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2007年4月29日 (日)

従軍慰安婦問題

「公務員のためいき」というブログ名なのに従軍慰安婦の話が取り上げられ、違和感を抱かれる方もいらっしゃるかも知れません。以前からご覧いただいている方はご存知ですが、今まで当ブログは靖国参拝から拉致問題など幅広い内容を扱ってきました。

右サイドバーのプロフィールのとおり市職員労働組合の委員長の立場を明らかにし、これまで公務員組合側の主張や問題意識を綴ってきました。あくまでも個人の責任によるブログですが、私どもの組合の考え方や活動を広く知ってもらうことも目的として開設しています。

このブログを始めた切っかけなどについて、過去の記事「秋、あれから2か月」などで書き込んできました。組合員の皆さんに向けては、組合を身近に感じてもらえるようイベントの報告記事も少なくありませんでした。特に開設後1年間は新人歓迎行事やメーデーなどが開かれるたび、必ず当ブログの記事として取り上げてきました。

2年目に入っている最近、記事の投稿間隔も週一にとどまっているため、臨機応変な報告記事が減っています。例えば昨日、700人近くの組合員と家族の皆さんにメーデーへ参加していただきましたが、今年はバックナンバー「いつも盛況な三多摩メーデー」の紹介にとどめさせていただきます。

今回は安倍首相の訪米で改めて注目を集め、様々な見方が示されている従軍慰安婦の問題に触れてみます。そもそも「なぜ、労働組合が政治的な問題に手を染めるのか?」との指摘を受ける時があります。以前の記事「組合の平和運動」などでお答えしてきましたが、とにかく組合員の皆さんの意識と乖離した運動は論外だと思っています。

その趣旨から非常に難しい問題ですが、あえて今回、火中の栗を拾うような記事に取り組んでみました。最近、先の大戦における歴史認識の問題に対し、賛否が真っ向から分かれる論争をネット上で見かけます。従軍慰安婦、南京大虐殺、百人斬り、沖縄戦の集団自決など、その事実があったかどうかが争点となっています。

「従軍慰安婦はいなかった」との主張をはじめ、「なかった」と言われる方々の指摘を頭から否定するつもりはありません。しかし、今まで事実だとされてきた話の一部が誤りだったから、すべて「なかった」とする理屈にも無理があるものと思っています。

従軍慰安婦の問題に絞って考えていきますが、もともと公娼制度が認められている中、本人の意思によって業者の斡旋で戦場に赴いていたのが「真実」だと「いなかった」派は訴えています。確かにそのような例も少なくなく、穏やかな「慰安婦」生活を送っていた女性もいたのかも知れません。さらに「いなかった」派は日本軍直営の慰安所はなかった、それらを裏付ける公式文書や証拠がないのに謝罪した河野官房長官談話を厳しく批判しています。

一方で金曜日、最高裁は「強制連行された中国人女性らが、日本軍の施設に監禁され、複数の日本兵たちから繰り返し性的暴行を受けた」という事実を認めました。判決そのものは「日中共同声明によって、個人の賠償請求権は放棄された」という理由で棄却されていますが、従軍慰安婦を強いられた方々の多くの被害証言が司法面からも立証されたことになります。

安倍首相の歴史観は「従軍慰安婦はいなかった」派だったことに間違いありません。それでも外交の連続性を踏まえ、就任早々、河野談話を継承する立場を表明していました。しかし最近、安倍首相が日本軍による「狭義の強制性」を否定したため、慰安婦問題で日本に公式謝罪を求める決議案を審議中だった米議会の怒りの火に油を注いでしまいました。

その怒りを沈静化させるため、訪米直前にはCNNテレビからのインタビューを夫婦で受け、ワシントン到着後には真っ先に米議会指導者と会い、ひたすら頭を下げ続けています。靖国参拝問題などで頑なだった前首相に比べ、安倍首相の柔軟な対応は評価すべき点かも知れません。しかし、あまりにも簡単に信念を曲げる姿勢に対し、その場だけ取り繕えれば良いとする不信感をどうしても抱いてしまいます。

私自身、戦場において慰安婦を強要された被害女性が多数存在していたことは事実だと思っています。それでも事実の真偽に対し、様々な見解があることも充分受けとめています。参考までによく争点となる疑問に対し、しっかり答えられている「慰安婦問題FAQ」というサイトを紹介させていただきます。

