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2007年4月15日 (日)

国民投票法案が衆議院を通過

先週日曜に投開票された東京都知事選、現職の石原慎太郎知事が280万票もの支持を得て圧勝する結果となりました。私どもの組合が「支援」した浅野史郎さんは残念ながら100万票以上の大差をつけられ敗北しました。都政私物化などへの「反省」が口先だけで終わり、これからも石原知事の高飛車で傲慢な態度が改まることのない大差勝ちを許してしまったようです。

当選直後の記者会見がその豹変ぶりを映し出していました。選挙前の抑え気味だった姿勢が一転し、記者の問いかけに「もっとまともな質問をしろよ」「議事録を読んでくれ」など相変わらず不遜な言葉を連発していました。また4年間、このような知事に仕えなくてはいけない都の職員も気の毒ですが、独断専行知事に振り回される区市町村も他人事ではありません。

水曜朝の読売新聞多摩版に石原3選の検証記事があり、「公約に戸惑う周囲」の見出しが目に入りました。石原知事は告示日の1週間前、中学3年生までの医療費ゼロの公約を発表しました。これを実現するためには区市町村側にも年間90億円の新たな財政負担が強いられるようです。都市長会は「都が全額負担してくれるのか。そうでないなら、事前に相談があってしかるべきだ」と憤っていることが書かれていました。

さて、石原知事の圧勝ぶりに暗くなっている中、追い討ちをかけるように国民投票法案が衆議院を通過し、今国会での成立が確実な見通しとなりました。前回記事「安倍内閣への雑感」でも記しましたが、巨大与党は数の力で憲法調査特別委員会を強行突破し、金曜の衆議院本会議で憲法改正を前提とした国民投票法案が可決されました。ちなみに同日、3兆円もの日本負担額が盛り込まれた米軍再編法案も衆議院を通過しています。

国民投票法案のポイントは次のとおりですが、憲法第96条に定められている憲法改正のための手続き法と位置付けられています。

  • 国民投票の対象は憲法改正に限定
  • 投票権者の年齢は18歳以上(当面は20歳以上)の日本国民
  • 法施行は公布から3年後
  • 投票用紙の「賛成」「反対」に○印を記入
  • 有効投票総数の過半数を賛成票が占めた場合に憲法改正を承認

もともと憲法に明記されていた必要な手続き法であるため、大騒ぎして反対するのは筋違いだとの声もあります。しかし、絶対見過ごせないのは安倍首相の執拗な働きかけにより、拙速な法案成立が目論まれている点です。つまり日本国憲法の徹底した平和主義を放棄し、普通に戦争ができる国づくりを急ぐ安倍首相の意向を強く反映した動きだと言えます。

国民投票法案に対する国民の関心は薄く、加えて国政選挙で一度も争点化されていない問題がゴリ押しされていくのは非常に問題です。さらに与野党での議論が尽くされていない中、委員会での強行採決は言語道断でした。なお、この局面では民主党の修正案も与党案と五十歩百歩であり、ある意味では生半可な合意に至らず「不幸中の幸」だったかも知れません。

また、公務員や教育者の地位利用による国民投票運動の禁止、投票日の14日前から広告放送の制限など、憲法改正を容易に運ぶための条文が随所に見られます。前者は自治労や日教組などによる反対運動に釘をさす意図が明らかです。後者は国民投票広報協議会の官製広告放送に限ることによって、権力側の思惑を色濃く反映した宣伝のみとなる恐れがあります。

とりわけ深刻な問題は、国民投票を有効とする最低投票率の課題がスルーされた点です。極端な場合、ごくわずかな国民の意思によって、国民にとって最も重要な憲法が改悪される手続き法案となっています。運動を規制する様々な内容と絡み合い、とにかく憲法第9条を改めることを宿願とした安倍首相の強い意思が働いている法案だと感じ取れます。

金曜の昼休み、ある女性組合員から「組合は反対運動しないんですか」と問われました。平和フォーラムが中心となり、これまで反対運動に取り組んできたことを説明した上で、臨機応変に動けない腰の重さ、幅広い反対運動に押し上げ切れていない足腰の弱さなど、全体的な労働組合の現状を釈明しながら率直な意見を交わしました。

合わせて国民投票法案などに反対する組合の政治方針に対し、違和感を抱く組合員が少なくない話もさせていただきました。その現状に萎縮するつもりはありませんが、執行部と職場組合員が問題意識を一致できる丁寧な情報発信の必要性も伝えたところでした。そのため、今回のブログの記事内容は必然的に国民投票法案を取り上げることになりました。

不本意ながら国民投票法案が成立することは避けられません。しかし、本当の天王山は3年以上先にあり、その時、憲法の平和主義をどう守るかが最大の攻防点になるはずです。国民投票法案に反対した側は、それまでの時間を有効に使い、武力によって平和は築けないことを普遍化する運動の再構築に全力を尽くすべきだと思っています。

