「公務員」議論のあり方
先週日曜に投稿した「市長選に向けた組合の対応」へのコメントはパタッと止まり、一つ目が寄せられたのは金曜の午後でした。記事の話題によってコメントの数が上下するのは今までも同様でした。閲覧されている多くの方がブログにおける基本ルールを守っていただいているおかげだと思っています。
それでも時折り、記事内容と無関係なコメントが寄せられることもありました。一年前、福岡市職員の無謀な飲酒運転によって幼い三つの命が奪われました。その事故が起きた時の最新記事だった「さいたま市で自治労大会」に対し、公務員への怒りをぶつけるコメントが続きました。
金曜日に届いたコメントも、いみじくも同じ福岡市に勤める職員の飲酒運転事故を非難した内容でした。事故報道のURLを紹介した短いものでしたが、いろいろな思いが頭の中を駆け巡りました。その夜にお答えした私のコメントも短いものでしたが、飲酒運転撲滅に向けた大勢の人の努力を水泡に帰す本当に残念な事故だったと思っています。
昨年8月25日の福岡市の事故を契機とし、このブログのコメント欄で飲酒運転に関する白熱した議論が交わされました。「飲酒運転の撲滅へ」はPart3まで重ね、「飲酒運転と懲戒処分」まで4回にわたる記事を投稿し、その間、数多くの皆さんから率直なご意見を頂戴しました。当時の議論が真っ先に思い浮かびましたが、翌土曜の朝に寄せられたとおるさんのコメントと同じ趣旨の違和感も感じていました。
記事と全く無関係なコメントであることには触れないのでしょうか?コメント欄の流れの中で、話題が逸れていくのは仕方がないにしても、全く無関係なコメントに対しては、その旨の指摘くらいはしても問題無いと思いますが。
公務員だから報道されるという意味では、公務員問題ではありますが、地方公務員の待遇や安定度を下げて「普通の職業にしよう」という時流なのだから、そういう特別視も同時に無くすのが筋だろうと思います。
まったく記事内容と無関係なコメントは、とおるさんの問いかけと同様、できれば避けていただけることが基本だと考えています。ただ今までも内容によって記事本文と関連しないコメントに対しても、特に注意を呼びかけることなく応答してきました。今回も「無関係さ」にこだわるより、自分なりの感想を一言述べさせていただく方が適切だと判断しました。
様々なご意見を伺えるのがブログの利点だと思っていますので、明らかなスパムコメント以外は削除しない考えで運営しています。トラックバックも同様で、多少営業目的なサイトへのリンクだったとしても消さなかったケースが少なくありません。ちなみにコメントでもトラックバックでも、アダルトサイトへ誘導される場合などは即座に削除しています。
続いて今回記事の本論と呼ぶべき話に触れさせていただきます。とおるさんから寄せられた後者のご指摘、過去にも同様な趣旨で論点となりがちだった問題です。先ほど紹介した福岡市職員の飲酒運転による三児死亡事故の時など、公務員全体が厳しく批判される顕著な事例でした。また、公務員だから強く非難される面も否めず、そのことの是非も議論のポイントになりがちでした。
以上のような論点に対して私の考え方は一貫しているつもりです。ブログを始めた頃の記事(「公務員はいいね」に一言)でも記してきましたが、一定の身分保障など労働条件が確保されている分、公務員が守秘義務や個人情報保護などの法令に対して厳しく縛られ、ひとたび法律違反を犯した時の処分やマスコミによる報道が大きく扱われるのは仕方ない話だと思っています。
とおるさんは公務員を「普通の職業」としていくのならば、公務員を特別視するのは改めるべきであると主張されています。完全に同化することを前提にした場合はその通りですが、今後、どのように公務員制度が改革されても、官と民の「壁」はなくならないものと見ています。その「壁」があることによって官と民が対立を深めるのではなく、制度上必要な「壁」であると認め合っていけることが理想だと考えています。
したがって、これからも公務員が常に周囲から厳しく見られ続けることも、率先垂範の期待を背負わされていくことも前向きに受け入れなければなりません。その意味で、公務員の不祥事や事件が起きるたび、このブログのコメント欄へ手厳しいご意見が寄せられていくことは本望だと覚悟しています。
ただ整理しなければならない点があります。公務員と一口に言っても、国家公務員から都道府県、市町村に働く職員など千差万別です。さらに市役所間でも仕事の進め方や雰囲気など大きく違ってきます。公務員全体に共通する批判や意見に対しては、一般論として反面教師とする機会ととらえることができます。
しかし、明らかに他の役所の具体的な事例に対し、このブログで踏み込んだ答えを求められても簡単に示すことはできません。また、個別事例の批判内容を取り上げ、公務員全体に落ち度があるようなコメントも時々寄せられます。そのような時、コメント欄を閲覧している公務員の方が反論されることも多々ありました。
批判されるような仕事をしていない自負があるからこそ、熱い言葉での議論につながっていくのだろうと思っています。ただ直接相対できないインターネット上の難しさがあり、さらに一人ひとりのモノサシやハードルの高さが違う可能性もあり、論争がかみ合わないケースも頻繁に生じていました。
