« 収納現場から見た税源移譲 | トップページ | 千円札の重み »

2008年1月20日 (日)

もう少し税金の話

このブログのカテゴリーは「日記・コラム・つぶやき」としています。始めた頃は主張したい内容が山積し、ブログの面白さにもはまったため、ほぼ毎日更新していました。それが週2、3回となり、一昨年の夏頃から日記と言うよりも「週記」と呼ぶペースとなっていました。組合活動を身近に感じてもらうこともブログを開設した目的の一つとしていますので、日記に近かった当時は様々なイベントの報告記事も多数綴ってきました。

インターネット上で発信できるブログは、紙ベースの組合ニュースとは比較できない速報性を活用できます。例えば2年前、組合主催の「新春旗びらき」を報告した記事があります。多少(?)酔って帰宅したにもかかわらず、その夜のうちに新規記事として投稿しました。翌朝、いつも当ブログを注目くださっている方から、その素早さに感心していただいたことがありました。ちなみに取り組みの趣旨や内容の大半は、事前に書き込んでいたことを正直に明かした話も思い出しています。

恒例行事である「新春旗びらき」が先週水曜夜に開かれ、金曜には休暇を取って昼から退職者会の新年会に参加し、夜には連合三多摩の「新春の集い」に顔を出していました。火曜と木曜の夜には収納担当全員が残り、一斉に電話催告を行なっています。さらに早く帰れば帰れるのにプラスαの懇親にも努めてしまう行動パターンは相変わらずでした。さすがに昨日の土曜は疲れ切って、頭の中に霞がかかった一日となっていました。

さて、前回の記事は「収納現場から見た税源移譲」でした。納税課の現役職員ですが、税金全体の知識を網羅したエキスパートではありません。少しでも多くの知識を身につけたいと思っていますが、幅広い税目があり、常に法改正が続いている中、道のりは険しく遠いものと痛感しています。それでも自分自身の勉強の意味合いをこめ、今回も税金に関する話題を当ブログで取り上げさせていただきます。

特に最近、ガソリン税の暫定税率の問題が焦点化されています。与野党が正面から対決する案件となり、連日マスコミが大きく扱っています。現在、1リットルあたりのガソリン代には国税である揮発油税48.6円と地方道路税5.2円が含まれ、その税金に対して消費税までかかっています。1974年に道路整備を急ぐ政策的な目的から税率を上乗せし、これまで5年ごとに延長を重ねてきました。

租税特別措置を続けるための税制改正関連法案が3月末までに成立しない場合、揮発油税24.3円と地方道路税0.8円の上乗せ分が認められず、ガソリン代1リットルあたり25.1円安くなる計算です。消費税も含めれば約26円の値下げとなります。その他の道路特定財源の中で、自動車取得税、自動車重量税、軽油引取税が同じように暫定税率のまま現在に至っています。

今回、参議院の勢力が与野党逆転していたため、このように注目を浴びることになりました。大事な問題に対して国民の関心が高まった意味で、「ネジレ国会」の意義深さがあるのではないでしょうか。国会の場で、民主党はガソリン代の高騰に苦しむ国民の切実な声を追い風とし、ガソリン値下げ隊などを結成して暫定税率の撤廃を求めています。

一方、政府与党は参議院の構図が長期にわたることを見込み、今まで5年ごとの見直しだった暫定税率を今回は10年間維持する法案の成立をめざしています。また、ガソリン税の暫定税率廃止に伴い約2兆円の税収減を試算し、必要な道路建設や整備が滞るなどのマイナス面を強調しています。

さらに租税特措法改正案は中小企業向けの優遇措置なども含まれたものであり、期限切れを迎えた場合、道路だけではない幅広い国民生活への影響が出ることも訴えています。加えて自動車取得税と軽油引取税は地方税であるため、各自治体(都道府県)の財政に約9千億円の穴があくことも声高に宣伝しています。

町村官房長官は「地球温暖化対策でエネルギー価格は環境税を課してでも上げなければならないと世界中で言っている最中に、これを下げるという選択が国際的に認められるのか」と述べ、環境対策の観点からも税率維持に固執する姿勢を示しています。分からない理屈ではありませんが、ここまで抵抗する自民党の必死さには疑問符を付けざるを得ません。

車を利用する圧倒多数の人たちは、ガソリン代が安いのに越したことはありません。その思いを政党は軽視すべきではないものと思いますが、値下げかどうかだけの「木を見せて森を見せない政治」とならないように願っています。当然、廃止に伴う財源の問題は深刻です。しかしながら重要な論点は、暫定税率が34年も続いていることや、目的税の使途が拡大解釈されて既得権的な財源となっていることです。

