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2007年12月16日 (日)

塀の中から見た福祉

木曜の夜、私も役員を務めている連合地区協議会主催の講演会が開かれました。講師は元衆議院議員の山本譲司さんで、「塀の中から見た日本の福祉」という演題でした。山本さんは「獄窓記」の著者ですが、その「獄窓記」は柳葉敏郎主演でテレビドラマ化もされています。

「獄窓記」は自らの体験を綴った著書です。つまり実刑判決を受け、山本さんは1年2か月ほど服役した経験を持っていました。仮釈放後、何か行動を起こそうとするたび、山本さんは社会から排除されているような劣等感や自虐的な気持ちにさいなまれ、1年近く引きこもりの生活が続いたそうです。

出所後、山本さんは福祉施設で働いていましたが、塀の中で見たことを綴ることによって、一人でも多くの人に行刑施設の実情に目を向けていただくことも大事だと考えました。また、罪を犯した自分というものを絶えず自覚するためにも、4年前、逮捕から刑務所内での生活までを書きしるした「獄窓記」の出版に至ったとのお話です。

刑務所には心身に障害を持つ受刑者が多く、その指導補助役に山本さんは命じられ、オムツを替える仕事など障害者の身の回りを世話する役目を負っていました。その時の話が思いがけず福祉や矯正関係者の目にとまり、講演依頼や激励が相次ぎました。現在、山本さんは半官半民刑務所のアドバイザーを務め、法務省や厚生労働省とも連携し、障害を持つ受刑者に対する処遇プログラム作りや社会復帰支援に向けた活動に力を注がれています。

山本さんの罪は、政策秘書の名義借りした詐欺罪でした。2000年9月、政策秘書給与流用容疑で逮捕され、翌年、懲役1年6か月の実刑判決が言い渡されました。山本さんは逮捕直後、すみやかに国会議員を辞職し、搾取金に年利5%の利息をつけた約2千8百万円を国庫に返納されていました。

当時、政界での秘書の名義貸しは恒常的な問題であるような見方もあり、大半の人は執行猶予がつくのだろうと予想していました。しかし、実刑という予想外の厳しい地裁判決に驚いた記憶があります。山本さん自身は、有権者の期待を裏切り、国民の政治不信を増大させた責任は重いものとし、控訴せず一審での判決を受け入れています。

実は今回、連合地区協議会が山本さんを講師として招いたのには一つの訳がありました。山本さんが衆議院議員だった時の選挙区は、私どもの組合がある地域でした。民主党の山本さんを連合推薦候補とし、各労働組合が全力で応援し、2回の当選を勝ち取ってきました。日常的にも勉強会などの交流があり、緊密な協力関係を築いてきた間柄でした。

そのような経緯もあり、福祉の分野で活躍されている山本さんを講師としてお呼びしました。逮捕された当時は皆が驚き、私たちとの信頼関係を欺いたことなる山本さんに対する怒りもうずまいていました。しかしながら潔く罪を償い、新たな方面で活躍されている山本さんに再び会ってみたい気持ちも高まっていました。

そのため、私どもの地区協議会に属する組合の役員や組合員との再会の場としても、今回の講演会を位置付けていました。わざわざ退職された組合役員OBの方まで顔を出されるほど、山本さんとの再会を皆さんそれぞれが待ち望んでいたようでした。100人入る会場がギッシリ満員となり、以前と変わらない山本さんの明るさやバイタリティに懐かしく接することができた貴重な時間となりました。

とは言え、山本さんが逮捕されたニュースに接した時、たいへんな衝撃を受けたことも忘れることはできません。信頼関係が裏切られたことはもちろん、そのような人物の支持を組合員の皆さんに訴えてきたことを深く反省し、残念な思いで一杯だったことを覚えています。特に私どもの組合は、山本さんが26歳という若さで都議会議員となった時からの長い付き合いがありました。

したがって、その事件の後、組合の政治方針に対する率直な議論が交わされていきました。私が書記長になった1年目のことであり、本当に心を悩ましたことが思い出されます。ちなみに余談ですが、2年目の時に自治労不祥事問題が発覚し、4年目には不正入札事件が市役所内を震撼させました。振り返ってみると5年間の書記長時代、労働組合の本来任務とは離れた重大事への対応に追われていたことになります。

毎度のことですが、記事タイトルの主題に入るまでの話が長くなりがちです。日記風の雑記ブログであり、そのような性格のものであることを改めてご理解ください。多少言い訳気味となりますが、山本さんの講演内容の全体像は著書である「累犯障害者」をお読みいただくことが正確に伝わるものと考えています。また、「続・獄窓記」も来月出版されるとのことでした。

このブログでは講演の中で、特に私自身が印象に残ったお話を紹介させていただきます。なるほどと思ったのは、精神鑑定さえ受ければ刑務所に入ることのない知的障害者が数多く存在する事実でした。迅速な裁判の審理を優先する風潮や1回25万円ほどかかるコストの問題があり、安易な実刑判決が多くなる実態であるようです。

服役中、山本さんが障害のある受刑者と交わした会話が印象的です。刑務所の中には「自由がないけど、不自由もない」との言葉でした。障害のある受刑者にとって、出所しても「衣食住」のあてがなく、一方で塀の中には最低限の暮らしがあるとの意味合いでした。

これまで雑煮など食べたことがなかった受刑者、正月に雑煮が出て驚き、バレンタインデーという言葉も知らなかったのに2月14日にはチョコレートが出て驚く姿が目に浮かびました。「人生で刑務所が一番暮らしやすかった」とつぶやく受刑者が、再び刑務所に入るため罪を犯す不条理な現実があることを改めて思い知りました。

福祉のセーフティネットから漏れた障害者が無銭飲食などの微罪で実刑判決を受け、結果的に刑務所が福祉施設の代替施設となっている現状を山本さんは強く訴えられていました。国会で見えなかった福祉の現実が刑務所で見えたとの山本さんの言葉には重みがあり、障害者が安心して地域で暮らせる法整備の必要性を強く説き、講演の結びとされていました。

講演内容そのものが興味深く、まだまだ伝えたいことが数多くあります。ぜひ、関心を持たれた方は先ほど紹介した山本さんの著書をご覧になってください。また、講演会が終わってから山本さんと役員数人で食事に行きました。その時のお話も非常に興味深いものでした。フリーな立場であるため、ストレートな言葉で今の民主党を叱咤激励されていました。一つ一つ大きくうなづける話が多く、貴重な旧交をあたためる機会となりました。

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コメント

ごぶさたしています。なんだかヤフーニュースで公務員賃金の話題が出ていて、久しぶりにブログを書きました。

山本譲二さんの話は、私も聞きました。私も福祉の仕事をしていたのですが、ホームレスもやはり知的障害の方が多かったです。(そして、その中の一部の方は獄中に入っていったのでしょう)やはり生きづらい社会なのだなぁ・・と思いました。

http://blog.goo.ne.jp/hammer69_85/e/498f2a81ab756820381b019a4a3f843b

投稿: hammer69_85 | 2007年12月18日 (火) 02時36分

hammer69_85さん、お久しぶりです。コメントありがとうございました。
hammer69_85さんのブログはブックマークし、更新のたび、訪問させていただいています。今回、hammer69_85さんの問題意識がヒシヒシと伝わる内容でした。これからもお互い地道に頑張っていきましょう。よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2007年12月18日 (火) 07時17分

どうもありがとうございます^^;私もあらためてブックマークいたしました。今後ともよろしくお願いします。

投稿: hammer69_85 | 2007年12月18日 (火) 19時54分

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