従軍慰安婦問題の運動を進める勢力は自虐史観に凝り固まった「反日」だと批判されがちです。その一方、主にネット上で従軍慰安婦を否定する勢力は「ネットウヨ」と揶揄されています。どちらも戦争を憎む気持ちや生まれた国を誇りたい思いについて、決して大き違いはないはずです。

その上で、過去に日本が犯した事実をことさら「なかった」と強調していく動きは慎むべきものと考えています。確かに理不尽な捏造や冤罪的な見られ方があった場合、それらを晴らしていく努力も大切です。そのためには対外的な信頼関係の基盤を強め、感情論とならない冷静な歴史研究の場づくりなど、様々な工夫が欠かせないものと思っています。

そのような努力を怠り、日本側が「従軍慰安婦はいなかった、南京虐殺はなかった」と叫び続けることは溝を深めるだけです。したたかな国際社会の中で甘い戯言だと批判を受けるかも知れませんが、どうしても「なかった」の言葉の先に「あの戦争は仕方なかった、日本は悪くなかった」の響きを感じてしまうのは私だけでしょうか。

〈追記〉コメント欄での公務員辞めて十三年さんのご指摘を踏まえ、「当ブログでの論争は荷が重すぎますので」の文章を「参考までによく争点となる疑問に対し、しっかり答えられている」と改めさせていただきました。たいへん失礼致しました。

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コメント

少々気になったことがあります。

> 当ブログでの論争は荷が重すぎますので、「慰安婦問題FAQ」というサイトを紹介させていただきます。

ご自分で問題を持ち出しておきながら、言いたいことがあるなら他のサイトへ行けというのは、聊か無責任ではありませんか?また、「慰安婦問題FAQ」を公開している方は、この記事を見た人からの質問・意見等々を引き受けることを承諾されているのでしょうか?承諾されているのならよいのですが、そうでないなら、いくらメアドを公開されている方だからといって勝手に誘導してよいものでしょうか?

投稿: 公務員辞めて十三年 | 2007年4月30日 (月) 17時45分

公務員辞めて十三年さん、ご指摘ありがとうございました。

確かに自分のブログでの論争を避けたいため、他のサイトを紹介したように読み取れる無責任な記述でした。「慰安婦問題FAQ」が頻繁に争点となる疑問に対し、しっかり答えているサイトだったので参考としてリンクしたつもりでした。

今までこのブログは、どのような厳しいコメントに対しても自分なりの言葉で精一杯お答えしてきています。もちろん今回のテーマに関しても、問題提起だけして一切論争はしないなどと考えていません。

ただ記事本文でも記したとおり従軍慰安婦の問題は、事実がどうだったか諸説あることを認めている立場です。したがって、いわゆる事実関係に関する論点は、他のサイトを参考までに紹介することが適切だろうと判断させていただきました。

また、「慰安婦問題FAQ」は新たなコメントを受け付けるようなサイトではないため、ご迷惑をおかけしないだろうと解釈しています。さらに一人でも多くの方に読んでもらいたい目的で作られたサイトであるとも考えています。

通常、他のサイトを自分のブログで紹介した場合、最低限トラックバツクなどを行なうように心がけています。しかしながら「慰安婦問題FAQ」はそのような機能がなく、現時点で承諾を得ていません。しかしながら前述した理由から紹介したこと自体は問題なかったものと判断しています。

とは言え、公務員辞めて十三年さんが感じられた文章表現の不適切さは反省しています。したがって、〈追記〉で但し書きを加えた上で、表現の仕方を改めさせていただきました。ご理解いただけるようよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2007年4月30日 (月) 19時02分

ご無沙汰です。

今日、初めて組合のメーデーなるものに家族で参加してきました。まったりとした一日を過ごし、子供も広い公園で遊べて喜んでました。

さて、この問題ですが、いったいどうすれば中国は気が済むのだと思いますか。
私は中国に貧困がある限り、そのストレスのはけ口として利用され続けるような気がします。いわゆるプロパガンダみたいなものとして。
阿部さんもいたらいたで、何か問題があるのでしょうか。もう済んでしまったことですし、政治的決着も済んでいるのだから素直に認めればいいのにと思います。

私は中国とは昔は仲良くすべきと思ってましたが、最近では一番嫌いな国ですからもうどうでもいいんですけどね、そんな問題。


投稿: エニグマ | 2007年4月30日 (月) 22時32分

エニグマさん、お久しぶりです。メーデー参加、お疲れ様でした。
前首相が最悪にした中国との関係を安倍首相は予想外な対応によって、よく修復に努めているものと思っています。やはり初めから対決姿勢で臨んだ場合、まともな交渉とならないのが常です。したたかな国際社会の中で、必要以上に卑下することもありませんが、今後も要所を押さえた外交努力が求められているはずです。
エニグマさんのように中国を嫌う方が増えているようですが、いろいろな意味で対中関係は重要な位置を占めてきています。国民レベルでも友好を深めていけることが理想であり、北京オリンピックが良い機会になればと願っているところです。