後者は道路特定財源そのものの問題でもあり、この機会に税制全体を通した論議を深める必要性も感じています。そもそも小渕元首相が「恒久的減税」と称した定率減税は、8年足らずで今年度から廃止されました。2005年からは65歳以上の公的年金等控除が縮小され、50万円の老年者控除が廃止されました。

その結果、税金の支払い義務の発生した年金受給者が急増し、同時に所得税が年金から源泉徴収されるようになりました。なお、住民税は普通徴収となるため、その不満の声を数多くの年配の皆さんから直接耳にしてきました。市に訴えられても仕方のない話ですが、少しでも不満のハケ口になれればと思いながら休日訪問した時など、じっくりお話を伺ってきました。

国も自治体も財政が厳しい状況です。少子高齢社会に突入し、社会保障費の問題などが山積しています。その中で、どうも税金は取りやすいところ、あまり目立たないところの制度改正で、急場をしのいでいるように見えます。国政の場で消費税の引き上げ論議がタブー視されている点は、決して好ましい状態ではないものと思っています。

言われるまでもなく、その議論を本格化させる前提として、私たち地方公務員も率先し、既存の行政のあり方を見直していく姿勢が重要であるものと考えています。そして、言うまでもなく、政治家が国民から信頼される政治を築くことが最も重要であるはずです。ぜひ、民主党に対しては党利党略と見られることのない国民本位の政治への転換を切望しています。

かなり昔ですが、オランダに長年暮らしている方と会話を交わす機会がありました。「高い税金に不満はありませんか?」との私の問いかけに対し、「たいへんだけれど、確実に私たちの福祉に使われるという信頼感がありますから…」との言葉が心に強く刻まれています。

|

« 収納現場から見た税源移譲 | トップページ | 千円札の重み »

コメント

私も、町村さんの主張には納得がいきません。
ガソリン特定財源は、車を走らせる道路を作るための税金ですから、道路が出来れば自然環境は破壊されるし、そこを今まで以上の車が走れば、これまたCO2の排出量が増える。
特定財源を道路建設から環境対策にまわすというのならわかりますが

投稿: すてぃーぶ | 2008年1月20日 (日) 17時59分

結果的に死亡した70歳ホームレスへの役所対応の賛否
 昨年11月、静岡県浜松市で市職員が見守る中、空腹で衰弱した女性が心肺停止に陥り、結果死に至る出来事があったが、これが今週になって明らかにされた...........≪続きを読む≫


投稿: | 2008年1月20日 (日) 19時27分

すてぃーぶさん、コメントありがとうございました。
ご指摘のとおり町村官房長官の発言は、環境税の話と混同させる議論誘導の面を否めません。やはり暫定税率存続ありきの理屈だと感じています。

投稿: OTSU | 2008年1月20日 (日) 19時58分

2008年1月20日(日)19時27分に投稿された方へ
いろいろ考えさせられる残念で、たいへん気の毒なニュースだと思っています。したがって、そのままコメント欄に残しますが、投稿者ご自身の一言を添えていただかなければスパムコメントと同じ扱いとせざるを得ない場合もあります。
ぜひ、これからはコメント欄の位置付けや趣旨にご理解いただき、お名前とご意見を添えた投稿をお願いします。

投稿: OTSU | 2008年1月20日 (日) 20時07分

 自民党が必死なのは、まだ「ブラックボックス」が残っているからでしょうね。

 膨大な額の道路特定財源が34年間も入り続けていて、未だに高規格道路の整備ができていないところが日本中あるなんていうのは解せません。
 さすがに、地元の土建屋が何時の間にか道路建設予定地を先行取得していたなんて露骨な話は聞かなくなりましたが、民営化した途端に高速道路の1台の緊急電話の設置が随契で250万円だったものが、方式の見直しをしたら50万円ですんだなんて話はいくらでもあります。(これもポーズなんでしょうけど・・・)

 ま、道路だけでなく下水道事業関連なんかも同じ構図だし、緑資源機構関連もそうなんでしょう。(民間企業が指名停止になったくらいで、後はほとぼりが冷めるのを待つだけという感じですね)
 下水道関連で言えば、少し内情が解る人なら、下水道事業団(日本下水道協会)や農業用集落排水協会(土改連)にコンサル能力や技術力があるなんて誰も思わないでしょう。民間のコンサルタントやゼネコンに丸投げしてるだけですからね。(経済大国日本での普及率は70%弱なんてことが異常でしょ。)

