ベストは見出せない人事制度
桜の花が咲き始めた年度末、期限が迫った租税特別措置の取扱いをめぐり、国会情勢は緊迫感を高めていました。5月末まで2か月間延長する「つなぎ法案」は成立される見込みですが、争点となっている道路特定財源は切り離されています。したがって、4月からのガソリンの値下げが確定しました。この問題は「もう少し税金の話」などで触れてきましたが、機会がありましたら改めて掘り下げていきたいテーマだと思っています。
さて、公務員の定年は年度の末日である3月31日となっています。今年もお世話になった多くの先輩職員が定年を迎えます。退職者の定年に伴い、翌4月1日が新入職員の採用日となります。必然的に職員全体を対象にした大規模な人事異動も4月1日発令が定着しています。この時期は市民課や課税課など多くの職場が繁忙期であり、4月は小幅にとどめて10月頃に大きな異動を行なう自治体もあるようです。
内示の時期も多少ばらつきがあるようですが、私が勤めている役所では1週間前を基本としています。そのため、毎年3月25日の午後3時過ぎは独特なざわめきに役所全体が包まれています。昇任や希望職場への異動の内示が出た職員、希望がかなわなかった職員との心情的なコントラストが際立つ日でした。役所に限らず、どのような分野でも誰もが100%満足する人事を行なうのは極めて難しく、宿命的な課題ではないでしょうか。
笑う人がいれば、泣く人が出るのが人事だと思っています。限られたポストには、限られた人しか座れないからです。それでも100%近い人が納得する人事を行なうことは不可能ではなく、そのような人事をめざすことが非常に重要です。個人的には不満足な人事でも、ある程度納得できる場合があります。希望していたポストに他の人が座ったとしても、「あの人なら仕方ないか」という場合です。
大多数の人たちが納得できる人事を行なうためには、人事に権限を持つ人たちの高度な情報収集力や人物観察能力が求められることになります。とは言え、そのような能力を完璧に備えた人ばかりが人事を司るとは限りません。相互リンクさせていただき、いつも興味深く訪問している「お役所仕事~世間の常識は役所の非常識~」の管理人さんがストレートな感想を最近の記事で吐露されています。
このような気持ちを抱く職員は少数派ではなく、すべての自治体の人事担当者が意識すべき率直な職員の声だろうと感じています。その上で、できる限り人事の一貫性や公平性を保っていくためには、仕組みや制度面を充分整える必要性があります。言うまでもなく労働組合は人事に関与できません。当局側の責任事項であり、組合が口をはさむ場面はありません。
一方で、賃金水準に直結する人事の制度面の問題は労使協議の対象としています。4年前、足かけ5年間の労使協議を重ね、賃金人事任用制度を大幅に見直しました。その時、初めて管理職候補者選考などの試験制度を導入しました。試験制度の長所は、意欲のある人に手をあげさせる点、恣意的な登用を払拭する意味合いなどがあります。当然、短所もあり、もともと人事制度はベストと言い切れるものを簡単に見出せません。
いろいろ試行錯誤を繰り返しながらベターな選択を模索していくことになります。いずれにしても最も重要な点は、どのような役職や職種の職員も職務に対する誇りと責任を自覚でき、常にモチベーションを高めていけるような人事制度が欠かせないはずです。全員が横並びなフラットな組織にも限度があり、やはり一定のピラミッド型な指揮命令系統も築かなければなりません。
その際、ピラミッドの上下を問わず、士気を低下させない人事制度が理想です。難しい話かも知れませんが、まず大事な点は、可能な限り公平・公正・納得性が担保された昇任制度の確立だろうと思います。合わせて大事な点は、部長でも一職員でも担っている仕事の重さに大きな変わりがないという自負を持たせることではないでしょうか。ある面で、会議や折衝が中心的な仕事である部長よりも、子どもの命そのものを託されている保育士の責任の方が重いとも言えます。
乱暴な比較だとお叱りを受けるかも知れませんが、市職員一人ひとり、そのような自覚と責任を持って勤めているつもりです。実際、住民サービスの維持向上のためには、手を抜ける仕事など皆無です。したがって、そのような点が意識でき、積極的な動機付けとなる人事配置が非常に重要だろうと考えています。逆に「評価されていない、左遷された」などとの印象を与える人事は、その職員の意欲を低下させる機会となりかねません。
誰もが、人のために役に立っている仕事を担っているものと意識できた時、たいへんな苦労や困難な案件に対しても前向きに立ち向かっていけるはずです。さらに他の人から評価の言葉などが投げかけられた場合、その労苦も軽減され、大きな励みにつながっていくものと思います。このような張り合いは、ポストや待遇面にかかわらず持つことができるもので、人事制度の要諦だろうと考えています。
以上のように評論家的に物申すことは簡単ですが、実務を担っている人事担当者の苦労も充分承知しています。書記長時代は人事異動の内示後、組合員から寄せられた疑問を事務折衝の際に尋ねたことが多々ありました。すると全てのケースに対して、経緯や事情などの説明が加えられました。つまり職員一人ひとりの希望や適性を丁寧に判断し、一つ一つ目的を持った人事異動に努めている点を垣間見ていました。
人事制度の話題は評価の仕方やジョブローテーションの問題などにも広がるため、このまま延々と続けることができます。日記(現状は週記?)的なブログの良さは、次回以降に続きを書ける点です。まだまだ消化不良な記事内容であることをご容赦願いながら今回は、ここで終わらせていただきます。ただ記事を重ねても、簡単にベストは見出せないのが人事制度の宿命ですが…。
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