最後に本日、統一地方選後半戦の告示日を迎えました。数多くの区市町村の首長と議員選挙が来週の日曜日に迫りました。身近な政策課題が中心となる選挙ですが、国政における与党の横暴にレッドカードを突きつける視点からの投票行動も重要だろうと考えています。言うまでもなく自治労組合員の皆さんは、ぜひ、各自治体における推薦候補者へのご支援をよろしくお願いします。

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コメント

 都知事選については、OTSUさんの立場としての不満もわからないではないですが、やはり有権者が自らの責任において行動(投票)した結果なので、まずは正々堂々と受け入れるべきではないでしょうか。申し訳ないのですが、私にはOTSUさんの冒頭の言葉は、自分が望まない結果に終った事に対する単なる私的な愚痴・不平不満としか聞こえませんでした。(そうでないのならごめんなさい。)石原知事の人となりなんて、8年前の初当選の頃からひたすら言われ続けた事だし、ではなぜ今になってなお、反石原の候補が2度も連続して大敗する結果に終ったのか、冷静な分析こそ必要でしょう。
 そもそも、告示前の民主党の候補者選出のあり方が大問題でした。民主党は石原知事の施策を多少なりとも評価していたのならまだしも、小沢党首自らが「都民を犠牲にしている」と石原都政を全否定し、早くから独自の候補者の擁立を宣言していました。それに選挙が今年の4月8日に行われる事は最初からわかっていた事だし、しかも昨年末には自民・公明両党は石原知事への支持を表明、共産党も候補者を決定していました。なのに民主党は告示の直前まで決められずじまい。どんな事情かは知りませんが、私なんかひょっとしたら民主党は候補者を擁立せず、自主投票にするのかと本気で思っていたほどです。
 浅野氏は最初は立候補を固辞していました。もしあのまま出馬はしませんと言い切っていたら、民主党はどうするつもりだったのでしょうか?先に出馬を表明していた黒川紀章氏を支援するという話も聞こえてきましたが、あまりにもご都合主義じゃないですか? 党とは関係ないはずの誰かが反石原で名乗りを上げてくれないと動けない、尻馬に乗らないと選挙ができないというのでしょうか?
 100万票以上の差をつけられての大敗は、私は大失態だと思います。なのに次の選挙が迫っているためか、なんだか事がうやむやの内に終ってしまいそうですが、この結果については徹底的に問題点が追及されなければなりません。でなければ、何年経っても、誰を立てても同じ事が繰り返されるでしょう。

 あとは…沖縄の参議院補欠選挙でしょうね…。都知事選と同じ事が言えると思います。民主党としては何が何でも勝たなければならない、というか勝たなければウソです。なぜなら、夏の参議院選挙の前哨戦という以前に、どうしてこの時期に沖縄で補欠選挙が行われるのか、その経緯が関わっているからです。去年の知事選挙で、野党陣営は統一候補者の擁立を巡ってゴタゴタを繰り広げました。そして、後の保革逆転のためには貴重だったはずの参議院の議席を削ってまで擁立した候補が敗れている訳ですから。(あれを「善戦」「惜敗」という言葉でごまかしてもらっては困る。5万~10万は差をつけて圧勝しなければならなかったはずだ。)
 もしこの補欠選挙まで負けるようなら、はっきり言って「政権交代」なんて軽々しく口にしないほうが良いでしょう。

 「国民投票法案」ですが、民主党が「修正案」を提出した、ということは、改憲そのものは必ずしも反対ではないと言う事でしょう。(「護憲」を主張する共産・社民両党は法案そのものに反対しているのですから。)OTSUさんは以前、原発問題に関する私の投稿への回答の中で、「民主党とは相容れない悩ましい問題が多々ある。」旨おっしゃっていました。恐らくは改憲問題もそうでしょう。では投票法案以前に、改憲問題そのものについて、どう対応されるつもりでしょうか。「改憲反対」なら、民主党を支持し続けるのは間違いではないでしょうか。
 都知事選等にも通じると思うのですが、「相容れない部分」の存在を放置したまま、単に「反石原だから」「反自民だから」とかいうだけで特定の勢力に肩入れするのはどうかと思います。でないと仮に政権交代が実現したとしても、良い結果は生まれないと思います。
 今回もまた見苦しい駄文で申し訳ありませんでした。

投稿: 菊池 正人 | 2007年4月17日 (火) 22時30分

菊池正人さん、お久しぶりです。コメントありがとうございました。いろいろな意味で、たいへん貴重なご指摘をいただいたものと受けとめています。

確かに冒頭の石原知事に対する文章は私自身の愚痴やためいきに過ぎません。ただ私の周囲には、このように感じている方が少なくありませんでした。とは言え、石原知事へ280万票が集まったことも事実であり、そのことは真摯に受けとめなければなりません。その点を見誤ると石原知事へ投票した280万人の方々に対して失礼な話となり、それこそ独善的な運動にとどまってしまいます。

