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2007年5月 5日 (土)

従軍慰安婦問題 Part2

今回、Part2とするのが適当かどうか少し迷いましたが、前回記事「従軍慰安婦問題」へのコメントを踏まえた内容であるため標記のタイトルとしました。ブログの利点は言いっ放しとならない相互の交流がはかれる点だと考えています。自分自身の意見が絶対正しいとは限らず、幅広い考え方に接することによって目からウロコが落ちることも期待できます。

また、その関係はコメントを投稿された方やお読みいただいている方すべてに対し、当てはまる話だと思っています。そのためにも賛否両論、様々な視点からのコメントをお寄せいただけることが非常に意義深いことだと考えています。いずれにしても一個人が運営しているブログへ、時間を割いてコメントをお寄せいただいた皆さんには心から感謝しています。改めて、ありがとうございました。

さて、fiさんから労働運動は大切だと思いながらも、「自治労」の範疇で慰安婦の問題などに取り組むことの疑問が投げかけられました。fiさんは「最近の若い世代の組織加入率の減少が言われますが、私の周りではそういう所を敬遠している人も多いですよ」とまでご指摘くださっています。

この趣旨の問いかけはたいへん重要であり、今まで何度も自分なりの言葉でお答えしてきました。自分たちの職場だけ働きやすくても、社会全体が平和で豊かでなければ暮らしやすい生活と言えません。したがって、労使交渉だけでは到底解決できない社会的・政治的な問題に対し、たくさんの組合が集まって政府などへ大きな声を上げていく運動も軽視できないはずです。

ただし、それらの運動を進める上で組合員との合意形成が欠かせず、当然、労働組合の本務である職場課題がおろそかになるようでは問題です。自治労に所属している組合それぞれ主客逆転しないバランスの中で、様々な政治的な課題にも取り組んでいるはずです。とは言え、個別課題一つ一つは多岐にわたる方針案の中に埋もれがちであるため、あえて前回記事で従軍慰安婦の問題を取り上げてみました。

私どもの組合員1500人の中には従軍慰安婦の問題を否定的に見ている方も少なくないものと思います。実は組合役員の中にも否定派がいますが、様々な情報があふれている中、個々人の見解が分かれることは当たり前なことだと受けとめています。そのような背景や問題意識もあったため、少し前からこの問題を取り上げる機会を伺っていました。

組合役員である彼の見解は、もやもやさんと基本的に同じものでした。もやもやさんは「慰安婦否定派は慰安婦そのものの存在を否定していません。また本人の意志によって慰安婦になったとも主張していません。否定しているのは、慰安婦は日本軍による組織的な強制連行で性奴隷になったということです」と指摘されています。

もやもやさんとコメント欄での質疑応答が充分かみ合っていませんが、私自身、そもそも否定派の方々の主張を頭から否定していないからだと釈明させていただきます。確かに日本軍が直接拉致したようなケースは例外中の例外だろうと思っています。この主張は安倍首相の「狭義の強制性はなかった」発言につながっています。結局、この発言は国際的な波紋を広げてしまい、安倍首相は頭を下げ続けることになりました。

先日、組合役員の彼にもコメント欄で紹介した天木直人さんとかみぽこさんのブログ記事のコピーを渡しました。天木さんはイラク戦争に反対した書簡を小泉首相へ送り、外務官僚を辞めた方です。かみぽこさんは政治学を研究されているイギリス在住の方で、お二人のブログはいつも興味深く拝見させていただいていました。

従軍慰安婦問題の様々な記事をネット上などで見聞していた時、ちょうどお二人の主張に強く共感を覚えました。お二人とも現時点の国際的な関係の中で、やみくもに日本人が従軍慰安婦を否定する動きは、かえって国益を毀損していくだけであると訴えていました。ちなみに天木さんはマイケル・グリーン氏の言葉を引用していますが、決して親米派でないことは他の記事をご覧いただければ一目瞭然です。

否定派のもやもやさんらも戦地に慰安所があり、数多くの慰安婦がいたことを認められています。しかし、慰安婦は本人の意思や家族の都合によって業者が集めたものであり、基本的に日本軍が強制連行したケースはなく、軍は性病予防のために衛生管理面などに責任を持っていたにすぎないと否定派の方々は主張されています。さらに優雅な性商売であり、兵士たちと穏やかな慰安婦生活を満喫していたとも述べています。