投稿: OTSU | 2007年4月30日 (月) 23時03分

ブログ主様こんばんは 「もやもや」申します。
このエントリーを拝見しました所、二箇所ほど誤解があるようです。

1 所謂「慰安婦否定派」は慰安婦そのものの存在を否定していません。
また本人の意志によって慰安婦になったとも主張していません。
否定しているのは、慰安婦は日本軍による組織的な強制連行で性奴隷になったということです。
ではなぜ元朝鮮人慰安婦が拉致されたような状況を話すのか不思議でしょう。
 ここからは私の推測です。簡単にいえば朝鮮人の親もしくは親族が娘を女衒に売ったからです。売られた娘からすれば女衒に拉致されたように感じてもおかしくはありません。
戦後60年間、朝鮮人の親が娘を拉致、連行されたという証言をしたことはただの一つもありません。慰安婦の親族も同様です。元慰安婦の周辺者は60年間誰一人として証言していません。朝鮮半島には横田夫妻のような人が全く居ないのでしょうか?
おかしいと思いませんか?
人身売買は高額の契約です。当時の1200円、現在日本で1000万円の契約をするときに三文判を使いますか? 当然実印と印鑑証明を必要とするでしょう。これは戦前の朝鮮半島も現在の日本と同じで印鑑証明は朝鮮の役所で発行していました。では誰が実印を持っていたか? 16−7歳の娘が実印を持っていますか? 実印を持っていたのは親もしくは年長の親族です。 実際に契約書の不備で送り返された慰安婦がいたことが日本軍の書類から判明しています。好きで自ら慰安婦になる女性はいないと思います。女衒が金で縛っていやいや働かせたのが多分事実に近いでしょう。しかし書類上の不備が無ければ女衒の行為は合法です。安倍首相のアメリカにおける共同記者会見は人権を侵害されるような日本の戦前の法体系の不備に対して遺憾の意を表したものです。

2。最高裁の判決は損害賠償請求と日中共同宣言の整合性であり、事実認定で争っていません。ゆえに原告の主張がそのまま判決に反映されただけです。
ここからは私の推測です。当時の日本軍が売春婦として娘を狩集める必要があったか? 無かった。これが結論です。現在、売春が厳罰の共産中国でも売春婦が山ほどいます。北京、上海の大都市だけではなく、ちょっとした町で床屋があれば性的サービスを行っています。これが共産中国の現実です。実際、私は長く北京に滞在しましたがカラオケに始まって性サービスは山ほどありました。100年くらいでは民族の風習風俗は変わりません。戦前も同じことです。

投稿: もやもや | 2007年5月 2日 (水) 01時48分

追記 リンク先の慰安婦FAQをちょっと読んでみたのですが、

1 「貸座敷、引手茶屋、娼妓取締規則」の「規則」に引っかかりを覚え、調べてみた所、明治22年東京府によって公布された規則のようです。FAQを書いた人は東京府の規則が日本全国、外地で適応されると考えているのでしょう。

2 国際条約違反であると主張していますが、該当する日本国内の法律を明記していません。条約を批准しても国内法の整備が出来ていなかった場合が多々あります。少なくとも当時の日本の国内法に違反していた事を明記しなければなりません。

以上、第2章以降を読む気が失せました。

投稿: もやもや | 2007年5月 2日 (水) 02時59分

もやもやさん、ていねいなご指摘をいただいたコメントありがとうございます。
記事本文でも記しましたが、このような見方があることも認識した上で問題提起させていただいたつもりです。被害を受けた女性がいらっしゃることは事実で、軍の関与や協力なく、戦場に慰安所は設置できなかったことも疑いようがありません。
そこから先の真実やとらえ方について、内外での「いた、いなかった」の対立は避けたいと願っています。つまり冷静な検証ができる環境整備への手順を重視すべきだと考えています。
もやもやさんの具体的なご指摘に正面からお答えできず、たいへん恐縮ですが、現時点での私なりの従軍慰安婦に対する問題意識を改めて示させていただきました。

投稿: OTSU | 2007年5月 2日 (水) 07時28分

ブログ主様 こんにちは、レスありがとうございます。

レスの中から2点

1 正確には「被害を受けたと主張する女性がいる」でしょうね。女性の被害証言を冷静に検証しなくてはなりません。
ところでブログ主様は、被害の原因はどこにあると考えますか?

