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2007年3月11日 (日)

労働ダンピング

金曜に日付が変わった深夜、新年度に向けた職員数の増減に関する労使交渉が大筋決着しました。一人でも職員数を削減したい自治体当局の思惑に対し、現場目線での反論を加え、一定の押し返しをできる点こそ労使交渉の重要な役割だと思っています。

その日の仕事は際立って密度が濃かったため、3時間程度睡眠できたことは本当に幸でした。また、翌日の土曜は久しぶりにゴルフを楽しむタフな週末となり、さすがに昨夜は9時頃、睡魔に襲われていました。

ゴルフと言えば、ある執行委員から「ブログにゴルフのことは書かない方が良いのでは」と指摘を受けました。最近の記事でゴルフに行ったことを書きましたが、ゴルフをプレイする組合役員が「労働貴族」的なイメージで見られることを心配した意見でした。

数十年前までは確かにゴルフをブルジョアのスポーツと位置付け、「絶対自分はゴルフクラブを持たない」とこだわる組合役員が多かった話は聞いていました。しかしながら現在、たいへんリーズナブルな料金でできるようになり、ゴルフは誰もが楽しめる健全な生涯スポーツだと考えています。

したがって、私にとって予想外の忠告であり、正直驚きました。このブログのカテゴリーは「日記・コラム・つぶやき」としていますので、時々、プライベートな話も取り上げてきました。そのため、ゴルフへ行ったことをコソコソ隠す必要性は一切ありませんので、あえて今回も話題の一つとして取り上げてみました。

さて、前回記事「非常勤職員も昇進」に対し、多くのコメントをいただきました。コメントの大半は基本的に荒川区の試みを評価するご意見でした。その中で、にんにんさんとのらさんから採用のあり方、瑞鶴さんからは異なる視点での貴重な問題提起を受けました。今後、機会があれば別な切り口での議論とさせていただく予定です。

今回の記事も「労働」をテーマに掘り下げていきますが、著しい格差社会を招いた背景として「非正規」雇用の急増が指摘されています。最近、「働いても働いても生活できない」、深刻なワーキングプアの問題が広がっています。長時間労働と低賃金、企業の使い勝手の良い有期雇用の理不尽さなど、「非正規」労働者の置かれた厳しい実態が浮き彫りになってきました。

先日、自治労都本部春闘討論集会の講演で直接お話を伺うことができた弁護士の中野麻美さんの著書「労働ダンピングー雇用の多様化の果てに」を手に入れました。購入した書店で、その新書本は客の目につきやすいよう平積みされていました。このテーマが注目され、それなりに売れている証だろうと感じました。

中野さんは、1986年を戦後労働法制がギアチェンジした年だったと述べています。男女雇用機会均等法と労働者派遣法が制定され、労働基準法の大幅改正があった年でした。均等法で募集や採用に対する女性差別が問題視された一方、休日や深夜、女性も男性並に働ける方向へ転換されました。

派遣法が労働力の商品化に拍車をかけ、均等法が結果的に「正規」と「非正規」の枝分かれを促したと分析されています。つまり均等法の施行が女性に対し、過酷な時間外勤務や転居を伴う人事異動がある道を選ぶかどうか求める構図となりました。

企業との結びつきが強い「正規」労働者、「仕事と家庭の両立」を重視した労働者の色分けが強まる転機となった法律だと中野さんは見ているようです。その選択肢を自己責任としたため、徐々に後者は「家計補助的賃金」の色彩が濃くなり、自立した生活の保障などが考慮されない廉価な労働力にみなされていきました。

同時に経営の厳しさや国際競争力を高める目的が喧伝され、財界の意向をくんだ労働法制の規制緩和などが繰り返される中、ますます労働力のダンピングが進みました。さらにリストラや就職氷河期を経て、本来自立した生活給が必要な労働者までも「家計補助的賃金」水準に余儀なくされる事態に至っています。

有期雇用、派遣、パート、偽装請負など、雇用の液状化現象が「貧困化」や労働現場での人権侵害を引き起こしています。その著書の中で、人間の労働が「物件費」に組み込まれ、商品以上に買い叩かれる具体的な実例が頻繁に紹介されていました。

一方で「正規」労働者に対しては、「非正規」との違いを際立たせる理由付けから長時間労働や過酷なノルマが課せられるようになってきたと述べられています。業績や成果主義も強まり、労働現場での熾烈な競争が多くの労働者の心身を消耗させていると中野さんは訴えています。

ILOのフィラデルフィア宣言で「労働は商品ではない」という原則を掲げています。労働は商品のように生産や在庫の調整ができず、市場原理にさらされた時、商品以上に値崩れしやすいからです。また、雇用や労働条件の劣化は貧困と暴力の蔓延を招き、経済社会が衰退していくことを国際社会は認識してきました。

それにもかかわらず、市場原理主義者は「敗戦直後ならともかく、今日において、その原則は時代遅れ」だと言い切っています。中野さんは、出産や子育てなど人間ならではの「非合理」な営みや生身の人間としての生活を守るため、時代が変わろうとも「労働は商品ではない」という原則は重要であると強く反論しています。

以上は中野さんの「労働ダンピング」を読み、印象に残った点を自分なりの解釈で書き綴ってみました。非常に内容の濃い著書でしたので、今後も当ブログの記事を投稿する際の参考とさせていただく予定です。最後に、その著書の「おわりに」の結びの言葉を紹介し、次回以降の記事につなげていきます。

 何もしなければ、悪くなるだけ。新しい経済の枠組みに対応できる、商品ではない人間のための新しい労働システムを構築する働きかけが必要なのだ。

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コメント

お邪魔します。
「労働は商品ではない」,恥ずかしながら不勉強でこの考え方を知りませんでした。
私は,あくまで「労働は商品」を前提とした上で,安売りすることや買いたたくことの愚かさを問題視し,結局そのことが「安物買いの銭失い」につながるとの考えを持っていました。
ご紹介の本をぜひ読んで,「労働は商品ではない」という考え方について勉強してみたいと思います。

投稿: WontBeLong | 2007年3月11日 (日) 22時57分

WontBeLongさん、コメントありがとうございました。
中野麻美さんの著書が少しずつでも多くの方に読まれるなど、「労働」に対する社会の見方が変わっていくことを期待しています。労働組合の一役員として、このブログでも引き続き「労働」について掘り下げていく予定です。ぜひ、これからもご注目ください。

投稿: OTSU | 2007年3月12日 (月) 07時12分

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