もう少し政治の話
木曜の朝、今期の賃金・一時金闘争が大筋で決着しました。昨年「予想外に難航した賃金交渉」という記事を投稿しましたが、今回は事前の予想通り非常に厳しい闘争を強いられました。東京都人事委員会の勧告内容(月例給△0.07%、一時金0.05月引き上げ)を基本とする一方、最大の争点は地域給の取扱いでした。最終的な交渉で、何とか月例給の引き下げ(△0.9%)に見合った地域手当の引き上げ(1%)を確認できました。
結局、一睡もしないまま朝を迎えることになりました。その日の午後は連合地区協議会絡みの会議が立て続き、さらに無謀にも会議が終わってからの懇親会にも顔を出してきました。幸い帰りのバスで寝過ごすこともなく、無事(?)帰宅することができました。たいへんハードな日程をこなし、夜、泥のように眠れたのは言うまでもありません。
さて、前回記事で「大連立」騒動に対する個人的な所感を述べさせていただきました。いろいろ横道にそれながら長々と記しましたが、まだまだ言い添えたい点がありました。素人の政治批評的な話など面白くないかとは思いますが、お時間が許される場合はもう少しだけお付き合いください。
かつての労働組合は総評系が社会党、同盟系が民社党を支持していました。1989年に現在の連合が発足しましたが、組合ごとに従来の枠組みのままの政党支持が続いていました。1996年に民主党が誕生し、社会党の議員の多くが民主党へ結集しました。民社党に所属していた議員は新進党を経て、新進党が解散した1998年に民主党へ合流しています。
このような政界再編の結果、幸にも連合内での政党支持問題は基本的に一本化されたことになります。もともと総評系と同盟系の組合の政治的なスタンスは、それぞれが支持してきた政党の差異と同様に一定の距離がありました。今でもその距離が残っている実情に変わりありませんが、国政選挙戦においては連合内が一致結束できるようになっています。
昔から労働組合は団結が重視されています。その意味で、政治方針の問題が不団結の要因にならず、さらに支持政党との関係においても一枚岩である方が好ましいことは確かです。労働者の声を国政へ適確に届けるためにも、現状のような連合と民主党との関係は意義あるものと考えています。
ちなみに私どもの地元から選出されている民主党の衆議院議員は長島昭久さんです。機会があるたび、「民主党は労働組合との関係が緊密であることを強みにしてほしい」と訴えさせていただいてます。それに対し、長島さんの答えはオランダのダッチ・モデルやイギリス労働党のブレア前首相のエピソードを示した肯定的な対応でした。
小沢代表が率いる民主党の中には多士済々な政治的立場の議員が揃っています。安全保障面の課題などでは右から左までの幅広さが民主党のウイークポイントだと指摘される場合もあります。例えば長島さんがテレビで集団的自衛権の問題などを発言した際、確かに自民党議員との違いが分かりづらくなります。しかし、政権選択イコール政党選択のための判断材料を比べた場合、民主党と自民党の違いは明確であると思っています。
小泉政権が強力に推し進めてきた市場主義経済と構造改革路線、大企業など強い者をより強くし、「格差」はやむをえないものと考え、とにかく国としての力を高める新自由主義的な発想を持っているのが自民党です。それに対し、国民一人ひとりを大事にし、公平配分を重視していこうと考えているのが民主党だと受けとめています。
新テロ法案などの対応に関しては単に賛成反対の違いではなく、民主党が反対している背景や理念にも着目すべきものと思っています。民主党のホームページで「民主党はなぜ自衛隊の給油継続活動に反対なのか」分かりやすく説明されています。要するに憲法の平和主義をどのように意識するのか、アメリカの要請に対しても駄目なものは駄目と言える関係を築けるのかどうか、そのような根幹的な違いが両党にはあるものと見ています。
7月の参議院選挙は以上のような選択肢のもとで行なわれ、自民党の路線が否定され、民主党の示した方向性が多くの国民から評価を得られた構図だったはずです。それにもかかわらず、参議院での与野党逆転を「ネジレ国会」と呼び、法案が成立しにくくなっている点を憂慮する声も聞こえています。
だから「大連立」との発想は問題であり、国民の民意をくみ取るものではありません。議席数を減らすことが必至である福田首相は早期解散に及び腰です。しかし、「ネジレ国会」解消のためには一刻も早く総選挙を行なうべきだと考えています。当然、民主党が過半数を獲得すれば、その時点でスッキリ「ネジレ」は解消できます。
一方、自民党の議席数が民主党を上回った場合、その結果を民主党は真摯に受け入れなければなりません。自民党の路線にブレーキや軌道修正をかけるため、参議院選挙で民主党が勝利したのも民意でした。仮に総選挙で自民党に力及ばなかった場合は、その民意を重く受けとめ、対決路線から政策協議路線に潔く転じるべきだろうと思っています。
したがって、福田首相もそのようなメリットを自覚し、早期の解散に踏み切るべきではないでしょうか。政権から下野するリスクはありますが、解散総選挙は「ネジレ」国会解消のための特効薬であることに間違いありません。いずれにしても与野党のガチンコ対決がないまま、「大連立」に走ることは筋違いだと言わざるを得ませんでした。
最後に、この記事を書いている時、オーストラリアで11年ぶりに労働党が政権を奪回したニュースに接しました。次の首相に就任する予定の労働党のラッド党首は、イラク駐留豪軍の段階的撤退、ハワード政権が拒否してきた京都議定書の批准を公約に掲げています。つまり対米追従が目立った外交政策の転換が見込まれているようです。ますます福田首相が解散に尻込みしそうなタイミングでのニュースでした。
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