今後、「公務員」議論のあり方として、全体に共通する一般論なのか、個別の役所における問題なのか、少し整理して進める必要性を感じています。とは言え、あまりその区分けに固執すると意見交換が消極的になったり、貴重な情報提供を受ける機会が減る懸念もあります。したがって、コメント投稿の際、このような点を頭の片隅に留めていただくだけで幸だと考えています。
最後に当たり前なことですが、私自身、公務員全体の代弁者でも、すべての責任を負える立場でもありません。そのため、単刀直入にお答えできないことが多く、逃げているように映る場面があるかも知れません。しかしながら繰り返し述べてきましたが、コメント一つ一つ必ずジックリ読ませていただき、いろいろなことを考えていく動機付けとしています。
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コメント
前回の記事は、「全体に共通する一般論なのか、個別の自治体における問題なのか」区別し難いテーマで、しかもOTSUさんも整理が難しそうな書き方だったのでコメントを控えました。
組合から首長候補者への質問について、自分が自分の自治体の首長選に立候補して、この質問があったらどう答えるだろうか、と結構興味深く読ませていただきました。
さて、「公務員」論議についてですが、私のように役所の内側と外側の中間のようなところにいる者は、内外それぞれからの極端な主張に対して、「それはちょっと違うよ!」といった程度の参加しか最近はできなくなってきました。
最近の自治体をとりまく社会環境の変化、例えば「地方分権改革推進法」、「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」の成立などによって、ここ2~3年の間に地方公務員制度も大きく変わっていくでしょうし、団塊の世代が退職した後の影響も小さなものでないと思っています。
このあたりのことが落ち着かないと、なかなか公務員論議は実りあるものにはならないのではないかと思います。
それはそれとして、先日の福岡市のバイクによる飲酒運転事故で、「公務員はもう駄目かもしれませんね。」というマイカルさんのコメントに対しては、「それはちょっと違うよ!」と、公務員ではない私でも言いたくなります。
それほど日本の公務員は劣化してはいません。もう少し実態を把握されてから発言をすべきではないでしょうか。
投稿: ニン麻呂 | 2007年8月26日 (日) 23時35分
ニン麻呂さん、コメントありがとうございました。
今回の記事も長々と書きましたが、あまり中味がない話だったと反省しています。それでもニン麻呂さんのような視点や立場の方からコメントをいただき、記事本文の不充分さを補っていけるのがブログの利点だと思っています。
また、「それほど日本の公務員は劣化してはいません」との言葉、たいへん勇気付けられます。市議選が近いことを拝見していますが、ご多忙な中でも当ブログをご注目いただきありがとうございます。
投稿: OTSU | 2007年8月27日 (月) 07時25分
おはようございます。
ここまで、ストレートに取り上げていただくとは想定していなかったのですが。
>とおるさんは公務員を「普通の職業」としていくのならば、公務員を特別視するのは改めるべきであると主張されています。
>完全に同化することを前提にした場合はその通りですが、今後、どのように公務員制度が改革されても、官と民の「壁」はなくならないものと見ています。
>その「壁」があることによって官と民が対立を深めるのではなく、制度上必要な「壁」であると認め合っていけることが理想だと考えています。
全く同じになるとは、さすがに考えていません。
しかし、地方公務員における給与水準のさらなる引き下げ等を考慮すると、民間における同等職種の待遇を常に大幅に下回る待遇が恒常化する懸念はあります。
(実務能力だけではなく、法律・規則の知識やその正しい運用が必要とされる行政の仕事に要求される水準が、地方の中小・零細企業と同程度とは思えませんので。)
そういった状況下で、仕事に加えてさらに、あまり高度なモラル等を期待するのはナンセンスになるのではないかと思います。
生身の人間ですから、仕事や人格に要求される水準と報酬との格差が大きくなると、逆にモラルは下がっていきます。
そういうことを無視して、待遇引き下げ&仕事の高度化と、高いモラルの要求を並行させるのは、要求する側の自由ではありますが、現場から破綻していくのではないでしょうか。
>したがって、これからも公務員が常に周囲から厳しく見られ続けることも、率先垂範の期待を背負わされていくことも前向きに受け入れなければなりません。
>その意味で、公務員の不祥事や事件が起きるたび、このブログのコメント欄へ手厳しいご意見が寄せられていくことは本望だと覚悟しています。
待遇だけではなく、マスコミや政治家等による過度の公務員批判(事実に基づかない批判も多く含まれています)によって、
社会的地位の引き下げが行われてる現況下で、そのように覚悟できるOTSUさんは、素晴らしいと真面目に思います。
しかし、世の中、そのように出来た人間は少数派なのではないでしょうか?