2 日本軍は、慰安所の設置・運営・衛生管理、慰安婦の移送に深くかかわっていました。これは事実であり誰も否定していません。問題は日本軍の関与が当時の日本の法令に違反していたかどうかです。

投稿: もやもや | 2007年5月 2日 (水) 13時25分

もやもやさん、再度のコメントありがとうございます。

「被害を受けたと主張する女性がいる」が正確とのご指摘ですが、そのように受け取れる事例があることも承知しています。その都度、年齢などの証言内容が異なる方がいらっしゃるようですが、そのような事例をもって数多くの被害証言がすべて偽りとするのは早計だろうと思っています。ご指摘のとおり冷静に検証する必要があります。

旧日本軍の兵士を効率的に戦場へ送る、つまり帰国できるまでの期間が他国に比べて長かったと聞いています。戦地でのレイプ防止のために必要とされた慰安所、当時、合法だったかどうか以前に兵士も慰安婦も同情すべき立場だったと考えています。端的に言えば、慰安婦の問題も戦争がもたらした悲劇の一つだと認識しています。

そして、繰り返しのような話となりますが、現時点のとりまく情勢の中で「強制された慰安婦はいなかった」と日本人が声高に主張することが、どのような波紋を国際的に広げていくかを見きわめなければなりません。決して中国や韓国だけの関係ではなく、この問題はアメリカを筆頭に諸外国から批判される火種となっています。

その上で理不尽な捏造や冤罪的な見られ方があった場合、それらを晴らしていくためにも、対外的な信頼関係の基盤を強めていく努力が重要です。その基盤があってこそ、感情論に流されない歴史研究の場などが可能となるものと思っています。

インターネットは非常に便利で、幅広い考え方や海外在住の方からの情報がリアルタイムで得ることができます。いずれにしも両極端な様々な意見に触れた上で、自分なりに得た答えは以上のとおりです。

もやもやさんのご意見とかみ合っていないかも知れませんが、ご容赦ください。よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2007年5月 2日 (水) 22時26分

ブログ主様 レスありがとうございます。

レスから3点ほど

1 証言の信頼性について
アジア女性基金は、慰安婦への給付金事業と共に慰安婦の調査研究も並行して進められていました。 1999年の段階で以下のような論文を発表しています。 高崎氏は所謂「あった派」の方です。
 
www.awf.or.jp/program/pdf/p041_060.pdf
「半島女子勤労挺身隊」について 高崎宗司

「なお、この論文を書きおわって、挺身隊に入ると慰安婦にさせられるという「流言」が本当に流
言にすぎなかったのかどうか、それがいまも韓国で広く事実と信じられているのには何らかの根拠
があるのかどうか、史料が得られなくて、十分に検討できなかったことを残念に思う。これまた、
今後の課題としたい。」

要するに信頼に足る証言は全くなかったと言っているわけです。
ゆえに、アジア女性基金解散に際して「あった派」の方々は抗弁することが出来ませんでした。
ブログ主様におかれましてはぜひとも信頼に足る証言を御開陳いただきたく思います。

2 慰安所の設置はレイプ防止ではなく性病蔓延防止を第一の目的としたものです。 

3 国際情勢によって歴史的事実が変わるわけではありません。もし「なかった」と主張することで波紋を広げるのであればそれはそれで結構な事だと思います。事実を世界に認知させることに何の躊躇があるのですか? 
「拉致強制連行された慰安婦はいた」ということに関して「あった派」は全くその事実を確認できていません。状況証拠からみてもそのような事実を裏付けることは出来ません。諸外国からの批判に対しては、事実誤認から発する批判に関しては理路整然と反論すべき事であると考えています。 所謂「あった派」が振りまいた事実誤認に対して反論することが対外的な信頼関係の基盤になると私は考えております。

投稿: もやもや | 2007年5月 3日 (木) 01時28分

もやもやさん、おはようございます。拙ブログをこのようにご注目いただき、本当にありがとうございます。

いわゆる従軍慰安婦を完全否定する方々にとって、あいまいさは許しがたいことなのだろうと思います。私は歴史事実に対し、いろいろグレーな部分が残されていても完全否定派ではありません。その立場の違いがご指摘3のとらえ方の相違につながっているものと認識しています。

