公務員の勤務時間短縮へ
お正月とは、いつまでを指すのでしょうか。ウィキペディアなどで調べてみると「正月」そのものが本来1月の別名で、一般的には1月1日から1月3日までの「三が日」を指したり、松飾りのある「松の内」を指すことが多いと書かれていました。「松の内」自体、元々は元旦から15日までだったものが、現在は7日までを呼ぶことが多くなっているそうです。また、1月20日を骨正月と呼ぶ地域(主に西日本)もあり、改めて期間の定義の幅広さがよく分かりました。
多くの方は年末年始休暇が明ければ、お正月気分も終わりだと思うのかも知れません。あるいは年賀状をやり取りしている間は、お正月が続いている気持ちになり得るのかも知れません。その場合、遅くとも年賀ハガキは、お年玉抽選日の15日頃までに出すのが目安でした。ちなみに今年の抽選日は例年より半月近く遅い1月27日です。郵政民営化の初年度であり、1枚でも多く年賀ハガキを販売するための変更なのでしょうか。
記事タイトルと異なる前置きが長くなるのは当ブログの習性であり、ご容赦ください。実は今回、記事の更新は来週に見送り、年賀状バージョンと称した「2008年、転換の年へ」をもう1週間トップページに掲げて置こうか少し迷いました。休日に比べて閲覧者数の多い平日が金曜1日だけだったこともあり、決して手を抜こうと考えた訳ではありません(笑)。
そのため、お正月の期間について参考までに調べてみました。その期間のとらえ方は様々であることも分かりましたが、やはり年賀状バージョンのトップページは7日頃までが適当だろうと思い返したところでした。ちょうど大晦日の朝刊に載った新聞記事を気に留めていましたので、その内容を中心に書き進めることにしました。
人事院は2009年から、国家公務員の1日の勤務時間を8時間から7時間45分に短縮する方針を固めた。民間企業の労働時間が短くなっているのに合わせた対応で、8時間労働を定めた「一般職職員勤務時間休暇法」の改正を来年夏の人事院勧告に盛り込む。国家公務員の時短は、完全週休2日制を導入した1992年以来となる。
民間企業の労働時間は労働基準法で「1週間40時間、1日8時間を超えて労働させてはならない」と定められている。だが、各企業が就業規則などで定める所定労働時間は、週休2日制の浸透などで時短の機運が広がったことで、この法定労働時間より短くなっている。人事院の04~07年の調査では、各年とも1日平均7時間45分程度だった。人事院は08年にも改めて調査したうえで勧告する予定だが、時短の傾向は変わらないと見ている。(読売新聞2007年12月31日)
この記事を目にして、公務員にとって久しぶりの朗報だと思った方は多いのではないでしょうか。当ブログのバックナンバー「休息時間の廃止」で記しましたが、公務員固有の制度だった休息時間の見直しが進んでいました。その結果、思いがけないところへ大きな影響を与えていました。
それまで休憩時間45分に休息時間15分を合わせ、昼休みを60分としていた役所が多くありました。休息時間の廃止によって昼休みが45分となり、役所の職員が外へ出て昼食をとる機会が激減し、周辺の商店街の売り上げに深刻な影響を与えていました。次のような新聞報道があるほどでした。
かつて当たり前のようにあった公務員の有給休息時間が廃止され、街の飲食店が悲鳴を上げている。多くの自治体職員の昼休みが短縮され、外で昼食をとる職員が減ったためだ。岩手県は今年7月、昼休みを45分から1時間に戻し、終業時間を15分遅くした。青森県でも地元商店街の要請を受け、昨年6月に改正したばかりの条例の再改正を念頭に、昼休みの実態調査に乗り出した。(産経新聞2007年10月29日)