よく、権利には責任が伴うという表現がありますが、逆に言うと、責任には権利または利益が伴っているべきではないかと思います。
つまり、権利や利益を減じるのであれば、責任も減じるべきではないかと。
「ノーブレス・オブリージュ」なる観念もありますが、身分の高くないものに重い責任や義務を課されてもなあ・・・という気が。
そうでないと、生身の人間は脱落していくことになると思います。
あまり出来た人間でない私はそのように考えてしまいます。
もっとも、私自身は地方公務員ではないので、実態に基づくものではなく、地方公務員の間ではOTSUさんのような考えが主流なのかもしれませんが。
投稿: とおる | 2007年8月27日 (月) 07時28分
とおるさん、コメントありがとうございます。
とおるさんは地方公務員ではない立場から客観的に論評いただいてるものと受けとめています。その内容も私たち地方公務員をフォローくださるものであり、いつも有難く思っています。
今回のご指摘もまったくその通りです。ただ当事者である私たちがその正論だけを前面に出しても、公務員をネガティブに見ている方々と冷静な議論につながらない心配があります。私自身、ダブルスタンダードの立場ではありませんが、ブログのザブタイトルのような思いで記事を書き続けてきています。
とおるさんのコメントを大胆に引用し、たいへん恐縮でした。ぜひ、今後とも貴重なご意見をお寄せください。よろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2007年8月27日 (月) 08時28分
今回の提起はよいものであったと感じます。
とかく、マスコミの論調はいまや「オールオアナッシング」どころか「公務員に対するニヒリズム」が支配しているように思え、残念でなりません。
たとえば、私の住む自治体でも災害などがあった場合、職員は休日も返上してがんばっているのですが、そういったところは報道されずに、「行政の不手際」ばかり報道されるのはたまりません。本当に悲しくなります。(緊急事態にすべてが書き物通りうまくいくと思っているのでしょうか?)
そういったときの支えは「使命感」しかないんですよね......。訳知り顔で批判ばかりする人たちには本当にいやになります。
私の上司は「み○もんたの番組なんて見たくない。」(特に「○ズバッ!」)とか言っていますし、たたかれてばかりでストレスになっているんでしょうね。私もそうですし。(私も心臓に悪いので「報○ステーション」はみないで、「ニュースウォッチ9」をみて寝ます。)
制度・政策・財政、すべて国の縛りが大きいところで現場サイドは悲鳴を上げているのが実態だと思います。情においては忍びないことでも、組織の一員として「職務」としていやな思いをしてでもやらなければならないことがあるときはためらいがあるものです。
「事件は現場で起きている」とはよく言ったものですが、そうした実態と乖離した論理の中で仕事しなければならないことは、実感として伝わっていないのではと考えます。
いずれにしても、公務職場の労働組合としては、そこで働く労働者だけではなく、その現場感覚から制度・政策についても住民の立場に立って発信していかなければならないと思います。
乱筆・長文、失礼いたしました
投稿: Unvollendete | 2007年8月27日 (月) 22時35分
Unvollendeteさん、コメントありがとうございます。
立ち位置によって、同じモノを見ていても180度評価の異なる場合が多いことを最近強く感じています。特に文字だけで表現するブログ上では際立つ時がありました。
それでも言葉に表し、思いを発信し続けなければ、絶対に開いている溝が埋まることはありません。回りくどい言い方をしていますが、これからも公務員側の思いをブログに託していくつもりです。
その意味で、Unvollendeteさんらからの具体的な経験に基づくコメントは非常に貴重であり、たいへん感謝しています。ぜひ、これからも気軽にご意見をお寄せください。よろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2007年8月27日 (月) 22時58分
こんにちは。
消防、警察以外で、私が最も尊敬する公務員の方は、毎日ゴミ収集車で汗して働いている清掃局?衛生局?の皆さんです。
私が最も軽蔑している公務員の方は、「上から目線」で話して、「威張る」人だったり、または裏給与とか自己の権益しか考えない人だったりします。
私が尊敬する方々が、職務を安心して過ごせるような待遇は確保してほしい、しかし、私が軽蔑するような人は、50%減俸して、その分尊敬する方々に割り当てて欲しい、そんなむちゃくちゃなことを よく思います。
