東大阪市の非常勤職員制度
第16回統一地方選挙の幕開けとなる13都道県の知事選挙が木曜日に告示されました。その日から4月8日の投票日までが選挙期間となりますので、今後、いろいろ注意すべき点が多々あります。ブログで政治的な話題が一切できない訳ではありませんが、なるべく具体的な候補者名を示した話は慎むつもりです。なお、このような点を詳しく解説したサイト「サクジョ・ヘイサという都市伝説」を参考までにご紹介します。
1947年、新憲法施行前に自治体の首長と議会議員選挙が一斉に行なわれました。その後、任期はすべて4年ですので選挙への関心を高めるため、全国的に日程を統一して実施してきました。ただし、任期途中での首長の辞職や死去、議会の解散があった場合、統一地方選の日程から外れることになります。
さらに最近の市町村合併の広がりによって、ますます統一的な日程で実施される選挙の数は減る傾向を強めています。ちなみに私どもの市は首長と議員選挙、ともに統一地方選から外れています。市議選は昨年6月に行なわれ、市長選は今年9月2日に予定されています。現時点で正式に意思を表明した立候補予定者はいませんが、いろいろ水面下では噂が聞こえてくる今日この頃です。
さて、所得格差を語る上で「非正規」雇用の問題がクローズアップされています。当ブログでも「非正規」という言葉を頻繁に使ってきましたが、当事者の方から「私たちの雇用は正式なものではないの?」と以前問いかけられたことがありました。そのような意味合いを配慮し、私どもの組合では「正規」職員を常勤職員と呼ぶ一方、嘱託職員の皆さんらを「非正規」職員と呼ばないよう努めています。
ここで改めて自治体に働く職員の法的な位置付けを簡単に整理してみます。地方公務員法第3条で「地方公務員の職は、一般職と特別職に分ける」とされています。特別職は市長や議員らのほか、第3条3項3号の位置付けによる「臨時又は非常勤の顧問、参与、調査員、嘱託員及びこれに準ずる者の職」があり、この規定を根拠に数多くの嘱託職員の皆さんが雇用されています。
いわゆるアルバイト、臨時職員の皆さんは地方公務員法の第22条5項「緊急の場合や臨時の職に関する場合」を根拠とすることが多く、雇用期間は6か月で、更新は1回、最長1年と定められています。特に「緊急」や「臨時」の明確な基準はないようです。
そのほかに再雇用や再任用職員の制度があり、一般職の任期付職員に関する法律や育児休業取得者の代替に限定した任期付職員などの法整備も進んでいます。このように非常勤職員の任用根拠は多岐にわたっていますが、今回、東大阪市の一般職非常勤職員制度の事例を取り上げてみます。
全国の自治体で常勤職員の削減が進む一方、臨時・非常勤職員の採用が急増しています。自治労の調査で、1980年に9万人だったのが2006年には39万人を超えています。学校給食職場などでは食の安全や質の向上をはかる立場から経験豊富な臨時職員が求められ、中には結果的に20年を超える雇用実態も生じていました。
地方公務員法第22条による雇用は最長1年ですが、例えば1か月間、勤務しないことによって同一人が同じ職場で働き続けることが可能となっています。言うまでもなく昇給制度も適用されることなく、均等待遇の原則から極めて好ましくない現状が多くの自治体で見受けられるはずです。
このような問題の解決をめざし、自治労東大阪市職労は地方公務員法第17条を適用した任期を定めない臨時職員の制度確立を市当局へ求めました。粘り強い労使交渉を経て、2004年4月から「一般職非常勤職員制度」規則が施行されました。その結果、昇給制度の導入や手当の支給など、雇用の安定と労働条件の改善が一気に進みました。
最近の記事「非常勤職員も昇進」の先がけのような事例でしたが、好意的に見られている荒川区の制度と若干状況は異なりました。東大阪市の場合は一部の市民から「お手盛り」的な視点で非難され、この制度に異論を唱えた市民グループによって住民訴訟が起こされました。
2006年9月に大阪地裁で判決が示され、裁判所は原告の請求をすべて棄却し、市側が全面勝訴しました。原告の主張は、①欠員が生じていないのに職員を任用した(地公法17条違反)、②能力の実証を経ずに採用した(地公法15条、17条4項違反)、 ③非常勤職員には報酬で支払うべきところを給与・手当を支給したこと(地方自治法203条違反)の3点でした。
裁判所は「常勤職員の給与との均衡」を重視し、事細かく条例に書かれていなくても給与条例主義に反するものではないと判断しました。少しでも格差是正をめざす上で、非常勤職員制度の確立や拡充は欠かせません。その意味で、この判決は全国の自治労組合の役員を勇気付ける意義深いものでした。
残念ながら原告の市民グループは高裁へ控訴し、判決は確定していない状況です。また、所得格差などの問題は自治体内部の職員間の問題よりも、社会全体を通した格差是正が深刻な課題だと認識しています。そのことを留意しながらも東大阪市や荒川区の例を参考にした上で、まずは自分たちの身近な課題、できるところから一歩踏み出したいものと考えています。
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コメント
すみません!議会が終わるまで結構忙しいものですから、ゆっくり書き込みもできませんでした。ようやく明後日が閉会ですから、これからは少しのんびりできそうです。
格差問題を論議していくと、人事制度だけで終わらずに、任用制度、給与制度にも波及していきますし、人事考課制度も避けては通られないように思います。
私にはいささか荷の重いテーマだとは思っていますが、このあたりも含めて、またゆっくり書き込みをさせていただき、OTSUさんの見解も伺ってみたいと思っています。
投稿: ニン麻呂 | 2007年3月25日 (日) 23時44分
ニン麻呂さん、コメントありがとうございます。
3月議会、お疲れ様でした。その様子はニン麻呂さんのブログから拝見させていただいていました。また、忙しい中、ブログの素早い更新にいつも感心しています。
格差是正の問題は難しく、公務員組合にとって悩ましい話も出てくるかも知れませんが、これからも取り上げていくつもりです。ぜひ、率直なご意見をよろしくお願いします。
投稿: OTSU | 2007年3月26日 (月) 07時20分