したがって、今回の人事院の調査結果は、周辺の商店街の皆さんにとっても歓迎すべきニュースだろうと思います。ただ規模の小さい企業ほど労働時間の長い傾向があり、公務員の時短を進めれば、こうした企業との「格差」が生じかねないと読売新聞の記事には書き加えられていました。さらに公務員の労働時間短縮に対し、実質的な時間当たりの給与引き上げになるとの批判が出る可能性もあると書かれ、その記事は結ばれていました。
中立的な機関である人事院の客観的な調査結果に対し、どうも読売新聞は異論を唱えているように感じました。公務員の処遇が突出していては当然問題です。ここ数年、その問題意識を踏まえ、各自治体で数多くの見直しがはかられてきました。それに対し、見直しのテンポの遅さなどを批判される場合があり、もっともっと公務員の労働条件を切り下げるべきとの声も時折り聞こえてきます。
しかし、民間比較との結果が平均以下だった場合、それはそれで問題だろうと思っています。以前、社会的な週休2日制の実現に向けて公務員側が先行し、全体的な底上げをはかるための役割を担いました。とりまく情勢が変わっている今、そのような話を簡単に強調できないこともわきまえているつもりです。それでも公正な労働基準を社会的に維持していくためにも、公務員の労働条件が一つの目安として認知されていくことも大事だろうと考えています。
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コメント
久しぶりにお邪魔しました。
今年も、よろしくお願いします。
投稿: tama141 | 2008年1月 6日 (日) 20時51分
お邪魔します。
これはどうなんでしょうね。いや時間短縮という内容は良いことだと思うのですが,今,なぜこのような動きが出るのかが,よくわからず不気味な感じがします。
「休息時間」は高級官僚には実質関係ないですが,「昼休み45分」はみんなに影響するからでしょうか。でも,そんな単純な話とも思えません。
影響が商店街レベルを超えて,大企業レベルまで及んだのでしょうか。それほどのものとも思えません。
「背景」が見えないと,額面通り受け取って良いのかどうか戸惑います。
何かご存知でしょうか。
投稿: WontBeLong | 2008年1月 6日 (日) 21時11分
tama141さん、お久しぶりです。今年もよろしくお願いします。
ぜひ、これからもお時間がある時、ご訪問ください。
投稿: OTSU | 2008年1月 6日 (日) 21時50分
WontBeLongさん、コメントありがとうございます。
人事院は労働条件の諸課題について、定期的に官民比較の調査を行なっています。今回、その一環の中で明らかになったものと受けとめています。
なお、公務労協など公務員組合側が春闘期など節目の人事院交渉で、そのような調査の実施を求めていたのが一つの背景だとも言えます。
投稿: OTSU | 2008年1月 6日 (日) 21時57分
これまで1日7時間45分の勤務時間に対して、国公準拠を理由に見直しが図られてきました。私の近隣自治体でも勤務時間8時間の自治体が大勢となっています。
私どもも経営当局と協議を重ねてきました。その中で住民サービスの面から窓口の開庁時間について議論を行い、毎週1回午後7時まで窓口を開けて各種証明書の発行を行っています。
年度末には住民登録の異動が多くなるため、土日の半日開庁も行っています。
これらはすべて労働組合側の提案で実施に至ったものです。
開庁経費と住民ニーズ、費用対効果を計るために試行期間を設け、潜在的なニーズと開庁時間の決定を行いました。
職員は原則、時差出勤で対応。一定の評価もいただいているとこです。窓口は延長しても職員の勤務時間は増やさない。