でも、「上から目線」で「威張る」人ほど、「裏工作」に長けて、世にはばかる存在であるのはどこでも同じなのですよね。
公務員に対しての世の中の監視が厳しいのは、ある意味当然だと思います。
しかし、「税金で食わせてやっているんだからやれよ こら」という風潮が行き過ぎるのも、よろしくないものを感じます。
きちんと職務を果たしていない人に対しての叱責はあって当然なのですが。
今日私が所属している会社は儲かっているところではありますが、
「金出しているんだからとっとやれよ こら」
という姿勢を取引会社、外部業者に対して露にする者が少なからずいるのが、私にとても不快感を感じさせる今日この頃です。
おじゃましました。
投稿: どんちび | 2007年8月28日 (火) 13時14分
どんちびさん、コメントありがとうございます。
役所の仕事は「駄目なものは駄目」と言わなければならない場面が多いのが確かです。その際、「上から目線」や「威張る」印象を極力避けたいものと大半の職員は考えているはずです。同じ内容を伝えるのにも、態度や言葉使い一つで市民の皆さんの感じ方は変わるものと思っています。
役所でも民間会社でも同様ですが、時々、そのように心がけられない人が一人でもいるとその組織全体のイメージを悪くしてしまうようです。そのように考えるとギスギスしない人間関係のためにも、皆が注意していくべき基本なのかも知れません。
投稿: OTSU | 2007年8月28日 (火) 21時18分
こんばんわ
初めて書き込みさせて頂きます。
批判的な意見が多い中謙虚に意見を受け止めていらっしゃり好感をもちました。
公務員批判が世間で取り沙汰されていますが、善しにろ悪しきにしろ現在の公務員を取り巻く環境がを国民が求めてきたものだろうと私は思います。現在批判してる国民や政治家、マスコミもこれまでなんらかの形で利益があったからこそ続いてきたものでしょう。公務員と国民との溝を埋めるにはお互いに知る機会つくり、客観的な目でみていくかとゆうことなのだろうと思います。それには国民が如何に政治に興味をもって行けるかが鍵なのでしょう。
私自信は今介護の現場にいますが、上のコメントでとおるさんが述べられている
>待遇引き下げ&仕事の高度化と、高いモラルの要求を並行させるのは、要求する側の自由ではありますが、現場から破綻していくのではないでしょうか。
とゆう破綻の状態に介護現場があるのが現実です。ですので公務員の待遇をさげるのは賛成できないと思うのです。その分責任とモラルに個々が常に自問して頂ければと考えています。また個々の力に依るのではなく情報が十分に開示され公務員の働く姿を気軽に見られる状況をつくることができれば良い方向に動いていくのではないかと思います。
駄文失礼いたしました。
投稿: ミックス犬 | 2007年8月30日 (木) 23時49分
ミックス犬さん、はじめまして。コメントありがとうございます。
公務員の働く姿やその待遇のあり方など、よりいっそう情報開示を進めながら理解を求めていくことが本当に重要な社会的な状況です。
そして、公務員の勤務条件が突出しているのでなく、適正な労働基準の目安として労働者全体の底上げがはかれる姿が理想だと考えています。常に財政や経営的な視点が障壁となり、たいへん難しい問題であることは承知していますが、ひるまず目標は掲げ続けることも大切なことだと思っています。
ぜひ、またお気軽にご意見や感想などをよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2007年8月31日 (金) 07時17分
地方公務員の社会的地位云々について、給料は一流ですが内容は三流だからしょうがない。
マスコミが騒いでいるのは、そのギャップが現実としてあるからです。
地方役人の地位が高いなんて後進性の現れでしょう。
高い質を担保する為の高給は当然ですが、ならば落第させる制度を担保にしなければ。
現業といわれる職種の官民格差をどう説明するのでしょう?
甘えている公務員をバッサリやる提言を公務員側から聞いたことがありません。
投稿: かおる | 2007年9月 5日 (水) 17時13分
かおるさん、コメントありがとうございます。
本当に数多く頂戴している趣旨のご意見です。それに対し、かおるさんのような方々の思いが少しでも変わることを願いながら当ブログを書き続けています。ぜひ、これからもご注目ください。よろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2007年9月 5日 (水) 20時43分