民主党の迷走ぶりはご指摘のとおりであり、浅野さんの敗戦の総括も支持した団体それぞれが多面的に行なうべきだと思っています。一方で、今週日曜の沖縄の選挙の行方などにも左右される恐れがありますが、ぶれずに民主党は7月の参議院選挙へ向けた態勢を強めていく必要があります。注目を浴びた知事選の結果は芳しくありませんでしたが、県議選の結果は充分自民党に対して脅威を与える結果でした。

国民投票法案の問題につながりますが、ご指摘のとおり民主党の議員それぞれの立ち位置は非常に広いものがあります。その中で、小沢代表の反与党の立場は頼もしく感じています。すぐにでも自民党と合流しそうな構えの議員が多い中、参議院選挙での勝利が小沢民主党の求心力だろうと見ています。

最後に「反自民だから」のような短絡的な意味で、ご指摘のとおり政党支持を決めていくのは問題です。その意味で、民主党は自民党の対極の政策を掲げているものと思っています。例えば格差を是とした「再チャレンジ」なのか、格差の是正をめざすのか、大きな違いなはずです。何よりも労働者の声を尊重していくのか、大企業の経営者の声を重視していくのか、労働組合の役員の立場からその答えは言うまでもありません。

菊池さんのご指摘に対して適確に答え切れていないかも知れませんが、取り急ぎ現時点での私なりの考え方を示させていただきました。ぜひ、また貴重なご意見をよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2007年4月17日 (火) 23時39分

 国民投票法案の可決が拙速だといいますが、国民投票法案はもう何年も前から国会で議論され続けてる法案であったように思います。いったいどこが拙速なのでしょうか?議論が尽くされていないといいますが、そのための時間は十分あったはずです。それが無駄になったのなら、それは自民党や安倍首相のせいではなく、議論それ自体を拒否する「護憲派」とその場その場の都合で方針がころころ変わる民主党のせいではないでしょうか。
 また、公務員の地位利用による投票運動の禁止がなぜ駄目なのかもよく分かりません。民間では、一般に就業規則で勤務中の政治活動は禁止されています。公務員ならば勤務中でも政治活動ができるのなら、それは権利ではなく特権ではないでしょうか。そして、公務員にそのような特権を与えるべき理由などないはずです。
 OTSUさんは「法律と勤務規則は違う。勤務規則は労使交渉で変えうるが、法律では一方的に押し付けられる」と言われると思います。が、公務員や教員は権力を持っていることを考えれば、彼らの政治活動を法律で縛ってもよいのではないでしょうか。別に勤務時間外での政治活動まで禁止されているわけではないのですし。

投稿: 通行人B | 2007年4月21日 (土) 01時21分

通行人Bさん、コメントありがとうございました。
確かに拙速ではないとの見方もその通りかも知れません。ただ私は国民の関心が薄く、加えて国政選挙で一度も争点化されていないまま重要な問題が決められていくことに違和感を持っています。
公務員や教育者については、勤務時間中、その地位を利用した運動が論外なのは当然です。その上で、それ以上の規制が見込まれている現政権の露骨な思惑を懸念しています。
いずれにしても国民投票法案への評価の違いで、見方はいろいろ分かれるだろうと思っています。異なる率直な意見をいただけるのもブログの利点だと考えています。ぜひ、これからも異論反論は貴重であると受けとめながら続けていきますので、よろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2007年4月21日 (土) 07時40分

はじめまして。「わたしの心のものさしで」のはぴねすと申します。
拙文をTBさせていただきました。
公務員でいらっしゃるとのことで、自由に行動ができないのではとお察しいたします。
拙文の内容は、法案の成立を止めることは難しいにしても、慎重な審議を求めて、国民の抵抗の意思表示をすることには意義があるはず、と信じての提案です。
お読みいただいて、趣旨にご賛同いただければ、ご都合の良い方法での「抵抗」を試みていただければ、と思っております。

投稿: はぴねす | 2007年4月21日 (土) 21時43分

はぴねすさん、はじめまして。コメントとTBありがとうございました。
自治労の呼びかけに応え、私どもの組合としても強行採決に抗議する打電行動に取り組んでいます。確かにささやかな抵抗ですが、国民の中に反対意見が少なくないことをアピールするのは意義深いものと私も感じています。
なお、「わたしの心のものさしで」をブックマークさせていただきました。これからもよろしくお願いします。

投稿: OTSU | 2007年4月21日 (土) 22時19分

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