工夫をすれば、策はあるんですよね。
投稿: shima | 2008年1月 7日 (月) 08時26分
shimaさん、コメントありがとうございました。
私どもの市役所も日曜や平日午後8時まで開設している駅前のセンターがあり、転出転入の繁忙期には本庁舎でも休日に臨時窓口を開いています。それぞれ市当局から提案が示され、労使協議を経て受け入れてきました。shimaさんたちが組合側の提案で始めている点について、たいへん頭が下がります。
また、ご指摘のような様々な工夫や方策が本当に必要な時代であることを痛感しています。
投稿: OTSU | 2008年1月 7日 (月) 20時23分
なんとも窮屈な時代になって・・・このあたりでは、ほんの少し前まで大きな祭礼の日には、公務員が交代でお宮に参詣していたものですが、誰も何にも言いませんでしたけどね~^^;
最近は逆に官民とが相互監視みたいな感じになって、なんともギスギスした嫌な雰囲気があります・・・だけど、住民もよく見ていて、喫煙所に行けば必ず会えるような公務員でも、仕事ができる公務員なら何も言いませんよ^^
労基法なんて「関係ない!」とは言いませんが、たかだか15分くらいの休息時間がどうのこうのなんて、北海道から沖縄まで、横浜市のような自治体から知夫村のような自治体まで一律になるよう国が関与するようなことでもないと思います。
締めるところは締めてもらわなければ困るけど、官民でもっと大らかな付き合いがしたいものです。
投稿: ニン麻呂 | 2008年1月 7日 (月) 21時37分
ニン麻呂さん、コメントありがとうございます。
まったくその通りだと思います。おおらかさが許されない職場に変わりつつあります。おおらか過ぎて、働かない職員が許される職場は論外ですが、少しばかり窮屈な時代になってしまいました。
いつも公務員の働き方に対して辛口なニン麻呂さんから今回のような感想をいただくとホッとします。ありがとうございました。
投稿: OTSU | 2008年1月 7日 (月) 22時41分
>休息時間の廃止によって昼休みが45分となり、役所の職員が外へ出て昼食をとる機会が激減し、周辺の商店街の売り上げに深刻な影響を与えていました。
「労働者はオンのときは財・サービスの提供者だが、オフのときはお客さんになる」と言う観点がどうも世間から抜け落ちている気がします。やはり余裕がなくなってきているのでしょうか・・・
>岩手県は今年7月、昼休みを45分から1時間に戻し、終業時間を15分遅くした。
これ、ウチの自治体でも検討されていたのですが、反発は起きなかったのでしょうか?昼の「休憩時間」は建前上は自由に使える時間ですが、実際は拘束される確率が高く、純粋に拘束時間を15分増やされているように思えるのですが。
>今,なぜこのような動きが出るのかが,よくわからず不気味な感じがします。
僕もそう思います。「労働時間を15分削ったのだから、給料を3%下げられる」などと言い出したりしないか心配です。
>影響が商店街レベルを超えて,大企業レベルまで及んだのでしょうか。それほどのものとも思えません。
経済産業省あたりが「経済効果」とか言い出したのではと勝手な想像をしています。真面目な話、地方レベルでは商店街の活性化とかは重要課題だと思いますし。
>職員は原則、時差出勤で対応。一定の評価もいただいているとこです。窓口は延長しても職員の勤務時間は増やさない。
>工夫をすれば、策はあるんですよね。
昨今、こういうシフトの類が魔法の手段みたいに重宝されている印象がありますが、一つだけ気になることがあるんです。有休消化率が悪化したりはしないですか?