繰り返しになりますが、そのような一つの見方を頭から否定する立場ではありません。一方で、軍の意思や命令によって慰安所が設置されたことも簡単に否定できません。また、逃げたくても逃げられない戦地で、一晩に何十人もの兵士を相手にさせられた元慰安婦の話も虚言だと言い切れないはずです。

このように見方が分かれる問題で、私たち日本人はどのように振舞うべきか、私自身は天木さんやかみぽこさんらの主張に共感を覚えました。しかし、いわゆる「従軍慰安婦」を完全否定する方々にとって、あいまいさは許しがたいことなのかも知れません。もやもやさんは「事実誤認に対して反論することが対外的な信頼関係の基盤になると私は考えております」と訴えられています。

それでも真実やとらえ方について、どうしてもグレーな部分は残されているはずです。その中で、内外での「いた、いなかった」の対立は避けることが賢明だろうと思っています。したたかな国際社会の中で、必要以上に卑下することもありませんが、まず冷静な検証ができる環境整備への手順を重視すべきだと考えています。

最後に、前回記事を投稿した早々に公務員辞めて十三年さんから「当ブログでの論争は荷が重すぎますので」の無責任さをご指摘いただきました。コメント欄でお答えしたとおり決して論争を避ける意図はありませんでした。それでも歴史認識に対する論争は、専門に研究している立場ではない者にとって「荷が重い」のもその通りだったかも知れません。

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コメント

 せっかく長いコメントを書いたのに、間違って消してしまいました。

 確かにこの問題は重いですね。日韓の学者レベルでは既に結論は出ているようですが、これが双方の国内政治、外交の道具として利用されはじめると、論点がかみ合わなくなるのは当然のことです。

 「いくら論争をしても日本に勝ち目はない。米国の反発を招くだけだ。マイケル・グリーンさんがそうおっしゃっているのだ。」という天木さんのコメントも、これからもまだ利用価値の高い日本に、アメリカが本気で反発したところで何のメリットもありませんから、これは聞き流すだけでいいんじゃないですか。
 マイケル・グリーン氏が日本の国益など本気で心配するはずなんかないのですから。

 日本が本気で論争して、「火ダルマ」・「血ダルマ」になって一番困るのは当面中国とアメリカなんだから、そうなれば見事に態度を変えてきますよ。アメリカの国益を損ねることになりますからね。

 私は、日本が一次資料に基づいた史実で大論争をやってみるのも一つの方法ではないか、と思っています。
 アメリカだって韓国だって、同じようなことをやっているんですから、そう強気には出られないんじゃないですか。 

投稿: ニン麻呂 | 2007年5月 9日 (水) 15時08分

ニン麻呂さん、コメントありがとうございました。
最近、歴史認識の問題に対し、両極端な立場からの論争、と言うよりも対立が以前に比べ、激しくなっている気がしています。特にネット上で、双方からの主張のぶつかり合いが目立っているようです。
国内的にも、国際的にも、自分と正反対な主張や意見にも耳を傾け、感情に走らない対話が理想だと思っています。たいへん青くさい理想であり、失笑を買うような話かも知れませんが、自分のブログではその考え方を可能な限り貫いていこうと考えています。

投稿: OTSU | 2007年5月 9日 (水) 20時39分

 OTSUさんがおっしゃるように、私も「国内的にも、国際的にも、自分と正反対な主張や意見にも耳を傾け、感情に走らない対話が理想だと思っています。」という意見を全面的に支持します。

 ただ、あくまでも私個人の思いですが、これまでの経験から、いわゆる「否定派」といわれる人たちの方が、学習の質も高いし冷静だという印象を受けます。

 それぞれが、もう少し冷静に史実を検証する必要があるのではないでしょうか。自説に都合の悪い情報はシャットアウトする傾向のある方を見かけますが、こういう人たちの存在が、これらの問題に関する議論を不毛のものにしているのでしょう。

 ただ、天木さんのコメントは、いかにも浅薄の感が否めません。
 

投稿: ニン麻呂 | 2007年5月 9日 (水) 23時03分

ニン麻呂さん、共感いただき、ありがとうございます。
ただ私は双方、玉石混交のようなところがあるものと思っています。天木さんのブログについては、どうも紹介した記事の評判は今一つのようです。私自身はその記事以外でも天木さんのブログを読んで、うなづけることが多いのですが…。

投稿: OTSU | 2007年5月10日 (木) 07時10分

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