説明では分かりづらいものと思います。鳥取県のホームページが図解入りで見やすく解説されていました。リンクをはりましたので、参考にしてください。

そもそも夕張市の破綻が公表される以前から地方分権改革の仕上げの制度として、再生型の破綻法制の議論が重ねられていたそうです。地方の累積債務の増大やその不透明さなどが問題視され、破綻する前段階で早期是正するための法整備の必要性が求められていました。この法律の施行に伴い、住民側が自治体財政を注視しやすくなり、監査委員会と議会の責任と役割が高まる機会となり得ます。

言うまでもなく自治体自身が財政規律を高め、否が応でもイエローカードが出されないような行財政改革を進めざるを得なくなります。確かに評価すべき点も多い法律だと思いますが、講師の菅原さんからはいくつか懸念点が示されました。財政再生団体となるレッドカードの基準につながらない指標ですが、菅原さんは将来負担比率の決め方の曖昧さを指摘しています。

また、自治体病院など公営企業に対し、資金不足比率の指標が新たに適用されることになりました。イエローカードでの健全化計画の策定は同じですが、レッドカードとなった場合、再建制度がない問題を菅原さんは指摘されています。つまり赤字の規模が一定の線を越えると今後、民間へ譲渡するか、廃止するか、たいへん厳しい選択肢しか残されていません。

そして、菅原さんが最も懸念されていたのは、各基準すべての分母となる標準財政規模が地方交付税の多寡で大きく左右される点でした。その地方交付税は総務省が所管しているため、地方分権の流れに逆行し、ますます国の関与が強まる問題点を訴えられていました。地方交付税が減額されると標準財政規模が小さくなり、赤字の規模が変わらなくても実質赤字比率などの数字は上昇することになります。

国の胸三寸で、恣意的に自治体を健全化又は再生団体に陥れることもできてしまいます。そのような理不尽なことはないものと信じたいところですが、在日米軍再編に伴う岩国基地への空母艦載機部隊移転問題での露骨な「アメとムチ」を見過ごせません。反対を貫いていた井原前市長の時には市庁舎建設補助金35億円をカットするなど、なりふり構わず不当な圧力を加えていました。

いずれにしても財政健全化法は、人件費の削減や公共サービスのアウトソーシングをいっそう加速させる大きな動機付けとなっていくはずです。この制度の趣旨を全否定する立場ではありませんが、前々回記事「公共サービス基本法」などで問題提起してきた視点も大切にしながら適切な自治体のあり方を改めて模索していこうと考えています。

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