それでは。今年もよろしくお願いします。
投稿: KEI | 2008年1月 8日 (火) 23時35分
KEIさん、おはようございます。
ご指摘のとおりの問題のとらえ方があるものと思います。また、課題が異なれば、これほどKEIさんと共通の認識に立てることの感慨深さもあります。
こちらこそ今年もよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2008年1月 9日 (水) 06時52分
うちでは年休消化率に直接影響は見受けられませんよ。
また、子育て中の職員は逆に朝の時間を有効に使っているみたいです。
年休消化に限定して分析すると昨今の要員縮減で総じて減少傾向にはあるみたいです。
職場によるというより、個人によるバラツキが顕著ですね。人に仕事を任せられないというかいろいろ要因はあるのでしょうが・・・。
うちの場合、計画消化みたいなものは組合でも奨励していませんし、個人の判断に任せています。
休みを計画的に取るのも仕事力なんだと思いますよ。ちなみに私自身は、個人的な用件での休暇の昨年実績は3日だったかな?厳しい現実です。
投稿: shima | 2008年1月 9日 (水) 08時20分
shimaさん、おはようございます。
以前のようにshimaさんのコメントにより、いろいろ情報交換できる機会となっています。たいへんありがとうございます。
投稿: OTSU | 2008年1月 9日 (水) 08時28分
OTSUさんの記事とは直接関係なくて恐縮ですが、今月号の「ガバナンス」(ぎょうせい刊)に「公務員のためいき」が紹介されているのを今日初めて発見しました。
紹介記事の末尾に、「こうした地道なコミュニケーションが、自治体の信頼に繋がっていくのではないだろうか。」とありましたが、そのとおりだと思っています。
末永いご活躍をお祈りします。
投稿: ニン麻呂 | 2008年1月10日 (木) 00時16分
ニン麻呂さん、おはようございます。
そのようにおっしゃっていただき、たいへん光栄です。また先日はニン麻呂さんのブログでのご紹介、ありがとうございました。ぜひ、これからもよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2008年1月10日 (木) 06時37分
>うちでは年休消化率に直接影響は見受けられませんよ。
>また、子育て中の職員は逆に朝の時間を有効に使っているみたいです。
shimaさん、回答ありがとうございます。
単位時間あたりの職員数が減少するから休みが取りにくくなるのではないか、と不安に思ったのですが、案外そうでもないと言う事なのですね。
ただ、
>年休消化に限定して分析すると昨今の要員縮減で総じて減少傾向にはあるみたいです。
>ちなみに私自身は、個人的な用件での休暇の昨年実績は3日だったかな?厳しい現実です。
なんてのを聞くと「すでに悪化しきっているのでこれ以上悪化しないだけなのかも?」などとも思えてきます。
有休消化率が低いと言うことは、その分だけ無賃労働時間が増えていると言うことになります。何か対策は無いものなのでしょうか・・・
投稿: KEI | 2008年1月11日 (金) 00時42分
確かにもう少し休みやすい環境整備も必要かと思います。
仕事の分担の見直しなどサービス体制と職員のバランスを精査し、仕事の持ち方を考えていきたいと思います。
休暇でいうと夏季休暇は5日あるんですが、こちらは取得率は高いんですよ。課題は連続取得が進むようにしたいんですけど、せいぜい土日と絡めて3連休くらいかな。
半日単位で取得できるんですけど、やっぱり仕事の段取りを付けて、1週間休めるような仕事の進め方は難しいんですね。
投稿: teshima | 2008年1月11日 (金) 08時27分
こんにちは。
昨年はこちらにて、啓発されること多々ありましたこと、御礼申し上げます。
さて
本日の昼休み、ぐ~たらな私は、規定の1時間を30分も超えて、のんびり過ごしてしまいました。
毎日このようなことを繰り返していたら、自分の業務に影響も及ぶか、たとえ業務に支障が及ばなかったとしても(時間配分、業務のやり方は裁量が大きいので)、周囲に与える影響を考慮されて、何らかの処分が下されることは確実だと思います。
しかし製造現場勤務ではない私には、59分59秒後にきっちり仕事再開準備を強制されると、なんだか少し息苦しいような気が致します。
そこで身勝手な言い訳:「たまになら いいでしょ? だめ? ...」 ← 「もし」「仮に」、この言い訳が公務員のかたのものとしてメディアに載ったら、どこかの芸能人が瞬間湯沸かし器になりそうですね...
失礼しました。単なる私の本音でした。
こんな怠惰な民間人ですが、今後もよろしくお願い致します。
投稿: どんちび | 2008年1月11日 (金) 17時48分
KEIさん、teshimaさん、どんちびさん、コメントありがとうございました。
勤務時間の話は個々人いろいろな思いがありそうですね。このように話題の輪が広がっていく点が、少々手前ミソながら当ブログのコメント欄のおもしろさだと感じています。
ちなみに会話の流れからteshimaさんはshimaさんだったのではないかと思っているところです…?
投稿: OTSU | 2008年1月11日 (金) 20時08分