信頼に足る証言かどうかも、その立場の違いから印象は変わってしまうのではないでしょうか。記事本文でも紹介しましたが、先日、最高裁で被害証言自体は認める判決が示されました。そのことの重さは押さえるべきだと思っています。

私自身、ご指摘3のとらえ方が現時点では非常に大事な点だと考えています。従軍慰安婦の問題に関して、様々な立場のブログも読みました。その中で、たいへん印象に残った記事をご紹介します。イラク戦争に反対した書簡を小泉首相へ送り、外務官僚を辞めた天木直人さんが3月9日に投稿したものです。URLをはるよりも、たいへん長くなりますが全文転載させていただきました。


慰安婦問題を騒ぎ立てても日本は勝利しない

 慰安婦問題について私はこのブログで論ずるつもりはない。不毛な論争に時間を使いたくないからだ。しかしこれだけは言っておきたい。「慰安婦は強制されたものではなかった」といくら騒ぎ立てても日本は勝てないと。これは私の言葉ではない。日本の為政者たちが最大の味方であるとあがめ奉る「米国要人」の言葉なのである。
 米国の日本専門家としてもてはやされている人物にマイケル・グリーンという男がいる。アーミテージに次ぐ米国内での屈指の知日家、日本専門家であると喧伝されている男だ。
 日本を専門とする米国人の中で、米国内で影響力のある主流の人物は、まず居ない。だからアーミテージといい、その弟子のマイケル・グリーンといい、日本人がもてはやすほど米国中枢において高い評価を得ているわけでも、影響力があるわけでもない。にもかかわらず、日本の政治家や官僚は、この二人をまるで米国政府の代理人のごとくあがめ奉り、その発言を神の声のごとく引用する。彼らと懇意である事があたかも米国通であるかのように自慢げに話す。なんと貧弱な日米関係であろうか。そういえば小泉前首相の次男は、家庭教師よろしくマイケル・グリーンに面倒を見てもらう形で、米国のシンクタンクの一つである戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies)で修行をしているらしい。
 その、日本の味方であるマイケル・グリーンが、慰安婦問題で、「日本を弁護できない」と次のように述べているのだ。読売新聞のインタビューに答えたもので、3月4日の読売新聞が掲載していた。以下に抜粋して引用する。

記者 (自民党議員の一部が)河野官房長官談話の見直しを議論しているのをどう受け止めるか。
グリーン 仮に決議案が採択されたとしても、米国の日米同盟に関する政策に与える影響はゼロだ。米メディアの報道も今のところ低調だ。しかし、日本が反発すれば事態は悪化する。共和党や民主党の一部議員が、決議案の問題点に気づき、修正や廃案をめざして動き始めたが、日本の政治家が反発すると収拾が難しくなる。日米とも政治家がこの問題に関与すれば国益を損なう。
記者 安倍首相は「(旧日本軍の)強制性を裏付ける証拠はなかったのは事実だ」と発言している。
グリーン 安倍政権の外交政策、特に国連での対北朝鮮制裁決議案採択や、中韓との関係改善に向けた首相の指導力は、ワシントンでも高く評価されている。ただ、慰安婦問題は、高いレベルが政治介入すれば、かえって複雑化する。強制があろうとなかろうと、被害者の経験は悲劇で、現在の感性では誰もが同情を禁じ得ない。強制性の有無を解明しても、日本の国際的な評判が良くなるという話ではない。
記者 昨秋、下院で開かれた公聴会で靖国神社問題について証言し、日本の立場に理解を示したが、この問題では批判的なのか
グリーン 慰安婦問題で議会に呼ばれたら、残念ながら日本を擁護できない・・・慰安婦問題では被害者女性だけが同情され、日本が政治的に勝利することはない。

 マイケル・グリーンは日本語をあやつる曲者だ。日本人の心理をくすぐるコツを知っている。だから、インタビューの中でも、「米議会がこの問題に関与する事は大きな間違いだ」と言ってみたり、安倍政権の外交はワシントン(米政府)で評価されていると持ち上げてみたり、慰安婦問題に関する決議案が採択されても日米同盟関係に影響はないなどと、日本人を安心させるような言い方をはじめにしてみる。
 しかし彼は米国人だ。物事を曖昧にはしない。間違った事を言って後で責任を取らされるようなことは決して言わない。彼の本心は後半部分にある。彼は慰安婦問題については日本を弁護しない、出来ないと言っているのだ。
 日本政府の慰安婦問題への対応はこれで決まりである。いくら論争をしても日本に勝ち目はない。米国の反発を招くだけだ。マイケル・グリーンさんがそうおっしゃっているのだ。
 慰安婦問題で威勢のいい事を言っている右翼の連中は日本の国益を良く考えたほうがいい。日本の国内で、慰安婦問題に理解を示す政治家や識者を威勢良く罵倒する事は勝手である。しかし米国へ行って、米語で、奴らに同じ事を言ってみるがいい。勇ましい事を言ってみたらいい。勝ち目のない戦を米国に挑んだ日本は、その結果どうなったか。愚かな経験は一度だけでよい。慰安婦問題に限っては、私はマイケル・グリーンに賛同する。

