変わり続けている市役所
前回記事で「市役所は変わったんだ」「変わろうとしているんだ」と感じていただける内容の投稿にも努めることを書きました。このような場合、自分の所属する市役所の話になることは言うまでもありません。他の役所にも似通った点はあると思いますが、あくまでも私自身の体験や把握している情報をもとにした事例の紹介となります。
かなり昔に入所していますので、現在勤めている市役所の変わり方を実感しています。組合役員も長く務めていますので、その視点からの様変わりも感じています。後者については、組合員の皆さんから「今の組合は物分りがよすぎる」との不満の声として寄せられる場合があることも承知しています。
まず行革の話です。行政改革が国民的に注目され始めたのは、第2次臨時行政調査会(1981年3月~1983年3月)が発足した頃からでした。経団連の名誉会長だった土光敏夫氏が会長として強いリーダーシップを発揮したため、第2臨調は別名「土光臨調」とも呼ばれていました。「土光臨調」を重視した鈴木善幸首相の後を継ぎ、中曽根内閣が発足し、一気に国鉄や電電公社などを民営化していきました。
「土光臨調」路線に沿って、地方自治体の行革も叫ばれ始めていました。私どもの市役所でも5か年ごとの行財政改革推進計画を第3次まで立て、現在、その第4次目にあたる経営改革プランの3年目を迎えています。計画した内容が100%実施に移された訳ではありませんが、ここ10年ほどで200人近くの職員数が減っています。
労使課題の変更は組合との合意を基本とし、労使交渉の場では労使対等の原則を貫くことができています。しかし、行革提案への受けとめ方は、20年以上前と現在では大きく変化しています。一昔前は「反合理化」闘争というスローガンが掲げられ、行革そのものに反対していた時代だったように記憶しています。
最近の行革提案への対応は、組合員の労働条件や市民サービスへの影響を現場目線で検証し、著しい問題が認められない限り、問題点を整理した上で受け入れる場合が多くなっています。その際、当該職場の組合員と率直な意見を交わし、合意形成をはかりながら数多くのアウトソーシングなどをやむを得ないものとしてきました。
財政状況の厳しさや公務員への風当たりの強さなど、これまで組合役員と組合員が情勢認識を一致させることによって、不満な行革提案も受け入れていました。合意形成などに留意してきたとは言え、市職員として誇りを持って懸命に担ってきた職場から離れる辛さや切なさは、当該の職員ではない限り、充分理解できない思いだったかも知れません。
いずれにしても行革提案を合意する数が増え、さらに拳を振り上げる反対闘争も減っているのが現状です。そのような流れを当たり前だと思う方が多いことも確かでしょうが、組合員の中には「昔の組合は強かった。今の組合は…」と嘆く方がいらっしゃることも、組合役員としては重く受けとめなければなりません。
組合の意に沿わない提案をすべて撤回できることが「強さ」だとすれば、そのような「強さ」は確かに今の組合には備わっていません。しかし、労使双方で押す引くがあるからこそ、交渉が成り立つ訳であり、当然、組合側が引いてばかりではありません。したがって、公務員をとりまく情勢が厳しい現状の中、全勝をめざす交渉は大局的な意味からその是非を判断する必要性があるものと考えています。
行革の中味より、行革提案に対する労使交渉の変化を組合役員の立場から綴らせていただきました。その話だけで非常に長くなってしまいましたが、次に市民の皆さんとの接し方の変化を紹介します。「民間会社なら大昔から当たり前なことだ」とお叱りを受けるかも知れませんが、変わろうとしている一つの事例として取り上げてみました。
いわゆる接遇の向上について、以前から研修の実施などによって力を注いできています。その実践ぶりに個人や職場間での差はあるようですが、全庁的に向上していることは間違いないものと思っています。具体的に改めてきた点も少なくありません。数年前まで名札着用は徹底化されていませんでした。
現在、市民の方からよく見えるよう名札のサイズを大型化し、首から吊り下げられるタイプに改め、市長以下、全職員が着用しています。また、窓口職場を中心に「○○さん」を「○○様」と呼ぶように改め、なるべく別れ際などに「ありがとうございました」と声をかけるように努めています。
電話を取った際も、例えば「納税課のOTSUです」と最初に名乗る職員も増えています。この場合、応対した職員の名前を覚えていただくためよりも、第一印象を少しでも良くすることを目的としています。外側ばかり取り繕っても肝心なのは中味だと言う声もありますが、形から入って意識改革していく大切さも否めません。
市民の皆さんから「上から目線」などと批判されないためにも、何よりも市役所への好感度アップに向け、一つ一つは些細なことかも知れませんが、職員それぞれが心がけていく意義はあるものと考えています。場面によって、市民の方へ厳しい話を伝えなければならない職業柄、せめて怒りの火に油を注ぐことのない接遇に努めなければなりません。
書き進めていくと意外なほど「変わり続けている市役所」の話が浮かんできます。活動が続いている「変わろうとする息吹き、アンダー35委員会」のこと、人事当局が策定した「職員人材育成実施計画」のこと、深刻な負の側面としてメンタル面の病休者が増えていることなど、いろいろ頭に浮かんでいます。「Part2」とするかどうか分かりませんが、機会がありましたら続きを書かせていただこうと考えています。
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