 緑資源機構なんてのもまったく能力も技術もないところです。そんなところが道路法の適用を受けない道路をなんでつくり続けなければならないのか・・・

 民主党も「ガソリン値下げ隊」なんてはしゃいでいないで、税金が「確実に国民の福祉に使われるという信頼感」を得られるような政党を目指してほしいのですが・・・

投稿: ニン麻呂 | 2008年1月20日 (日) 22時06分

ニン麻呂さん、コメントありがとうございました。
やはり財源があるから使うという構図や天下りのための組織維持の問題をどう改めるかが総論だろうと思っています。
ただ各論としての解決に向けては、長年積み重ねてきた官僚制度の見直しから丁寧に進めないと様々な問題や混乱が生じかねません。
労使の関係も同様であり、明らかに問題である点は速やかに改めていきますが、ある程度丁寧さも意識しないと殺伐とした対立関係のみが際立つ恐れもあります。
ニン麻呂さんの鋭い提起を受け、少し本題から離れた感想を述べさせていただきました。具体性の乏しい話で失礼致しました。

投稿: OTSU | 2008年1月20日 (日) 23時20分

昨日、わが町のショッピングセンターの前での街頭インタビューが民放の全国放映のニュースで流されました。

NHKは、全国の都道府県議員の総決起大会のニュースで、わが県の議員の大写し(本人の音声入りで)を流していました。

どちらも「暫定税率廃止」について、地方の不満を取り上げる内容だったのですが、ここは、近年ずぅ~っと、県民一人当たりの公共事業投資額で日本一の座を譲ったことのないところなんですね^^;

ここに住んでいて「?」と思うくらいだから、傍から見れば「?????」という感じなんでしょうね。(ま、インタビューの場所はバレてるけど、県議の放映に字幕はなかったからどこかはバレてはいませんけど・・・)

ま、一回変えてみるのもいいかもしれない・・・なんて最近は思うようになりました^^

投稿: ニン麻呂 | 2008年1月24日 (木) 11時49分

 大変お久しぶりです。仕事やら、私事やらで、いろいろ忙殺されて、今年の書き込みははじめてです。改めまして今年もよろしくお願いします。

 さて、今回の「ガソリン税」の問題ですが、ひとりの生活者として考えるときには、大変ありがたい話ですが、仕事のことを考えると、「この時期に予算がらみのことで、様々な方面に迷惑をかけるのはやめてくれ」という心境です。

 本当この問題を真面目にやるならば、選挙の時から主張して、もっと前から(予算の成立を妨害しないように)慎重にやるべきだったと考えます。

 民主党の鳩山幹事長は、財源に穴を開けた場合どうするのか問われて、「地方の直轄事業負担金を廃止する」とテレビ番組で答えていますが、「裏負担分」に措置されている交付税も減るでしょうから、それでなんとかなりますよという自治体はあるんでしょうかね?

 これこそが「木を見て、森を見ない政治」ですね。やるのなら、もっと真剣にやってほしいですし、思いつきの人気取りなら、せめてこの時期はやめてほしいです。日本の行政は、残念ながら中央集権ですから国家の予算が成立しないと、自治体の現場は困ってしまいます。
 道路特定財源で「地方の道路」をもっぱらつくっているというイメージも釈然としません。都市計画事業(例えば街路・立体交差)等、「中央」にもかなり多額が渡っています。これを「地方」だけの問題というのも疑問です。

 国民生活を考えるなら、政府与党・野党とも、せめて予算の成立には責任を持ってほしいと思います。

投稿: Unvollendete | 2008年1月24日 (木) 20時53分

ニン麻呂さん、Unvollendeteさん、コメントありがとうございました。
お二人のご意見に対し、適確に答えたものではないものと承知した上で、このコメント欄で書き込ませていただきます。
今夜、自分が役員を務めている連合地区協議会の旗開きがありました。乾杯の一言を任せられた際、このように添えました。
ガソリン税の話は賛否両輪ありますが、「ネジレ国会」にならなければ、このような注目を浴びなかったはずです。
この前後に託した言葉はありますが、主張したかった点は以上の趣旨に尽きます。さらに今回の記事本文に書き込みながら充分表現できなかった点を補足します。
暫定が34年、恒久的が8年、このことを改めて強調させていただきます。このような問題意識は、もう少し記事本文で続けていくつもりです。ぜひ、皆さんのこれからも貴重なご意見のコメントをお待ちしています。よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2008年1月24日 (木) 23時54分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: もう少し税金の話:

« 収納現場から見た税源移譲 | トップページ | 千円札の重み »