以上が天木さんの記事でしたが、この流れにそって今回の安倍首相の訪米などがあったことは間違いありません。さらに影響を受けた記事として、イギリス在住で政治学を研究されているかみぽこさんのブログもありました。こちらはURLの紹介にとどめさせていただきますが、「日本の立場って言ったって、従軍慰安婦で日本が悪くないって言ったところで、大多数の人は理解してくれるわけがないのだ。わざわざ無力化している外交カードを蘇らせようとするだけのことだ」の言葉に要約された内容でした。

かみぽこ政治学レビュー:従軍慰安婦問題と「小泉演説」の効果。
http://plaza.rakuten.co.jp/kingofartscentre/diary/20070224/

たいへん長くなって申し訳ありませんが、最後に従軍慰安婦の問題に限れば安倍首相の対応は適切だったと見ています。否定派の方々にとって今回の安倍首相の対応は強く不満を残しているものと思いますが、政治家の立場からは常識的な判断だったはずです。

もやもやさんの指摘3に対し、以上が私なりのお答えです。

投稿: OTSU | 2007年5月 3日 (木) 10時03分

ブログ主さま こんばんはレスありがとうございます。
レスから二点ほど

1 最高裁判決については前出の通りです。重さは非常に軽いです。
 中国人慰安婦の証言が信頼に足るものなら判決以前の段階で高崎氏なり和田春樹氏なり吉見氏なりVAWNETが大宣伝しているでしょう。
もちろんアジア女性基金の研究部門も無視できないでしょう。しかし誰も声を上げない。これが現実です。 

2 慰安婦問題は、政治問題でも勝ち負けの問題でもありません。歴史的事実探求の問題です。
アメリカ政府が歴史を判断するのですか? 天木氏の論は「アメリカ政府が歴史を判断するものだ」との思考が下敷にあるように私は感じます。 自己の論を権威付けるためにアメリカ政府要人を出しているのでしょう。

3 前レス3についてお答えをいただきましたが、1と2については
納得していただけたのでしょうか?

投稿: もやもや | 2007年5月 4日 (金) 01時43分

もやもやさん、たびだびコメントありがとうございます。私のお答えが必ずしも充分ではなく、表現力も拙いため何度も煩わせてしまい申し訳ありません。
本日、これから外出しなければならないため、この問題は改めて次回記事で取り上げたいと考えています。遅くとも日曜までに新規記事は投稿する予定ですので、今回のコメントに対するお答えはお時間を少しいただくことをご了承ください。

投稿: OTSU | 2007年5月 4日 (金) 07時21分

半年ほど前から当ブログの読者になっています某自治体の組合員です。(まあ、活動は殆どしていないですが・・)労働運動や組合活動について色々勉強にさせてもらってます。

さて、このエントリーのタイトルを見て、「ありゃー」と思いましたが、コメントが色々付いていますね。
私が所属する組合でも、この前委員長の活動報告ペーパーが配布されましたが、その内容は「イラク派兵反対・アフガン難民問題・護憲・慰安婦・安倍政権打倒」と続き、最後にやっと「格差社会・公務員制度」に触れています。
勿論、個人(或いは何らかの所属団体)として主義主張を行うのはいいのですが、なぜそれを「自治労」の範疇で行うのですかね?

最近の若い世代の組織加入率の減少が言われますが、私の周りではそういう所を敬遠している人も多いですよ。私自身も労働運動は大切だと思っていますが、現在の自治労の有り様には疑問だらけです。

投稿: fi | 2007年5月 4日 (金) 12時53分

fiさん、はじめまして。コメントありがとうございました。
貴重なご指摘でしたので、もやもやさんのコメントへのお答えと合わせて新規記事の中で私なりの考え方を示させていただきました。
返信が遅れて申し訳ありませんでしたが、新規記事をご覧いただけるようよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2007年5月 5日 (土) 15時54分

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